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諭の気持ち
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いずみが出て言った。
それは、突然だったが、いつかはこうなるような気もしていた。
お腹の大きないずみを見て、俺は、
「嘘だろ……。」
と、絶句した。今まで何人もの浮気相手がいたが、誰1人妊娠させたことはなかったし、依子ですら避妊していた。
何分の一かの確率で、避妊に失敗することはあるとは知っていたが、まさか自分にあてはまるとは思わなかった。
依子とは離婚手続きをとったし、この際きちんと責任はとりなさいと、母さんは静かに言った。
もちろん、こっぴどく怒られた後だ。
涙でボロボロになった母親を、何度見てきたことだろう。だが、今回ばかりは命に関わる問題だし、孫ができたという感慨深いものもある。
ただ、いずみという存在は、依子を可愛がっていた母さんにとっては厄介者以外の何者でもなく、「同居しなさい」と言ったのも、愛情のある言い方ではなかった。
無事、生まれてからも、母さんは修也には暖かい目を向けるが、いずみと俺には冷たく接した。ただ、怒っているというよりは、どういう顔をしていいのかわからない感じだ。
依子のことを、本当に信頼していたし、娘のように思っていたから、急に違う女を受け入れなければならないことに順応できる程強くはない。
俺だって、依子とはこれから再出発をしていくつもりで、俺と依子専用の婚姻届だって用意済みだ。
母さんには、もう依子に会うなと強く言われている。父さんに至っては、ほぼ口を聞いてくれない。
「お前が守らなくても、依子ちゃんにはいい人が現れるさ。お前だけが幸せにできるなどと、うぬぼれるな。」
と、離婚当初言われたきりだ。
正直カチンときたし、許せない思いもあったが、今から考えれば当然の言われようだ。
マスターには、修也が生まれた報告はしておいた。突然辞めて、迷惑かけたし、本当にお世話になったから。
修也の夜泣きは激しく、ミルクを飲んでも眠ってくれない。
母さんは昼間、俺が仕事に行っている間に世話をしてくれているから、帰宅してからは俺が面倒を見ている。とはいえ、睡眠時間を削ってしまうと、最初のうちは気力で乗り切れたが、今は食欲も落ちるほど体力が失われてきているのがわかる。だから、仕事先でも迷惑をかけてしまう失敗を何度かしてしまい、事情を話すと、落ち着くまでは半日勤務の日を設けてもいいと言われた。
まるきし休みはとれないが、有り難い提案に感謝した。
そして今日、16時に帰宅すると、マスターから電話があり、たまには店に来ないかと言われた。修也の顔が見たいと。
「背負ってばかりだと潰れてしまうぞ。息抜きも必要だろう。」
と、言われ、躊躇したが行くことに決めた。
修也は昼も30分くらいの細切れにしか寝ず、母さんは疲れ切っていた。
抱っこ紐を装着し、俺があやそうと抱き上げる。
修也とくっついているのは、大好きだ。あったかいぬくもりが直に伝わり、俺しか頼れない小さな存在が愛おしくてたまらない。
「早めに帰るから」
と言って、割と長い距離を歩いて出た。
段々と揺れが心地よいのかまぶたが重そうな修也は、そのうち眠った。
「かわいいな……。」
そして、店に近づいた時、依子に気づいた。
相変わらず、堅さを帯びた背中をしている。思わず手を肩に下ろそうとしてしまう自分に「ダメだ」と、思い聞かせ、名前だけ呼んだ。
俺の声だと気づかなかったのか、意外にあっさりとこちらに顔を向けた依子は、俺ではなく、修也に目を奪われていた。チラッとこちらを見て、すぐに視線が下がり、そこで留まっている。
当然だろう。
別れた旦那が小さな子供を胸に抱いているのだから。
依子には、何も話すつもりはなかった。
うまくいっていると、それだけでいいと思っていた。
でも、その存在は、愛しい人に変わりはなく、そばにいてほしい人間に変わりはなく、つい自分のことを知って欲しくて、まだ甘ったれの俺は、全てを話してしまった。
依子が何か言えるわけはないのに。
それは、突然だったが、いつかはこうなるような気もしていた。
お腹の大きないずみを見て、俺は、
「嘘だろ……。」
と、絶句した。今まで何人もの浮気相手がいたが、誰1人妊娠させたことはなかったし、依子ですら避妊していた。
何分の一かの確率で、避妊に失敗することはあるとは知っていたが、まさか自分にあてはまるとは思わなかった。
依子とは離婚手続きをとったし、この際きちんと責任はとりなさいと、母さんは静かに言った。
もちろん、こっぴどく怒られた後だ。
涙でボロボロになった母親を、何度見てきたことだろう。だが、今回ばかりは命に関わる問題だし、孫ができたという感慨深いものもある。
ただ、いずみという存在は、依子を可愛がっていた母さんにとっては厄介者以外の何者でもなく、「同居しなさい」と言ったのも、愛情のある言い方ではなかった。
無事、生まれてからも、母さんは修也には暖かい目を向けるが、いずみと俺には冷たく接した。ただ、怒っているというよりは、どういう顔をしていいのかわからない感じだ。
依子のことを、本当に信頼していたし、娘のように思っていたから、急に違う女を受け入れなければならないことに順応できる程強くはない。
俺だって、依子とはこれから再出発をしていくつもりで、俺と依子専用の婚姻届だって用意済みだ。
母さんには、もう依子に会うなと強く言われている。父さんに至っては、ほぼ口を聞いてくれない。
「お前が守らなくても、依子ちゃんにはいい人が現れるさ。お前だけが幸せにできるなどと、うぬぼれるな。」
と、離婚当初言われたきりだ。
正直カチンときたし、許せない思いもあったが、今から考えれば当然の言われようだ。
マスターには、修也が生まれた報告はしておいた。突然辞めて、迷惑かけたし、本当にお世話になったから。
修也の夜泣きは激しく、ミルクを飲んでも眠ってくれない。
母さんは昼間、俺が仕事に行っている間に世話をしてくれているから、帰宅してからは俺が面倒を見ている。とはいえ、睡眠時間を削ってしまうと、最初のうちは気力で乗り切れたが、今は食欲も落ちるほど体力が失われてきているのがわかる。だから、仕事先でも迷惑をかけてしまう失敗を何度かしてしまい、事情を話すと、落ち着くまでは半日勤務の日を設けてもいいと言われた。
まるきし休みはとれないが、有り難い提案に感謝した。
そして今日、16時に帰宅すると、マスターから電話があり、たまには店に来ないかと言われた。修也の顔が見たいと。
「背負ってばかりだと潰れてしまうぞ。息抜きも必要だろう。」
と、言われ、躊躇したが行くことに決めた。
修也は昼も30分くらいの細切れにしか寝ず、母さんは疲れ切っていた。
抱っこ紐を装着し、俺があやそうと抱き上げる。
修也とくっついているのは、大好きだ。あったかいぬくもりが直に伝わり、俺しか頼れない小さな存在が愛おしくてたまらない。
「早めに帰るから」
と言って、割と長い距離を歩いて出た。
段々と揺れが心地よいのかまぶたが重そうな修也は、そのうち眠った。
「かわいいな……。」
そして、店に近づいた時、依子に気づいた。
相変わらず、堅さを帯びた背中をしている。思わず手を肩に下ろそうとしてしまう自分に「ダメだ」と、思い聞かせ、名前だけ呼んだ。
俺の声だと気づかなかったのか、意外にあっさりとこちらに顔を向けた依子は、俺ではなく、修也に目を奪われていた。チラッとこちらを見て、すぐに視線が下がり、そこで留まっている。
当然だろう。
別れた旦那が小さな子供を胸に抱いているのだから。
依子には、何も話すつもりはなかった。
うまくいっていると、それだけでいいと思っていた。
でも、その存在は、愛しい人に変わりはなく、そばにいてほしい人間に変わりはなく、つい自分のことを知って欲しくて、まだ甘ったれの俺は、全てを話してしまった。
依子が何か言えるわけはないのに。
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