私と離婚してください。

koyumi

文字の大きさ
39 / 89

幸せ

しおりを挟む
 土曜日は実家から少し離れた場所に住む悠介にも会い、久々に対面で話ができた。

 彼女との出会いや、仕事のこと、子供の頃の話など、ぎこちないながらも笑って話せた。
「姉ちゃん、ごめんな。」
 畏まって言われたから、「あんたから謝罪受けるほど不幸じゃないわ」と、頭をパコッとしてやった。
 昔から甘えん坊で泣き落としばっかりのくせに、体が大きくなったからって大人ぶるなって、言ってやった。
「ひっでえなぁ。ったくよっ!」
って、言い返されたけど、このやりとりが嬉しくなっちゃうんだよね。
 都会で荒削りされてきた部分が、弟との摩擦でいくらか滑らかになっていることがわかる。

 日曜日、晴れ渡る空に純白のドレスを着た花嫁。義妹になるわけだけど、私にはすごく遠い存在に思えた。
 小姑って、こういう気持ちなのかとしみじみ感じた。これから幸せになるため、切磋琢磨して生きていく2人が、眩しすぎて羨ましかった。
 思っていたより、義妹の家族は私に対して寛容だったし、結婚式は滞りなく行われた。もしかしたら弟が何かやらかした時に、私のことに関連してつつかれるのかもしれないが。

 結婚式が終わって着替えたら、すぐに私は空港に向かった。
 母さんと父さんは、式が終わったばかりで疲れてるし、いろいろとやることもあるだろうから、空港へは1人で来た。

 機内アナウンスが流れ飛び立った。
 私はまた現実の世界に戻るのだ。
 九州で過ごした時間も現実だが、やはり私には真実味が無く、飛んでいる間、ずっと目を閉じていた。
 到着した時、夢を見たんだと自分に言い聞かせるために。
 そうでもしないと、立ち上がれない。
 本当はあのまま両親と暮らそうかなと考えていた。
 でも、私の帰る場所はあるが、生きる場所はないと思えた。
 

 タクシーでマンションまで帰宅し、ようやく部屋についた。空港まで、かなり距離はあったが、夜道が苦手なことを知ってる両親は、交通費だからと万札を握らせてきた。正直、怖かったから有り難く使わせていただいた。



 知らなかった。



 空港から、ずっと私を見ていた人がいたこと。
 もしタクシーに乗らなければ、同じバスに乗っていたこと。
 
 彼は、私に声をかけなかった。
 彼は、私を追ってはこなかった。

 偶然がまた重なれば、いつか目を合わすことがあるだろう。そのくらいの縁の強さを感じなければ、再びその手をとることなどできない。
 2人がセレンディピティを感じられたら、それが始まり。


 高原純平。
 彼は、2週間前に戻ってきた。
 その日は、遠方から来た取引先の社長を同僚と空港まで送っていた。

 同僚は、そのまま会社にまた戻る予定があったため、車を戻すついでに先に行った。
 高原は空港が好きで、夜の離着陸の風景を楽しむべく2時間ほどゆっくりしていた。
 ぼーっと空を見上げる時間もないほど、この4ヶ月は仕事に追われていた。ふと空いた久々の自分だけの為の時間。
 瞬きをすれば、否が応でも思い浮かぶ依子の顔。自分でもおかしいくらい深みにハマっていた。
 これだけ仕事をしていれば、きっと忘れているだろうと、近い将来の自分に期待していた。だが今、フッとオフの自分に切り替わった時、胸の奥の大事な部分は何も変わっていないとわかった。
「……元気、かな?……」
 ボソッと呟いた。
 それを機に、もう帰宅しようとバス停に向かうことにした。
 
 さっき到着した飛行機からだろうか。
 人の流れが多く、もう少しバスの時間をずらすべきか考えた。
 その時、ふと見かけた姿に「うそだろう……」と、時が止まった。
 ゴクリと喉を鳴らして、目を凝らした。「どこだ?どっちだ?」
 首を振り、歩きながら探した。
 見つけた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

離した手の温もり

橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...