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異質
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部長の家は街中の一等地にそびえる高層マンションの10階にあった。
新居から徒歩2分の近さで呆気にとられた。
「知ってるんだ。依子ちゃん、あのマンションに引っ越したんだよね?しかも1人で。」
車中、ギョッとすることをサラッと言ってのける部長。
「やだなぁ。たまたまだよ。たまたま見かけたから。でも、旦那さんは見えなかったし、引っ越しのトラックとかなかったし。ただ友達の家にお泊まりでもするのかなって思ってたけど、違うんだね。
君が1人でベランダにいる所も見た。」
「部長?あの…ストーカーの趣味でもあるんですか?怖いんですけど…」
ブレーキとアクセルを間違えそうになる。タダでさえ緊張しながらハンドル握っているというのに。
「ストーカーの趣味?まさかっ、趣味じゃないよ。本気だから。」
「やっ、け、警察、警察行きますからっ!」
「ぶっハハハハハー!!!」
「笑い事じゃないですよ?変態ですよ?犯罪ですよ?わ、私、ボイスレコーダー持ってますからね!!」
本当に持っている。
常備している。離婚に有利な立証を数多くとりたいからだ。
「あ、そこ右だよ。すぐに駐車場あるから入って。車、傷つけたら体で払ってもらうからね。」
背中が冷えるのを通り越してギシギシする。
揶揄ってる?本気?まさか…
地下駐車場に入ると、すぐに警備員がやってくる。
助手席の部長を確認すると、ニコリと笑って誘導してくれた。
なんとか無事、傷つけずに駐車できた。
1年ぶりなのに、我ながら見事だ。
でも、外車はもう乗りたくない。
優越感もなにもなかった。
車負けしてる自分が恥ずかしかった。
もう、手前の信号から頭を抑える手を離し、余裕の表情の部長。
「あの、部長大丈夫そうなんで、わたしはここで失礼します。」
「まさか、帰すわけないだろ?君は僕に感謝しないのか?」
部長の言葉にキョトンとしてしまう。
「はぁー、気づかない?僕は君を助けたんだよ?君が、旦那と会わないように。」
確かに。それは一理ある。いや、大いに救われた感がある。
「すみません、鈍感でした。
あの、部長、ありがとうございました。それではこれで失礼します。」
「たった一言?コーヒーでも淹れてよ。
さあ、こっちだよ。」
「あ、ちょっと、部長!!」
強引に手を引っ張られ、結局部長の部屋に入れられてしまった。
エレベーターで気づいたが、部長は私のカバンを持って先手を取っていたのだ。
なんだろう?この異質な空気。
部長の部屋は、見た目清潔感溢れ、嫌味のない洒落た感があった。
だが、どこか受け入れ難い雰囲気が充満している。
「まあ座ってよ。依子ちゃんは警戒レベル高すぎだよね。いくら君が好きでも、既婚者である限り法律を犯すようなことはしないから大丈夫だよ。」
「はぁ………えっ?」
「僕は君が好きなんだ。知らなかった?」
わかりやすい漫画のように、私は目をパチパチした。
「好きって…あの、勘違いしたくないんで、最初に聞いておきますけど、部下としての好きですよね?それとも…」
「依子ちゃんが部下で、すごく嬉しいよ。仕事はできるし、何より僕の心をドキドキさせてくれるからね。君に会える会社は楽しくて仕方ない。
昨日と一昨日は冴えない2日だったよ。
次からはもっと早くに有休申請出してよ。
僕も休むからさ。」
「あの、それは社会人として、まして人の上に立つ人間としてどうなんですかね?」
「ふっ、ハハハハハっ。やっぱり依子ちゃんはいいな。君の旦那になりたいよ。
今のは本気だからね。
僕が狙っているのはいつも依子ちゃんだってこと、知っていてよ。」
サーーーーーっと血の気がひいていく。
本当に本気ですか?
私でいいんですか?
何故?
「まあまあ、そんなに驚かないでよ。僕は君がこの部屋に居てくれて、飛び跳ねたいくらい嬉しいんだ。
そうだ!昔に戻らないか?ほら、女の子は好きだろう?家族ごっこ。」
この人、やばい人だったんだ。
ただのタラシじゃない。
それならまだマシ。
取扱不注意な人だ。
当然の如く、私は部長がなんと言おうが無視をして部屋を出た。
引き止めはしない。
ただ、
「明日も待ってるよ」
と、軽快な声をかけられた。
諭のいない大人の世界を、私は知らなかった。
新居から徒歩2分の近さで呆気にとられた。
「知ってるんだ。依子ちゃん、あのマンションに引っ越したんだよね?しかも1人で。」
車中、ギョッとすることをサラッと言ってのける部長。
「やだなぁ。たまたまだよ。たまたま見かけたから。でも、旦那さんは見えなかったし、引っ越しのトラックとかなかったし。ただ友達の家にお泊まりでもするのかなって思ってたけど、違うんだね。
君が1人でベランダにいる所も見た。」
「部長?あの…ストーカーの趣味でもあるんですか?怖いんですけど…」
ブレーキとアクセルを間違えそうになる。タダでさえ緊張しながらハンドル握っているというのに。
「ストーカーの趣味?まさかっ、趣味じゃないよ。本気だから。」
「やっ、け、警察、警察行きますからっ!」
「ぶっハハハハハー!!!」
「笑い事じゃないですよ?変態ですよ?犯罪ですよ?わ、私、ボイスレコーダー持ってますからね!!」
本当に持っている。
常備している。離婚に有利な立証を数多くとりたいからだ。
「あ、そこ右だよ。すぐに駐車場あるから入って。車、傷つけたら体で払ってもらうからね。」
背中が冷えるのを通り越してギシギシする。
揶揄ってる?本気?まさか…
地下駐車場に入ると、すぐに警備員がやってくる。
助手席の部長を確認すると、ニコリと笑って誘導してくれた。
なんとか無事、傷つけずに駐車できた。
1年ぶりなのに、我ながら見事だ。
でも、外車はもう乗りたくない。
優越感もなにもなかった。
車負けしてる自分が恥ずかしかった。
もう、手前の信号から頭を抑える手を離し、余裕の表情の部長。
「あの、部長大丈夫そうなんで、わたしはここで失礼します。」
「まさか、帰すわけないだろ?君は僕に感謝しないのか?」
部長の言葉にキョトンとしてしまう。
「はぁー、気づかない?僕は君を助けたんだよ?君が、旦那と会わないように。」
確かに。それは一理ある。いや、大いに救われた感がある。
「すみません、鈍感でした。
あの、部長、ありがとうございました。それではこれで失礼します。」
「たった一言?コーヒーでも淹れてよ。
さあ、こっちだよ。」
「あ、ちょっと、部長!!」
強引に手を引っ張られ、結局部長の部屋に入れられてしまった。
エレベーターで気づいたが、部長は私のカバンを持って先手を取っていたのだ。
なんだろう?この異質な空気。
部長の部屋は、見た目清潔感溢れ、嫌味のない洒落た感があった。
だが、どこか受け入れ難い雰囲気が充満している。
「まあ座ってよ。依子ちゃんは警戒レベル高すぎだよね。いくら君が好きでも、既婚者である限り法律を犯すようなことはしないから大丈夫だよ。」
「はぁ………えっ?」
「僕は君が好きなんだ。知らなかった?」
わかりやすい漫画のように、私は目をパチパチした。
「好きって…あの、勘違いしたくないんで、最初に聞いておきますけど、部下としての好きですよね?それとも…」
「依子ちゃんが部下で、すごく嬉しいよ。仕事はできるし、何より僕の心をドキドキさせてくれるからね。君に会える会社は楽しくて仕方ない。
昨日と一昨日は冴えない2日だったよ。
次からはもっと早くに有休申請出してよ。
僕も休むからさ。」
「あの、それは社会人として、まして人の上に立つ人間としてどうなんですかね?」
「ふっ、ハハハハハっ。やっぱり依子ちゃんはいいな。君の旦那になりたいよ。
今のは本気だからね。
僕が狙っているのはいつも依子ちゃんだってこと、知っていてよ。」
サーーーーーっと血の気がひいていく。
本当に本気ですか?
私でいいんですか?
何故?
「まあまあ、そんなに驚かないでよ。僕は君がこの部屋に居てくれて、飛び跳ねたいくらい嬉しいんだ。
そうだ!昔に戻らないか?ほら、女の子は好きだろう?家族ごっこ。」
この人、やばい人だったんだ。
ただのタラシじゃない。
それならまだマシ。
取扱不注意な人だ。
当然の如く、私は部長がなんと言おうが無視をして部屋を出た。
引き止めはしない。
ただ、
「明日も待ってるよ」
と、軽快な声をかけられた。
諭のいない大人の世界を、私は知らなかった。
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