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一章

全裸開幕

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一章 全裸開幕

 大介との、イベントの誘いの話の後、それを聞いていた女子が僕に話しかけてきた。
「大介クンの話のやつさー、なんていうか、気をつけたほうがいいよー。私の友達もさー、そのよくわかんないヤツにハマっちゃっててさー、どハマりしてるから、やめといたほうがいいよーって、言ってんだけど、全然聞いてくんなくて」
「え、それってどういう…」
「まあ私も詳しくは聞いてないからさ、あとは大介くんに聞きなよ。私の口からは、ね、チョット…ね!まあそうゆうことだから」
そんなやりとりもあって、僕の中で懐疑心と恐怖心と、訳の分からないものに対するき好奇心とが混じり合った。
それに、女の子の友人が参加しているということは、やはり間違いなく異性も参加するイベントなのだと確信できた。男性をカモにしてサクラを用意して罠に嵌めるようなものでは無いのだろうと、自分の中では楽観的に捉えてはいたが、やめといたほうがいいという助言に対しては、僕の異性に対する色欲が、それを打ち消してしまっていた。
後から考えたら、もう少し大介に問いただす必要があったかもしれないが、自分でも驚くほど、未知なる体験に対する好奇心と、思春期の妄想が掻き立てられて、僕はそのイベントとやらに対しての後ろめたさと、興味とが争いあっていた一週間だった。
 平和記念公園は、家から徒歩でも30分くらいのところだったので、のんびりと歩いて行く事にした。
公園とあるが、とても広い敷地で、賑わっていた頃は、祝日はバーベキューをする人達もいたが、近頃は利用者も減って、今では日中に営業マンがサボる為に駐車場で寝ているだけの、ただのだだっ広い所といった印象だが、国が管理しているのか、そんなに廃れても常に管理の行き届いている印象ではあったが、散歩などの外出もしなくなったこの頃、平和こ記念公園にいくのは何年ぶりだろうか。
不思議なことに、現地に近づくにつれて、どんどんと異様な空気を感じる。第六感とか、そういった超常的な話ではなく、夜なのに人気がなんとなく多かったり、なんというか、ライブ会場付近で感じる、人の熱気といったようなものを感じる。
僕の住んでいる所は畑しかないような田舎というわけでもないが、とりわけビルが立ち並ぶ都会でもないし、都心部からかなり離れているので、ベットタウンというわけでもないので、人の群衆特有の、あの騒々しさというか特異な熱気とやらには無縁な地域なので、この感じは僕にとって非常事態といっても過言でないほど、違和感の塊しかない。
それが現地に近づくにつれて、どんどんと強くなっていくのだ。
僕は好奇心と恐怖心の織り混ざった混沌とした感情を感じながら、会場に足を進めていった。
公園に着いた頃、僕の感じていた熱気程ではなかったが、やはり夜の公園にしては異常なほどの人集りがあった。普段誰もいないような公園なので、なんだか祭りの会場の感覚に近い高揚感も感じつつあったが、僕は人混みが苦手なので、やはりくるべきではなかったか、という後悔の念も出てきた頃、入り口付近に大介とその知り合いであろう女性を見かけた。
僕を見つけた大介が声をかけてきた。
「お、来たか将チャン。けっこー人きてるだろ。これでも俺が参加した時よりは少ない方なんだぜ。ちなみにこの子は俺の幼馴染の沢木茜。こいつもこのイベントにハマってて、俺よりベテランみたいだ、色々教えてもらおうぜ」
僕は初対面の沢木という女性に会釈しながら、緊張を隠しながらなるべくフランクさを装い挨拶をした。
「どうも、青木将吾です、よろしく」
沢木という女性はとても朗らかに愛想良く、僕に挨拶を返してくれた。服装はさほど派手でもなく、とりわけ地味な印象もない。ファッションに興味がない僕からしたら、今どきのよくある服装といったところか。ここでケバケバとしたド派手な服装とメイクをしていた女性だったら、僕はどれだけ緊張していただろうか。あれほど異星人だと感じるものもない。
そんな安堵感を感じていた。
「よろしくね、青木くん。沢木です。大介くんからはちょくちょく話きいてるよ。
こーいうイベント初めてでしょ。大丈夫だよ、私だって最初は緊張したし、そもそもこんなイベント聞いた事もなかったしね。全く訳わかんないでしょ。一緒に行動して教えてあげるから大丈夫よ。」
それから大介と沢木さんと僕の三人で、しばらく話をした。
どうやら沢木さんは大介と同じ小中学校で、家が近いからか、そこそこ仲が良かったらしいが、沢木さんは僕らとは別の、公立の高校に通っているらしい。
僕の中学の頃の成績ではとても手の届かない、クラスでも頭の良い連中が進学した高校なので、沢木さんもそれなりに成績優秀で勉強ができるんだろうなと思いつつ、普段異性と関わらない僕は、大介を仲介しながら沢木さんと、パッとしない話題を必死に考えつつ、とりとめのない話をしながら会場に足を運んでいった。
僕にとって異性と話す事自体がイレギュラーな事だったのもあるが、沢木さんのふと見せる笑顔、愛想の良さ、そして異性慣れしていない僕を察してかの、適度な距離感をもって接してくれる優しさから、僕はイベントの事よりも沢木さんの事が気になり始めていた。
客観的に見てとりわけ美人というわけでもないと思うが、人相の良さというか愛想のいい笑顔がとても可愛らしく、都会で派手な服装をしていたら、ナンパされてもおかしくはない容姿だとは思うし、何より異性慣れしていない僕には、異性の刺激にら慣れていないせいか、時折見せてくれるはにかんだ笑顔が、なにより僕の恋心を抉った。
僕はこれから何が起きるかということより、目の前の沢木さんと話している事がなにより楽しかったし、ドキドキしていた。
 そうこうしているうちに、僕たち三人は会場にたどり着いた。
参加者自体は20~30人といったところか、それより運営と思われる人員が以外と多く、参加者を上回っていそうだった。
会場に近づくにつれて感じていた人気に対しては、思ってたほどの人数ではなかったことに面くらいながらも、それでもこんな過疎な公園にこれだけの人数が集まっていること自体は異常事態ではある。
沢木さんの事で浮かれていた僕は、ようやっとこのイベントの異様さを目の当たりにして、未知な物に対する恐怖心を思い出した。
看板や、簡易なステージが作られていたが、なんとも言えない異様さと、このイベントとやらが想像以上にイカれたものなのかというのを、肌で感じながら、僕はこの経験者二人がいる安堵感で紛らわせ、インドア派特有の家に帰りたい欲求が吹き飛ぶ程の会場の熱気に、子供の頃感じた地元の祭りの高揚感を思い出した。
とにかく、これから始まるイベントは常軌を逸したものだということは肌に感じていた。

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