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勇気
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スーッと寝息が聞こえてきて、私はそっと高原さんの頭をクッションに乗せた。
「やっぱり、全然寝てないんじゃない。」
ブランケットを掛けるが、それだけじゃ寒いような気がする。
「あれ?」
おまけに、ただ寝ているだけとは思えない息遣いに、予感は当たる。
《ピピ、ピピ、ピピ》
38.2度。
風邪、うつしちゃったんだ……!
「ごめんなさい……。」
やってしまった、と思ったが、項垂れてる場合じゃない。
すぐさま、ベッドのシーツを替えて、枕にはバスタオルを敷き、次は私がやらなきゃと動いた。
こんなに早くウィルスが回るなんて、相当疲れ切った身体なのだろう。
日頃の彼の生活ぶりがわかって、また切なくなる。
ますます赤らむ顔に、(病院に行かなきゃ)と、高原さんを起こそうとした。
でも、寝れている時は無理に起こさない方がいいと、昔母親に聞いたことを思い出し、様子を見ることにした。
ソファのまま、上掛けだけプラスして、さっき、高原さんが持ってきたレジ袋から覗いている簡易的な氷枕をタオルにくるみ、頭の下に置いた。
その時、
《ポロン、ポロン、ポロン》
と、聞きなれない無機質な音が聞こえた。「ん、んん……」と、その音に呼応する彼の様子から、きっと彼の電話の音なんだろう。
こんな時にも、電話の音には反応してしまう。根っからの仕事人間なんだな。
うっすらと目を開け、こちらを見る高原さんと目が合った。そして、ゆっくりと頷いた。
私としては、鳴り止まない電話を何処かへ隠してしまいたいけど、きっと彼にしたら余計なことになるんだろう。
仕方なく、上着から携帯電話を取り出し、手渡した。
ハァーっと、ため息を吐き受け取ると、電話に出た。
「はい高原です。はい、はい、あぁ、それですか、でしたら……」
きっと辛いはずなのに、それを相手に感じさせまいと平生を装って対応する高原さん。
チラッと私を見たけど、ニコッと笑って(大丈夫)と合図を送る。
かっこよすぎるんですが……。
10分ほどしてようやく電話を終えた高原さんは、「はぁっ」と大きく息を吐き、目をぎゅっとつぶった。
眉を寄せている様は、とても苦しそうだ。
「高原さん、病院に行こう。」
「いや、それはいい……。大丈夫だから。」
「じゃ、ベッドに行こう。歩ける?」
「ん、いや、いいよ、ここで。ベッドは依子ちゃんが。」
「ダメよ。私はもう元気だし、こんなとこで寝てたら酷くなるだけだよ。ね?一緒に行こう。」
そう言うと、仕方なさ気に上体をあげ、ソファを降りてくれた。
「っつ!」
「頭、痛いんでしょ?薬あるから飲もう。」
「……ありがとう。」
鎮痛剤を飲み、ようやくベッドで横たわった高原さんは、顔をしかめながらもまた眠りについた。
私が高原さんにされたように、お粥を作ったり体温を記録したりしたかったのに、まだ体力が回復してなかったのか、ソファに座り込んでウトウトし、彼がついさっきまで眠っていた場所で、私も眠ってしまった。
何時間が経ったころ、ふと目が覚めて、慌てて高原さんの様子を見にいくと、額に汗がにじみ出てはいたが、眠れているようだった。
そっとタオルで汗を拭っていると、いきなりガシっとその手を掴まれた。
「た、高原さん?」
「……依子、ちゃん……。」
「は、い……?」
「……ごめん……好きに、なってばかりで……。」
「……っえ?」
「……ごめん。」
目を閉じたままでそんなこと言われたらもう、抑えられなくて……。
「……私こそ、ごめんなさい。」
そう言って、キスをした。
「やっぱり、全然寝てないんじゃない。」
ブランケットを掛けるが、それだけじゃ寒いような気がする。
「あれ?」
おまけに、ただ寝ているだけとは思えない息遣いに、予感は当たる。
《ピピ、ピピ、ピピ》
38.2度。
風邪、うつしちゃったんだ……!
「ごめんなさい……。」
やってしまった、と思ったが、項垂れてる場合じゃない。
すぐさま、ベッドのシーツを替えて、枕にはバスタオルを敷き、次は私がやらなきゃと動いた。
こんなに早くウィルスが回るなんて、相当疲れ切った身体なのだろう。
日頃の彼の生活ぶりがわかって、また切なくなる。
ますます赤らむ顔に、(病院に行かなきゃ)と、高原さんを起こそうとした。
でも、寝れている時は無理に起こさない方がいいと、昔母親に聞いたことを思い出し、様子を見ることにした。
ソファのまま、上掛けだけプラスして、さっき、高原さんが持ってきたレジ袋から覗いている簡易的な氷枕をタオルにくるみ、頭の下に置いた。
その時、
《ポロン、ポロン、ポロン》
と、聞きなれない無機質な音が聞こえた。「ん、んん……」と、その音に呼応する彼の様子から、きっと彼の電話の音なんだろう。
こんな時にも、電話の音には反応してしまう。根っからの仕事人間なんだな。
うっすらと目を開け、こちらを見る高原さんと目が合った。そして、ゆっくりと頷いた。
私としては、鳴り止まない電話を何処かへ隠してしまいたいけど、きっと彼にしたら余計なことになるんだろう。
仕方なく、上着から携帯電話を取り出し、手渡した。
ハァーっと、ため息を吐き受け取ると、電話に出た。
「はい高原です。はい、はい、あぁ、それですか、でしたら……」
きっと辛いはずなのに、それを相手に感じさせまいと平生を装って対応する高原さん。
チラッと私を見たけど、ニコッと笑って(大丈夫)と合図を送る。
かっこよすぎるんですが……。
10分ほどしてようやく電話を終えた高原さんは、「はぁっ」と大きく息を吐き、目をぎゅっとつぶった。
眉を寄せている様は、とても苦しそうだ。
「高原さん、病院に行こう。」
「いや、それはいい……。大丈夫だから。」
「じゃ、ベッドに行こう。歩ける?」
「ん、いや、いいよ、ここで。ベッドは依子ちゃんが。」
「ダメよ。私はもう元気だし、こんなとこで寝てたら酷くなるだけだよ。ね?一緒に行こう。」
そう言うと、仕方なさ気に上体をあげ、ソファを降りてくれた。
「っつ!」
「頭、痛いんでしょ?薬あるから飲もう。」
「……ありがとう。」
鎮痛剤を飲み、ようやくベッドで横たわった高原さんは、顔をしかめながらもまた眠りについた。
私が高原さんにされたように、お粥を作ったり体温を記録したりしたかったのに、まだ体力が回復してなかったのか、ソファに座り込んでウトウトし、彼がついさっきまで眠っていた場所で、私も眠ってしまった。
何時間が経ったころ、ふと目が覚めて、慌てて高原さんの様子を見にいくと、額に汗がにじみ出てはいたが、眠れているようだった。
そっとタオルで汗を拭っていると、いきなりガシっとその手を掴まれた。
「た、高原さん?」
「……依子、ちゃん……。」
「は、い……?」
「……ごめん……好きに、なってばかりで……。」
「……っえ?」
「……ごめん。」
目を閉じたままでそんなこと言われたらもう、抑えられなくて……。
「……私こそ、ごめんなさい。」
そう言って、キスをした。
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