30 / 38
第30話
しおりを挟む
とは言ったものの、実のところ、私の家事能力はレベル1だ。
一人暮らしの約3年、春はコンビニ弁当や惣菜を買い込んだ。
夏は実家から貰ったそうめんが主食で、たまにキュウリとシーチキンをマヨネーズで和えておかずにしていた。
秋はご飯が美味しくて、麺つゆときのこ類をドバッと入れて炊き込んでいた。
冬はカップラーメンとコンビニおでんや冷凍うどんで乗り越えた。
サプリを多用し、よくわからない健康食品を買っては失敗していたこともある。
「はぁー、やばい……」
夫の好みなど聞いたこともない。
最新式家電を選ぶくらいだ、意外とレンジでチンすりゃなんかうまく作れるんじゃないかと思い、こっそり毛利さんに『説明書』があればお願いしますと頼んだ。
5分も経たないうちにそれは見つかったが、一安心と同時に
「申し訳ありません、私、今から本館にて研修を受けますので、1週間はこちらに来られません。ですので、お助けできるのはここまででございます。生憎、近重も武田も奥様の御用に付き添っており、いつ別館に戻れるかわからない状況であります。」
と、私の味方は離れていってしまった。
いや、わかってるよ。
今は私に付いていても、すぐにみんな藪坂さんに付くのだから頼りにするのも良くないって思ってる。でもさ、本当に情報が皆無の状態でお世話なんてのも酷な話で。
まあ、うん、月150万だものね。
仕方ないっちゃ仕方ないよね。
頭を使って足を使って、頑張るしかないんだ。
たちまち、私は説明書に付属してあるレシピブックで、冷蔵庫の食材でできそうな一番材料が少なく済むものを選び、作り始めた。
なんだろ。
結果的に、これって全部同じ味だよね?
ナスとピーマンの和え物
きのこのお浸し
湯豆腐のきのこ餡かけ
しかも今は梅雨に差し掛かり、結構ジメジメしてるのに湯豆腐にしちゃった。
「あっ!お米!」
大事な主食の白ご飯を炊き忘れ、慌ててお米を探した。
が、それがなかなか見つからない。
いろんな引き出しを開けてみるが、それらしきものがない。
諦めて、冷蔵庫をまた開けた時に、他のものよりは大きい入れ物を見つけ、そこにお米を発見した。
なんでお米を冷蔵庫に?
これが実は常識なの?
なにわともあれホッとして、これだけは出来るとルンルン気分でお米を研いで炊飯器にセットした。それにしても分厚い釜だ。
お米が炊き上がるまで、お風呂の準備しておかなきゃと、いそいそ掃除を始めた。
お風呂はユニットバスで、お手入れしやすかったが、大きなバスタブに魅せられた。
「あー、足がゆったり伸ばせるー、何これ?もしかしてジャグジーとやらなんじゃない?」
自室にも浴室はあるが、こんなに広くはない。かっても違う。
「着替えくらいは自分で準備するわよね。」
そして次は……ベッドメイキングとか?
「あ、ここはお布団だった。」
そうだった。
でも夫は今夜この部屋で寝るのだろうか?
ほとんど別館にいないくせに、今日もまた本館の部屋で夜を明かすのではないか?
そう思うと、あまり丁寧すぎるのもバカらしく感じる。でも、ここを担当していた従者さん達はきっちりこなしていたんだよね。うん、150万の為には文句を言われないように頑張ろう!
と、布団クリーナーなるもので、1枚1枚丁寧に綺麗にした。
が、終わった瞬間ホッとして、私としたことが仕上げたばかりの布団にゴロンとしてしまった。
思えば今日は姑にクラシックコンサートに連れていかれ、そこから様々な波がやってきた。
「我ながらよく乗り越えられてるなぁ……」
ズボラをズボラと思わず、のんべんだらりと一人暮らしを堪能していた自分がここまで意志を貫く姿勢。我ながら褒めてやりたくなる。
「……はぁ、それにしても……なんて心地いいの……」
一気に疲れが体にのしかかり、布団から離れられなくなった私は、このまま眠ってしまったのだ。
一人暮らしの約3年、春はコンビニ弁当や惣菜を買い込んだ。
夏は実家から貰ったそうめんが主食で、たまにキュウリとシーチキンをマヨネーズで和えておかずにしていた。
秋はご飯が美味しくて、麺つゆときのこ類をドバッと入れて炊き込んでいた。
冬はカップラーメンとコンビニおでんや冷凍うどんで乗り越えた。
サプリを多用し、よくわからない健康食品を買っては失敗していたこともある。
「はぁー、やばい……」
夫の好みなど聞いたこともない。
最新式家電を選ぶくらいだ、意外とレンジでチンすりゃなんかうまく作れるんじゃないかと思い、こっそり毛利さんに『説明書』があればお願いしますと頼んだ。
5分も経たないうちにそれは見つかったが、一安心と同時に
「申し訳ありません、私、今から本館にて研修を受けますので、1週間はこちらに来られません。ですので、お助けできるのはここまででございます。生憎、近重も武田も奥様の御用に付き添っており、いつ別館に戻れるかわからない状況であります。」
と、私の味方は離れていってしまった。
いや、わかってるよ。
今は私に付いていても、すぐにみんな藪坂さんに付くのだから頼りにするのも良くないって思ってる。でもさ、本当に情報が皆無の状態でお世話なんてのも酷な話で。
まあ、うん、月150万だものね。
仕方ないっちゃ仕方ないよね。
頭を使って足を使って、頑張るしかないんだ。
たちまち、私は説明書に付属してあるレシピブックで、冷蔵庫の食材でできそうな一番材料が少なく済むものを選び、作り始めた。
なんだろ。
結果的に、これって全部同じ味だよね?
ナスとピーマンの和え物
きのこのお浸し
湯豆腐のきのこ餡かけ
しかも今は梅雨に差し掛かり、結構ジメジメしてるのに湯豆腐にしちゃった。
「あっ!お米!」
大事な主食の白ご飯を炊き忘れ、慌ててお米を探した。
が、それがなかなか見つからない。
いろんな引き出しを開けてみるが、それらしきものがない。
諦めて、冷蔵庫をまた開けた時に、他のものよりは大きい入れ物を見つけ、そこにお米を発見した。
なんでお米を冷蔵庫に?
これが実は常識なの?
なにわともあれホッとして、これだけは出来るとルンルン気分でお米を研いで炊飯器にセットした。それにしても分厚い釜だ。
お米が炊き上がるまで、お風呂の準備しておかなきゃと、いそいそ掃除を始めた。
お風呂はユニットバスで、お手入れしやすかったが、大きなバスタブに魅せられた。
「あー、足がゆったり伸ばせるー、何これ?もしかしてジャグジーとやらなんじゃない?」
自室にも浴室はあるが、こんなに広くはない。かっても違う。
「着替えくらいは自分で準備するわよね。」
そして次は……ベッドメイキングとか?
「あ、ここはお布団だった。」
そうだった。
でも夫は今夜この部屋で寝るのだろうか?
ほとんど別館にいないくせに、今日もまた本館の部屋で夜を明かすのではないか?
そう思うと、あまり丁寧すぎるのもバカらしく感じる。でも、ここを担当していた従者さん達はきっちりこなしていたんだよね。うん、150万の為には文句を言われないように頑張ろう!
と、布団クリーナーなるもので、1枚1枚丁寧に綺麗にした。
が、終わった瞬間ホッとして、私としたことが仕上げたばかりの布団にゴロンとしてしまった。
思えば今日は姑にクラシックコンサートに連れていかれ、そこから様々な波がやってきた。
「我ながらよく乗り越えられてるなぁ……」
ズボラをズボラと思わず、のんべんだらりと一人暮らしを堪能していた自分がここまで意志を貫く姿勢。我ながら褒めてやりたくなる。
「……はぁ、それにしても……なんて心地いいの……」
一気に疲れが体にのしかかり、布団から離れられなくなった私は、このまま眠ってしまったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
今日でお別れします
なかな悠桃
恋愛
高校二年の碧は黒髪のショートボブ、眼鏡の地味な女の子。特別目立つこともなく学校生活を送っていたが、阿部貴斗との出会いによって環境がガラリと変わっていく。そして碧はある事を貴斗に隠していて...
※誤字、脱字等など見落とし部分、読み難い点申し訳ございません。気づき次第修正させていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる