私と離婚してください。

koyumi

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外国とか

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 暖冬と言われた冬でも、やはり2月は雪がちらつく中、私は26歳の誕生日を迎えた。
 昨夜から純君が泊まっていて、午前0時、日付が変わってすぐに甘い接吻を落としてくれた。

 あの日から1年経った。
 諭と離婚することが、絶対的な目標だった。
 ノイローゼのような、鬱のような、とにかく冴えない5年間の婚姻生活に終止符をうち、その後の日々に羨望の意を向けていた。
 今の自分が、あの頃描いていた姿と重なるかどうかはわからないけれど、離婚は間違っていなかったと思う。

「依子ちゃん、どこか行きたいところある?例えば外国とか。」

 暫しぼうっとしていた私に、不意に純君の端正な顔が近づく。
 その質問の意味を汲み取るべく、頭をひねったが、やはり誕生日のプレゼントを、海外旅行というスペシャリティあふれるものにしてくれるのかも!という期待しか出てこない。

「純君休み取れるの?結局お正月も出勤してるくらいなのに。」
「うーん、休みは今よりは少しはとれるかなぁ。」
「今よりはって、訳わかんない……ぇえ?まさか、転勤とか?異動とか?辞令が出たの?」

 そうなのだ。リクルーターの憧れ的存在の外資系エリートの純君は、いつ外国に転勤になってもおかしくはない。
 そうか、そういうことか。

「会社は辞めたんだ。いや、辞職願は出してるけど、あと1ヶ月は行かなきゃいけないかな。」
「辞めた?どうしてそんなこと……?」

 純君はスッと姿勢を正し、しっかりと私と目を合わせて話し始めた。

「……ごめん、大事なことを何も言ってなかった。
 俺の祖父はさ、何十年もアメリカに住んでいたんだ。妻と子供は日本に残して単身で。憧れってだけで、理容師の免許だけ持って。もちろん息子である俺の父親は反発して、一度も渡米したことなかったんだけど、俺の中では祖父の存在はすごく大きくて、よく手紙を書いてはあっちの写真を送ってもらってた。」
「理容師?単身で渡米って、純君のおじいさん、すごく破天荒なのね。意外……。」
「そうだね、破天荒ってのは間違いないね。小学生の頃に一度だけ会いに来た祖父が、アメリカの広大な土地や、様々な文化が溢れている話をしてくれたのがキッカケで、俺は外国に行きたいと思うようになったんだ。
 とにかく自由で、のびのびとできる、そんなイメージを抱いていて。」
「だから英語を体が受け入れたのね。」
「フフ。そうだろうな。外国に行くには英語は不可欠だからね。それで、ある程度蓄えが貯まったら、独立して、あっちにオフィスを構えたいとずっと構想していた。」
「オフィス?独立?まさか……!」

 ニコッと笑う純君。

「まさかの独立。一応4月から始動させるんだ。年末年始も仕事をしていたのは、本業というよりは、独立のために必要な準備をしていたからなんだ。」

 だから夜中に仕事を!?時差のために!?
 そんな大事な時期に、私なんかと一緒に過ごしていて大丈夫なんだろうか?

「依子ちゃんとは、ゆっくりゆっくり進んでいきたいとは思ってる。だから、依子ちゃんが日本にいたいなら遠距離でも繋がっていたいと思う。
 ただ、もし、3割くらいでも、俺と離れたくない気持ちがあるなら……是非ともついてきてくれないかな?」

「3割……。」

 やだ。
 無理。
 遠距離でゆっくりって、そんなの、できない。

「……依子、ちゃん?」

「3割なわけない。5割でもないし、7割でもないし、私、もう、純君と離れることなんて、1厘も考えてないよっ。だからっ…」

 カプっと唇を食べられた。
 唇だけじゃなく、頬も、耳も、こめかみも、首筋も。

「依子ちゃん、今の言葉、一生忘れないよ。俺、多分依子ちゃんのことになったら、じいちゃん以上に破天荒になるかもしれない。いつも自分で驚くんだ。
 君と初めて寝た夜も。君が会社で危ない目に遭った時も。君が、離れてしまいそうになった時も。最近は少し抑えられていたけれど、今の依子ちゃんの言葉でもう温順しく過ごすことは止めるから。」

 純君の手は、私の顔を優しく包む。

「覚悟、しといてよ?」

 こんな純君、初めてだ。
 だけど全然、怖くない。
 寧ろ楽しいことしか考えられない。
 幸せなことしか。

「覚悟、できてる。」
 
 私はそう言うなり、自分から唇を寄せて純君に食いついた。
 こんな私も、初めてだ。
 
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