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第11部
第三章 ファイティングなメイドさん2②
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――ここに、いた。
「え?」
パチクリ、とルカが目を瞬かせる。
「シャルロットさん? 仮面……アッシュさんとお知り合いなんですか?」
「はい。ルカさま」
シャルロットはにこやかに微笑んだ。
「五年ほど前に。その時にユーリィちゃんとも会っています」
「そ、そうだったんだ……」
ルカは、ただただ驚いた。
まさか紹介しようと思っていた人同士が、すでに知り合いだったとは……。
と、その時、
「シャ、シャルロットさん……どうして、ここに?」
ルカの心情をよそに、ユーリィが強張った表情でシャルロットに尋ねた。
(本当に、どうして?)
ユーリィにとって、シャルロットの存在は、ミランシャ以上に想定外だった。
この状況だけは、夢にも思っていなかった。
「あら? 言っておりませんでしたか?」
一方、シャルロットは、視線を一人の少女の方に向けた。
その少女――リーゼ=レイハートは、苦笑するように微笑む。
「私はレイハート家のメイドなのです。今回は、リーゼお嬢さまの専属メイドとしてお供させて頂いたのです」
「そ、そうだったの……」
思わず、ユーリィは呻いた。
本当に想定外である。
ミランシャの正妻戦争脱落は吉報だ。
だが、その代わりに、こんな強敵が参戦してこようとは――。
しかも、五年前のあの頃と変わらない……いや、あの頃以上の美しさを備えた上での参戦である。流石に強い焦燥と、危機感にかられるが、
(う、ううん、まだ分からない)
ユーリィは思い直した。
額面通りに言葉を受け取るのなら、シャルロットは、従者として主人に付いてきただけになる。たまたまその行き先に知人がいた。それだけの事かも知れない。
ミランシャのように、どれほど強く想っていても、遠く離れていれば人の心は移ろうものだ。まだその可能性は大いにあった。
「シャ、シャルロットさん」
ユーリィは、恐る恐る尋ねた。
「あれから随分と経つ。もう結婚とかしたの?」
「いえ。縁がなく。と言うよりも、五年前のあの場にいたユーリィちゃんなら、すでに知っているでしょう」
シャルロットは微笑を以て答えた。
「私がすでに誰のモノなのかを」
「……う、ぐ」
ユーリィは、たじろぎつつ言葉を詰まらせた。
愚問だった。そもそも真っ先にアッシュのことを聞くぐらいだ。
彼女の想いは、今も色あせていないのだろう。
(うう……)
内心で呻きつつ、ユーリィは、ちらりとミランシャの方にも目をやった。
ミランシャのスキンシップは、まだ続いていた。
黒髪の少年の顔は、すでに真っ赤だった。ただ、先程と状況が違うところもあった。
ミランシャに首を抑えられた少年の左隣には、薄緑色の髪の小さなメイドさん。右隣には楚々たる面持ちの蜂蜜色の髪の公爵令嬢が陣取り、彼の手の甲をつねっていた。
そして彼の目の前には、鋼の巨人。
信じがたいが、公爵令嬢だという巨人が両手で少年の頭を挟み込もうとした。
ミランシャのスキンシップに、三人の少女は、かなり不機嫌になっているようだった。
「ま、待ってメル!? は、離してよミラ姉さん!?」
少年のそんな声が届いてくる。
ユーリィは即座に悟った。
戦場を変えたらしいミランシャだが、新たな場所も激戦区のようだ。
その様子は、アリシアとサーシャも観察している。
彼女達のことだ。ユーリィ同様にすぐに状況を察したに違いない。すでに初恋を知るルカもまた、興味深そうに眺めていた。
「うわあ、まるで師匠みてえだ」「ああ。うらやま――い、いやゴホン」
という、エドワードとロックの呟きも聞こえてくる。
ちなみにこの場の手持ち無沙汰組としては、ガハルドに、エリーズ国の大柄な少年。三人の鎧の幼児達とオルタナがいる。
ただ、幼児達とオルタナは、ハイテンションにはしゃいでいたが。
(まあ、いいか)
ミランシャのことは、とりあえず置いておこう。
問題は、新たな参戦者のことだ。
参戦は仕方がない。結局遅かれ早かれの話だ。ユーリィのやるべき事としては、まず、彼女をハーレム肯定派に抱き込まなければならない。
と、考えていた矢先だった。
「『将を射んと欲すればまず馬を射よ』。そんな言葉がありますが、ミランシャさまは本当に積極的です。私にはとても……」
「……え?」
シャルロットもまた、ミランシャの方を見ていた。
しかし、呟いた言葉の意味が分からず、ユーリィが小首を傾げる。と、
「いえ。それではダメですね。ミランシャさまの判断は正しい。強大すぎる《彼女》に対抗するためには、私も、もっともっと積極的にならなければ」
そんなことを、さらに呟く。
ユーリィはますます首を傾げた。
すると、シャルロットが苦笑を浮かべて。
「……ユーリィちゃん」
とても真剣な顔でユーリィの両肩に手を乗せた。
「……恐らく数日中に、とても重要な話をすることになります。その際は、私とミランシャさま。ユーリィちゃんにルカさま。オトハ=タチバナさま」
シャルロットは、視線をアリシアとサーシャに向けた。
「サーシャ=フラムさま。アリシア=エイシスさまも交えて、会談を設けたいと考えております。これはミランシャさまも同意の話です」
「……え?」
ユーリィは瞳を瞬かせた。
「クライン君――あるじさまに関する、とても重要な話です。私達にとって到底看過できない事態なのです。サーシャさま達にも事前にお伝えしておいてください」
「アッシュの? 看過できない? どういうことなの?」
ユーリィは眉根を寄せた。
シャルロットの只ならぬ様子に、緊張してくる。
「今はまだご容赦ください。とても重要かつ重大な案件ですので、もう少し状況が落ち着いてから、お話しさせてください」
今はまだ来訪したばかりだ。
これから、すべきことも沢山ある。
ユーリィは腑に落ちなかったが、他ならぬシャルロットの言葉だ。
「……分かった。アリシアさん達にも伝えておく」
今は、こくんと頷き、承諾した。
「ありがとうございます。ユーリィちゃん」
シャルロットは微笑んだ。
「では、この件は後日に。それよりも――」
そして彼女は頬を染めて、聞きたかったことを尋ね始めた。
「クライン君の様子はどうですか? 体調とか崩していませんか? 今もやはり優しいのですか? それと――……」
怒濤のような質問責め。
やはり、彼女は強敵のようだ。
改めてそう思う、ユーリィであった。
「え?」
パチクリ、とルカが目を瞬かせる。
「シャルロットさん? 仮面……アッシュさんとお知り合いなんですか?」
「はい。ルカさま」
シャルロットはにこやかに微笑んだ。
「五年ほど前に。その時にユーリィちゃんとも会っています」
「そ、そうだったんだ……」
ルカは、ただただ驚いた。
まさか紹介しようと思っていた人同士が、すでに知り合いだったとは……。
と、その時、
「シャ、シャルロットさん……どうして、ここに?」
ルカの心情をよそに、ユーリィが強張った表情でシャルロットに尋ねた。
(本当に、どうして?)
ユーリィにとって、シャルロットの存在は、ミランシャ以上に想定外だった。
この状況だけは、夢にも思っていなかった。
「あら? 言っておりませんでしたか?」
一方、シャルロットは、視線を一人の少女の方に向けた。
その少女――リーゼ=レイハートは、苦笑するように微笑む。
「私はレイハート家のメイドなのです。今回は、リーゼお嬢さまの専属メイドとしてお供させて頂いたのです」
「そ、そうだったの……」
思わず、ユーリィは呻いた。
本当に想定外である。
ミランシャの正妻戦争脱落は吉報だ。
だが、その代わりに、こんな強敵が参戦してこようとは――。
しかも、五年前のあの頃と変わらない……いや、あの頃以上の美しさを備えた上での参戦である。流石に強い焦燥と、危機感にかられるが、
(う、ううん、まだ分からない)
ユーリィは思い直した。
額面通りに言葉を受け取るのなら、シャルロットは、従者として主人に付いてきただけになる。たまたまその行き先に知人がいた。それだけの事かも知れない。
ミランシャのように、どれほど強く想っていても、遠く離れていれば人の心は移ろうものだ。まだその可能性は大いにあった。
「シャ、シャルロットさん」
ユーリィは、恐る恐る尋ねた。
「あれから随分と経つ。もう結婚とかしたの?」
「いえ。縁がなく。と言うよりも、五年前のあの場にいたユーリィちゃんなら、すでに知っているでしょう」
シャルロットは微笑を以て答えた。
「私がすでに誰のモノなのかを」
「……う、ぐ」
ユーリィは、たじろぎつつ言葉を詰まらせた。
愚問だった。そもそも真っ先にアッシュのことを聞くぐらいだ。
彼女の想いは、今も色あせていないのだろう。
(うう……)
内心で呻きつつ、ユーリィは、ちらりとミランシャの方にも目をやった。
ミランシャのスキンシップは、まだ続いていた。
黒髪の少年の顔は、すでに真っ赤だった。ただ、先程と状況が違うところもあった。
ミランシャに首を抑えられた少年の左隣には、薄緑色の髪の小さなメイドさん。右隣には楚々たる面持ちの蜂蜜色の髪の公爵令嬢が陣取り、彼の手の甲をつねっていた。
そして彼の目の前には、鋼の巨人。
信じがたいが、公爵令嬢だという巨人が両手で少年の頭を挟み込もうとした。
ミランシャのスキンシップに、三人の少女は、かなり不機嫌になっているようだった。
「ま、待ってメル!? は、離してよミラ姉さん!?」
少年のそんな声が届いてくる。
ユーリィは即座に悟った。
戦場を変えたらしいミランシャだが、新たな場所も激戦区のようだ。
その様子は、アリシアとサーシャも観察している。
彼女達のことだ。ユーリィ同様にすぐに状況を察したに違いない。すでに初恋を知るルカもまた、興味深そうに眺めていた。
「うわあ、まるで師匠みてえだ」「ああ。うらやま――い、いやゴホン」
という、エドワードとロックの呟きも聞こえてくる。
ちなみにこの場の手持ち無沙汰組としては、ガハルドに、エリーズ国の大柄な少年。三人の鎧の幼児達とオルタナがいる。
ただ、幼児達とオルタナは、ハイテンションにはしゃいでいたが。
(まあ、いいか)
ミランシャのことは、とりあえず置いておこう。
問題は、新たな参戦者のことだ。
参戦は仕方がない。結局遅かれ早かれの話だ。ユーリィのやるべき事としては、まず、彼女をハーレム肯定派に抱き込まなければならない。
と、考えていた矢先だった。
「『将を射んと欲すればまず馬を射よ』。そんな言葉がありますが、ミランシャさまは本当に積極的です。私にはとても……」
「……え?」
シャルロットもまた、ミランシャの方を見ていた。
しかし、呟いた言葉の意味が分からず、ユーリィが小首を傾げる。と、
「いえ。それではダメですね。ミランシャさまの判断は正しい。強大すぎる《彼女》に対抗するためには、私も、もっともっと積極的にならなければ」
そんなことを、さらに呟く。
ユーリィはますます首を傾げた。
すると、シャルロットが苦笑を浮かべて。
「……ユーリィちゃん」
とても真剣な顔でユーリィの両肩に手を乗せた。
「……恐らく数日中に、とても重要な話をすることになります。その際は、私とミランシャさま。ユーリィちゃんにルカさま。オトハ=タチバナさま」
シャルロットは、視線をアリシアとサーシャに向けた。
「サーシャ=フラムさま。アリシア=エイシスさまも交えて、会談を設けたいと考えております。これはミランシャさまも同意の話です」
「……え?」
ユーリィは瞳を瞬かせた。
「クライン君――あるじさまに関する、とても重要な話です。私達にとって到底看過できない事態なのです。サーシャさま達にも事前にお伝えしておいてください」
「アッシュの? 看過できない? どういうことなの?」
ユーリィは眉根を寄せた。
シャルロットの只ならぬ様子に、緊張してくる。
「今はまだご容赦ください。とても重要かつ重大な案件ですので、もう少し状況が落ち着いてから、お話しさせてください」
今はまだ来訪したばかりだ。
これから、すべきことも沢山ある。
ユーリィは腑に落ちなかったが、他ならぬシャルロットの言葉だ。
「……分かった。アリシアさん達にも伝えておく」
今は、こくんと頷き、承諾した。
「ありがとうございます。ユーリィちゃん」
シャルロットは微笑んだ。
「では、この件は後日に。それよりも――」
そして彼女は頬を染めて、聞きたかったことを尋ね始めた。
「クライン君の様子はどうですか? 体調とか崩していませんか? 今もやはり優しいのですか? それと――……」
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やはり、彼女は強敵のようだ。
改めてそう思う、ユーリィであった。
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