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第11部
第一章 お持てなしをしよう!②
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「え! ルカのお師匠さまが遂に来たの!」
アリシアは、パチパチと瞳を瞬かせた。
オルタナからの一報。
それは、ルカの師匠の来訪を告げるものだった。
「噂の鎧の師匠か」
ロックが腕を組んで唸る。
「予想よりも随分と早く来たな」
「……ウム! アニジャタチハ、テッコウセンニ、ノッテイタ! グングン、ウミヲスンデタ! トテモハヤカッタゾ!」
と、ユーリィの肩に乗ったオルタナが告げる。
「鉄甲船に?」
サーシャが目を丸くした。
「流石は公爵令嬢だね。鉄甲船で来たんだ」
鉄甲船は帆船と違い、恒力を動力に風の影響を受けずに進む船だ。
以前、サーシャ達はグレイシア皇国の名家――ハウル公爵家が所有する鉄甲船に乗せて貰ったことがあるが、帆船は比べものにならない速さだったのを憶えている。
ただし、かかる費用も比較にもならないそうだが。
「あの速度なら納得の到着か」
アリシアも当時のことを思い出したのか、ふっと笑った。
「……ウム! ユエニ、シュツジンデ、ゴザル!」
と、オルタナが飛翔して催促する。
アリシア達は互いの顔を見合わせた。
今回の件は事前に、ルカからお願いされていた。
ルカ曰く、師匠や先輩に、アリシア達を友人として紹介したいそうだ。
可愛い妹分の頼みに、アリシア達は快諾していたが、
「どうするよ? 俺ら、この格好でいいのか?」
エドワードが、自分の制服姿を差して率直に尋ねる。
正直、来訪は、一週間から二週間後だろうと考えていたため、まだこれといった準備をしていなかったのだ。
アリシアとサーシャは、少し困った顔をした。
「そうよね。相手は公爵令嬢だし、ドレスの方がいいのかしら?」
「けど、今から家に戻ってドレスに着替えていたら、到着に間に合わないよ」
オルタナの話では、港湾区に来て欲しいとのことだ。
ルカは、すでに向かっているらしい。
アリシア達は「う~ん」と唸った。
すると、
「いや、そこまで気張らなくていいだろ」
パイプ椅子に座ったまま、アッシュが言う。
「もしドレスとか貴族服が必要なら、ルカ嬢ちゃんの性格なら事前に言ってるだろ。嬢ちゃんとしては、本当にお前らを友達として紹介したいだけだと思うぞ」
そこで頭上で旋回するオルタナに目をやった。
「オルタナ。ルカ嬢ちゃんはどんな格好で迎えにいったんだ?」
「……ウム? セイフクダッタゾ!」
アッシュは二カッと笑みをアシリア達に向けた。
「なっ。お前らもその格好でいいんだよ。それに制服って立派な礼服だしな」
再び互いの顔を見合わすアシリア達。
「そ、そうですね」
サーシャが代表するように、ホッとした心情を呟いた。
「ああ、そうさ。ただ……」アッシュはユーリィに目をやる。「ユーリィだけは私服に着替えた方がいいな。余所行きの服があるだろ」
「うん。ある」
ユーリィがこくんと頷く。
が、その後に少し眉根を寄せて。
「けど、私も行っていいの? まだお仕事もあるし」
「ははっ、構わねえって」
アッシュは陽気に笑った。
「何だかんだでユーリィがルカ嬢ちゃんと一番仲がいいしな。もうじきオトも学校から帰ってくるだろうし、手は足りるよ」
言って、アッシュは立ち上がるとユーリィの傍に寄った。
「今日は友達の頼みを聞いてやりな」
くしゃり、と空色の髪を撫でる。
一方、ユーリィは子猫のように目を細めて。
「うん。分かった。けど、多分、色々話し込んだりしたら遅くなって、今日はルカの家に泊まることになるかも」
「ん。それも構わねえよ。そん時はオルタナに連絡させてくれ。けど、ルカ嬢ちゃんの家って王城になるんだよなあ……」
庶民的なアッシュにしてみれば、何とも腰が引けるスケールだ。
「あんま迷惑はかけちゃダメだぞ」
「うん。分かってる」
再び、こくんと頷くユーリィ。
「大丈夫ですよ。先生」
二人のやり取りを見ていたサーシャが言う。
「ユーリィちゃんはいい子ですし、もし王城に泊まることになったら、私とアリシアも一緒に泊まる予定ですから」
「ええ。元々その件だけはルカとも話してましたし。サーシャとユーリィちゃんからもお願いされていますから、私に任せておいてください!」
自信満々にそう告げて、慎ましい胸をドンと叩くアリシア。
その傍らでサーシャとユーリィは、誰も気付かれない微笑を見せていた。
アリシアはまだ知らない。
ルカと、ユーリィと、サーシャ。
彼女達が、今回のお泊まり会で、未だハーレム否定派であるアリシアを、完全に肯定派に落としてしまおうと目論んでいることを。
これだけは、ルカと先に決めておいたのである。
(そろそろ、アリシアさんにも覚悟してもらわないと)
(うん。そうだね)
と、視線だけで意思の疎通を行うユーリィとサーシャ。
それに気付く者も誰もいなかった。
「まあ、ともかくさ」
エドワードが言う。
「ユーリィさんが着替えたら、早く港湾区へ行こうぜ。まだ余裕はあっけど、早く行っとくに越したことはねえだろ」
「ああ、そうだな」
ロックが頷く。サーシャ達も首肯して同意した。
「じゃあ、少し待ってて」
そう告げて、ユーリィが二階に上がる。
十五分後。
降りてきたユーリィは、白いワンピースを纏っていた。
「行ってくる。アッシュ」
「おう。行ってらっしゃい」
アッシュは再び、ユーリィの頭を撫でた。
(……むう)
完全な子供扱いに不満も感じるが、頭を撫でられることはやはり嬉しい。
何とも複雑な気分だが、それも今日までだ。
今夜のお泊まり会で、まずアリシアを完全に落とす。
その次は、どっちつかずのオトハだ。
ユーリィはサーシャに目をやった。
同志は静かに頷いた。
(いよいよだね)
(うん。五人の意思統一が出来たら攻勢に出る)
総力を以て、この朴念仁を攻略するのだ。
ただ、ルカも含めた彼女達のこの戦略が、事態を大きく動かす一役を買うことになるのだが、それは後の話である。
ともあれ、そんな愛娘と愛弟子の思惑など知る由もなく。
「ん。そんじゃあ行ってこい」
今はにこやかに送り出す、アッシュであった。
アリシアは、パチパチと瞳を瞬かせた。
オルタナからの一報。
それは、ルカの師匠の来訪を告げるものだった。
「噂の鎧の師匠か」
ロックが腕を組んで唸る。
「予想よりも随分と早く来たな」
「……ウム! アニジャタチハ、テッコウセンニ、ノッテイタ! グングン、ウミヲスンデタ! トテモハヤカッタゾ!」
と、ユーリィの肩に乗ったオルタナが告げる。
「鉄甲船に?」
サーシャが目を丸くした。
「流石は公爵令嬢だね。鉄甲船で来たんだ」
鉄甲船は帆船と違い、恒力を動力に風の影響を受けずに進む船だ。
以前、サーシャ達はグレイシア皇国の名家――ハウル公爵家が所有する鉄甲船に乗せて貰ったことがあるが、帆船は比べものにならない速さだったのを憶えている。
ただし、かかる費用も比較にもならないそうだが。
「あの速度なら納得の到着か」
アリシアも当時のことを思い出したのか、ふっと笑った。
「……ウム! ユエニ、シュツジンデ、ゴザル!」
と、オルタナが飛翔して催促する。
アリシア達は互いの顔を見合わせた。
今回の件は事前に、ルカからお願いされていた。
ルカ曰く、師匠や先輩に、アリシア達を友人として紹介したいそうだ。
可愛い妹分の頼みに、アリシア達は快諾していたが、
「どうするよ? 俺ら、この格好でいいのか?」
エドワードが、自分の制服姿を差して率直に尋ねる。
正直、来訪は、一週間から二週間後だろうと考えていたため、まだこれといった準備をしていなかったのだ。
アリシアとサーシャは、少し困った顔をした。
「そうよね。相手は公爵令嬢だし、ドレスの方がいいのかしら?」
「けど、今から家に戻ってドレスに着替えていたら、到着に間に合わないよ」
オルタナの話では、港湾区に来て欲しいとのことだ。
ルカは、すでに向かっているらしい。
アリシア達は「う~ん」と唸った。
すると、
「いや、そこまで気張らなくていいだろ」
パイプ椅子に座ったまま、アッシュが言う。
「もしドレスとか貴族服が必要なら、ルカ嬢ちゃんの性格なら事前に言ってるだろ。嬢ちゃんとしては、本当にお前らを友達として紹介したいだけだと思うぞ」
そこで頭上で旋回するオルタナに目をやった。
「オルタナ。ルカ嬢ちゃんはどんな格好で迎えにいったんだ?」
「……ウム? セイフクダッタゾ!」
アッシュは二カッと笑みをアシリア達に向けた。
「なっ。お前らもその格好でいいんだよ。それに制服って立派な礼服だしな」
再び互いの顔を見合わすアシリア達。
「そ、そうですね」
サーシャが代表するように、ホッとした心情を呟いた。
「ああ、そうさ。ただ……」アッシュはユーリィに目をやる。「ユーリィだけは私服に着替えた方がいいな。余所行きの服があるだろ」
「うん。ある」
ユーリィがこくんと頷く。
が、その後に少し眉根を寄せて。
「けど、私も行っていいの? まだお仕事もあるし」
「ははっ、構わねえって」
アッシュは陽気に笑った。
「何だかんだでユーリィがルカ嬢ちゃんと一番仲がいいしな。もうじきオトも学校から帰ってくるだろうし、手は足りるよ」
言って、アッシュは立ち上がるとユーリィの傍に寄った。
「今日は友達の頼みを聞いてやりな」
くしゃり、と空色の髪を撫でる。
一方、ユーリィは子猫のように目を細めて。
「うん。分かった。けど、多分、色々話し込んだりしたら遅くなって、今日はルカの家に泊まることになるかも」
「ん。それも構わねえよ。そん時はオルタナに連絡させてくれ。けど、ルカ嬢ちゃんの家って王城になるんだよなあ……」
庶民的なアッシュにしてみれば、何とも腰が引けるスケールだ。
「あんま迷惑はかけちゃダメだぞ」
「うん。分かってる」
再び、こくんと頷くユーリィ。
「大丈夫ですよ。先生」
二人のやり取りを見ていたサーシャが言う。
「ユーリィちゃんはいい子ですし、もし王城に泊まることになったら、私とアリシアも一緒に泊まる予定ですから」
「ええ。元々その件だけはルカとも話してましたし。サーシャとユーリィちゃんからもお願いされていますから、私に任せておいてください!」
自信満々にそう告げて、慎ましい胸をドンと叩くアリシア。
その傍らでサーシャとユーリィは、誰も気付かれない微笑を見せていた。
アリシアはまだ知らない。
ルカと、ユーリィと、サーシャ。
彼女達が、今回のお泊まり会で、未だハーレム否定派であるアリシアを、完全に肯定派に落としてしまおうと目論んでいることを。
これだけは、ルカと先に決めておいたのである。
(そろそろ、アリシアさんにも覚悟してもらわないと)
(うん。そうだね)
と、視線だけで意思の疎通を行うユーリィとサーシャ。
それに気付く者も誰もいなかった。
「まあ、ともかくさ」
エドワードが言う。
「ユーリィさんが着替えたら、早く港湾区へ行こうぜ。まだ余裕はあっけど、早く行っとくに越したことはねえだろ」
「ああ、そうだな」
ロックが頷く。サーシャ達も首肯して同意した。
「じゃあ、少し待ってて」
そう告げて、ユーリィが二階に上がる。
十五分後。
降りてきたユーリィは、白いワンピースを纏っていた。
「行ってくる。アッシュ」
「おう。行ってらっしゃい」
アッシュは再び、ユーリィの頭を撫でた。
(……むう)
完全な子供扱いに不満も感じるが、頭を撫でられることはやはり嬉しい。
何とも複雑な気分だが、それも今日までだ。
今夜のお泊まり会で、まずアリシアを完全に落とす。
その次は、どっちつかずのオトハだ。
ユーリィはサーシャに目をやった。
同志は静かに頷いた。
(いよいよだね)
(うん。五人の意思統一が出来たら攻勢に出る)
総力を以て、この朴念仁を攻略するのだ。
ただ、ルカも含めた彼女達のこの戦略が、事態を大きく動かす一役を買うことになるのだが、それは後の話である。
ともあれ、そんな愛娘と愛弟子の思惑など知る由もなく。
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