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スライムがなかまにくわわった!

スライムのロームが殖えた! ※

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「「あるじ、おはよう」」

 朝、目が覚めると、そこには透き通るような美貌の少年の顔があった。肩まで伸びる艶やかな水色の髪、白磁の肌。アクアマリンのような澄んだ瞳。すっと通った鼻梁に、桜色の薄い唇。それが二つ。

 驚きのあまりに反応を忘れていると、二人のロームは小首をかしげて微笑み、そして手のひらサイズのスライムに姿を変えた。僕は身支度をし、彼らをポケットに入れて、いつもの通り食堂へ向かった。



「ごきげんよう、ジャスパー。あなたの席はこちらよ」

 クリスティン・ケインズ公爵令嬢が空いた席を示す。僕は貧乏子爵家の三男、公爵令嬢とのランチなど恐れ多いのだが、モンスターテイマー仲間として時々お呼ばれしている。ダンジョンで偶然スライムを拾った僕と違い、上位貴族の子弟は護衛と狩に出かけたり、魔導士と共に魔物を召喚したり、または代々家を守る守護獣と契約したりと、強力な魔物を従えている。しかも彼らの従魔テイムモンスターは一様に有能で、勇敢で、良く躾けられていて、見目も麗しい。僕なんかが同席してもいいのだろうか、と恐縮しきりなのだが、意外なことに皆さん従魔への愛情が深く、ただふるふると震えるしか能のないロームも、しがない下っ端貴族の僕も、快く迎え入れて下さる。

 指示があるまで大人しく待機する優れた従魔たちの前で、ロームは平気で僕のデザートを奪って行く。しかし、毎回青ざめてあたふたする僕を尻目に、ロームは上位貴族の皆さんに温かく見守られ、いつしかマスコットのような存在になって行った。解せない。

 そんなランチ会だが、今日は様子が違った。ロームが二体にえたのだ。

「おや。ダンジョンのスライムのように大きくなるのかと思えば」

 目ざとく気付いたのは、第二王子のケネス殿下。彼の膝には幼い白獅子が乗っていて、非常に愛らしい。

「そうなのです。朝、目覚めたら殖えておりまして…」

 ロームたちは、テーブルの上でふるふるぽよぽよと愛想を振り撒いている。教師の見立てでは、ロームはスライムの幼生だろうということで、これから大きくなるのかな、大きくなったらどこで飼おう、などと思案していたものだが、予想外に人型を取れるようになったり、給餌行動に、あ、あんなことや、こんなことをするようになったり…

「どうなさいましたの。お顔が真っ赤ですわよ」

「いえ、その、大きくなったり強くなったりするんじゃなくて、このまま殖えちゃって…」

「良いではないか。ロームはそのままでい」

 ケネス殿下に撫でてもらって、二匹はご機嫌だ。僕は何となく居たたまれなくなって、下を向いたまま、味のしないランチを食べた。



「んぶっ…じゅるっ…もう、やっ…」

 その夜、僕は二体のロームに魔力をむさぼられた。背後からロームに抱きしめられ、振り向きざまに濃厚なキス。両方の乳首は指でころころと転がされ、時折キュッと摘み上げられて、赤く膨らんでいる。毎晩執拗にいじり回されているうちに、そこはすっかり快楽を拾うようになってしまった。もてあそばれるたびに、ぴりぴりとした刺激が背筋を駆け上がる。

 もう一体のロームは、僕の陰茎を美味しそうに咥えている。わざとじゅぶじゅぶと音を立てながら、時々「あるじ、美味しい」とくぐもった声を上げる。そこでしゃべるのやめて。不規則な快感と、あとちょっとでイきそうだった僕の腰が、はしたなく揺れる。

 彼の指は、僕のアナルにつぷりと潜り、内側からぬるぬるとほぐしていく。もう僕の良いところは全部把握されていて、時々そこをコリコリと刺激されると、全身が跳ねてしまう。彼らは僕のそんな様子を嬉しそうに眺め、「あるじ、美味しい」と呟いては、また食事を再開する。

「もっ…ああっ♡やぁっ♡ダメっ♡んぁ…っ♡」

 何度か精を搾り取られ、まともに思考が紡げなくなった頃には、彼らは背中から無数の触手を生やし、僕の内側も外側も激しく蹂躙していた。身体中を触手が這いずり回り、どこもかしこも粘液にまみれながら愛撫される。ペニスは大きな口を開けた触手に咥え込まれ、うねるように扱かれ、鈴口からは細い触手が入り込む。触手を受け入れるのに慣れた後孔にはたくさんの触手が詰め込まれ、ぐちょぐちょと下品な音を立てながら、僕の中を無慈悲に掻き回す。

 激しさを増す一方の「食餌」に、涙も唾液も垂れ流しになっている僕。しかしそれらは全て、触手によって回収されていく。顔中を舐め回され、口の中も触手で埋め尽くされ、喘ぎ声まで喰い尽くされる。

「ん”ん”っ!ん”く”っ!!じゅるっ!!ん”ほ”ぁっ!!」

 彼らの粘液は甘く、口から下から注がれ、身体中に塗りつけられて、僕の身体はどうしようもなくたかぶってしまう。媚薬か何かだろうか。激しい快楽に朦朧としながら、僕から魔力を得るために、随分効率の良い作りをしているな、なんて他人事みたいに観察している僕がいる。

「~~~~~~~~!!!」

 一瞬、彼らの触手が動きを止め、硬直する。次の瞬間、全ての触手の先端から甘い粘液が勢いよく吹き出し、僕は激しく絶頂を迎えた。何度も何度も海老反りになりながら、全身をびくびくと痙攣させて。視界も、頭の中も、まばゆい光が激しくスパークして、真っ白だ。

「「主、美味しい」」

 前後から彼らに挟まれ、きつく抱きしめられながら、両方の耳に囁かれ、僕の意識はぷつりと落ちた。



 あんな夜を過ごしても、朝はやって来る。毎回どうやっているのかは知らないが、ロームは僕の身体に残された体液や粘液を全て綺麗に吸収し、翌朝には爽やかに

「「主、おはよう」」

 と微笑みかける。そしてまた、手乗りスライムに姿を戻し、今日も一日が始まる。



 もうすぐ冬休み。冬休みの前にはテストがある。来年は最終学年、就職に向けて成績を落とすわけには行かない。放課後、僕はいつものように、図書館に向かう。ところが

「君、ちょっといいかな」

 校舎脇で僕を呼び止めたのは、ケラハー侯爵家ご子息のキース様。

 キース様は、昨日のランチ会でも同席していた。ただし、彼は第二王子のケネス殿下の側近であるだけで、従魔は所有していない。いずれパートナーたる魔物を迎え入れようと思うのだけれど、学業と側近の仕事とで、なかなか機会に恵まれないらしい。

「従魔を迎え入れる練習として、殖えたロームを一体譲ってもらえないだろうか」

 キース様の要件は、そういうことだった。

 僕は非常に困惑した。確かにロームは雑食で、何でも食べて、飼育もしやすい。だが魔力を与えたところ、人型が取れるようになり、日々給餌行動が激化していく。毎晩あんなことやこんなことをされているとバレるわけには行かない。

「ロームは手乗りスライムで、ふるふる震えるくらいしか能がありません。しかもこれ以上強くもならないし、ただ殖えるだけのようです。侯爵令息のキース様が、そんな弱いスライムを使役されるのは、相応しくないかと」

 僕は遠回しに断った。しかし彼は、熱心な面持ちで訴えた。

「ロームはケネス殿下にも覚えがめでたい。いずれ僕が別の従魔を得た後も、大事にすると約束しよう」

 そう言われると、貧乏子爵の三男の僕には、断るすべがない。

「ロームの生態は、まだ謎に満ちています。変わった特徴が見つかれば、魔法省などに召し上げられかねません。もし不可思議な行動を取っても、どうかご内密に」

 僕はそう言って、ロームのうちの一体を、キース様に預けた。ロームはキース様の手のひらの上で、嬉しそうにぷるぷる震えていた。お前は誰でもいいのか。

「分かった。僕たちの秘密だな。大事にする」

 キース様はかすかに頬を染め、ロームを大事そうにポケットに仕舞った。



 翌日。いつもの如く、散々ロームに魔力を搾り取られ、しかし朝にはすっきりと目覚め、一日が始まる。どういう仕組みなのかは分からない。僕は気にしないようにして、朝食を摂りに食堂へ出かけた。

 しかし、この日はキース様が学園を欠席されたらしい。クラスが違うのでよく分からないが、いつもケネス殿下と常に行動を共にする彼の姿が見当たらなかった。もしかしたら、夜の間にロームにいろいろされて、ショックだったのでは。僕は生きた心地がせず、放課後キース様の部屋にお見舞いに行った。しかしキース様からはドア越しに、「ちょっと体調を崩しただけだ、ロームは元気だ」というお言葉をいただいた。僕はほっと胸を撫で下ろし、自室に戻った。



 胸を撫で下ろすのはまだ早かった。

「ジャスパー、おいで」

 その夜、ロームはいつもと様子が違った。艶めく水色の髪、白磁の肌、アクアマリンの瞳、それは変わらなかったのだが、なんと容姿や背格好が、キース様そっくりだったのだ。

 王宮の騎士団を預かるケラハー侯爵家の子息に相応しい、恵まれた体格に見事な筋肉。彫刻のように美しいしなやかな肢体は、男の僕でも見惚みとれてしまうほど。涼しく優しげな目元、強い意思を秘めた凛々しい眉。くっきりと精悍な鼻筋、いつもはキリリと引き結ばれた唇に、妖艶な笑みを乗せて。僕とは違う、伸びのあるテノールが耳元をくすぐり、はらの底からゾクリとする。

 そんなキース様もどきのロームが、生まれたままの姿で、同じベッドにいる。僕は慌てて逃げ出しそうになったが、そうだ、これはロームだ。きっと僕の魔力を通して僕の姿を真似たように、キース様に託したロームは、キース様の姿を学習したに違いない。ただそれだけだ。

 それだけなんだけど!

 まるで恋人のように抱きしめられ、すっぽりと腕の中に閉じ込められ。愛おしそうに潤んだ瞳で僕を見つめながら、うっとりと髪を撫でられる。そのまま大きな手が僕の頬を包み、ついばむようなキス。角度を変えて、何度か触れ合っていると、それはどんどん深くなって行き、まるで食べられるような甘い口付けへ。

「んっ…んんっ…はぁっ…」

 昨日まで僕がロームと交わしてきたキスは、キスじゃなかった。恋愛経験ゼロの僕が想像していたキスと、キース様が落とす大人のキスとでは、雲泥の差があった。ねっとりと絡み合う舌が、びっくりするくらい気持ちいい。てか、僕、男なんだけど!そしてこれ、スライムの給餌行動なんだけど!

 くちゅ、くちゅっと舌を吸われて、それだけで頭がボーッと痺れる。左腕にがっしりと抱き留められながら、髪や頬を滑っていた右手は、腹や胸をくすぐる。昨日まで散々いじられていた乳首は、キース様がするりと触れただけで、全身が跳ねるほどの快感をもたらした。駄目だ。ロームであることは分かっているのに、キース様の姿でキース様のやり方で触られると、はしたないほど身体が反応してしまう。

「ふふ、ジャスパー。もう、こんなになってる…」

 僕の陰茎をそろりと撫で上げ、キース様は耳元で囁いた。ヤバい、今のでイきそうになった。てか、キース様ってそういうこと言うの?

 気付いたら、キース様は僕のペニスをゆるゆると扱きながら、首筋や胸元にキスを繰り返していた。恋愛経験値半端ない。僕のような、後継にも求められない末端子爵家の三男ではなく、侯爵家の次男としては、ねや教育も受けているのだろう。もしかしたら婚約者の他に、恋人でもいるのかもしれない。自然に、流れるように、僕の脚と脚の間にはキース様が入り込んでいて、脚を閉じることも出来ない。僕はキース様の首に腕を回し、声を殺しながらはしたなく翻弄されるだけだ。だ、大丈夫。これはローム。これはロームだ。これは給餌行動なんだ!

 しかし、キース様が僕の陰茎を扱きながら、後孔に舌を這わせるのは駄目だ。いくら彼がスライムで、僕のあらゆる体液、老廃物、排出物を問題なく分解摂取するとしても、それだけは…

「らめッ♡らめ、キース様っ♡しょこ、らめれしゅぅっ…♡」

 まるで恋人のような愛撫に呂律も回らず、へろへろのまま無意味な抵抗を繰り返す。連日の触手に快楽を覚えてしまった尻穴は、キース様の熱い舌にドロドロに溶かされ、もう奥まで欲しくてヒクヒクしている。

「…いいね?」

 何が、と訊き返す間もなく、キース様は僕の中に分身を沈めて行った。いつも最終的に極太の触手でぐっちょぐちょに拓かれている僕のアナルは、それを歓んで飲み込んだ。しかし、キース様のペニスがもたらす快感は、触手のものと全然違った。僕のとは比べものにならない、立派なもの。グッと張ったカリが僕の中をグリグリとえぐり、太くて硬くて熱いそれが僕の中をぎっちり満たすと、えもいわれぬ充足感がある。何度か出入りを繰り返し、下生えが僕の入り口に触れた時、キース様を最後まで受け入れた歓びで、僕は知らない間に涙を流していた。

「あっ♡あっ♡キースしゃまっ♡はっ♡はぁんっ♡」

 最初は緩く、そして次第にリズミカルに。キース様の抽送は、だんだん激しくなって行った。硬く逞しいものでゴツゴツと突き上げられ、まるで内臓を殴られるような強烈な快感。強く腰を打ちつけられ、汗ばむ肌がパンパンとぶつかる音。キース様の極悪ペニスで中の狭い入り口をゴリリとこじ開けられると、僕はただひたすら無様な悲鳴を上げることしか出来なかった。

「お”っ!ごっ!イ”ぎッ!!あ”、あ”あ”、あ”…」

 荒れ狂う快感に何度も絶頂を極める僕を、キース様は捕食者の鋭い瞳でガツガツと責める。窮屈に体を折り曲げられ、卑猥な体位で犯されながら、乱暴に唇を奪われ、呼吸すらままならない。

「さあ、イくよ。イくよ。そらッ…!」

 ガツン、と叩きつけられ、グッ、グッと何度も確かめるように押し付けられる。僕の一番奥では、キース様の熱い迸りを感じる。一滴も逃すまいと、僕も夢中でキース様にしがみついた。お腹が熱い。どこもかしこも、全て。身体は、汗と、僕の吐き出したもので、ぐっしょりしていた。そんな僕を、キース様は愛おしそうにぎゅっと抱きしめ、僕はその腕の中で、ふわふわとしたまま意識を失った。



 ぱちりと目を開くと、そこには燃えるような赤毛ではなく、水色の髪と瞳のキース様がいた。

「ジャスパー、おはよう」

 そうだ。これはロームだ。キース様ではない。キース様ではなかった。しかし、昨夜のあれは、ほとんど、せ、セックス…

「ん、んむっ、ちゅっ…」

 慌てて悶えるより先に、キース様もといロームに唇を塞がれる。優しく抱きしめられ、ゆるゆると舌を絡め合うと、身体中の力が抜けて、トロトロに溶けてしまう。不意に唇が離され、もっと、と腕を伸ばした瞬間、彼はふっと微笑むと、手乗りスライムへと姿を変えた。僕は釈然としないまま、今日も彼を連れて食堂へ向かった。



 今日はキース様は普段通りに登校されたようだ。教室の窓から、ケネス殿下たちと渡り廊下を歩くキース様の姿を見かけて、ホッとした。彼の姿を見ただけでドキドキしてしまう自分がいるが、昨夜のあれは、ロームだ。スライムだ。給餌行動なんだ。散々言い聞かせて授業を終え、今日も図書館に向かう。

 しかし図書館の手前の校舎脇で、またしても聞き覚えのあるテノールに呼び止められる。

「今、ちょっと時間いいかな」



 僕たちはしばらく無言だった。お互い、手のひらの上では、水色のスライムが嬉しそうにふるふるしている。キース様の頬は赤かった。きっと僕も真っ赤だ。目を合わせることもできない。大体、何が起こったのか、二人とも予想がついていた。

「えっと、ご用件は、その…」

「うん…その、ローム、ね。可愛い…スライムだね…」

 無言。

「あの、じゃあその、秘密、ということで…」

「ああ。うん。秘密、だね」

 何とも言えない、気まずい空気が流れる。いや、気まずいというか、その。いくらここは人気ひとけがないとはいえ、気がついたら僕たちは見つめ合い、後少しのところで唇が重なるところだった。あっぶな!

「あのっ、給餌行動…あれは、スライムに給餌してるだけ、ですから…!」

「う、うん、そうだね!」

 あはは、はは。僕たちは二人して真っ赤になって、愛想笑いしながら、「それじゃ」ってことで、別れた。どうしよう。今日は勉強に身が入らないかもしれない。



 それにしても、次にロームが殖えた時には、どうしたらいいだろうか。一体でもすごいのに、二体同時もものすごかった。あれ以上同時に飼育できる自信はない。だけど、キース様みたいに、他の人に譲るわけにも行かない、気がする。

 手のひらの上で、ふるふると陽気に震えるロームを見つめながら、僕はとんでもないものを拾ってしまったのではないか、と今更ながらに思うのだった。
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