クライン工房へようこそ!【第15部まで公開】

雨宮ソウスケ

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第13部

第二章 レディース・サミット2①

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 その日、少年は落ち着きがなかった。
 部屋の中を行ったり来たり。ずっと、それの繰り返しだ。
 時折、自分の黒髪をかいたりしている。
 年の頃は十六歳ほど。
 黒い髪と黒い瞳を持ち、腰に白いケープを纏う、エリーズ国騎士学校の制服を着た彼の名はコウタ=ヒラサカ。アッシュの実弟である。

「コウタ。少し落ち着けよ」

 と、告げるのは、コウタと同じ制服を着た少年だ。
 短く刈った濃い緑色の髪が特徴的な、大柄な少年である。
 ――ジェイク=オルバン。
 コウタの同級生であり、親友だった。

「けど、ジェイク」

 コウタは、泣き出しそうな顔で椅子に座るジェイクを見つめた。

「ミラ姉さんがセッティングした会議。絶対に議題はあのことだよ」

「……まあ、そうだろうな」

 反対側から椅子に座るジェイクは、ギシリと背もたれを鳴らして渋面を浮かべた。

「ルカ嬢ちゃんが呼ばれてんのに、アイリ嬢ちゃんやお嬢、メル嬢は呼ばれねえ。こりゃあ間違いなく議題は、お前の兄ちゃんと、サクヤさんに関することだよな」

 ジェイクは縁あって、コウタの義姉であるサクヤと面識があった。
 いや、ジェイクだけではない。
 メルティアも、リーゼも、アイリも。
 そして、ミランシャとシャルロットも面識があった。
 サクヤは大胆にも、ハウル公爵家に訪問したことがあるのだ。
 ジェイク達が、彼女がコウタの義姉であると知ったのは、その時だった。

「う、うん……」

 コウタは不安そうに頷いた。

「サクヤ姉さんのことは、もうボクから兄さんに伝えているんだ。だから後は……」

「ユーリィ嬢ちゃん達に伝えるだけか……」

 ジェイクは嘆息した。

「死んだはずの恋人の帰還。ユーリィ嬢ちゃん達にはキツイ話だろうな」

「いや。ユーリィさんだけはもう知っているよ。偶然なんだけど、サクヤ姉さんとはもう会っちゃってるし」

 と、コウタが告げる。ジェイクは「そうなのか?」と目を丸くした。
 それは完全に初耳だった。

「《地妖星》と出くわした時にね。実はあの時、サクヤ姉さんが助けてくれたんだ。まあ、その後、本当に色々あって話す機会がなかったけど」

「そうだったのか……」

 ジェイクは、あごに手をやった。

「じゃあ、意外と落ち着いてんな。ユーリィ嬢ちゃんもお前の兄ちゃんに対してガチだと思ってたが、実は恋愛感情とかまでには行ってねえってことか?」

 だったら、ユーリィの落ち着きぶりも分かる。
 しかし、コウタはかぶりを振った。

「ううん。メルは、ユーリィさんは兄さんのことが本気で好きだって言ってたよ」

「う~ん、そっかぁ」

 ジェイクは首を傾げた。

「ユーリィ嬢ちゃんと仲が良いメル嬢が言うんならそうなんだろうな。けど、案外他のメンバーも動揺は少ねえってことなのか?」

「それはどうかなぁ」

 コウタは眉根を寄せた。

「ユーリィさんもサクヤ姉さんに会った直後はかなり動揺していたよ。凄く気落ちもしていたみたいだし。今は落ち着いて見えるけど」

「そっか……」

 ジェイクは、ボリボリと頭をかいた。

「まあ、野郎二人が考えても仕方がねえことだな。それよりコウタ」

 ジェイクは立ち上がり、コウタに目をやった。

「ここに居ても仕方がねえだろ。そろそろ行こうぜ」

「あ、うん」

 コウタは頷いた。
 今日は男達だけ――コウタとジェイク。エドワードとロック。そしてアティス王国騎士学校の数人の男子生徒だけで、ロックの家に遊びに行く約束をしているのである。
 すでに、エドワード達は学校から帰るついでに向かっているはずだ。
 コウタ達も、そろそろ出かけなければならない。

「心配しても意味がねえだろ。詳しい話は後でシャルロットさんにでも聞こうぜ」

「う~ん、そうだね……」

 コウタは眉根を寄せていたが、結局、そう納得した。
 そうしてジェイクと一緒に部屋を出るのだが、数歩進んだところでふと立ち止まり、ミランシャ達が集まっている会議室の方向を見やる。
 そして、

「絶対に荒れるような気がするなぁ、この会議」

 自身にも身に覚えがあるのか。
 そんなことを呟くコウタだった。
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