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第12部
第四章 訪問者③
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――同時刻。王城からの帰り道。
ユーリィは、クライン工房近くに向かう停留所へと歩いていた。
隣には、紫色の小さな騎士。
腰に磁石付きの大きなスパナを装着したゴーレムが付き添ってくれている。
彼はユーリィの護衛だった。
ユーリィは《星神》だ。良からぬ輩に狙われることも多い。
普段はアッシュ、またはオトハが気遣って、どこかに出かける時は付き添ってくれるのだが、それでも付きっ切りというのは難しい。
それを懸念して、メルティアがゴーレムの一機を譲ってくれたのだ。
「……ウム! ヨロシク! ユーリィ!」
片手を上げて、そう告げるゴーレムの名前は九号。
メルティアが、故郷から転移陣で召喚してくれた機体である。
ある意味、高価すぎる機体だ。
というより、その価値はもはや計り知れない。
それでもメルティアは友情の証に、九号を贈ってくれた。
(ありがとう。メルティア)
本当に、彼女には感謝していた。
きっと彼女とは、生涯に渡って仲の良い義姉妹になれることだろう。
そんなことを考えながら進んでいた時だった。停留所の長椅子に、一人の少年が座っていることに気づいたのだ。
エリーズ国騎士学校の制服を着た少年だ。
(……コウタ君?)
未来の弟がそこにいた。何やら項垂れているように見える。
彼の姿を見ても、もう心はざわつかなかった。
これもメルティアのおかげである。
(うん。私はもう大丈夫)
ユーリィは頷く。そして「……コウタ君?」と声を掛ける。
「……え?」
コウタは顔を上げて、こちらに振り向いた。
「……どうしたの?」
ユーリィは再度、尋ねる。と、コウタは少し緊張した面持ちを見せて。
「え、えっと……」
と、呟く。そこから少し間が空いた。
今までのユーリィの態度で、彼もまた緊張しているのだろう。
そう思っていると、
「あの、そのゴーレムは?」
と、彼が尋ねてきた。ユーリィは九号を見やり、
「メルティアがくれたの」
「……え?」
コウタは目を丸くする。
ユーリィは少し苦笑しつつ説明した。
「九号さんだって。アイリちゃん同様に、私にも護衛がいた方がいいって。魔窟館? そういうところから転移陣で一機召喚してくれたの。アッシュも忙しいから、いつも付きっ切りなのもしんどいだろうし、だから貰った」
「メルがゴーレムをあげたの!?」
コウタが驚きの声を上げた。
対し、九号は、ゴンと自分の胸部装甲を叩いて告げる。
「……オレ。キョウカラ、ユーリィノ、キシ!」
「そ、そうなんだ……」
どうやら、コウタは相当驚いているようだ。
メルティアがゴーレムを譲渡するのは、とても珍しいことなのだろう。
(本当にありがとう。メルティア)
心の中で友達に感謝する。
それから、改めてコウタに尋ねてみた。
「ところで、どうかしたの?」
「う、うん」と頷くコウタ。それから少し迷いつつ、
「その、人を探しているんだ」
「……人を?」
コウタは「うん」と再び首肯した。
「この街で再会した子なんだ。とても綺麗な子なんだけど、まるで子猫みたいに自由すぎる性格の子でね……」
「ははっ、子猫ですか。確かにそうですね。彼女は一度見失うと大変でしょう?」
(……え?)
不意に。
だが、とても自然に割り込んできたその声にユーリィは困惑する。
しかし、コウタはまだ気づいてないようで。
「はい。全然見つからなくて。ボクも困っているんです」
その男と会話を続けている。
「ああ、なるほど。だからクラインさんの所に行くのですね。姫はクラインさんに挨拶がしたいと、ずっとおっしゃってましたから」
「そうですか。それはボクにも言っていました。けど、そのことでも本当に困っているんです。リノのこと、兄さんになんて説明すれば……って、え?」
そこに至って、コウタはようやくハッとする。
ユーリィの方は、唖然としてコウタの隣に座る人物を凝視していた。
(ど、どうして、この男が?)
見覚えのある男だ。
ユーリィにとっては最も恐れる男だった。
いつも、いつも自然に傍へと近寄ってくる人物だ。
まるで不意に訪れる天災のように。
「ボ、ボルド=グレッグ……」
ユーリィは、茫然とその名を呟いた。
今更気付いたが、ボルドの隣にはカテリーナ=ハリスの姿まである。
(……ひッ)
ユーリィは、思わず悲鳴を上げそうになった。
しかし、その声は唇から漏れることはなかった。
おもむろにコウタが動いたのだ。
すっと、片手でユーリィを下がらせる。
次いで、ボルドの前に立ち、腰の短剣の柄に手を添えた。
途端、少年の体から一気に圧力が放たれる。
吹き荒れるような覇気に、ボルドが「ほほう」と小さく呟いた。
ユーリィも目を丸くする。
素人のユーリィでも感じ取れるほどの威圧。
改めて、目の前の少年がアッシュの弟であると実感する。
一方、コウタは――。
「……あなたは」
ポツリ、と呟く。彼の表情はとても険しい。
「誰だ? いや、ボルド=グレッグだって? 聞いたことがある。その名前は」
コウタが、さらに表情を険しくした時。
「……コウタ! キヲツケロ! データニ、アル! ソノハゲ、三十三ゴウヲ、ツレテッタヤツダ!」
九号が緊迫した様子でそう告げた。
続けて、ユーリィを守るために、鋼の騎士も腰のスパナを手に取り身構えた。
「……そうか。じゃあ、やっぱりこの男が」
温厚な少年は、敵意を乗せてボルドを睨みつけた。
「《地妖星》ボルド=グレッグなのか……」
その呟きに、ユーリィがビクッと肩を震わせた。
どうやら、コウタも、ボルドのことを知っているようだ。
緊迫する空気。
すると、ボルドがゆっくりと立ち上がった。
「お久しぶりです。エマリアさん。そして初めまして。コウタ=ヒラサカ君」
今までと変わらない。
親しげな様子で、ボルドは名乗った。
「私の名はボルド=グレッグ。ただのしょぼくれた休暇中のおっさんです」
ユーリィは、クライン工房近くに向かう停留所へと歩いていた。
隣には、紫色の小さな騎士。
腰に磁石付きの大きなスパナを装着したゴーレムが付き添ってくれている。
彼はユーリィの護衛だった。
ユーリィは《星神》だ。良からぬ輩に狙われることも多い。
普段はアッシュ、またはオトハが気遣って、どこかに出かける時は付き添ってくれるのだが、それでも付きっ切りというのは難しい。
それを懸念して、メルティアがゴーレムの一機を譲ってくれたのだ。
「……ウム! ヨロシク! ユーリィ!」
片手を上げて、そう告げるゴーレムの名前は九号。
メルティアが、故郷から転移陣で召喚してくれた機体である。
ある意味、高価すぎる機体だ。
というより、その価値はもはや計り知れない。
それでもメルティアは友情の証に、九号を贈ってくれた。
(ありがとう。メルティア)
本当に、彼女には感謝していた。
きっと彼女とは、生涯に渡って仲の良い義姉妹になれることだろう。
そんなことを考えながら進んでいた時だった。停留所の長椅子に、一人の少年が座っていることに気づいたのだ。
エリーズ国騎士学校の制服を着た少年だ。
(……コウタ君?)
未来の弟がそこにいた。何やら項垂れているように見える。
彼の姿を見ても、もう心はざわつかなかった。
これもメルティアのおかげである。
(うん。私はもう大丈夫)
ユーリィは頷く。そして「……コウタ君?」と声を掛ける。
「……え?」
コウタは顔を上げて、こちらに振り向いた。
「……どうしたの?」
ユーリィは再度、尋ねる。と、コウタは少し緊張した面持ちを見せて。
「え、えっと……」
と、呟く。そこから少し間が空いた。
今までのユーリィの態度で、彼もまた緊張しているのだろう。
そう思っていると、
「あの、そのゴーレムは?」
と、彼が尋ねてきた。ユーリィは九号を見やり、
「メルティアがくれたの」
「……え?」
コウタは目を丸くする。
ユーリィは少し苦笑しつつ説明した。
「九号さんだって。アイリちゃん同様に、私にも護衛がいた方がいいって。魔窟館? そういうところから転移陣で一機召喚してくれたの。アッシュも忙しいから、いつも付きっ切りなのもしんどいだろうし、だから貰った」
「メルがゴーレムをあげたの!?」
コウタが驚きの声を上げた。
対し、九号は、ゴンと自分の胸部装甲を叩いて告げる。
「……オレ。キョウカラ、ユーリィノ、キシ!」
「そ、そうなんだ……」
どうやら、コウタは相当驚いているようだ。
メルティアがゴーレムを譲渡するのは、とても珍しいことなのだろう。
(本当にありがとう。メルティア)
心の中で友達に感謝する。
それから、改めてコウタに尋ねてみた。
「ところで、どうかしたの?」
「う、うん」と頷くコウタ。それから少し迷いつつ、
「その、人を探しているんだ」
「……人を?」
コウタは「うん」と再び首肯した。
「この街で再会した子なんだ。とても綺麗な子なんだけど、まるで子猫みたいに自由すぎる性格の子でね……」
「ははっ、子猫ですか。確かにそうですね。彼女は一度見失うと大変でしょう?」
(……え?)
不意に。
だが、とても自然に割り込んできたその声にユーリィは困惑する。
しかし、コウタはまだ気づいてないようで。
「はい。全然見つからなくて。ボクも困っているんです」
その男と会話を続けている。
「ああ、なるほど。だからクラインさんの所に行くのですね。姫はクラインさんに挨拶がしたいと、ずっとおっしゃってましたから」
「そうですか。それはボクにも言っていました。けど、そのことでも本当に困っているんです。リノのこと、兄さんになんて説明すれば……って、え?」
そこに至って、コウタはようやくハッとする。
ユーリィの方は、唖然としてコウタの隣に座る人物を凝視していた。
(ど、どうして、この男が?)
見覚えのある男だ。
ユーリィにとっては最も恐れる男だった。
いつも、いつも自然に傍へと近寄ってくる人物だ。
まるで不意に訪れる天災のように。
「ボ、ボルド=グレッグ……」
ユーリィは、茫然とその名を呟いた。
今更気付いたが、ボルドの隣にはカテリーナ=ハリスの姿まである。
(……ひッ)
ユーリィは、思わず悲鳴を上げそうになった。
しかし、その声は唇から漏れることはなかった。
おもむろにコウタが動いたのだ。
すっと、片手でユーリィを下がらせる。
次いで、ボルドの前に立ち、腰の短剣の柄に手を添えた。
途端、少年の体から一気に圧力が放たれる。
吹き荒れるような覇気に、ボルドが「ほほう」と小さく呟いた。
ユーリィも目を丸くする。
素人のユーリィでも感じ取れるほどの威圧。
改めて、目の前の少年がアッシュの弟であると実感する。
一方、コウタは――。
「……あなたは」
ポツリ、と呟く。彼の表情はとても険しい。
「誰だ? いや、ボルド=グレッグだって? 聞いたことがある。その名前は」
コウタが、さらに表情を険しくした時。
「……コウタ! キヲツケロ! データニ、アル! ソノハゲ、三十三ゴウヲ、ツレテッタヤツダ!」
九号が緊迫した様子でそう告げた。
続けて、ユーリィを守るために、鋼の騎士も腰のスパナを手に取り身構えた。
「……そうか。じゃあ、やっぱりこの男が」
温厚な少年は、敵意を乗せてボルドを睨みつけた。
「《地妖星》ボルド=グレッグなのか……」
その呟きに、ユーリィがビクッと肩を震わせた。
どうやら、コウタも、ボルドのことを知っているようだ。
緊迫する空気。
すると、ボルドがゆっくりと立ち上がった。
「お久しぶりです。エマリアさん。そして初めまして。コウタ=ヒラサカ君」
今までと変わらない。
親しげな様子で、ボルドは名乗った。
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