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第1部
第七章 幸せは巡る①
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パチリ、と目を開いた。
「……ここは」
見知らぬ天井を見つめながら、かなたが呟く。
夢を見ていた。それは分かる。ならば、今まで自分は眠っていたのだろう。
『――おっ!』
その時、耳元で声がした。目をやると、そこには赤い蛇がいた。
『おう。お目覚めだな! お嬢! オレは――』
むんず、と。
かなたは無造作に蛇の喉を掴んだ。
そして、両手で蛇体をしっかりと握りしめて。
「危なかった。害獣は駆除しないと」
『ファッ!? 意外と攻撃的!?』
蛇は、べしべしとかなたの腕を尻尾で叩く。
しかし、かなたは一切気にしないで首をキュッと捻ろうとするが、
「……? 柔らかい?」
筋肉や骨の感触がしない。よく見ると、蛇の体は糸で出来ていた。
リアルすぎて分からなかったが、一種のぬいぐるみのようだ。
『と、とりあえず離してくれよ。お嬢』
「……………」
どうやら害はないようなので、かなたは蛇を離した。
蛇は、しゅるしゅると間合いを取って鎌首を上げると、
『自己紹介しとくぜ。オレは赤蛇だ』
「……そう」
名前を名乗ったようだが、かなたは興味もなく一言で断ち切った。
それよりも、まずは今の状況把握の方が先決だった。
体を起こそうとするが、力がほとんど入らない。恐ろしく体力が消耗している。
「……ん」それでも、どうにか上半身を起こす。
ここは、恐らく骸鬼王の館の部屋の一室なのだろう。壁には絵画。棚には高価そうな壺などが並べられている。かなたが座るベッドも大きく上質なモノだ。廃屋敷だというのに埃も被っていない。清潔そうなシーツである。
かなたは、続けてベッドから立ち上がろうとするが、上半身を起こした時よりもキツい。想像以上に体力を消耗していた。いや、体力は充分にあるのだが、まるで体が脳の指令に応えてくれないようなもどかしさを感じる。
「……ん、んん」
思わず呻いていると、
『あら? お姫さまが目覚めたのですか?』
不意に、新しい声が耳に届いた。
表情を険しくして見やると、そこには刃で創られた孔雀の彫像がいた。
『おはようございます。かなたさん』
――いや、彫像ではない。
刃の孔雀は喋り、動いていた。これと似たモノをかなたは知っていた。
何度か見た、黒鉄の虎と同種の存在だ。
「久遠真刃の式神ですか?」
『そうですわ。刃鳥と申します』
言って、孔雀は翼を広げて優雅に一礼した。
次いで首を動かし、『真刃さま』と、主の名を呼ぶ。
かなたも、孔雀の首が向けた方に目をやった。
『お姫さまが、お目覚めになられました』
「……ム。そうか」
そこには黒いスーツを纏う青年がいた。丸いテーブルの前の椅子に座り、足を組んでいる。
上着は背もたれに、黒いシャツは腕まくりしていた。ネクタイも少し緩めている。シャツの上から巻いた拳銃用のホルスターがなければ、一息つく青年実業家のようだった。
事実、丸いテーブルの上には、どこから持ち込んだのか缶コーヒーが置かれている。
いや、酔狂なことに、どうやら、あのホルスターは拳銃用ではなく缶コーヒー用のようだ。革製の缶コーヒーホルスター。ストックがまだ二本ある。
「ふむ。杜ノ宮かなたよ」
青年はかなたを見つめた。そして、
「目覚めたのは僥倖だ。改めて自己紹介しよう。己の名は久遠真刃だ。以後宜しく頼む」
そう言って、久遠真刃は笑った。
「……ここは」
見知らぬ天井を見つめながら、かなたが呟く。
夢を見ていた。それは分かる。ならば、今まで自分は眠っていたのだろう。
『――おっ!』
その時、耳元で声がした。目をやると、そこには赤い蛇がいた。
『おう。お目覚めだな! お嬢! オレは――』
むんず、と。
かなたは無造作に蛇の喉を掴んだ。
そして、両手で蛇体をしっかりと握りしめて。
「危なかった。害獣は駆除しないと」
『ファッ!? 意外と攻撃的!?』
蛇は、べしべしとかなたの腕を尻尾で叩く。
しかし、かなたは一切気にしないで首をキュッと捻ろうとするが、
「……? 柔らかい?」
筋肉や骨の感触がしない。よく見ると、蛇の体は糸で出来ていた。
リアルすぎて分からなかったが、一種のぬいぐるみのようだ。
『と、とりあえず離してくれよ。お嬢』
「……………」
どうやら害はないようなので、かなたは蛇を離した。
蛇は、しゅるしゅると間合いを取って鎌首を上げると、
『自己紹介しとくぜ。オレは赤蛇だ』
「……そう」
名前を名乗ったようだが、かなたは興味もなく一言で断ち切った。
それよりも、まずは今の状況把握の方が先決だった。
体を起こそうとするが、力がほとんど入らない。恐ろしく体力が消耗している。
「……ん」それでも、どうにか上半身を起こす。
ここは、恐らく骸鬼王の館の部屋の一室なのだろう。壁には絵画。棚には高価そうな壺などが並べられている。かなたが座るベッドも大きく上質なモノだ。廃屋敷だというのに埃も被っていない。清潔そうなシーツである。
かなたは、続けてベッドから立ち上がろうとするが、上半身を起こした時よりもキツい。想像以上に体力を消耗していた。いや、体力は充分にあるのだが、まるで体が脳の指令に応えてくれないようなもどかしさを感じる。
「……ん、んん」
思わず呻いていると、
『あら? お姫さまが目覚めたのですか?』
不意に、新しい声が耳に届いた。
表情を険しくして見やると、そこには刃で創られた孔雀の彫像がいた。
『おはようございます。かなたさん』
――いや、彫像ではない。
刃の孔雀は喋り、動いていた。これと似たモノをかなたは知っていた。
何度か見た、黒鉄の虎と同種の存在だ。
「久遠真刃の式神ですか?」
『そうですわ。刃鳥と申します』
言って、孔雀は翼を広げて優雅に一礼した。
次いで首を動かし、『真刃さま』と、主の名を呼ぶ。
かなたも、孔雀の首が向けた方に目をやった。
『お姫さまが、お目覚めになられました』
「……ム。そうか」
そこには黒いスーツを纏う青年がいた。丸いテーブルの前の椅子に座り、足を組んでいる。
上着は背もたれに、黒いシャツは腕まくりしていた。ネクタイも少し緩めている。シャツの上から巻いた拳銃用のホルスターがなければ、一息つく青年実業家のようだった。
事実、丸いテーブルの上には、どこから持ち込んだのか缶コーヒーが置かれている。
いや、酔狂なことに、どうやら、あのホルスターは拳銃用ではなく缶コーヒー用のようだ。革製の缶コーヒーホルスター。ストックがまだ二本ある。
「ふむ。杜ノ宮かなたよ」
青年はかなたを見つめた。そして、
「目覚めたのは僥倖だ。改めて自己紹介しよう。己の名は久遠真刃だ。以後宜しく頼む」
そう言って、久遠真刃は笑った。
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