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第24話※ 王太子アイヴァン4(アイヴァン視点)
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「お前が細工師か」
何だか知らないが、森人の大公代理から、内々に客分を押し付けられた。しかも平民の亜人、細工を生業にしているという。何故私が引き受けなければならぬ。まあ良い。下の者に任せて、捨て置くだけだ。
王太子として生を受けて17年。私は王国という装置の部品として、淡々と過ごして来た。とはいえ、最初は違ったのだ。幼少期は、多忙ながらも子煩悩な父王に、美しく気高い母王妃から、それなりに愛情を受けて育ったと思う。歩けば喜ばれ、言葉を発すれば喜ばれ。剣を持てば褒められて、詩を誦じればまた褒められた。自分で言うのも何だが、私は特に出来の良い子だったらしい。しかし、出来が良過ぎた。幼いながらに文武ともめきめきと修め、ある日決定的な出来事と共に、私の運命は大きく変わった。
その日から、私の兄弟は皆、城の外に養子に出された。まだ幼い弟のみならず、腹違いの兄弟姉妹も同様。側室たちもだ。そしてわずか7歳にも関わらず、立太子が宣言された。婚約者が即座に決定し、侯爵令嬢アイリーンと共に特別な教育が施される。私たちは学園に通うこともならず、ひたすら次代の王と王妃に据えられるため、邁進することとなった。そして15の年には婚姻、16で父親になり、17で次子を授かり。日々王太子としての責務を果たし、外交や視察を淡々とこなす。そこに何の不満も、疑問もない。
いや、それは不正確だ。違和感や疑問は山のようにあった。しかしそれに答えられることはなかった。幼い頃は、望めばどんな知識も与えられ、学びたいことは全て叶えられた。しかし「あのこと」があってから、周囲の大人から「それは殿下が知らなくて良いことです」「それは殿下がなさらなくても良いことです」と言われ、あらゆる物事からやんわりと遠ざけられた。そして時折、こっそりとそれらを与えようとする者がいれば、彼らはある日突然辺境に「栄転」して行ったり、場合によっては「不慮の事故」に遭ったりして、居なくなった。とうとう癇癪を起こして強硬手段に出れば、食事の後に身体が痺れて、何日か口を利くこともままならない。そんなことが重なれば、嫌でも「部品」としての人生を受け入れざるを得ない。
そういう意味で、アイリーンは良きパートナーであった。彼女は自らの運命を割り切って受け入れ、それを乗りこなす度量があった。
「責務さえ果たせば後は自由、文句は言わせない」
彼女の言葉には、説得力があった。それに完全に同意したわけではないが、少なくとも現実を諦観して受け入れる同志の存在は、私にとって心強いものだった。
しかし、森人によって捩じ込まれたドワーフ。面会後に判明したのだが、彼は最近流通を始めた、あの馬車のタイヤとクッションを開発した張本人だと言うではないか。細工師と言えば、小物にちまちまと無駄な装飾を施す、無駄な職人だと思っていた。あのタイヤは良い、馬車の乗り心地が格段と上昇した。何だ、面白い仕事をするではないか。ならば無聊の慰めに、仕事ぶりでも見てやろう。
果たして、コンラートの仕事は私を魅了した。魔石を使って弾を打ち出すエアガンなるもの、そして光るベルト。魔石で走るミニ馬車もだ。説明を聞いてみれば、仕組みは非常に単純なのに、全く想像もしたことがないものばかりだ。私は夢中になって遊んだ。何しろ、玩具で遊ぶという経験が殆ど無かったのだから。
更に後日、彼が花街で淫具を開発販売していたことが耳に入った。
「何故そのような面白そうなことを申さぬ!」
彼は私よりも年長、既に成人だ。しかし、こんな子供のような形をして、淫具を作っていたなど。奇妙なギャップに、どうにも好奇心が止まらない。私はその夜、淫具を持って閨に来るよう、呼びつけた。
何を勘違いしたのか、婆やはコンラートに薄物を着せて寄越した。色事に程遠い容姿に、卑猥な下着姿。思わず吹き出してしまいそうになったが、しかし彼の運んできた淫具は、また斬新な発想でもって、私を魅了した。仕組みとしては単純だが、実に良く出来ている。つい試したくなるのも、道理と言えよう。そして、目の前の開発者本人が実験台になったのも、当然の成り行きだった。
まるで年端の行かぬ子供のような肉体、そしてそれに相応しい幼い陰部。しかし却ってそれが、妙にいやらしい。コンラートがおずおずとそれを扱き、女陰を模したオナホなるものを装着すると、つい悪戯心が湧き出て来る。私は何食わぬ顔で、「強」のスイッチを押した。
「あヒッ!」
微かな動作音と共に、コンラートの腰が跳ねた。私はゴクリと唾を飲み込み、次の玩具に手を伸ばす。
「で、他にも淫具があるようだが。これは?」
「あ、あの、これは乳、首の」
「こうか」
「ん”に”ッ!」
彼の敏感な反応が、面白くてたまらない。
「どうした。腰が揺れているぞ。で、これはどうするのだ?」
「それ、は、女性の」
「なるほど。動く張り型だな。ローションを塗って、こうか?」
「あ、違、そこッ、ああああ」
絶妙な柔らかさと滑らかな形、そして控えめなサイズだったからか。コンラートの尻は、それを難なく受け入れ、スイッチを入れて振動を起こすと目に涙を溜めて懇願する。
「やめてください、やめて、あああ、イく、イきますッ…!」
「ははは、良いぞ。達して見せるがいい」
「んあァッ…!!」
シーツを掴んでびくりと跳ね、彼は達したようだった。幼児にいけない悪戯をしたようで、妙に唆る。
「…随分と気持ち良さそうじゃないか。ん?」
「あああの、もう抜いて、抜いてくださ」
嗜虐心に突き動かされ、わざと乱暴に張り型を引き抜くと、そこは物欲しそうにパクパクと私を誘っている。そうだ。ここは閨で、そういう衣装でやって来たということは、彼もそのつもりだということだ。
「殿下、殿下、お戯れを…」
コンラートは玩具を付けたまま後退るが、心配ない。この閨には、男娼が呼ばれることもある。そして私はどちらかというと、男を好む。娼婦は体つきが扇情的だが、女性器は緩くていけない。一方男娼は平坦な体つきで、どいつもこいつも揃って巨根。造形としては萎えるが、尻穴は悪くない。事後には男女とも「良かったです」と漏らすものだから、相手としては満足なのだろうが、私が機能的に満足するのは、もっぱら男の方だ。
幼児のような体つきのコンラート。色気としては、娼婦にも男娼にも遠く及ばない。しかし奇妙な艶かしさに、私は十分に昂っている。心配するな。プロをも満足させる摩羅だ。喜んで受け入れるがいい。
———しかし。
「くおおおッ、何だこれはぁッ!!」
挿入と同時に射精した。吸い取られた。
キツい入り口は、柔軟に摩羅を飲み込み、扱き…しかしキツいのは入り口だけではなかった。中も私にピッタリと吸い付くようにフィットして、まるで引き込まれるかのように導かれ。これぞまさしく淫具。耐えられようはずもない。
「はぁっ、殿下…『良かったです』」
乳首と陰茎に装着した淫具を外しながら、コンラートは頬を染めて言った。しかしその間も私の摩羅は、彼の中でめきめきと力を取り戻す。
「待て、こんなもので終われるかぁッ…!」
ぐりっ。
「んあッ!」
それからはもう、無我夢中だった。これまで幾人もの男女を侍らせて共寝をしてきたが、こんな名器は知らない。単なる排泄行為だった閨事が、ここまで強烈な快感を生み出すとは。しかも、
「あっ♡、あっ♡、れんかッ♡、やめれッ♡、とまッ♡、れェッ♡、」
コンラートは私の性技に感じ入り、ぴゅるぴゅると精を放ちながら、強烈に締め付けて絶頂を繰り返す。色気とは対極の男が、全身を桜色に染め上げ、汗にまみれて呂律の回らない舌で赦しを乞う様に、私の摩羅は痛いほど高まった。
「ははっ、行くぞ、行くぞ、受け止めろ!」
ドクン、ドクン。
「あっひェッ…♡♡♡」
吸い付いてうねる淫穴に、私は褒美の子種を何度も注いだ。私の精力は、アイリーンどころか、プロまで舌を巻く強さ。涙を流して痙攣するほど善がられては、出し惜しみせず励んでやるしかあるまい。ああ、愛い奴だ。よし、手元に置いて、末長く可愛がってやろう。
こうして、私とクーノの蜜月が始まった。翌日には早速父王と王妃に、彼を側室とすることを告げ、翌々日にはアイリーンの了承も得た。正式に側室に据えるには多少時間が掛かるが、いずれにせよ彼は後宮からは出られないのだから問題ない。
「あんッ♡、あんッ♡、あんッ♡、あんッ♡、」
あれから私は、昼夜構わずクーノを抱いた。彼は表面上は嫌がる素振りを見せるが、肉体は快楽に従順だ。すぐに絶頂に昇り詰めると、後はぐずぐずに溶けて淫らに媚びる。そのうち、彼の好む体位、弱点、そして歓ぶシチュエーションが分かって来た。
白昼の執務室。閨で営むよりもここで貫かれるのが、彼のお気に入りだ。護衛も見守る中、今更だというのに口を塞いで声を殺そうとして、あっという間に昇り詰め、そこからは嬌声が垂れ流しになる。
「あんっ、あ、殿下ッ…」
「ジャックと呼べと言うておる」
パチン。
「ひ!」
相変わらず慣れない愛称呼びを強いて、尻を軽く叩いてやると、またギュンと達して締め付ける。ああ、また昇って来た。
パンパンパンパンパンパンパンパン。
「あ!や!らめ!イっぢゃ!イ”い!!!」
「そら、クーノ。いいのか?いいのか?…イけッ…!」
猛然と追い上げ、そして褒美をくれてやる。
「ヤぁらぁッ…!!!♡」
口では嫌だと言いながら、派手に射精するクーノ。ソファを汚すことをひどく躊躇するが、それが交合の性感を高めていることを、私は知っている。
しかし、私を取り巻く環境は、相変わらずだ。何日か経って、アイリーンから「御身弁えなさいませ」と忠告を受けた。宰相の手の者からも同じく。我ら王族貴族は、極めて危ういパワーバランスの中で生きている。特に王太子たる私は最たるものだ。7歳のあの日から、私に求められ、許されたのは、王国の「顔」としての役割、そして血統の保持。それ以上を望んではならない。それ以上を求めれば、これまでの者たちのように、「栄転」か、「不慮の事故」。クーノは間違いなく後者への道を辿るだろう。どうせ森人に押し付けられた厄介者、排除されようがどうとでもなるがよい、と思っていたのだが、いざ身体を繋げて味わってしまうと、如何とも手放せない。
断言しよう。クーノは私の運命だ。私は彼ほどの肉体を知らないし、彼も泣いて天国を見るほどに私を感じている。正直、子供のような亜人に興味など有り得なかったのに、ここまでピッタリと感じ合う我ら。これは運命と呼ぶ他ないだろう。
そして営みの合間に、彼は様々な細工物を披露して、私を喜ばせ、楽しませようとする。彼の知識は単純だが実に興味深く、そして彼から伝わる恋慕の情は、私の世界を淡く彩る。たとえ警告を受けたとて、どうして彼を冷たく排除出来ようか。
従ってそれは、起こるべくして起こった。
口に入れた焼き菓子が、喉を灼く。この感覚は久しぶりだ。宰相府の仕業か、それとも神殿か。意識が遠のく中、クーノが私に駆け寄るのが見える。ああクーノ、お前でなくて良かった。大丈夫だ。私の身体は、こういったことに慣れているから———。
翌朝、仮眠室で目覚めた私は、枕元で丸椅子に座ったまま伏して寝ていたクーノと共に、後宮へ戻った。体調はすこぶる良い。薬物が相当加減されていたか、それとも侍医の処方が良かったのか。性交は禁止されたが、せっかく降って湧いた休暇。多少ならば問題あるまい。
一日安静にして翌日、早速クーノを呼び立てる。私の倒れるところを間近で見た彼は、酷く動揺していて、未だ顔色が悪い。
「クーノ。浮かない顔だな。どうした」
「いえ、殿下がご無事で、何よりで…」
愛い奴め。クーノ頭をくしゃくしゃと撫で、労わってやる。
「心配掛けたな。この通り、すこぶる元気だ。お前のこの珍妙なお守りが効いたのやも知れぬ」
しかし次の瞬間、彼の口からは、信じられない言葉が飛び出た。
「ああそれ、防毒防麻痺に状態異常回復、そしてそっちは精神異常無効ですから」
「…はっ?」
「いえ、あの、ちゃんと太公代理に鑑定していただいたので、大丈夫かと」
…お前は何を言っている?
「…お前は何を言っている?」
「えっ」
「それが本当ならば、これは国宝どころの騒ぎでは」
つい、いつもの王太子としての態度を忘れ、小声で迫った。当の本人は、「国宝?」みたいなとぼけた顔をしている。
「えっと、殿下がお休みの間にチャチャッと彫っただけのアレですけど…?」
「お前、」
私がそう言いかけた時、部屋の外が騒々しいことに気付いた。外からは、「おやめください」とか「お通しするわけには」とか、複数人の声と足音がする。
そして寝所のドアが、何者かによって開かれた。
「やあ、コンラート。ここにいたのか」
———お前は、いや、あなたは。
王宮を突破し、後宮までズカズカと入り込める人間など、この世界に数えるほどしかいない。当然、友好国の宗主やその代理となる者であってもだ。クーノを側室にするに当たって、私は彼を後宮に送り込んだ太公代理に打診を行った。すると彼は、猛然と抗議し王宮まで乗り込もうとした。自分から頼っておいて何様のつもりだと思ったが、今なら分かる。クーノはとんでもないアーティファクトを作る技術を持った爆弾だ。一国に留めておくにはあまりにも危険な存在。だから彼は、途方もない大きさの精霊石を彼に持たせ、わざわざ「後宮」へ隠したのだ。それが却って仇となり、奪還を阻まれた。ならば彼が、次に送り込んで来たのは———
何だか知らないが、森人の大公代理から、内々に客分を押し付けられた。しかも平民の亜人、細工を生業にしているという。何故私が引き受けなければならぬ。まあ良い。下の者に任せて、捨て置くだけだ。
王太子として生を受けて17年。私は王国という装置の部品として、淡々と過ごして来た。とはいえ、最初は違ったのだ。幼少期は、多忙ながらも子煩悩な父王に、美しく気高い母王妃から、それなりに愛情を受けて育ったと思う。歩けば喜ばれ、言葉を発すれば喜ばれ。剣を持てば褒められて、詩を誦じればまた褒められた。自分で言うのも何だが、私は特に出来の良い子だったらしい。しかし、出来が良過ぎた。幼いながらに文武ともめきめきと修め、ある日決定的な出来事と共に、私の運命は大きく変わった。
その日から、私の兄弟は皆、城の外に養子に出された。まだ幼い弟のみならず、腹違いの兄弟姉妹も同様。側室たちもだ。そしてわずか7歳にも関わらず、立太子が宣言された。婚約者が即座に決定し、侯爵令嬢アイリーンと共に特別な教育が施される。私たちは学園に通うこともならず、ひたすら次代の王と王妃に据えられるため、邁進することとなった。そして15の年には婚姻、16で父親になり、17で次子を授かり。日々王太子としての責務を果たし、外交や視察を淡々とこなす。そこに何の不満も、疑問もない。
いや、それは不正確だ。違和感や疑問は山のようにあった。しかしそれに答えられることはなかった。幼い頃は、望めばどんな知識も与えられ、学びたいことは全て叶えられた。しかし「あのこと」があってから、周囲の大人から「それは殿下が知らなくて良いことです」「それは殿下がなさらなくても良いことです」と言われ、あらゆる物事からやんわりと遠ざけられた。そして時折、こっそりとそれらを与えようとする者がいれば、彼らはある日突然辺境に「栄転」して行ったり、場合によっては「不慮の事故」に遭ったりして、居なくなった。とうとう癇癪を起こして強硬手段に出れば、食事の後に身体が痺れて、何日か口を利くこともままならない。そんなことが重なれば、嫌でも「部品」としての人生を受け入れざるを得ない。
そういう意味で、アイリーンは良きパートナーであった。彼女は自らの運命を割り切って受け入れ、それを乗りこなす度量があった。
「責務さえ果たせば後は自由、文句は言わせない」
彼女の言葉には、説得力があった。それに完全に同意したわけではないが、少なくとも現実を諦観して受け入れる同志の存在は、私にとって心強いものだった。
しかし、森人によって捩じ込まれたドワーフ。面会後に判明したのだが、彼は最近流通を始めた、あの馬車のタイヤとクッションを開発した張本人だと言うではないか。細工師と言えば、小物にちまちまと無駄な装飾を施す、無駄な職人だと思っていた。あのタイヤは良い、馬車の乗り心地が格段と上昇した。何だ、面白い仕事をするではないか。ならば無聊の慰めに、仕事ぶりでも見てやろう。
果たして、コンラートの仕事は私を魅了した。魔石を使って弾を打ち出すエアガンなるもの、そして光るベルト。魔石で走るミニ馬車もだ。説明を聞いてみれば、仕組みは非常に単純なのに、全く想像もしたことがないものばかりだ。私は夢中になって遊んだ。何しろ、玩具で遊ぶという経験が殆ど無かったのだから。
更に後日、彼が花街で淫具を開発販売していたことが耳に入った。
「何故そのような面白そうなことを申さぬ!」
彼は私よりも年長、既に成人だ。しかし、こんな子供のような形をして、淫具を作っていたなど。奇妙なギャップに、どうにも好奇心が止まらない。私はその夜、淫具を持って閨に来るよう、呼びつけた。
何を勘違いしたのか、婆やはコンラートに薄物を着せて寄越した。色事に程遠い容姿に、卑猥な下着姿。思わず吹き出してしまいそうになったが、しかし彼の運んできた淫具は、また斬新な発想でもって、私を魅了した。仕組みとしては単純だが、実に良く出来ている。つい試したくなるのも、道理と言えよう。そして、目の前の開発者本人が実験台になったのも、当然の成り行きだった。
まるで年端の行かぬ子供のような肉体、そしてそれに相応しい幼い陰部。しかし却ってそれが、妙にいやらしい。コンラートがおずおずとそれを扱き、女陰を模したオナホなるものを装着すると、つい悪戯心が湧き出て来る。私は何食わぬ顔で、「強」のスイッチを押した。
「あヒッ!」
微かな動作音と共に、コンラートの腰が跳ねた。私はゴクリと唾を飲み込み、次の玩具に手を伸ばす。
「で、他にも淫具があるようだが。これは?」
「あ、あの、これは乳、首の」
「こうか」
「ん”に”ッ!」
彼の敏感な反応が、面白くてたまらない。
「どうした。腰が揺れているぞ。で、これはどうするのだ?」
「それ、は、女性の」
「なるほど。動く張り型だな。ローションを塗って、こうか?」
「あ、違、そこッ、ああああ」
絶妙な柔らかさと滑らかな形、そして控えめなサイズだったからか。コンラートの尻は、それを難なく受け入れ、スイッチを入れて振動を起こすと目に涙を溜めて懇願する。
「やめてください、やめて、あああ、イく、イきますッ…!」
「ははは、良いぞ。達して見せるがいい」
「んあァッ…!!」
シーツを掴んでびくりと跳ね、彼は達したようだった。幼児にいけない悪戯をしたようで、妙に唆る。
「…随分と気持ち良さそうじゃないか。ん?」
「あああの、もう抜いて、抜いてくださ」
嗜虐心に突き動かされ、わざと乱暴に張り型を引き抜くと、そこは物欲しそうにパクパクと私を誘っている。そうだ。ここは閨で、そういう衣装でやって来たということは、彼もそのつもりだということだ。
「殿下、殿下、お戯れを…」
コンラートは玩具を付けたまま後退るが、心配ない。この閨には、男娼が呼ばれることもある。そして私はどちらかというと、男を好む。娼婦は体つきが扇情的だが、女性器は緩くていけない。一方男娼は平坦な体つきで、どいつもこいつも揃って巨根。造形としては萎えるが、尻穴は悪くない。事後には男女とも「良かったです」と漏らすものだから、相手としては満足なのだろうが、私が機能的に満足するのは、もっぱら男の方だ。
幼児のような体つきのコンラート。色気としては、娼婦にも男娼にも遠く及ばない。しかし奇妙な艶かしさに、私は十分に昂っている。心配するな。プロをも満足させる摩羅だ。喜んで受け入れるがいい。
———しかし。
「くおおおッ、何だこれはぁッ!!」
挿入と同時に射精した。吸い取られた。
キツい入り口は、柔軟に摩羅を飲み込み、扱き…しかしキツいのは入り口だけではなかった。中も私にピッタリと吸い付くようにフィットして、まるで引き込まれるかのように導かれ。これぞまさしく淫具。耐えられようはずもない。
「はぁっ、殿下…『良かったです』」
乳首と陰茎に装着した淫具を外しながら、コンラートは頬を染めて言った。しかしその間も私の摩羅は、彼の中でめきめきと力を取り戻す。
「待て、こんなもので終われるかぁッ…!」
ぐりっ。
「んあッ!」
それからはもう、無我夢中だった。これまで幾人もの男女を侍らせて共寝をしてきたが、こんな名器は知らない。単なる排泄行為だった閨事が、ここまで強烈な快感を生み出すとは。しかも、
「あっ♡、あっ♡、れんかッ♡、やめれッ♡、とまッ♡、れェッ♡、」
コンラートは私の性技に感じ入り、ぴゅるぴゅると精を放ちながら、強烈に締め付けて絶頂を繰り返す。色気とは対極の男が、全身を桜色に染め上げ、汗にまみれて呂律の回らない舌で赦しを乞う様に、私の摩羅は痛いほど高まった。
「ははっ、行くぞ、行くぞ、受け止めろ!」
ドクン、ドクン。
「あっひェッ…♡♡♡」
吸い付いてうねる淫穴に、私は褒美の子種を何度も注いだ。私の精力は、アイリーンどころか、プロまで舌を巻く強さ。涙を流して痙攣するほど善がられては、出し惜しみせず励んでやるしかあるまい。ああ、愛い奴だ。よし、手元に置いて、末長く可愛がってやろう。
こうして、私とクーノの蜜月が始まった。翌日には早速父王と王妃に、彼を側室とすることを告げ、翌々日にはアイリーンの了承も得た。正式に側室に据えるには多少時間が掛かるが、いずれにせよ彼は後宮からは出られないのだから問題ない。
「あんッ♡、あんッ♡、あんッ♡、あんッ♡、」
あれから私は、昼夜構わずクーノを抱いた。彼は表面上は嫌がる素振りを見せるが、肉体は快楽に従順だ。すぐに絶頂に昇り詰めると、後はぐずぐずに溶けて淫らに媚びる。そのうち、彼の好む体位、弱点、そして歓ぶシチュエーションが分かって来た。
白昼の執務室。閨で営むよりもここで貫かれるのが、彼のお気に入りだ。護衛も見守る中、今更だというのに口を塞いで声を殺そうとして、あっという間に昇り詰め、そこからは嬌声が垂れ流しになる。
「あんっ、あ、殿下ッ…」
「ジャックと呼べと言うておる」
パチン。
「ひ!」
相変わらず慣れない愛称呼びを強いて、尻を軽く叩いてやると、またギュンと達して締め付ける。ああ、また昇って来た。
パンパンパンパンパンパンパンパン。
「あ!や!らめ!イっぢゃ!イ”い!!!」
「そら、クーノ。いいのか?いいのか?…イけッ…!」
猛然と追い上げ、そして褒美をくれてやる。
「ヤぁらぁッ…!!!♡」
口では嫌だと言いながら、派手に射精するクーノ。ソファを汚すことをひどく躊躇するが、それが交合の性感を高めていることを、私は知っている。
しかし、私を取り巻く環境は、相変わらずだ。何日か経って、アイリーンから「御身弁えなさいませ」と忠告を受けた。宰相の手の者からも同じく。我ら王族貴族は、極めて危ういパワーバランスの中で生きている。特に王太子たる私は最たるものだ。7歳のあの日から、私に求められ、許されたのは、王国の「顔」としての役割、そして血統の保持。それ以上を望んではならない。それ以上を求めれば、これまでの者たちのように、「栄転」か、「不慮の事故」。クーノは間違いなく後者への道を辿るだろう。どうせ森人に押し付けられた厄介者、排除されようがどうとでもなるがよい、と思っていたのだが、いざ身体を繋げて味わってしまうと、如何とも手放せない。
断言しよう。クーノは私の運命だ。私は彼ほどの肉体を知らないし、彼も泣いて天国を見るほどに私を感じている。正直、子供のような亜人に興味など有り得なかったのに、ここまでピッタリと感じ合う我ら。これは運命と呼ぶ他ないだろう。
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従ってそれは、起こるべくして起こった。
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「クーノ。浮かない顔だな。どうした」
「いえ、殿下がご無事で、何よりで…」
愛い奴め。クーノ頭をくしゃくしゃと撫で、労わってやる。
「心配掛けたな。この通り、すこぶる元気だ。お前のこの珍妙なお守りが効いたのやも知れぬ」
しかし次の瞬間、彼の口からは、信じられない言葉が飛び出た。
「ああそれ、防毒防麻痺に状態異常回復、そしてそっちは精神異常無効ですから」
「…はっ?」
「いえ、あの、ちゃんと太公代理に鑑定していただいたので、大丈夫かと」
…お前は何を言っている?
「…お前は何を言っている?」
「えっ」
「それが本当ならば、これは国宝どころの騒ぎでは」
つい、いつもの王太子としての態度を忘れ、小声で迫った。当の本人は、「国宝?」みたいなとぼけた顔をしている。
「えっと、殿下がお休みの間にチャチャッと彫っただけのアレですけど…?」
「お前、」
私がそう言いかけた時、部屋の外が騒々しいことに気付いた。外からは、「おやめください」とか「お通しするわけには」とか、複数人の声と足音がする。
そして寝所のドアが、何者かによって開かれた。
「やあ、コンラート。ここにいたのか」
———お前は、いや、あなたは。
王宮を突破し、後宮までズカズカと入り込める人間など、この世界に数えるほどしかいない。当然、友好国の宗主やその代理となる者であってもだ。クーノを側室にするに当たって、私は彼を後宮に送り込んだ太公代理に打診を行った。すると彼は、猛然と抗議し王宮まで乗り込もうとした。自分から頼っておいて何様のつもりだと思ったが、今なら分かる。クーノはとんでもないアーティファクトを作る技術を持った爆弾だ。一国に留めておくにはあまりにも危険な存在。だから彼は、途方もない大きさの精霊石を彼に持たせ、わざわざ「後宮」へ隠したのだ。それが却って仇となり、奪還を阻まれた。ならば彼が、次に送り込んで来たのは———
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これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
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