11月でも何故か寒いコンビニ

山村京二

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第8章:防犯カメラに映った清司さん

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『怪我はないんですか?清司さん!大丈夫ですか!?』住吉さんがそういった次の瞬間、警察官3人が店のドアを勢いよく開けて入ってきました。

警察官:『何がありましたか!?お怪我をされている方はいますか?』

警察官2名が店の中をグルっと見回って、店の中にいる人がいないか確認し、もう一人の警察官がバックヤードへ入ってきました。アルバイトの過呼吸になっている状態を察した警察官は、『とりあえずアルバイトの方は、ご家族に連絡してご帰宅なさって大丈夫です。後日お話を伺うと思いますが、状況的に本日は大丈夫です。一旦パトカーに乗りましょう。』そう言って店の中を見回っていた警察官に何やら指示をして、アルバイト二人を店の外へ出しました。

『どなたかお話しできる方はいらっしゃいますか?』その声に『エリアマネージャーの住吉と言います』と住吉さんが応答しました。自分も電話をもらって急いで駆け付けたらこのような状況で、詳細は分からないということを告げると、監視カメラの録画を止めてアルバイトから電話があった9時15分よりも少し前のところまでテープを巻き戻しました。

時計の秒針が動く音だけがバックヤードに響いて、緊迫した空気が流れていました。『この辺でいいかな』そう住吉さんがつぶやくと、画面にはいつも通りの店内の風景が映し出されていました。少し早送りすると、誰もいないガランとした店内に、清司さんと一人の男性が一緒に店に入ってくる姿が見え、住吉さんは急いで早送りを止めました。じっと画面を見つめる住吉さんと警察官、そして秒針のカチッカチッという音。ビデオの音声が少し小さく、アルバイトの『いらっしゃいませ』の声が聞き取りにくかったのか、住吉さんは音量ボタンを何度かカチカチッと押しました。

ビデオに映る清司さんは、レジのアルバイトにいつもの野菜を送るための帳面を渡しながら、一緒に入店した男性とレジに立ちました。時折笑顔を見せて男性と談笑しながら、清司さんは帳面を指し示しながら、男性にいつものように記帳するよう促していました。

すると、ビデオに映る清司さんがなにやら男性に顔を近づけて、耳打ちしている様子が見て取れました。二言三言、男性の耳を隠すように自分の右手で覆いながら何か話しています。

清司さんが話し終わったとたん、男性は帳面に記帳していた手を止め、ボールペンのキャップを締めて、『だったらどうした!もう時効だからな!ハハハ!残念だったな!じいさんよ!』と突然叫び始めました。その瞬間、不意に遠い目をしてかすれたような声で清司さんは『あぁ、そうか・・・』とつぶやくと、男性の襟首をつかんで男性を押し倒しました。

急に倒された男性は頭を打ったのか、頭の後ろを押さえるそぶりをしましたが、その男性に向かって、清司さんは近くにあったアイス売り場から5kgの氷の袋を、力の限り男性の顔めがけて叩きつけました。

『ぎゃーーー!!』というアルバイトの悲鳴と共に、男性の額からあふれた血が床にじんわりと広がっていきます。男性は抵抗しますが、頭を打っているからか、フラフラしながら起き上がろうとするも、なおも清司さんは平手打ちを交えながら何度も何度も、高齢男性とは思えない勢いで氷の袋を男性にたたきつけ続けました。男性が『ウグッ』と声を出して動かなくなると、清司さんが男性の襟元をつかんで、

『お前だけは絶対に生かしちゃおかない!絶対に!俺たちの真理子を!大事な娘の真理子を!お前が手にかけたんだろ!絶対に許しちゃおかないからな!』

そう言いながら、無抵抗になった男性の頭を床にたたきつけ、馬乗りになって叫び続けました。

アルバイトの悲鳴がやまない中、店のドアから君枝さんが入ってきました。状況を見た君枝さんは清司さんを羽交い絞めにして男性から引き離しました。と同時に『住吉さんに電話して!』アルバイトにそういうと、一人のアルバイトがどこかへ電話している様子です。少しの間があって、『住吉さん!住吉さんですか?君枝さん、つながりました!』という声が聞こえて、『この電話をもらって私がここに駆け付けたんです』と住吉さんは警察官に説明をしました。

『とりあえず応援を呼びますので、あなたはちょっとお待ちいただけますか?』警察官からそういわれると、『わかりました。』と答えて、目の前に映った信じられない光景に、住吉さんは言葉を失っていました。

休憩室に清司さんと英恵さんを連れて行ったことを思い出し、『あのー』っと警察官に声をかけてその旨伝え、ふたりが居る休憩室には2名の警官が待機することになりました。

清司さんは俯いて疲れた様子でうなだれて、ビデオに映っていた目を剥いて氷を叩きつけていた人物とは思えないほど、小さくしぼんでしまっていました。英恵さんは同じく疲れ切ってしまったのか、涙も枯れた様子で清司さんの左手を両手で握りしめて清司さんに寄りかかり、休憩室の床に座っていました。

清司さんと英恵さんは警察に連行されて、証拠として監視カメラのビデオも押収されていきました。住吉さんは重要参考人ということでした、一旦店の処理などもあるため、病院に行っている君枝さんと共に、後日事情聴取に呼ばれるだろうということでした。

何が起きているのかいまだに整理がつかないまま、機械的にコンビニ本部に連絡して、長期休業の手続きや店舗内の片づけなどの手配をしていると、住吉さんの携帯電話がまた16和音の着メロで鳴り出しました。状況に合わない明るいメロディーに住吉さんは舌打ちをしながら電話に出ると、それは君枝さんでした。

『・・・もしもし、君枝さんですか?』

疲れた声で住吉さんが電話に出ると、『あ、君枝です。警察から連絡を受けました。店のほうの対応申し訳ありません。それから・・・』

『・・・例の男性ですが、亡くなりました。』住吉さんはある程度想定していたものの、危害を加えたのが清司さんであるという事実を認識した今、目の前で起きていること、君枝さんが伝えたことが事実として起きているのか、はたまた、これは夢なのか分からなくなった。反射的に『そうですか』とだけ言い残し、『詳しいことは事情聴取ですね。』と言って電話を切りました。
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