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第4部
第一章 炎刃の剣士①
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第4部、先行投稿第2弾です!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
竹林の中。
少女は走る。必死に走る。
彼女の両足は、血と泥で滲んでいる。
素足なのだから当然だ。
いや、素足どころではない。
彼女はほぼ全裸だった。無残に切り裂かれた着物に袖を通しているだけの姿だ。
しかし、そんな姿にも拘らず、彼女は一心不乱に竹林を駆けていた。
――はァ、はァ、はァ。
呼吸は、今にも止まってしまいそうだった。
それでも、足だけは止まらない。
止めることなど出来ない。
たった一日。
たった一日前のことだった。
晴れた休日。女学生である彼女は、友人の少女と共に竹林の脇を通った。
そこは人気のない場所であり、普段は通ることもないのだが、先日、ようやく乗りこなせるようになった自転車に浮かれていたのだろう。
彼女たちは、日中であっても薄暗い道へと入り込んだ。
そして、彼女たちは、化け物に攫われた。
連れていかれたのは竹林の奥。まるで黄泉の入り口のような洞穴だった。
そこで、彼女たちは、化け物に凌辱された。
まず犠牲になったのは、友人だった。
悲鳴を上げて、助けを求める友人。
しかし、彼女は、怯え切って動くことも出来なかった。
そうして、洞窟内に微かな嗚咽だけが木霊するようになった頃。
次は、彼女の番だった。
彼女もまた悲鳴を上げて助けを求めたが、その声は誰にも届かず――。
彼女たちは気を失おうが、体力が尽きようが、幾度となく凌辱された。懇願の悲鳴も意味もなく、容赦なく化け物に精を注がれた。
……それから、どれほどの時間が経っただろうか。
彼女たちは、虚ろな表情となって洞穴内に横たわっていた。
化け物は、彼女たちを犯し尽くして満足したのか、その場に横になって眠った。
この時、逃げていれば……と、今は思う。
そうすれば、あんな光景を見ずに済んだかもしれない。
けれど、彼女も、友人も、絶望感に打ちのめされて動けなかった。
それが、翌朝の悪夢を招いたのである。
彼女たちが目を覚ましたのは、化け物よりも少しだけ早かった。
岩肌が剥き出しの寝床。貞操を失ったこと。何より、文字通り、獣のごときだった情事は、彼女たちに尋常ではない疲労感をもたらしていた。
体が岩のように重い。
わずかに衣服を纏った彼女たちは、どうにか上半身だけ起こした。
化け物が起きたのは、その時だった。
のそりと巨体を動かして、上半身を起こす化け物。
化け物は欠伸を零すと、その場で胡坐を組んだ。それから、恐怖で動けない彼女たちに目をやり、友人の肩を両腕で掴んで、自分の膝の上に抱え込んだ。
……昨日の続きだ。
二人は青ざめて思った。
恐らく、この化け物は自分たちが孕むまであれを繰り返すつもりで――。
そう思った時だった。
――ゴキンッ!
と、唐突に鈍い音がした。
彼女は唖然とした。
唐突に。
化け物が、友人の首を真横にへし折ったのである。
そして、おもむろに巨大な口で友人の首筋に噛みついた。
ビクン、ビクンッと。
友人の足や腕が激しく震え出す。
抵抗ではない。ただの肉体の反応だ。
友人は、すでに絶命している。
そんな友人を、あの化け物は――。
――ゴキュ、ゴキン。バキリッ、クチャ、グチャ……。
喰っている。
彼女は絶叫を上げた。
そして逃げ出した。
絶望も。疲労感も。体中の痛みも。
すべてを無視して駆け出した。
ここで逃げなければ、自分も喰われてしまう。
その恐怖が、彼女を突き動かしていた。
(街! 街まで行けば!)
この竹林は、街からそう遠くない。
街まで逃げきれば、きっと助かるはずだ。
何度も転ぶ。足はもう血塗れだ。地を踏むたびに激痛が走る。
それでも彼女は走り続けた。
そうして、ようやく竹林の間から遠くの街の光景が見えた。
彼女の瞳に、希望の光が灯った。
しかし、
――ズズンッ!
突如、それは降り立った。
それを見上げて、彼女は、その場で膝を突いた。
彼女の倍はある巨躯。剛毛に覆われた全身。異様なまでに長く筋肉質な首に、その上にある頭部には一本角を持つ。
――首長鬼。
そう呼ぶしかないそれは、彼女を攫った化け物だった。
彼女を追ってきたのである。
あと少し、あと少しだったのに……。
彼女は、絶望で目を見開いた。
その上、首長鬼の手に持つものにも気付き、歯をカタカタと鳴らす。
それは友人の足だった。右足だけを左手に持っているのだ。
彼女は、全く動けなくなった。
すると、首長鬼は近づき、彼女を右腕で抱え上げた。
彼女が無抵抗だったこともあったが、思いの外、優しい手つきだ。
彼女が心神を喪失した顔で首長鬼を見上げると、鬼は、ベロリと長い舌で、彼女の横顔を舐めた。無表情の彼女は体を強く震わせるが、首長鬼が牙を突き立てる様子はない。
ズシン、ズシンと。
首長鬼は彼女を右腕に、左手で食事の残骸を掴んだまま、歩き出した。
彼女は、もう消えてしまいそうな意識で思った。
食事が済んだ。ゆえに次は情事。
自分は再び、この鬼の情事の相手をさせられるのだろう。
そしてその後は――。
つう、と。
絶望の涙が頬を伝った。
その時だった。
「いつもながら不快だな」
不意に。
竹林に声が響いた。
口調こそ男性だが、女性のようにも聞こえる澄んだ声だ。
彼女は、ハッとした。
首長鬼も、声の方へと振り向く。
薄暗い竹林の中、そこに居たのは……。
「何が生きている証だ。貴様らの所業は獣にも劣るぞ」
黒い軍服に黒い軍帽。そして漆黒の外套を纏った一人の青年だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
竹林の中。
少女は走る。必死に走る。
彼女の両足は、血と泥で滲んでいる。
素足なのだから当然だ。
いや、素足どころではない。
彼女はほぼ全裸だった。無残に切り裂かれた着物に袖を通しているだけの姿だ。
しかし、そんな姿にも拘らず、彼女は一心不乱に竹林を駆けていた。
――はァ、はァ、はァ。
呼吸は、今にも止まってしまいそうだった。
それでも、足だけは止まらない。
止めることなど出来ない。
たった一日。
たった一日前のことだった。
晴れた休日。女学生である彼女は、友人の少女と共に竹林の脇を通った。
そこは人気のない場所であり、普段は通ることもないのだが、先日、ようやく乗りこなせるようになった自転車に浮かれていたのだろう。
彼女たちは、日中であっても薄暗い道へと入り込んだ。
そして、彼女たちは、化け物に攫われた。
連れていかれたのは竹林の奥。まるで黄泉の入り口のような洞穴だった。
そこで、彼女たちは、化け物に凌辱された。
まず犠牲になったのは、友人だった。
悲鳴を上げて、助けを求める友人。
しかし、彼女は、怯え切って動くことも出来なかった。
そうして、洞窟内に微かな嗚咽だけが木霊するようになった頃。
次は、彼女の番だった。
彼女もまた悲鳴を上げて助けを求めたが、その声は誰にも届かず――。
彼女たちは気を失おうが、体力が尽きようが、幾度となく凌辱された。懇願の悲鳴も意味もなく、容赦なく化け物に精を注がれた。
……それから、どれほどの時間が経っただろうか。
彼女たちは、虚ろな表情となって洞穴内に横たわっていた。
化け物は、彼女たちを犯し尽くして満足したのか、その場に横になって眠った。
この時、逃げていれば……と、今は思う。
そうすれば、あんな光景を見ずに済んだかもしれない。
けれど、彼女も、友人も、絶望感に打ちのめされて動けなかった。
それが、翌朝の悪夢を招いたのである。
彼女たちが目を覚ましたのは、化け物よりも少しだけ早かった。
岩肌が剥き出しの寝床。貞操を失ったこと。何より、文字通り、獣のごときだった情事は、彼女たちに尋常ではない疲労感をもたらしていた。
体が岩のように重い。
わずかに衣服を纏った彼女たちは、どうにか上半身だけ起こした。
化け物が起きたのは、その時だった。
のそりと巨体を動かして、上半身を起こす化け物。
化け物は欠伸を零すと、その場で胡坐を組んだ。それから、恐怖で動けない彼女たちに目をやり、友人の肩を両腕で掴んで、自分の膝の上に抱え込んだ。
……昨日の続きだ。
二人は青ざめて思った。
恐らく、この化け物は自分たちが孕むまであれを繰り返すつもりで――。
そう思った時だった。
――ゴキンッ!
と、唐突に鈍い音がした。
彼女は唖然とした。
唐突に。
化け物が、友人の首を真横にへし折ったのである。
そして、おもむろに巨大な口で友人の首筋に噛みついた。
ビクン、ビクンッと。
友人の足や腕が激しく震え出す。
抵抗ではない。ただの肉体の反応だ。
友人は、すでに絶命している。
そんな友人を、あの化け物は――。
――ゴキュ、ゴキン。バキリッ、クチャ、グチャ……。
喰っている。
彼女は絶叫を上げた。
そして逃げ出した。
絶望も。疲労感も。体中の痛みも。
すべてを無視して駆け出した。
ここで逃げなければ、自分も喰われてしまう。
その恐怖が、彼女を突き動かしていた。
(街! 街まで行けば!)
この竹林は、街からそう遠くない。
街まで逃げきれば、きっと助かるはずだ。
何度も転ぶ。足はもう血塗れだ。地を踏むたびに激痛が走る。
それでも彼女は走り続けた。
そうして、ようやく竹林の間から遠くの街の光景が見えた。
彼女の瞳に、希望の光が灯った。
しかし、
――ズズンッ!
突如、それは降り立った。
それを見上げて、彼女は、その場で膝を突いた。
彼女の倍はある巨躯。剛毛に覆われた全身。異様なまでに長く筋肉質な首に、その上にある頭部には一本角を持つ。
――首長鬼。
そう呼ぶしかないそれは、彼女を攫った化け物だった。
彼女を追ってきたのである。
あと少し、あと少しだったのに……。
彼女は、絶望で目を見開いた。
その上、首長鬼の手に持つものにも気付き、歯をカタカタと鳴らす。
それは友人の足だった。右足だけを左手に持っているのだ。
彼女は、全く動けなくなった。
すると、首長鬼は近づき、彼女を右腕で抱え上げた。
彼女が無抵抗だったこともあったが、思いの外、優しい手つきだ。
彼女が心神を喪失した顔で首長鬼を見上げると、鬼は、ベロリと長い舌で、彼女の横顔を舐めた。無表情の彼女は体を強く震わせるが、首長鬼が牙を突き立てる様子はない。
ズシン、ズシンと。
首長鬼は彼女を右腕に、左手で食事の残骸を掴んだまま、歩き出した。
彼女は、もう消えてしまいそうな意識で思った。
食事が済んだ。ゆえに次は情事。
自分は再び、この鬼の情事の相手をさせられるのだろう。
そしてその後は――。
つう、と。
絶望の涙が頬を伝った。
その時だった。
「いつもながら不快だな」
不意に。
竹林に声が響いた。
口調こそ男性だが、女性のようにも聞こえる澄んだ声だ。
彼女は、ハッとした。
首長鬼も、声の方へと振り向く。
薄暗い竹林の中、そこに居たのは……。
「何が生きている証だ。貴様らの所業は獣にも劣るぞ」
黒い軍服に黒い軍帽。そして漆黒の外套を纏った一人の青年だった。
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