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第8部
第三章 幼馴染との再会④
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そうしてアティス王のご厚意のもと。
アリシア達、『若き英雄』と呼ばれる四人の騎士候補生と、ルカ=アティス王女は彼女の私室に訪れることになった。
アティス王国の王城ラスセーヌ。その最上階にあるルカの私室はとても広く、天蓋付きのキングサイズのベッドに広いバルコニー。壁際にある見事な絵画などが目に入り、いかにも王女さまの部屋といった趣だった。
あまりにもイメージ通りの内装。唯一似つかわしくない作業机や工具箱もあるのだが、エドワードとロックの視界には入らず、少年達は完全に固まっていた。
「では王女さま。皆さま方も。何か御用があればいつでもお声をおかけ下さい」
と、ここまで先頭に立ち案内していたメイドがそう告げてドアを静かに閉めた。
部屋に残されたのはアリシア達四人と、ルカ本人だけだ。
ルカは長い前髪を支えていたティアラをカチャリと外すと、
「あ、あの……」
お客さまをもてなさなければと思い、おずおずしながらも口を開いた。
「改めてお久しぶり、だね。アリシアお姉ちゃん。サーシャお姉ちゃん」
「……うん! 久しぶりだね! ルカ!」
満面の笑みを見せてそう答えたのはサーシャだった。
そして目一杯に力を込めて妹分をギュッと抱きしめる。
「元気だった? 本当に大きくなったね!」
「う、ん。サーシャお姉ちゃんも、元気そうで良かった……」
と、サーシャの豊かな胸に顔を半分埋めつつ、ルカがはにかんで答える。
「け、けど、まさか、サーシャお姉ちゃんが人前で、ヘルムを取るようになって、いたなんて、知らなかった」
「あはは、それは色々あったの」
ゆっくりとルカを離し、サーシャが苦笑のような笑みを零す。
サーシャがヘルムを人前で取って銀の髪を見せるようになった経緯は、語るには長すぎる内容だった。
「その事は今度お話しするね。って、それよりいつまで固まっているのみんな?」
言って、サーシャはアリシア達に目をやった。
するとエドワードとロックはドアの前で固まったままだったが、
「……うん。そうよね」
アリシアだけは小さく嘆息し、何かをふっ切ったような表情でルカの傍に寄る。
「久しぶりね。ルカ。元気にしてた?」
そして、くしゃくしゃと可愛い妹分の頭を撫で始めた。
「う、ん。アリシアお姉ちゃん。私は、元気だったよ」
そう答えて、ルカは前髪で覆われた水色の瞳を細める。
その様子にアリシアは苦笑を浮かべた。
「まあ、元気そう……って言うか、健やかなのは一目瞭然だけど……」
と、未だ納得いかないように呟いてからエドワード達の方に視線を向ける。
「オニキス。ハルト。あなた達はいつまで石像になっている気なのよ。ちゃんとルカに挨拶をしなさいよ」
そう告げられ、エドワードとロックはぎこちない様子で互いの顔を見据え、
「お、おう」「そ、そうだな……」
と呟く。硬直していても何も始まらないのは事実だ。
ここはまず自己紹介からだろう。
「は、初めまして。エドワード=オニキスです」
「お初にお目にかかります。王女殿下。ロック=ハルトと申します」
どこか軽いエドワードの挨拶と、対照的に重苦しいロックの挨拶。
二人の性格をよく現しており、サーシャとアリシアは苦笑を浮かべた。
それに対し、ルカは二人の少年の前に進むと、
「は、初めまして。オニキスさん。ハルトさん」
ティアラを持った両手を前にし、ぺこりと頭を下げる。
「ルカ=アティス、です。宜しくお願いします」
「あ、ウ、ウス。宜しくっす」
「……こちらこそ宜しくお願いします」
と、少年達は返事の仕方こそまるで違ったが、緊張した面持ちで答えた。
一向に緊張が解けていないのは丸分かりの様相だ。
そんな二人の様子に、少女達は呆れた果てたような表情を見せた。
「いやいや、あなた達。ちょっと緊張しすぎでしょう」
「うん。フェリシア皇女さま相手でも、そこまで緊張してなかったのにね」
と、率直な感想を言う。
それに対し、エドワードがアリシア達を一瞥して呟く。
「いやけどよ、やっぱ他国と自国の姫さんじゃあちょいと違うんだよ」
と、良くも悪くもテンションが高い彼にしては珍しく覇気のない声だ。
そして目の前のドレス姿のルカに、ちらちらと視線を送り、
「それにイメージが違う……って言うか、ある意味イメージ通りすぎんだよ。つうかエイシス。お前が言ってたことって完全にデタラメじゃねえかよ」
「あ、ああ、そうだな。それに関しては俺も同意見だな」
と、ロックも頬を強張らせて告げる。
二人とも、もはやルカを直視できないほど緊張していた。
同級生達の何とも情けない有り様に、アリシアとサーシャは互いの顔を見合わせてクスクスと笑う。と、その時だった。
「……ウム。ナサケナイ! ウロタエルナ、コゾウドモ!」
突如、バサリと銀色の小鳥が現れ、ルカの細い肩に止まったのだ。
アリシア達は一瞬、キョトンとしていたが、
「はあ? え、うわ、何だこりゃあ!」
エドワードが目を剥いた。
「え? お、玩具か? つうかしゃべったぞこいつ!」
「ちょ、な、何よこれ!」
アリシアも目を見開いて銀色の小鳥を捕えようとした。
「みんなも手伝って!」と、仲間に声をかける。
もしこの小鳥が魔獣の一種ならば放置など出来ない。
肩に乗せているルカの身が危険だった。
「あ、う、うん」「ああ、分かった!」
と、サーシャとロックが動揺しつつもアリシアに続こうとするが、
「だ、大丈夫だよ。アリシアお姉ちゃん」
しかし、当のルカ本人は慌てた様子もなくそう告げる。
それから指先を鋼の小鳥の下あごに置き、
「この子の名前はオルタナ。私が造った――自律型鎧機兵、なの」
「「「………え?」」」
その台詞に一瞬、部屋の中に静寂が訪れた。
思わず全員が硬直する――が、数瞬後、
「ええ!? が、鎧機兵!? ルカ、あなた、こんなの造れるようになったの!?」
真っ先に硬直から回復したのは、アリシアだった。
それから喉を鳴らしつつ、恐る恐る尋ねる。
「機械いじりが好きなのは知ってたけど……自律型って操手がいないってことよね? しかもこのサイズって……」
アリシアはまじまじとオルタナを凝視した。ロックやエドワードは目を見開くだけで言葉もなく、サーシャもまだ少し動揺していた。
すると、ルカはこくんと頷き、
「う、ん。人はいないよ」
そして愛しげな仕種でオルタナのあごを撫でる。
「最初は何度も失敗したの。微量な恒力の増幅とか、凄く難しくて。けど、お師匠さまの所に、何度も習いに行って……」
「……え?」サーシャが不思議そうに目を瞬かせる。「お師匠さまって?」
それは初めて聞く呼び名だった。ルカとは留学中も定期的に手紙でやり取りしていたのだが、そういった単語は一度も使われたことはない。
「ねえルカ。お師匠さまって誰の事?」
それはアリシアも同様であり、ルカに尋ねた。
すると、純白のドレスの王女は嬉しげに笑った。
「う、ん。お師匠さまはね。私に自律型鎧機兵の、基礎を教えてくれた人、なの」
「じ、自律型鎧機兵の基礎、だと……」
と、ロックが唖然とした様子で呟く。そんな技術など初めて聞いた。
「異国ではそんな技術まで確立しているのか……」
あまりの技術の差に、未来の騎士として驚愕する。
が、ルカはあっけらかんとした様子でかぶりを振った。
「う、ううん。これはお師匠さまの、独学の技術で、誰も知らないよ」
「は? ど、独学って? え、いや、独学でこんなの造れるもんなのか?」
と、エドワードが首を動かすオルタナを凝視しながら呟く。
どうにも胡散臭い話に、困惑した様子の騎士候補生達は互いの顔を見合わせた。
一体その『お師匠さま』と言う人物は何者なのだろうか。
「あ、あのねルカ」
そしてしばし沈黙してから、意を決してアリシアが尋ねてみる。
「あなたの、その、お師匠さまって人は、どんな人なの?」
「えっ? お師匠さまのこと?」
すると、ルカは一瞬キョトンとしたが、すぐに表情を輝かせて――。
「えっとね。お師匠さまは私の一つ上の先輩で、凄く綺麗な女の人なの」
と、淡い栗色の髪の少女はどこか自慢げに言う。
オルタナも「……ウム! キレイダゾ!」とコクコク首を動かし同意していた。
「へえ……女の人なんだ」と、アリシアの隣のサーシャが興味津々に呟く。
すると尊敬する師のことに興味を持たれて少し嬉しくなってきたのか、寡黙なルカが珍しくさらに饒舌になった。
「凄く優しくて、色んな技術をいつも丁寧に、教えてくれるの。それでね」
はにかみながら少女は告げる。
「普段は、すっごく大きな、全身鎧を着てるの」
「「「………はい?」」」
その場に居るルカとオルタナ以外の人間の声が綺麗に唱和する。
「全高が、大体二セージルぐらいあってね。いつもズシンズシンって足音を立てて、歩いているの。お師匠さまの、姿を見るとね。クラスメート達はいつも『ひいっ』とか『うおお』とか歓声を上げるの。大人気なの」
「え、いや、それは人気があるってことなの……?」
と、アリシアが頬を強張らせて呟く。
どうも話をまとめるとルカの師匠とは発明家の異国の学生であり、同時に二セージル級の巨漢の女性でもあるらしい。その上、ルカの先輩と言うことは年齢的にはアリシア達とほぼ同じ世代なのだろう。明らかに異様な人物像だ。
とは言え、どちらかと言えば人見知りの強いルカがここまで懐いているのだから悪い人間ではないのだろう。まあ、学校で全身鎧を着る意図は分からないが。
「……世の中、とんでもない人物がいるものなのね」
と、アリシアがありきたりな台詞を零す。
「なんつうか、フラムの末期版って言うか、綺麗だけど筋肉質っていう典型的な女傭兵みてえな奴だな」
と、エドワードも率直な気持ちを呟いた。
何にせよ、凄まじく個性的な人物のようだ。
すると、その時、
「……ルカ! ルカ!」
不意にオルタナが羽ばたき、部屋の天井近くを旋回し始めた。
「……ヨウジ。ワスレルナ!」
「あ、う、ん。分かっているよ。オルタナ」
と、ルカが首を上げて返答する。
「……用事? ルカ? 何か用事があるの?」
そう尋ねたのはサーシャだった。
ルカはサーシャの方を振り向くと、こくんと頷いた。
それから少し頬を染めて、もじもじとティアラを持つ指先を動かした。
「ルカ? どうしたの?」
今度はアリシアが尋ねる。エドワード達も不思議そうに首を傾げている。
わずかな間だけ訪れる静寂。
が、数秒が経ち、ルカはようやく覚悟を決めて唇を開いた。
「あのね、お姉ちゃん達」
そして少女は少しだけ恥ずかしそうにして告げる。
「実はね。探して、欲しい人がいるの」
アリシア達、『若き英雄』と呼ばれる四人の騎士候補生と、ルカ=アティス王女は彼女の私室に訪れることになった。
アティス王国の王城ラスセーヌ。その最上階にあるルカの私室はとても広く、天蓋付きのキングサイズのベッドに広いバルコニー。壁際にある見事な絵画などが目に入り、いかにも王女さまの部屋といった趣だった。
あまりにもイメージ通りの内装。唯一似つかわしくない作業机や工具箱もあるのだが、エドワードとロックの視界には入らず、少年達は完全に固まっていた。
「では王女さま。皆さま方も。何か御用があればいつでもお声をおかけ下さい」
と、ここまで先頭に立ち案内していたメイドがそう告げてドアを静かに閉めた。
部屋に残されたのはアリシア達四人と、ルカ本人だけだ。
ルカは長い前髪を支えていたティアラをカチャリと外すと、
「あ、あの……」
お客さまをもてなさなければと思い、おずおずしながらも口を開いた。
「改めてお久しぶり、だね。アリシアお姉ちゃん。サーシャお姉ちゃん」
「……うん! 久しぶりだね! ルカ!」
満面の笑みを見せてそう答えたのはサーシャだった。
そして目一杯に力を込めて妹分をギュッと抱きしめる。
「元気だった? 本当に大きくなったね!」
「う、ん。サーシャお姉ちゃんも、元気そうで良かった……」
と、サーシャの豊かな胸に顔を半分埋めつつ、ルカがはにかんで答える。
「け、けど、まさか、サーシャお姉ちゃんが人前で、ヘルムを取るようになって、いたなんて、知らなかった」
「あはは、それは色々あったの」
ゆっくりとルカを離し、サーシャが苦笑のような笑みを零す。
サーシャがヘルムを人前で取って銀の髪を見せるようになった経緯は、語るには長すぎる内容だった。
「その事は今度お話しするね。って、それよりいつまで固まっているのみんな?」
言って、サーシャはアリシア達に目をやった。
するとエドワードとロックはドアの前で固まったままだったが、
「……うん。そうよね」
アリシアだけは小さく嘆息し、何かをふっ切ったような表情でルカの傍に寄る。
「久しぶりね。ルカ。元気にしてた?」
そして、くしゃくしゃと可愛い妹分の頭を撫で始めた。
「う、ん。アリシアお姉ちゃん。私は、元気だったよ」
そう答えて、ルカは前髪で覆われた水色の瞳を細める。
その様子にアリシアは苦笑を浮かべた。
「まあ、元気そう……って言うか、健やかなのは一目瞭然だけど……」
と、未だ納得いかないように呟いてからエドワード達の方に視線を向ける。
「オニキス。ハルト。あなた達はいつまで石像になっている気なのよ。ちゃんとルカに挨拶をしなさいよ」
そう告げられ、エドワードとロックはぎこちない様子で互いの顔を見据え、
「お、おう」「そ、そうだな……」
と呟く。硬直していても何も始まらないのは事実だ。
ここはまず自己紹介からだろう。
「は、初めまして。エドワード=オニキスです」
「お初にお目にかかります。王女殿下。ロック=ハルトと申します」
どこか軽いエドワードの挨拶と、対照的に重苦しいロックの挨拶。
二人の性格をよく現しており、サーシャとアリシアは苦笑を浮かべた。
それに対し、ルカは二人の少年の前に進むと、
「は、初めまして。オニキスさん。ハルトさん」
ティアラを持った両手を前にし、ぺこりと頭を下げる。
「ルカ=アティス、です。宜しくお願いします」
「あ、ウ、ウス。宜しくっす」
「……こちらこそ宜しくお願いします」
と、少年達は返事の仕方こそまるで違ったが、緊張した面持ちで答えた。
一向に緊張が解けていないのは丸分かりの様相だ。
そんな二人の様子に、少女達は呆れた果てたような表情を見せた。
「いやいや、あなた達。ちょっと緊張しすぎでしょう」
「うん。フェリシア皇女さま相手でも、そこまで緊張してなかったのにね」
と、率直な感想を言う。
それに対し、エドワードがアリシア達を一瞥して呟く。
「いやけどよ、やっぱ他国と自国の姫さんじゃあちょいと違うんだよ」
と、良くも悪くもテンションが高い彼にしては珍しく覇気のない声だ。
そして目の前のドレス姿のルカに、ちらちらと視線を送り、
「それにイメージが違う……って言うか、ある意味イメージ通りすぎんだよ。つうかエイシス。お前が言ってたことって完全にデタラメじゃねえかよ」
「あ、ああ、そうだな。それに関しては俺も同意見だな」
と、ロックも頬を強張らせて告げる。
二人とも、もはやルカを直視できないほど緊張していた。
同級生達の何とも情けない有り様に、アリシアとサーシャは互いの顔を見合わせてクスクスと笑う。と、その時だった。
「……ウム。ナサケナイ! ウロタエルナ、コゾウドモ!」
突如、バサリと銀色の小鳥が現れ、ルカの細い肩に止まったのだ。
アリシア達は一瞬、キョトンとしていたが、
「はあ? え、うわ、何だこりゃあ!」
エドワードが目を剥いた。
「え? お、玩具か? つうかしゃべったぞこいつ!」
「ちょ、な、何よこれ!」
アリシアも目を見開いて銀色の小鳥を捕えようとした。
「みんなも手伝って!」と、仲間に声をかける。
もしこの小鳥が魔獣の一種ならば放置など出来ない。
肩に乗せているルカの身が危険だった。
「あ、う、うん」「ああ、分かった!」
と、サーシャとロックが動揺しつつもアリシアに続こうとするが、
「だ、大丈夫だよ。アリシアお姉ちゃん」
しかし、当のルカ本人は慌てた様子もなくそう告げる。
それから指先を鋼の小鳥の下あごに置き、
「この子の名前はオルタナ。私が造った――自律型鎧機兵、なの」
「「「………え?」」」
その台詞に一瞬、部屋の中に静寂が訪れた。
思わず全員が硬直する――が、数瞬後、
「ええ!? が、鎧機兵!? ルカ、あなた、こんなの造れるようになったの!?」
真っ先に硬直から回復したのは、アリシアだった。
それから喉を鳴らしつつ、恐る恐る尋ねる。
「機械いじりが好きなのは知ってたけど……自律型って操手がいないってことよね? しかもこのサイズって……」
アリシアはまじまじとオルタナを凝視した。ロックやエドワードは目を見開くだけで言葉もなく、サーシャもまだ少し動揺していた。
すると、ルカはこくんと頷き、
「う、ん。人はいないよ」
そして愛しげな仕種でオルタナのあごを撫でる。
「最初は何度も失敗したの。微量な恒力の増幅とか、凄く難しくて。けど、お師匠さまの所に、何度も習いに行って……」
「……え?」サーシャが不思議そうに目を瞬かせる。「お師匠さまって?」
それは初めて聞く呼び名だった。ルカとは留学中も定期的に手紙でやり取りしていたのだが、そういった単語は一度も使われたことはない。
「ねえルカ。お師匠さまって誰の事?」
それはアリシアも同様であり、ルカに尋ねた。
すると、純白のドレスの王女は嬉しげに笑った。
「う、ん。お師匠さまはね。私に自律型鎧機兵の、基礎を教えてくれた人、なの」
「じ、自律型鎧機兵の基礎、だと……」
と、ロックが唖然とした様子で呟く。そんな技術など初めて聞いた。
「異国ではそんな技術まで確立しているのか……」
あまりの技術の差に、未来の騎士として驚愕する。
が、ルカはあっけらかんとした様子でかぶりを振った。
「う、ううん。これはお師匠さまの、独学の技術で、誰も知らないよ」
「は? ど、独学って? え、いや、独学でこんなの造れるもんなのか?」
と、エドワードが首を動かすオルタナを凝視しながら呟く。
どうにも胡散臭い話に、困惑した様子の騎士候補生達は互いの顔を見合わせた。
一体その『お師匠さま』と言う人物は何者なのだろうか。
「あ、あのねルカ」
そしてしばし沈黙してから、意を決してアリシアが尋ねてみる。
「あなたの、その、お師匠さまって人は、どんな人なの?」
「えっ? お師匠さまのこと?」
すると、ルカは一瞬キョトンとしたが、すぐに表情を輝かせて――。
「えっとね。お師匠さまは私の一つ上の先輩で、凄く綺麗な女の人なの」
と、淡い栗色の髪の少女はどこか自慢げに言う。
オルタナも「……ウム! キレイダゾ!」とコクコク首を動かし同意していた。
「へえ……女の人なんだ」と、アリシアの隣のサーシャが興味津々に呟く。
すると尊敬する師のことに興味を持たれて少し嬉しくなってきたのか、寡黙なルカが珍しくさらに饒舌になった。
「凄く優しくて、色んな技術をいつも丁寧に、教えてくれるの。それでね」
はにかみながら少女は告げる。
「普段は、すっごく大きな、全身鎧を着てるの」
「「「………はい?」」」
その場に居るルカとオルタナ以外の人間の声が綺麗に唱和する。
「全高が、大体二セージルぐらいあってね。いつもズシンズシンって足音を立てて、歩いているの。お師匠さまの、姿を見るとね。クラスメート達はいつも『ひいっ』とか『うおお』とか歓声を上げるの。大人気なの」
「え、いや、それは人気があるってことなの……?」
と、アリシアが頬を強張らせて呟く。
どうも話をまとめるとルカの師匠とは発明家の異国の学生であり、同時に二セージル級の巨漢の女性でもあるらしい。その上、ルカの先輩と言うことは年齢的にはアリシア達とほぼ同じ世代なのだろう。明らかに異様な人物像だ。
とは言え、どちらかと言えば人見知りの強いルカがここまで懐いているのだから悪い人間ではないのだろう。まあ、学校で全身鎧を着る意図は分からないが。
「……世の中、とんでもない人物がいるものなのね」
と、アリシアがありきたりな台詞を零す。
「なんつうか、フラムの末期版って言うか、綺麗だけど筋肉質っていう典型的な女傭兵みてえな奴だな」
と、エドワードも率直な気持ちを呟いた。
何にせよ、凄まじく個性的な人物のようだ。
すると、その時、
「……ルカ! ルカ!」
不意にオルタナが羽ばたき、部屋の天井近くを旋回し始めた。
「……ヨウジ。ワスレルナ!」
「あ、う、ん。分かっているよ。オルタナ」
と、ルカが首を上げて返答する。
「……用事? ルカ? 何か用事があるの?」
そう尋ねたのはサーシャだった。
ルカはサーシャの方を振り向くと、こくんと頷いた。
それから少し頬を染めて、もじもじとティアラを持つ指先を動かした。
「ルカ? どうしたの?」
今度はアリシアが尋ねる。エドワード達も不思議そうに首を傾げている。
わずかな間だけ訪れる静寂。
が、数秒が経ち、ルカはようやく覚悟を決めて唇を開いた。
「あのね、お姉ちゃん達」
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