私と離婚してください。

koyumi

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そばに 2

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 初めて使用した小どんぶり。
 ほっこりした形が、あったかいお粥をさらにぬくもりあるものに上書きしている。

「熱いから、フウフウしてよ。」

「うん。ありがとう。いただきます。」

 ホワッと口の中に落ち着く白いお米達。塩分調整も程よい。
 お粥って、こんなに美味しかったんだ……。

「……合格?」

「はい。花まるですよ。美味しい。」

「花まるか。そりゃよかった。」

 和かに私を見る高原さん。
 こんなに優しくされると、また甘えたくなるのに。

「食べたら薬飲もう。そしたらまた横になってね。」

 おまけに、ドがつく心配性。
 こういう人って、よく空回りしちゃうんだよね。
 正直すぎて、私は苦手だったな。
 だけど今は、すごくいい。

 ゆっくりとお粥を平らげ、薬を飲んで、言われたとおり、またベッドに入った。

「僕はもう少しここにいるから、何かあれば声かけて。」

 そう言われ、閉められた寝室のドア。

 途端にまた1人になったみたいで、胸がグッと押されてしまう。

 病気のせいだったらいい。
 体が弱ってるから、心も弱くなっていることが理由だったらいい。
 やたらと高原さんを愛しく思ってしまう。

「バカだな、わたし……。」

 ガバッと頭まで布団をかぶって目を閉じた。

 薬が効いているせいか、体力が弱まっているせいか、私はそれからまた数時間眠ってしまっていた。

 ふと気づいたのは、額に触れるあったかい感触があったから。

 ゆっくりと目を開け、そこにジワジワと見えてくる真剣な瞳。
 逸らすことができない。
「あ、あの……」
ーーそばにいて。
 って、言えたら、どんなにいいだろう。
 素直になれたら、どんなにいいだろう。

「依子ちゃん、もう、大丈夫かな?僕、そろそろ帰るから。だから、もしまた悪くなったら、連絡して。」

「あ……はい……ありがとう。」

 最後にその大きな手を、額から頬にずらし、ゆっくりと離れると、高原さんは帰っていった。
 左腕にかかるコートを、引っ張って引き止めようとか、頬にあたる右手に、自分の手のひらを重ねてみようとか、ごちゃごちゃ考えてしまったが、結局どれもできなかった。
 私ができたのは、彼に言われた通り、ベッドに横たわることだけだった。

 不覚にも、ポロポロと涙が溢れてきてしまった。
 
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