私と離婚してください。

koyumi

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第2章

電話の後

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 九州に来てから、母さんが誰かに電話をしたことはなかったと思う。
 まして、これほどまで明確な言葉を発したことはないはずだ。

 電話の相手はすぐに予想できた。

 依子だ。

 一体どうやって番号を知ったのだろう……?俺ですら知らないのに、手がかりになるものがこの家にあるとは思えない。

 母さんの行動を全て把握しているわけじゃない。
 俺自身、まだ通院しなくてはいけないからその時間は予測不可能だし、24時間見張るようなこと、できるわけがない。


 後日わかったことだが、依子の母親の携帯を盗み見て、番号を控えたらしい。
 俺とおばさんが畑仕事に出ている間、誰もいない母屋の座卓に置いてあった電話を見て、衝動的にやってしまったという。

ーー母さんはどこかの施設に入れた方がいいのかもしれない。
 もう、ここにいるべきではない……。

 おばさんと相談して、ここを出ることには決めた。

 だが、母さんの医療費や、自分の通院などもあり、資金面の心配は多々あった。だから、おばさんは畑仕事の合間に、この辺りの宅配トラックの仕事を見つけてくれて、十分見通しがついてからでもいいからと言ってくれた。
 デイサービスも利用して、母親の快復と、俺の仕事面の安定が同時進行すれば結果的にいいんじゃないか、と。

 何故ここまでして、俺達親子を助けてくれるのか?
 娘のことをズタボロに扱った俺を……。

「許しはしない。」

 おばさんは断言する。

「絶対に許しはしない。ただ、放っておいたら、私が四六時中気になって仕方ない。突き放せたらどんなに楽か……。
 私が後悔したくないから面倒みているだけ。私の自己満足。諭君を許すことはないけど、真知子さんには元気になってもらわなきゃ。」

と。


 俺の自己満足の為に、母親同士の友情も複雑なものにしてしまったんだな……。

 
 時間が流れ、夏の暑さが体に応える頃、突然母屋の方が慌ただしくなった。
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