18 / 30
第一部
第18話 ゴールデンウィーク ~手伝い~ 1
しおりを挟む正午過ぎ――。揃って母屋の食堂へ行った五人は、伯母・律子が用意してくれた昼食を取った。自家製野菜と燻製のハムやチーズがたっぷり入ったサンドイッチだ。がっつくように食べる覓や永の横で、あとの三人は伯父夫婦と思い出話に花を咲かせる。通常のチェックインは午後4時からなので他の宿泊客の姿はまだ無く、悠も伯母の使いで出掛けていた為、何の気兼ねも無く話をすることが出来た。
「あぁ美味かった、ご馳走様ー。伯母さんのサンドイッチ、前よりもっと美味くなってる気がするよ」
「あら、ホント? 前より美味しいだなんて、そんな可愛いこと言ってくれると伯母さん嬉しいわ」
昔からそうだったが、この伯母にとっては、丞達五人全員がとにかく可愛く見えるらしい。ハーブ摘みから帰って彼等に再会した時、丞に抱き付き覓や龍利の頭を撫でながら、ひたすら「また可愛くなった」を連発していた。まぁ、いろんな意味で可愛げの無い悠と対比すると、義理とはいえ甥っ子達やその幼馴染の方が余程可愛く思えるのだろう。
「さて、お前達、午後はどうする予定なんだ?」
食後のコーヒーを運んできた洋介が訊く。盆ごと受け取った恵が、全員にマグカップを配りながら言った。
「今日は、以前やってたみたいに、ここの仕事のお手伝いをしようかと思って」
それを聞いて目を丸くする洋介。
「手伝いって…。折角遊びに来ているのに、無理しなくていいんだぞ? もう小さい頃とは違うんだし――」
頻繁にここを訪れていた頃、父に「伯父さんと伯母さんのお手伝いをしよう」と提案され、五人はシーツ運びや食器並べなどを手伝っていた。手伝うと言っても幼い子供達のこと、楽しい遊びの一環のような感覚で、実際にはあまり役に立ってはいなかったのだが、大人を手助けするという行為が単純に嬉しくて、全員が毎回我先にと率先して手伝っていたものだった。
恵はニッコリ笑って答える。
「だからですよ。大きくなってやっとまともなお手伝いが出来るようになったから、今度こそ役に立ちたいなって」
「しかしなぁ…」
「いいじゃん、伯父さん。迷惑掛けないようにするから手伝わせてよ。それが今回の旅行目的の一つでもあるんだからさ」
渋る洋介の態度に、丞も恵を援護する。顎に手を当て「ふ~む」と唸った伯父は、やれやれと肩を竦めて微笑した。
「分かったよ。それほど言ってくれるならお願いするかな。ただし、子供の時より大変な作業も頼むから、覚悟するんだぞ」
「勿論!」と頷いた五人は、温かいコーヒーを喉に流し込んでから立ち上がった。
「体力に自信のあるお前達には、ここを頼むよ」
洋介に連れられて覓、永、龍利がやってきたのは裏庭。大きな丸太の台が据えられ、傍の石に小振りの斧と鉈が立て掛けられている。片隅には大小様々な木の幹や枝の端材が山積みされていた。
「ここで薪割りをな。薪は幾らあっても困らないから、好きなだけ頑張ってくれていい。でも、くれぐれも無理はするなよ?」
伯父のペンションでは、夏はバーベキューやキャンプファイヤー、冬は薪ストーブにと、一年中薪を大量消費する。常に余裕を持って乾燥・ストックしておく必要があるのだ。いつもは洋介一人でその作業をこなしているが、若者三人に加勢して貰えるならかなりの助けになる。
伯父が持ち上げた斧を見て、永が目を輝かせた。
「へぇ、薪割りなんて初めてだ。楽しみー♪ なぁ、覓、龍兄ちゃん。誰が一番多く割れるか勝負しようぜ」
永の呼び掛けに、恵のいる食堂の方を見ながら後ろ髪を引かれていた覓は、くるりと振り向き片眉を上げる。
「あ? 勝負って、お前、俺に勝とうとかふざけたこと考えてる?」
「当ったり前じゃん」
火花を散らし始める二人。後ろに立っていた龍利は、軽く首を振ってから彼等を窘めた。
「二人とも、ふざけてばかりいたら怪我するぞ。やる気があるのは結構だけど、ちゃんと小父さんに正しいやり方を教わってからだ。小父さん、お願いします」
自分もぺこりとお辞儀をしながら覓達にも頭を下げさせる龍利。そんな三人に温かい笑みを向けつつ、洋介は手本を見せる為端材の一つを手に取った。
0
あなたにおすすめの小説
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
再会から始まる恋
春人
BL
覚えてない幼馴染が隣人だった。
幼馴染にだけ甘い社会人と幼馴染に無意識で心を開いてるフリーターの話。
社会人×フリーターのほのぼの日常物語。
※この物語はフィクションです。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた
木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。
自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。
しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。
ユエ×フォラン
(ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる