私と離婚してください。

koyumi

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第2章

依子の結婚後に

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 そしてーー依子が結婚した。

 家族水入らずで過ごすらしい。

 俺はーーーー

 このまま、誰とも結婚など……。
 いずみとはいつか籍を入れるつもりではいた。母さんは大反対だったが、修也を思えば最後は折れてくれると思っていた。
 それが、こんなカタチになるなんて。
 修也……。
 抱きしめて、抱き上げて、笑って、もっと声を、ぬくもりを感じたかった……。



 夏の暑さも和らぎ、時折吹く風に涼しさを感じる頃、俺と母さんは依子の実家を出た。

 夏野菜の収穫も終え、秋の実りを願いながら畑を後にし、俺達は再び地元に戻った。
 母さんの状態を考えればまだ九州にいるべきだったかもしれないが、俺が辛かった。
 おばさんは依子の実の母だし、たまに親子で似ている部分を見ると懐かさに胸がグッときてしまう。
 依子は優しい。
 見た目、堅そうで、事務的な雰囲気があるが、内面はとても繊細だ。そこが魅力。依子とおばさんは笑い方が似ている。とはいえ、もう長い間心から笑う依子を正面から見ていないが……。


 ひとまず実家に戻り、風を通した。
 修也のものが残っている。
 小さなカラフルなおもちゃや、やけに沢山あるガーゼハンカチ。座布団に収まるくらい小さなサイズの服。
 そのどれもが、心を揺さぶって仕方ない。
 それは母さんも同じで、塞いだ心を更に頑なにしていく。

ーーーこのままじゃいけない。

 焦る気持ち。逸る気持ち。 
 怖さもあるが、俺はまた覇気を強めた。

『諭は打たれ強いから。』

 何度か依子に言われた言葉。
 褒められたのか、皮肉だったのか、その都度違っていたのかもしれないが、今思い浮かぶ言葉。


「母さん、ガッカリさせて、すまない……。俺……頑張ってみるよ……。いつかもし修也に会えた時に、恥ずかしくないように……母さんにはもう二度と、迷惑かけないように、頑張るから。」

 修也のスタイを握りしめ、父さんの仏壇の前に座る背中に語りかけた。

 返事はなかったけれど。


***********


 周辺整理を済ませながら就職先を探し、俺はホテルのバンケットサービスのバイトを始めた。
 以前働いていた職場からあまり距離は変わらないが、時間は不規則だ。

「冨樫さん、次は光の間、お願いします。」
「はい、三条さん。」

 三条すみれさんは、このホテルの社員でバンケットサービス部門のサブリーダーだ。
 同じくらいの年齢だろうか、随分しっかりしている。

 土日は大学生のアルバイトが多いが、皆同じようにホテルの制服を纏うため、落ち着いて見える。ここのバイトは茶髪禁止のため、若干明るく染めていた俺は、黒髪になった。
 というのも、伸びきった髪を短髪にしたら染めた部分は無くなった。
 清潔感を大切にするホテルの従業員という立場は、今までの俺には不向きな職場だった。
 前の職場は荒い気質でも仕事さえできれは文句は言われなかったし、見た目も厳しい規定などなかったから、飲屋街を歩くとたまにホストに間違えられたりもしていた。

 光の間に入ると、すでにいくつかのテーブルはお皿も並び始めていた。
 3人の女性たちが忙しなく手を動かしている。
 何をすればいいか確認するため、女性たちに近づいた。

「光の間、今日は親戚集めて婚約発表をするんだって。」
「婚約発表?そのためにパーティ開くなんて、どんな金持ちなのかしらね?」
「本当にね。名前なんだったかしら?」

 話し込む3人の姿に、声をかけることもできず、たちまち準備不足のテーブルをセットし始めた。
 聞きたくなくとも聞こえてくる情報。
 まあ、確かに両家の名前くらいは覚えておくべきか……。

「んーとね、確か、鴨?鴨井?だったかな?」

 
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