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夢幻の国のアリス【二人台本】
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0:(迷宮に迷い込んだ十五歳ほどのおとなしい少年「僕」は、奇妙な少女と出会う。彼女は永遠の少女であり、倫理観や常識に囚われない。様々な美しい光景を紹介してくれる。「僕」は楽しみながらも、次第に戻らなければならないと思う。)
僕:……ここは……どこだ?
僕:(心の声)目覚めると、僕は知らない場所に居た。洋画に出てくるような、緑の豊かな庭。白いバラが咲き、青空が広がっている。
僕:おかしいな…… 夢?
0:(突然、アリスが現れる。元気よく、懐っこい)
アリス:そうよ、夢よ!
僕:うわっ! 誰?
アリス:ここはあたしの夢――薔薇迷宮へようこそ!
アリス:ふふっ! いらっしゃいウサギさん、あたしはアリス、アリスって呼んでね!
僕:アリス……?
アリス:アリスって呼ばなきゃ駄目よ、あたしは女王でもないし薔薇でもないの。赤くないしトゲもないんだから。
僕:えっと……僕は、
アリス:あなたはウサギ! 真っ赤な目をしているもの。ウサギさんに違いないわ。
僕:ええっ。目が赤い? 寝不足かな……? それで、その……僕の家はどこ?
アリス:ウサギさんはお家を探しているの?
僕:……えっ?
アリス:わかったわ! あたしがお家を探してあげる! さあ、行きましょう!
僕:ちょ、ちょっと待ってよ!
:
アリス:さあ。ここはまず、赤薔薇の庭園よ。まるで迷路のように薔薇が咲き誇っているの!
僕:わぁ……空にも薔薇が浮かんでる。まるで薔薇のテントだ。
アリス:どの薔薇もおしゃべりが大好き! だからあなたも寂しくないわ。ちょっとトゲはあるけれど、そんなに傷つきはしないと思うわ。
僕:薔薇は喋るの?
アリス:ええ、もちろん。ハナがあるんだから口もあるのよ? うふふっ! ここはあなたのお家かしら?
僕:……違うよ。僕の家は、こんなに華やかじゃない。
アリス:そう……じゃあ次ね! まだまだ素敵な場所があるのよ!
:
アリス:次はここ。三月ウサギのお茶会場よ。ずーっと特別なお茶会をしているの。お茶は飲み終わらないし、ケーキもパイもなくならない。一口お茶をいかが? 飲んだらあなたも小さくなれるわよ?
僕:の、飲むのはちょっと……でも、すごくいい香りだね。ずいぶん広いお茶会だな……
アリス:小さくなってポットに隠れたり、自分より大きなケーキにかじりついたり、幸せよ。……あなたもウサギさんなのだから、きっと気に入るわ!
僕:残念だけど、これは僕の家じゃない。こんなに美味しそうなものはないよ。
アリス:ふーん。じゃあ次にいくわよ。次もとっても素敵よ!
:
アリス:ここはウミガメの入り江。とっても爽やかな波の音でしょう?
僕:本当だ。空も青くって、海と繋がっているみたいだね。
アリス:あなたも練習すれば泳げるようになるかも。海ウサギになりましょう? くすくす。
僕:きれいな貝殻やシーグラスも落ちてる。ゆったりした、いいところだね。
アリス:誰もいない静かなおうちは気に入ったかしら? 赤い目のウサギさん?
僕:いや、ここは僕の家じゃないよ。そもそも、入り江は家じゃない。
アリス:イリエはイエじゃない? こんなに似ているのに。まあいいわ、わたしのとっておきを見せてあげる!
:
僕:ふう……うわっ。ここって、王宮じゃないか!
アリス:そうよ。処刑の王宮。女王が居るから女王キューかもしれないけど。どうかしら? 真っ白い壁に赤いお屋根。砂糖菓子とジャムみたいじゃない? それに、たくさんの兵士もいるし、あなたを守ってくれるわよ。
僕:う、ううん……だけど、女王がいるんだろう?
アリス:そうよ? 女王はもちろん処刑しちゃうわ。反対する兵士も処刑しちゃえば、だれも反対する人はいなくなるの。
僕:それは……駄目だよ。いけないことだ。
アリス:どうして?
:
アリス:あなたがずっと、考えていたことじゃない。
アリス:大嫌いな人がいなくなればいい――処刑の王宮。
アリス:誰もいない場所にいきたい――ウミガメの入り江。
アリス:小さくなって幸せな頃に戻りたい――三月ウサギのお茶会場。
アリス:寂しい、話しかけて欲しい――赤薔薇の庭園。
アリス:だから、あたしはあたしの夢を案内したのよ?
僕:違う。
僕:これは君の夢じゃない。違うんだ……
アリス:そうかしら。辛いことは考えなくていいのよ。
僕:僕の夢だ。
僕:一緒に居てくれる友人が欲しい――だから僕は、君を夢見た。
僕:ここは僕の夢なんだ。目覚めなければいけない。
アリス:いいのに。眠ったままでも、幸せだったらいいのに。
僕:僕は現実に疲れている。だからこんな、現実逃避の夢を……。
アリス:どうかしら? この世界があたしの夢であることは否定されないわ。この世界の実在は。否定されないわ。
僕:それは、そうだけど……
アリス:あなたが泣きはらした目でやってきた時、あたしは嬉しかったわ。退屈したわたしにウサギさんが来たって。
僕:帰るよ。帰らなきゃいけない。
アリス:帰るのならば止めないわ。
アリス:だけど忘れないで。あなたが疲れた時は、いつでもこの世界に来ていいのだから。
僕:……さようなら。
アリス:また会いましょう。
アリス:わたしのウサギさん……。
僕:……ここは……どこだ?
僕:(心の声)目覚めると、僕は知らない場所に居た。洋画に出てくるような、緑の豊かな庭。白いバラが咲き、青空が広がっている。
僕:おかしいな…… 夢?
0:(突然、アリスが現れる。元気よく、懐っこい)
アリス:そうよ、夢よ!
僕:うわっ! 誰?
アリス:ここはあたしの夢――薔薇迷宮へようこそ!
アリス:ふふっ! いらっしゃいウサギさん、あたしはアリス、アリスって呼んでね!
僕:アリス……?
アリス:アリスって呼ばなきゃ駄目よ、あたしは女王でもないし薔薇でもないの。赤くないしトゲもないんだから。
僕:えっと……僕は、
アリス:あなたはウサギ! 真っ赤な目をしているもの。ウサギさんに違いないわ。
僕:ええっ。目が赤い? 寝不足かな……? それで、その……僕の家はどこ?
アリス:ウサギさんはお家を探しているの?
僕:……えっ?
アリス:わかったわ! あたしがお家を探してあげる! さあ、行きましょう!
僕:ちょ、ちょっと待ってよ!
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アリス:さあ。ここはまず、赤薔薇の庭園よ。まるで迷路のように薔薇が咲き誇っているの!
僕:わぁ……空にも薔薇が浮かんでる。まるで薔薇のテントだ。
アリス:どの薔薇もおしゃべりが大好き! だからあなたも寂しくないわ。ちょっとトゲはあるけれど、そんなに傷つきはしないと思うわ。
僕:薔薇は喋るの?
アリス:ええ、もちろん。ハナがあるんだから口もあるのよ? うふふっ! ここはあなたのお家かしら?
僕:……違うよ。僕の家は、こんなに華やかじゃない。
アリス:そう……じゃあ次ね! まだまだ素敵な場所があるのよ!
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アリス:次はここ。三月ウサギのお茶会場よ。ずーっと特別なお茶会をしているの。お茶は飲み終わらないし、ケーキもパイもなくならない。一口お茶をいかが? 飲んだらあなたも小さくなれるわよ?
僕:の、飲むのはちょっと……でも、すごくいい香りだね。ずいぶん広いお茶会だな……
アリス:小さくなってポットに隠れたり、自分より大きなケーキにかじりついたり、幸せよ。……あなたもウサギさんなのだから、きっと気に入るわ!
僕:残念だけど、これは僕の家じゃない。こんなに美味しそうなものはないよ。
アリス:ふーん。じゃあ次にいくわよ。次もとっても素敵よ!
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アリス:ここはウミガメの入り江。とっても爽やかな波の音でしょう?
僕:本当だ。空も青くって、海と繋がっているみたいだね。
アリス:あなたも練習すれば泳げるようになるかも。海ウサギになりましょう? くすくす。
僕:きれいな貝殻やシーグラスも落ちてる。ゆったりした、いいところだね。
アリス:誰もいない静かなおうちは気に入ったかしら? 赤い目のウサギさん?
僕:いや、ここは僕の家じゃないよ。そもそも、入り江は家じゃない。
アリス:イリエはイエじゃない? こんなに似ているのに。まあいいわ、わたしのとっておきを見せてあげる!
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僕:ふう……うわっ。ここって、王宮じゃないか!
アリス:そうよ。処刑の王宮。女王が居るから女王キューかもしれないけど。どうかしら? 真っ白い壁に赤いお屋根。砂糖菓子とジャムみたいじゃない? それに、たくさんの兵士もいるし、あなたを守ってくれるわよ。
僕:う、ううん……だけど、女王がいるんだろう?
アリス:そうよ? 女王はもちろん処刑しちゃうわ。反対する兵士も処刑しちゃえば、だれも反対する人はいなくなるの。
僕:それは……駄目だよ。いけないことだ。
アリス:どうして?
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アリス:あなたがずっと、考えていたことじゃない。
アリス:大嫌いな人がいなくなればいい――処刑の王宮。
アリス:誰もいない場所にいきたい――ウミガメの入り江。
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アリス:だから、あたしはあたしの夢を案内したのよ?
僕:違う。
僕:これは君の夢じゃない。違うんだ……
アリス:そうかしら。辛いことは考えなくていいのよ。
僕:僕の夢だ。
僕:一緒に居てくれる友人が欲しい――だから僕は、君を夢見た。
僕:ここは僕の夢なんだ。目覚めなければいけない。
アリス:いいのに。眠ったままでも、幸せだったらいいのに。
僕:僕は現実に疲れている。だからこんな、現実逃避の夢を……。
アリス:どうかしら? この世界があたしの夢であることは否定されないわ。この世界の実在は。否定されないわ。
僕:それは、そうだけど……
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アリス:帰るのならば止めないわ。
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僕:……さようなら。
アリス:また会いましょう。
アリス:わたしのウサギさん……。
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