嘘つきは私かもしれない

koyumi

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第30話

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 とは言ったものの、実のところ、私の家事能力はレベル1だ。
 一人暮らしの約3年、春はコンビニ弁当や惣菜を買い込んだ。
 夏は実家から貰ったそうめんが主食で、たまにキュウリとシーチキンをマヨネーズで和えておかずにしていた。
 秋はご飯が美味しくて、麺つゆときのこ類をドバッと入れて炊き込んでいた。
 冬はカップラーメンとコンビニおでんや冷凍うどんで乗り越えた。
 サプリを多用し、よくわからない健康食品を買っては失敗していたこともある。

「はぁー、やばい……」

 夫の好みなど聞いたこともない。
 最新式家電を選ぶくらいだ、意外とレンジでチンすりゃなんかうまく作れるんじゃないかと思い、こっそり毛利さんに『説明書』があればお願いしますと頼んだ。
 5分も経たないうちにそれは見つかったが、一安心と同時に
「申し訳ありません、私、今から本館にて研修を受けますので、1週間はこちらに来られません。ですので、お助けできるのはここまででございます。生憎、近重も武田も奥様の御用に付き添っており、いつ別館に戻れるかわからない状況であります。」
と、私の味方は離れていってしまった。
 いや、わかってるよ。
 今は私に付いていても、すぐにみんな藪坂さんに付くのだから頼りにするのも良くないって思ってる。でもさ、本当に情報が皆無の状態でなんてのも酷な話で。
 まあ、うん、月150万だものね。
 仕方ないっちゃ仕方ないよね。
 頭を使って足を使って、頑張るしかないんだ。

 たちまち、私は説明書に付属してあるレシピブックで、冷蔵庫の食材でできそうな一番材料が少なく済むものを選び、作り始めた。
 
 なんだろ。
 結果的に、これって全部同じ味だよね?

 ナスとピーマンの和え物
 きのこのお浸し
 湯豆腐のきのこ餡かけ

 しかも今は梅雨に差し掛かり、結構ジメジメしてるのに湯豆腐にしちゃった。

「あっ!お米!」

 大事な主食の白ご飯を炊き忘れ、慌ててお米を探した。
 が、それがなかなか見つからない。
 いろんな引き出しを開けてみるが、それらしきものがない。
 諦めて、冷蔵庫をまた開けた時に、他のものよりは大きい入れ物を見つけ、そこにお米を発見した。
 なんでお米を冷蔵庫に?
 これが実は常識なの?

 なにわともあれホッとして、これだけは出来るとルンルン気分でお米を研いで炊飯器にセットした。それにしても分厚い釜だ。

 お米が炊き上がるまで、お風呂の準備しておかなきゃと、いそいそ掃除を始めた。
 お風呂はユニットバスで、お手入れしやすかったが、大きなバスタブに魅せられた。

「あー、足がゆったり伸ばせるー、何これ?もしかしてジャグジーとやらなんじゃない?」

 自室にも浴室はあるが、こんなに広くはない。かっても違う。

「着替えくらいは自分で準備するわよね。」

 そして次は……ベッドメイキングとか?

「あ、ここはお布団だった。」

 そうだった。
 でも夫は今夜この部屋で寝るのだろうか?
 ほとんど別館にいないくせに、今日もまた本館の部屋で夜を明かすのではないか?
 そう思うと、あまり丁寧すぎるのもバカらしく感じる。でも、ここを担当していた従者さん達はきっちりこなしていたんだよね。うん、150万の為には文句を言われないように頑張ろう!

 と、布団クリーナーなるもので、1枚1枚丁寧に綺麗にした。
 が、終わった瞬間ホッとして、私としたことが仕上げたばかりの布団にゴロンとしてしまった。

 思えば今日は姑にクラシックコンサートに連れていかれ、そこから様々な波がやってきた。 
「我ながらよく乗り越えられてるなぁ……」
 ズボラをズボラと思わず、のんべんだらりと一人暮らしを堪能していた自分がここまで意志を貫く姿勢。我ながら褒めてやりたくなる。
「……はぁ、それにしても……なんて心地いいの……」

 一気に疲れが体にのしかかり、布団から離れられなくなった私は、このまま眠ってしまったのだ。
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