クライン工房へようこそ!【第15部まで公開】

雨宮ソウスケ

文字の大きさ
422 / 499
第14部

第二章 レディース・サミット3①

しおりを挟む
 かつて、少年と少女だった二人が再会を果たしている頃。
 王城ラスセーヌの、第三会議室にて。
 一つの大きな戦いが、いま幕を開けようとしていた。

 完全に静まり返った会議室。
 長く大きいテーブル。その上座には、一人の女性が座っていた。

 歳の頃は十六歳ほどか。
 黒い瞳に、長く艶やかな黒い髪。
 女神さえ彷彿させる圧倒的な美貌に、神懸かっているぐらいのプロポーション。身に纏う服は、背中や、半袖の縁に炎の華の紋が刺繍された白いタイトワンピースだ。足には黒いストッキングを纏い、茶色の長いブーツを身につけていた。

 ――サクヤ=コノハナ。

 の恋人であり、婚約者である女性だ。
 それは過去形ではない。彼との再会でそう確信している。
 サクヤは自分の元に置かれた紅茶を一瞥してから、周囲を見渡した。

 ここには今、サクヤを入れて八人の女性がいた。
 上座にサクヤ。右側に四人。左側に三人いる。

 サクヤは右側から、視線を向けた。
 一番近くにいるのは、最も幼い少女だった。
 見た目は十三歳ぐらいか。しかし、情報ではもうじき十五歳になるはず。

 一言でいえば、美少女だった。
 少しウェーブのかかった空色の髪に、神秘的な翡翠色の瞳。
 表情は少し不愛想だが、顔立ちはまるで人形のように整っている。
 肌の色はサクヤよりも白く、実にきめ細やかだ。まるで処女雪のようである。スタイルこそまだ幼いが、身に纏った白いつなぎの上から、女性的な特徴が見られる。いつまでも子供ではない。確実に成長しているということか。

 ――ユーリィ=エマリア。

 彼の愛娘。サクヤにとっては『片割れ』とも呼べる少女。
 彼女は、神妙な顔でサクヤを見つめていた。
 サクヤは、続けて、隣の少女に目をやった。

 歳の頃は十七ほどか。
 琥珀色の瞳で、じっとサクヤを見つめている少女。
 ユーリィにも劣らない美貌に、肩辺りまで伸ばした銀色の髪がとても美しい少女だ。
 机の上には銀色のヘルム。橙色のこの国の騎士学校の制服の上にブレストプレートを着装している。恐らくスタイルにおいては、サクヤにも劣らない。

 ――サーシャ=フラム。

 彼の愛弟子と聞く。
 実は、サクヤは七人の中でも彼女を、一、二を争うぐらいに警戒していた。
 何故なら、彼女は、かなり彼好みの女性だからだ。
 スタイルも。性格面においてもだ。
 サクヤは小さく呼気を吐いてから、次に視線を移す。

 サーシャの隣にいるのは、同じ制服を着た髪の長い少女だった。
 年齢はサーシャと同じだろう。

 切れ長の蒼い瞳と、絹糸のような長い栗色の髪が印象的な少女だ。
 スタイルこそスレンダーでサーシャと正反対だが、美貌においては負けてはいない。
 おっとりして、まだ幼さのあるサーシャに比べると、大人びた美しさだ。
 勝気そうではあるが、実のところ、彼を支えるタイプと見た。
 今はサクヤの方を見極めるような眼差しを向けていた。
 この少女も侮れない。

 アシリア=エイシス。その名を胸に刻む。

 そして右側、最後の一人。
 年齢は十五歳であると事前に調べてある。
 淡い栗色のショートヘア。長い前髪が印象的だが、それは一種のヴェールだ。その奥に隠された、澄んだ湖のような水色の瞳を際立てるための薄布だ。
 サーシャ、アリシアと同じ制服を着ている。プロポーションはサーシャより少し劣るが、年齢から鑑みると実に見事なものだ。美貌もまたサーシャたちに劣らないだろう。

 ――ルカ=アティス。

 驚くべきことに、彼女はこの国の王女さまだった。
 彼女はおどおどとしていたが、揺るぎない意志の光を宿した瞳をしていた。
 ――いや、この場にいる時点で、彼女の覚悟は疑うまでもないか。
 一体、どこまで幅広く手を出しているのか。
 サクヤは、彼を殴りたくなってきた。
 何はともあれ、サクヤは視線を左側に移した。
 ルカの前。奥から順に目をやっていく。

「………」

 サクヤの視線に気付いたのか、無言で彼女が睨みつけてくる。
 藍色の髪に、アリシアよりも深い蒼い瞳。
 この中では最年長。二十五、六歳ぐらいか。
 どこか、冷たさを感じさせる美貌の持ち主だった。
 スタイルも申し分ない。服の上からは、大きな胸が存在をアピールしていた。
 ただ、その服なのだが、彼女は会うたびに同じ服を着ていた。

 メイド服である。
 彼女は、エリーズ国のレイハート公爵家に務めるメイドでもあるそうだ。

 ――シャルロット=スコラ。

 彼の専属にして専任メイドと公言している女性だった。

(トウヤ。あなたは元農民でしょう? どうしてメイドさんが付いているのよ)

 思わず、内心で彼にツッコミを入れるサクヤ。
 何にせよ、残り二人。恐らくこのメンバーの中のツートップ。
 シャルロットの隣に、視線を移す。
 まず目に映ったのは、炎のような真紅の髪。長さは肩にかかるほど。癖の強いウェーブによって、より強く炎の印象を抱かせる髪だ。

 年齢は二十二歳。彼の一つ下であり、サクヤの二個下だ。
 しかし、彼女は年上を敬う様子もなく、髪と同じ真紅色の瞳でサクヤを睨みつけていた。
 スレンダーな肢体もあって、まるでネコにでも警戒されているような気になる。
 そして、ここまで来てしまうと、もう当然と言うべきなのか、他のメンバーとタイプこそ違うが、やはり、彼女も群を抜いた美貌を持っている。

 グレイシア皇国の黒い騎士服を纏う彼女の名は、ミランシャ=ハウル。

 ハウル公爵家のご令嬢だ。この中では、ルカに次いでの良家のお嬢さまである。
 彼女は両腕を組んで、サクヤを見据え続ける。

(やはり警戒はされているみたいね。仕方がないか)

 内心で嘆息するサクヤ。
 そして――。

「………」

 サクヤは、最後の一人に目をやった。
 年齢は二十二歳。十代後半にも見えるが、ミランシャと同い年であるらしい。
 髪型はショートヘア。色は紫がかった黒に近い紺色――紫紺色だ。瞳の色も同色。ただ、彼女は右目のみ刺繍を施した白い眼帯スカーフで隠していた。別に怪我をしている訳ではなく、彼女の右目は生まれながら失明しているらしい。その代わりに、その右目は『銀嶺の瞳』と呼ばれる不思議な力も宿しているらしいが。

 腰には小太刀。全身には黒い革服を纏っている。彼女の本業は傭兵だ。その肩書に相応しく、隙のない眼差しでサクヤを見据えていた。

 だが、サクヤが一番気になるのは、彼女の美貌だった。
 まずはプロポーション。本当に傭兵なのかと思うほどに華奢だ。だというのに、大きな胸を筆頭に、引き締まる部位は引き締まり、全身にはしなやかさを持っている。サクヤやサーシャにも劣らないスタイルを持っているのだ。
 しかも、実に色っぽい。あれは『女』でなければ出せない艶やかさだ。

(……やっぱり)

 まだ彼から直接伝えられた訳ではないが、女の直感が告げていた。

 ――オトハ=タチバナ。

 明らかに、彼女だけは違う・・
 恐らく彼女だけは、すでに自分と同じ場所ステージに立っている。
 ――身も心も、彼に愛された者だ。

(オトハさんが一番手強いわ。まあ、他の人もだけど)

 サクヤは、小さく嘆息した。
 本当に、凄まじいメンバーばかり揃っている。
 自分が目を離した内に、ここまで激化するものなのだろうか……。
 まあ、村にいた頃から、こういった片鱗は充分にあったが。
 だが、

(うん。落ち込んでも仕方がない! 私はもう覚悟を決めたのだから!)

 サクヤは、真っ直ぐ前を見据えた。
 そしてこの部屋に来て、初めて口を開いた。

「皆さん。初めまして」

 にっこりと笑う。

「私の名はサクヤ=コノハナです。アッシュ=クライン――いえ。トウヤ=ヒラサカの婚約者です。よろしくお願いしますね」

 とりあえず、強烈な先制パンチを食らわせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~

葉月奈津・男
恋愛
「あなたとの婚約、破棄させていただきます!」 王立学院の舞踏会。 全校生徒が見守る中、商家の三男カロスタークは、貴族令嬢セザールから一方的に婚約破棄を突きつけられる。 努力も誠意も、すべて「退屈だった」の一言で切り捨てられ、彼女は王子様気取りの子爵家の三男と新たな婚約を宣言する。 だが、カロスタークは折れなかった。 「商人の子せがれにだって、意地はあるんだ!」 怒りと屈辱を胸に、彼は商人としての才覚を武器に、静かなる反撃を開始する。 舞踏会の翌日、元婚約者の実家に突如として訪れる債権者たち。 差し押さえ、債権買収、そして“後ろ盾”の意味を思い知らせる逆襲劇が幕を開ける! これは、貴族社会の常識を覆す、ひとりの青年の成り上がりの物語。 誇りを踏みにじられた男が、金と知恵で世界を変える――!

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

処理中です...