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第28話
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すでに休憩時間は終わり、演奏の音がうっすら聞こえる。
私の発言に眉をしかめる3人。
そこを纏めたのはやはり、
「坊っちゃま、そろそろお戻りになりませんと、会長が待っておられます。」
恭しく頭を下げる土方さんの登場だった。
「お話されたいことは沢山おありになるかと思いますが、先程藪坂様をお探しになられている男性の方をお見かけしました。お心当たりがあるのでは?」
土方さんにそう言われると、バツの悪い顔をした藪坂さん。
「ふ、ふん、きっとうちの手伝いの人間よ。仕方ないわねっ。またじっくりお話しましょう、名波さんっ。」
そう言うと、慌ててこの場を去っていった。
「相変わらずお盛んなのね、あの女は。」
通常の何オクターブも低い声を発した姑に、ビクっとしてしまった。
「あら、ごめんなさいね。詩豆ちゃんを驚かせてしまったみたい。さあさあ、慶大も来たことだし、どこかレストランでお食事でもしましょうかね。」
「いや、悪いが俺は帰る。会長が待っているから。」
夫はそういうと、来た方向へ振り返り戻っていった。
何故かその背中が寂しそうで、悲しみを帯びていた。
(藪坂さんに他の男の影が見えたからかしら?)
私はそこでとんでもない勘違いをしていたのだ。
☆☆
屋敷に戻る時、姑は急用を思い出したとかで別々の車で帰宅した。
私は、いよいよ働き始めなければと半分虚しい思いをしながらも、半分は理性で道筋を立てていた。
エンドーグループを出してもらうことはできないだろう。
今までの恩義もある。
だったらせめて、自社ビル内の清掃係をするのはどうだろうか?
自室に入り、すぐにパソコンを開いてーーと思ったが、実はこの部屋にはパソコンなどない。タブレットもないし、私の携帯電話はガラケーだし。(屋敷に来てすぐにスマホは回収され、何故かガラケーを渡された)
「ああ、もうっ!どうやって調べたらいいのよ!」
枕に八つ当たりをしていたら、ノックもせずに夫が入って来た。
「おいっ、この勘違い女!!何を考えているんだ!?働いて金を返すだの何だの!」
入るなり怒鳴り散らす夫。
「勘違いも何も、筋違いだったのよっ。何にもしないで借金の為に結婚しただなんて、いくら何でも話が良すぎるわっ!絶対に完済してみせるからっ。」
「筋違いだと?何が言いたい?こっちだって訳がわからない。なんで藪坂美奈子と俺が」
「もういいから。大丈夫だから。ね?どうせ愛のない関係だったんだもの。私が離婚されても誰も文句は言わないわ。」
「愛の、ない関係か……」
やけにしんみりとする夫。
だけど私はそこでも、藪坂さんとは愛があるんだろうなと思い込んでいた。
だから、
「ねえ、それよりあなたのタブレット貸してくれない?職探ししたいんだけど、調べるツールが何にもないのよ。勝手に外出はまだできないし。」
そうだ、借金さえ完済すれば、私は晴れて自由に外を歩けるのだ。
「ーーちっ。悪いがお前には貸せない。グループの機密情報も入っているからな……だから……そうだな、どうしても働きたいというのなら……うん、それがいい、いい職場がある。」
「えっ?どこ?いや、どこでもいいわっ。あ、ただ……できれば体は……」
「馬鹿野郎!!いかがわしい職を俺がお前に斡旋するわけないだろ!大丈夫だ。かなり安全な場所だ。早速今夜から始めろ。」
やけにウキウキとテンションが上がっている夫に、怪しげな疑惑の目を向けながら、私は夫のあとを付いていった。
そこは、全くもって意外な場所であった。
私の発言に眉をしかめる3人。
そこを纏めたのはやはり、
「坊っちゃま、そろそろお戻りになりませんと、会長が待っておられます。」
恭しく頭を下げる土方さんの登場だった。
「お話されたいことは沢山おありになるかと思いますが、先程藪坂様をお探しになられている男性の方をお見かけしました。お心当たりがあるのでは?」
土方さんにそう言われると、バツの悪い顔をした藪坂さん。
「ふ、ふん、きっとうちの手伝いの人間よ。仕方ないわねっ。またじっくりお話しましょう、名波さんっ。」
そう言うと、慌ててこの場を去っていった。
「相変わらずお盛んなのね、あの女は。」
通常の何オクターブも低い声を発した姑に、ビクっとしてしまった。
「あら、ごめんなさいね。詩豆ちゃんを驚かせてしまったみたい。さあさあ、慶大も来たことだし、どこかレストランでお食事でもしましょうかね。」
「いや、悪いが俺は帰る。会長が待っているから。」
夫はそういうと、来た方向へ振り返り戻っていった。
何故かその背中が寂しそうで、悲しみを帯びていた。
(藪坂さんに他の男の影が見えたからかしら?)
私はそこでとんでもない勘違いをしていたのだ。
☆☆
屋敷に戻る時、姑は急用を思い出したとかで別々の車で帰宅した。
私は、いよいよ働き始めなければと半分虚しい思いをしながらも、半分は理性で道筋を立てていた。
エンドーグループを出してもらうことはできないだろう。
今までの恩義もある。
だったらせめて、自社ビル内の清掃係をするのはどうだろうか?
自室に入り、すぐにパソコンを開いてーーと思ったが、実はこの部屋にはパソコンなどない。タブレットもないし、私の携帯電話はガラケーだし。(屋敷に来てすぐにスマホは回収され、何故かガラケーを渡された)
「ああ、もうっ!どうやって調べたらいいのよ!」
枕に八つ当たりをしていたら、ノックもせずに夫が入って来た。
「おいっ、この勘違い女!!何を考えているんだ!?働いて金を返すだの何だの!」
入るなり怒鳴り散らす夫。
「勘違いも何も、筋違いだったのよっ。何にもしないで借金の為に結婚しただなんて、いくら何でも話が良すぎるわっ!絶対に完済してみせるからっ。」
「筋違いだと?何が言いたい?こっちだって訳がわからない。なんで藪坂美奈子と俺が」
「もういいから。大丈夫だから。ね?どうせ愛のない関係だったんだもの。私が離婚されても誰も文句は言わないわ。」
「愛の、ない関係か……」
やけにしんみりとする夫。
だけど私はそこでも、藪坂さんとは愛があるんだろうなと思い込んでいた。
だから、
「ねえ、それよりあなたのタブレット貸してくれない?職探ししたいんだけど、調べるツールが何にもないのよ。勝手に外出はまだできないし。」
そうだ、借金さえ完済すれば、私は晴れて自由に外を歩けるのだ。
「ーーちっ。悪いがお前には貸せない。グループの機密情報も入っているからな……だから……そうだな、どうしても働きたいというのなら……うん、それがいい、いい職場がある。」
「えっ?どこ?いや、どこでもいいわっ。あ、ただ……できれば体は……」
「馬鹿野郎!!いかがわしい職を俺がお前に斡旋するわけないだろ!大丈夫だ。かなり安全な場所だ。早速今夜から始めろ。」
やけにウキウキとテンションが上がっている夫に、怪しげな疑惑の目を向けながら、私は夫のあとを付いていった。
そこは、全くもって意外な場所であった。
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