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第10部
第八章 妖樹の王④
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(さて。どう出る気だ? 小僧)
レオスは双眸を細めた。
沈黙を続ける悪竜の騎士。
果たして、何を仕掛けてくるのか――。
(とは言え、このまま待つのは愚策だな)
レオスは皮肉気に口角を崩した。
そして《木妖星》が再び、茨の槍を振るった。
茨が大きく花開き、触手のように悪竜の騎士に襲い掛かる!
悪竜の騎士は後方に跳躍した。
その操縦席の中では、少年と少女が作戦会議を続けていた。
「恐らく、発動には四秒ほどかかると思います」
「四秒か……長いね」
「ええ。何より、あの男に各自に当てるには……」
「うん。奴の動きを封じる必要があるってことだね」
《ディノ=バロウス》は、跳躍を繰り返す。
無数の茨は木々を食い破り、蠢くように追跡してくる。
《ディノ=バロウス》は《雷歩》を使って、一気に茨を引き離した。
そして着地と同時に反転。《飛刃》を放つ!
『それは効かんぞ』
《木妖星》は茨の鞭を渦巻かせて、不可視の刃を打ち砕いた。
だが、それはコウタにとって予想通りの結果だ。
『分かっているよ。本命はこっちだ』
言って、処刑刀を頭上に振り上げた。
途端、
――ズズンッッ!
『……ほう』
レオスが双眸を細める。
《木妖星》の両足が深く地面に沈みこんでいく。
――いや、《木妖星》だけではない。
周囲の木々も軋み、大地そのものが円筒上に沈みこんでいた。
『これはラゴウの《堕天》か』
同胞の闘技。
あの男が、敵に伝授するとは思えない。
死闘の末に盗んだということか。
(器用な小僧だ)
レオスは苦笑した。
しかし、この闘技では《木妖星》に致命打を与えることは出来ない。
ましてや、九機の《九妖星》の中でも《木妖星》は最大の恒力値を誇る。この程度の重圧では《木妖星》を止めることも不可能だ。
ズシン、ズシン……と。
超重圧の中、《木妖星》は、ゆっくりと進み出す。
と、その時だった。
『――なに!』
レオスは、大きく目を見開いた。
丁度、《木妖星》の直線上。悪竜の騎士が身構えていたのだ。
しかも、ただ身構えるだけではない。
悪竜の騎士の前方。
そこに、巨大な火球が渦巻いていたのだ。
その姿はまるで――。
(本物のドラゴンだな!)
レオスは、ふんと鼻を鳴らした。
次いで、茨の槍を前方に突き出した。
その直後のことだった。
直径三セージルにも及ぶ、巨大な火球が撃ちだされたのは。
火球は真っ直ぐ、《木妖星》と迫る。
《堕天》に束縛された《木妖星》の機動力では回避は出来ない。
(ならば、掻き消してくれる!)
茨の槍を高速回転させる。
渦巻く茨は傘状となり、《木妖星》を守る盾と成った。
どんな高温の炎でも、分散すれば威力は大幅に落ちる。
レオスは、これで凌ぐつもりだった。
しかし――。
(なんだと!?)
大きく目を瞠る。
分散しようと目論んだ大火球。だが、茨に触れた火球は分散するどころか、茨を次々と絡めとり、そのまま直進してくるではないか。
(これは――炎ではない!)
レオスは、舌打ちした。
――そう。この大火球の正体は《偽物の炎》。
実際は炎ではなく、恒力の塊だ。
それも、メルティアの意志によって、極限まで粘性を高めた球体である。
見た目こそ、まるで伝説にある《悪竜の劫火》のようだが、実態としては鉄の硬度を持つ巨大な水飴のようなものだ。
そんなものを掻き消すことなど、出来るはずもない。
(くそッ!)
このままでは大火球の直撃を受ける。
レオスは、先端の茨を切り離すことにした。バシュッと火花が散り、手には茨を失った一本の槍だけが残る。《木妖星》はその槍を斜めに構えた。
そして――。
『――ふっ!』
小さな呼気を吐きだし、槍を上に跳ね上げた。
その軌道に乗るように火球は、上空へと進路を変えた。
どうにか直撃だけは回避する――が、
――ギィンッッ!
『――ぐうッ!』
レオスは、表情を険しくした。
今の一瞬で悪竜の騎士が斬り込んできたのだ。
咄嗟に槍の柄で受けるが、勢いに圧しこまれる。
悪竜の騎士は、左の掌底を《木妖星》の腹部に叩きつけた!
――ビキリッ、と。
《木妖星》の装甲に大きな亀裂が奔った。
悪竜の騎士は、さらに畳みかける。
わずかに後退した《木妖星》の肩をめがけて斬撃を振り下ろす!
――が、
『調子に乗るな!』
レオスが威圧し、《木妖星》が応えた。
槍の柄で処刑刀の刃を打ち払う。悪竜の騎士は大きく仰け反った。
続けて、その場で槍を回転。
恐ろしく速い刺突をお見舞いする!
『――くッ!』
悪竜の騎士は、処刑刀の剣腹で穂先を受け止めた。
ズンッ、と芯にも届く衝撃。威力を完全には受け切れない。
《ディノ=バロウス》は、大きく後方に吹き飛ばされることになった。
ガガガッと地面を削って、態勢と整え直す。と、
『……茨を奪えば勝てると思ったか?』
レオスが淡々と告げた。
今や《木妖星》の手に握られるのは、ただの槍。
茨を失い、先端に円錐型の突起のみが残ったシンプルな槍だ。
それを《木妖星》は華麗に舞わせた。
わずかな乱れもない円を描く槍。右左へと舞踊のような軌跡を描く。
恐るべき技量の高さが窺える舞だ。
『枝葉が切られた程度で大樹は揺らがん』
レオスは語る。
《木妖星》は槍の穂先を《ディノ=バロウス》に向けた。
『《妖星》の一角。侮るなよ。小僧』
『……分かってるさ』
対するコウタは、双眸を細めた。
茨を奪った程度で勝てるはずもない。
だが、それでも――。
『だけど、それでも勝つのはボク達だ』
《ディノ=バロウス》は、処刑刀をすっと薙いた。
レオスは双眸を細めた。
沈黙を続ける悪竜の騎士。
果たして、何を仕掛けてくるのか――。
(とは言え、このまま待つのは愚策だな)
レオスは皮肉気に口角を崩した。
そして《木妖星》が再び、茨の槍を振るった。
茨が大きく花開き、触手のように悪竜の騎士に襲い掛かる!
悪竜の騎士は後方に跳躍した。
その操縦席の中では、少年と少女が作戦会議を続けていた。
「恐らく、発動には四秒ほどかかると思います」
「四秒か……長いね」
「ええ。何より、あの男に各自に当てるには……」
「うん。奴の動きを封じる必要があるってことだね」
《ディノ=バロウス》は、跳躍を繰り返す。
無数の茨は木々を食い破り、蠢くように追跡してくる。
《ディノ=バロウス》は《雷歩》を使って、一気に茨を引き離した。
そして着地と同時に反転。《飛刃》を放つ!
『それは効かんぞ』
《木妖星》は茨の鞭を渦巻かせて、不可視の刃を打ち砕いた。
だが、それはコウタにとって予想通りの結果だ。
『分かっているよ。本命はこっちだ』
言って、処刑刀を頭上に振り上げた。
途端、
――ズズンッッ!
『……ほう』
レオスが双眸を細める。
《木妖星》の両足が深く地面に沈みこんでいく。
――いや、《木妖星》だけではない。
周囲の木々も軋み、大地そのものが円筒上に沈みこんでいた。
『これはラゴウの《堕天》か』
同胞の闘技。
あの男が、敵に伝授するとは思えない。
死闘の末に盗んだということか。
(器用な小僧だ)
レオスは苦笑した。
しかし、この闘技では《木妖星》に致命打を与えることは出来ない。
ましてや、九機の《九妖星》の中でも《木妖星》は最大の恒力値を誇る。この程度の重圧では《木妖星》を止めることも不可能だ。
ズシン、ズシン……と。
超重圧の中、《木妖星》は、ゆっくりと進み出す。
と、その時だった。
『――なに!』
レオスは、大きく目を見開いた。
丁度、《木妖星》の直線上。悪竜の騎士が身構えていたのだ。
しかも、ただ身構えるだけではない。
悪竜の騎士の前方。
そこに、巨大な火球が渦巻いていたのだ。
その姿はまるで――。
(本物のドラゴンだな!)
レオスは、ふんと鼻を鳴らした。
次いで、茨の槍を前方に突き出した。
その直後のことだった。
直径三セージルにも及ぶ、巨大な火球が撃ちだされたのは。
火球は真っ直ぐ、《木妖星》と迫る。
《堕天》に束縛された《木妖星》の機動力では回避は出来ない。
(ならば、掻き消してくれる!)
茨の槍を高速回転させる。
渦巻く茨は傘状となり、《木妖星》を守る盾と成った。
どんな高温の炎でも、分散すれば威力は大幅に落ちる。
レオスは、これで凌ぐつもりだった。
しかし――。
(なんだと!?)
大きく目を瞠る。
分散しようと目論んだ大火球。だが、茨に触れた火球は分散するどころか、茨を次々と絡めとり、そのまま直進してくるではないか。
(これは――炎ではない!)
レオスは、舌打ちした。
――そう。この大火球の正体は《偽物の炎》。
実際は炎ではなく、恒力の塊だ。
それも、メルティアの意志によって、極限まで粘性を高めた球体である。
見た目こそ、まるで伝説にある《悪竜の劫火》のようだが、実態としては鉄の硬度を持つ巨大な水飴のようなものだ。
そんなものを掻き消すことなど、出来るはずもない。
(くそッ!)
このままでは大火球の直撃を受ける。
レオスは、先端の茨を切り離すことにした。バシュッと火花が散り、手には茨を失った一本の槍だけが残る。《木妖星》はその槍を斜めに構えた。
そして――。
『――ふっ!』
小さな呼気を吐きだし、槍を上に跳ね上げた。
その軌道に乗るように火球は、上空へと進路を変えた。
どうにか直撃だけは回避する――が、
――ギィンッッ!
『――ぐうッ!』
レオスは、表情を険しくした。
今の一瞬で悪竜の騎士が斬り込んできたのだ。
咄嗟に槍の柄で受けるが、勢いに圧しこまれる。
悪竜の騎士は、左の掌底を《木妖星》の腹部に叩きつけた!
――ビキリッ、と。
《木妖星》の装甲に大きな亀裂が奔った。
悪竜の騎士は、さらに畳みかける。
わずかに後退した《木妖星》の肩をめがけて斬撃を振り下ろす!
――が、
『調子に乗るな!』
レオスが威圧し、《木妖星》が応えた。
槍の柄で処刑刀の刃を打ち払う。悪竜の騎士は大きく仰け反った。
続けて、その場で槍を回転。
恐ろしく速い刺突をお見舞いする!
『――くッ!』
悪竜の騎士は、処刑刀の剣腹で穂先を受け止めた。
ズンッ、と芯にも届く衝撃。威力を完全には受け切れない。
《ディノ=バロウス》は、大きく後方に吹き飛ばされることになった。
ガガガッと地面を削って、態勢と整え直す。と、
『……茨を奪えば勝てると思ったか?』
レオスが淡々と告げた。
今や《木妖星》の手に握られるのは、ただの槍。
茨を失い、先端に円錐型の突起のみが残ったシンプルな槍だ。
それを《木妖星》は華麗に舞わせた。
わずかな乱れもない円を描く槍。右左へと舞踊のような軌跡を描く。
恐るべき技量の高さが窺える舞だ。
『枝葉が切られた程度で大樹は揺らがん』
レオスは語る。
《木妖星》は槍の穂先を《ディノ=バロウス》に向けた。
『《妖星》の一角。侮るなよ。小僧』
『……分かってるさ』
対するコウタは、双眸を細めた。
茨を奪った程度で勝てるはずもない。
だが、それでも――。
『だけど、それでも勝つのはボク達だ』
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