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パスタ
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私が好きなパスタはペペロンチーノ。
できればキノコ類が入っていればなお嬉しい。
今、目の前にあるパスタはまさにそれだ。
「依子ちゃん、早く食べないと冷めてしまうよ。」
私はなかなかフォークを動かす事ができず、固まっていた。
「……俺、あっち行ってるから、食べたら?」
諭は気を利かせたつもりか、店の奥に入っていった。
それでもなかなか食べる気になれず、私はフォークを置いて
「ごめんなさい。私には無理です。」
と謝って逃げるように喫茶店を出た。
ーどういうこと?
ーなんで諭が?
尋けばよかったのに、それさえも怖くて逃げてしまった。
道を考えず、ひたすら歩いていたら
「おいっ、依子!」
と、後ろから肩を掴まれてしまった。
「待てよ。俺を見て!」
なんだか悔しくて、思いっきり振り返った。
そこには、髪を少し切り、頬がこけた諭がいた。
だけど、姿そのものより、目が、以前とは全然違う。
「ごめん、急に姿を見せてしまって。」
必死に頭を下げて謝る。
イヤ、そんな姿を見たかったわけじゃない。
「……どうして?どうしてあそこにいるの?」
「偶然、じゃないか……。ごめん、俺、夕方早めに仕事切り上げて、どうしても依子を連れ戻したくて、依子の会社の近くで待ち伏せして、後、つけてた……。
どんな所に住んでるんだろうって、1人、なのかな?って……」
「あんたと違うって言ってるじゃない!」
「うん。そうだな。違うよ、依子は、俺とは全然違う。
そして、追っていたら、あの店に入るところを見て、依子が出ていってからすぐに俺も中に入った。」
諭は入店してから閉店まで、コーヒー一杯だけ頼んで居座ったらしい。
その日は閉店と同時に帰ったが、翌日も、翌々日も、私が出て行った後に入るということを繰り返していた。
そして2週間過ぎたころ、マスターから声をかけられ、今に至るという。
「マスターに、『うちのコーヒーが美味しいですか?』って、きかれて、俺、思わず『依子は毎日来ますか?』ってきき返したんだ。不思議な顔してたけど、何も言わずに頷いてくれた。
そしたら俺、いろんなことをあの人に喋っていて、いつの間にか泣いてた……」
諭が、泣く?
「それで……まぁ、いろいろあって、その日からあの店で、夜だけバイトさせてもらってるんだ。会社あるし、時間が許す限りだけど。」
「やだ、諭がバイト?あの店で?や、やめてよっ。私が唯一安らげる場所なのに、どうして?そんなに困らせたいの?」
「違うよっ!俺、そんなつもりないよっ!ただ、ただ依子に帰ってきて欲しいだけだっ。とにかく、明日もいるから来いよっ!明日は食べてくれよ、パスタ……依子のために、頑張って作るからさ……頼むよ……」
諭は言いたいことだけ言って、私の返事をきかずに振り返り、走って行った。
「……やだ。行くわけないじゃん!行くわけない!!!なんで?やめてよっ!」
人目を気にせず、私は拒絶の言葉を叫んだ。
顔を上げて、ハッとした。
今、自分がいる場所。
角を曲がれば、そこには毎年誕生日ケーキを買うお店がある。
ー今年は、食べれなかったな。大好きだったのに……。
切っても切っても、諭と縁が繋がってしまう。
できればキノコ類が入っていればなお嬉しい。
今、目の前にあるパスタはまさにそれだ。
「依子ちゃん、早く食べないと冷めてしまうよ。」
私はなかなかフォークを動かす事ができず、固まっていた。
「……俺、あっち行ってるから、食べたら?」
諭は気を利かせたつもりか、店の奥に入っていった。
それでもなかなか食べる気になれず、私はフォークを置いて
「ごめんなさい。私には無理です。」
と謝って逃げるように喫茶店を出た。
ーどういうこと?
ーなんで諭が?
尋けばよかったのに、それさえも怖くて逃げてしまった。
道を考えず、ひたすら歩いていたら
「おいっ、依子!」
と、後ろから肩を掴まれてしまった。
「待てよ。俺を見て!」
なんだか悔しくて、思いっきり振り返った。
そこには、髪を少し切り、頬がこけた諭がいた。
だけど、姿そのものより、目が、以前とは全然違う。
「ごめん、急に姿を見せてしまって。」
必死に頭を下げて謝る。
イヤ、そんな姿を見たかったわけじゃない。
「……どうして?どうしてあそこにいるの?」
「偶然、じゃないか……。ごめん、俺、夕方早めに仕事切り上げて、どうしても依子を連れ戻したくて、依子の会社の近くで待ち伏せして、後、つけてた……。
どんな所に住んでるんだろうって、1人、なのかな?って……」
「あんたと違うって言ってるじゃない!」
「うん。そうだな。違うよ、依子は、俺とは全然違う。
そして、追っていたら、あの店に入るところを見て、依子が出ていってからすぐに俺も中に入った。」
諭は入店してから閉店まで、コーヒー一杯だけ頼んで居座ったらしい。
その日は閉店と同時に帰ったが、翌日も、翌々日も、私が出て行った後に入るということを繰り返していた。
そして2週間過ぎたころ、マスターから声をかけられ、今に至るという。
「マスターに、『うちのコーヒーが美味しいですか?』って、きかれて、俺、思わず『依子は毎日来ますか?』ってきき返したんだ。不思議な顔してたけど、何も言わずに頷いてくれた。
そしたら俺、いろんなことをあの人に喋っていて、いつの間にか泣いてた……」
諭が、泣く?
「それで……まぁ、いろいろあって、その日からあの店で、夜だけバイトさせてもらってるんだ。会社あるし、時間が許す限りだけど。」
「やだ、諭がバイト?あの店で?や、やめてよっ。私が唯一安らげる場所なのに、どうして?そんなに困らせたいの?」
「違うよっ!俺、そんなつもりないよっ!ただ、ただ依子に帰ってきて欲しいだけだっ。とにかく、明日もいるから来いよっ!明日は食べてくれよ、パスタ……依子のために、頑張って作るからさ……頼むよ……」
諭は言いたいことだけ言って、私の返事をきかずに振り返り、走って行った。
「……やだ。行くわけないじゃん!行くわけない!!!なんで?やめてよっ!」
人目を気にせず、私は拒絶の言葉を叫んだ。
顔を上げて、ハッとした。
今、自分がいる場所。
角を曲がれば、そこには毎年誕生日ケーキを買うお店がある。
ー今年は、食べれなかったな。大好きだったのに……。
切っても切っても、諭と縁が繋がってしまう。
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