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いぬのこうふく【ヤンデレ/二人台本/性別不問】
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0:(洋館。電話をしている青年。椅子に座っている主人)
犬:ああ。わかった。その件は任せるぞ。私が居なくても回るようにするのがお前の役目だ。うん。それでいい。ではな。ふぅ……
主人:電話はすんだのか? 随分、出世したようだな。
犬:はい。お待たせして申し訳ありません。せっかくご主人様とこのような時間を過ごせるというのに……
主人:構わない……はぁ……ただ、退屈はしたな。
犬:もうしわけありません! どうぞ私に罰をお与えください!
主人:罰? どのような?
犬:罵る言葉でも、鞭でも……踏みにじるのでも!
主人:それではお前が喜んでしまうだろう? ――変態め。
犬:はぁ……っ! はひ……ありがとうございます……!
主人:まあいい。茶を準備しろ。濃いめで、砂糖漬けの薔薇を添えて。
犬:かしこまりました。
主人:準備しながらでいいが……お前は本当に、犬でいいのか?
犬:と、言いますと?
主人:お前は世間では、成功者と讃えられている。ビジネスはもちろん、容姿端麗、博識で温和な人格者。新聞を読んだが、欠点のない超人だと言われているな。
犬:恐れ入ります。
主人:それがわたしの前では、犬に成り下がる。人間以下の扱いを受けて、喜ぶ。
犬:ええ。それが私の喜びです。
主人:はぁ……わからんな。わたしであれば、このような横暴な主人の手など噛んで逃げ出している。
犬:いえ。あなたが居るからこそ、私は社会で下らない者たちとの馴れ合いを堪えることができるのです。あなたの前でだけ本当の自分で居るために、日々努力ができる。
主人:わからんものだな……
犬:お茶が入りました。ビスキュイもありますが?
主人:いらん。それよりも、飲ませろ。
犬:それでは、失礼して……口を、開けてください。
主人:ん……ふぅ。もういい。次は薔薇だ。
犬:はい。あなたの舌は、まるで薔薇のようですね……
主人:ん……。もう一つ。
犬:ふふ。あなたはどのような姿をしていても美しい。
主人:満足した。置いておけ。
犬:かしこまりました。
主人:執事もどきも板についたものだな? どこかで練習でもしているのか?
犬:まさかそのような。わたしの主人はあなただけです。
主人:フフ。どうだかな。
犬:どうかわたしの愛を信じてください。次は読書のお時間でしょうか?
主人:そうだな。今日はイギリスのミステリィが読みたい。
犬:かしこまりました。ライブラリからとって参ります。離席いたしますが、ゆめゆめ、脱走など考えることのないよう。
0:(主人は、犬に監禁されている。)
主人:当たり前だ。部屋の鍵、窓の鉄柵。わたしの首輪。どうやったら逃げることができる? この、異常者め。
犬:はい……私は異常者です。あなたを監禁してまで、あなたに平伏したいと思ってしまった、異常者です……! どうぞ私を憎んでください!
主人:はぁ……お前には何を言っても無駄だったな。もういい。わたしが読んだことのない小説を頼む。
犬:かしこまりました。あなたに、つくすのが……私の喜びですので。どうか見捨てないでくださいね。あなたに消えられては、私は全てを失ってしまいます。あなたがここで待っていてくれているからこそ、私という人間は存在できるのです。
主人:どちらが犬でどちらが主人か……わからぬな。
犬:もちろん、私があなたに囚われているのですよ。
0:(終)
犬:ああ。わかった。その件は任せるぞ。私が居なくても回るようにするのがお前の役目だ。うん。それでいい。ではな。ふぅ……
主人:電話はすんだのか? 随分、出世したようだな。
犬:はい。お待たせして申し訳ありません。せっかくご主人様とこのような時間を過ごせるというのに……
主人:構わない……はぁ……ただ、退屈はしたな。
犬:もうしわけありません! どうぞ私に罰をお与えください!
主人:罰? どのような?
犬:罵る言葉でも、鞭でも……踏みにじるのでも!
主人:それではお前が喜んでしまうだろう? ――変態め。
犬:はぁ……っ! はひ……ありがとうございます……!
主人:まあいい。茶を準備しろ。濃いめで、砂糖漬けの薔薇を添えて。
犬:かしこまりました。
主人:準備しながらでいいが……お前は本当に、犬でいいのか?
犬:と、言いますと?
主人:お前は世間では、成功者と讃えられている。ビジネスはもちろん、容姿端麗、博識で温和な人格者。新聞を読んだが、欠点のない超人だと言われているな。
犬:恐れ入ります。
主人:それがわたしの前では、犬に成り下がる。人間以下の扱いを受けて、喜ぶ。
犬:ええ。それが私の喜びです。
主人:はぁ……わからんな。わたしであれば、このような横暴な主人の手など噛んで逃げ出している。
犬:いえ。あなたが居るからこそ、私は社会で下らない者たちとの馴れ合いを堪えることができるのです。あなたの前でだけ本当の自分で居るために、日々努力ができる。
主人:わからんものだな……
犬:お茶が入りました。ビスキュイもありますが?
主人:いらん。それよりも、飲ませろ。
犬:それでは、失礼して……口を、開けてください。
主人:ん……ふぅ。もういい。次は薔薇だ。
犬:はい。あなたの舌は、まるで薔薇のようですね……
主人:ん……。もう一つ。
犬:ふふ。あなたはどのような姿をしていても美しい。
主人:満足した。置いておけ。
犬:かしこまりました。
主人:執事もどきも板についたものだな? どこかで練習でもしているのか?
犬:まさかそのような。わたしの主人はあなただけです。
主人:フフ。どうだかな。
犬:どうかわたしの愛を信じてください。次は読書のお時間でしょうか?
主人:そうだな。今日はイギリスのミステリィが読みたい。
犬:かしこまりました。ライブラリからとって参ります。離席いたしますが、ゆめゆめ、脱走など考えることのないよう。
0:(主人は、犬に監禁されている。)
主人:当たり前だ。部屋の鍵、窓の鉄柵。わたしの首輪。どうやったら逃げることができる? この、異常者め。
犬:はい……私は異常者です。あなたを監禁してまで、あなたに平伏したいと思ってしまった、異常者です……! どうぞ私を憎んでください!
主人:はぁ……お前には何を言っても無駄だったな。もういい。わたしが読んだことのない小説を頼む。
犬:かしこまりました。あなたに、つくすのが……私の喜びですので。どうか見捨てないでくださいね。あなたに消えられては、私は全てを失ってしまいます。あなたがここで待っていてくれているからこそ、私という人間は存在できるのです。
主人:どちらが犬でどちらが主人か……わからぬな。
犬:もちろん、私があなたに囚われているのですよ。
0:(終)
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