声にならない声の主

山村京二

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最終章:全て終わったはずだった

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マリアは死んだバーバラのこと、シェリーの白骨化した遺体のことを警察に告げるため電話を取った。警察はすぐに行くとマリアに告げ、30分も立たないうちにパトカーを寄越した。バーバラの死は事故という扱いになり、シェリーの遺体は行方不明者の死亡として扱われた。

保安官はマリアに話を聞いた後、里子たちの新たな受け入れ先を決めるため一時的に警察で預かることをマリアに告げた。そのあと、マリアにある話をした。

『やっぱりバーバラの仕業でしたか。正直ね、我々の間ではバーバラの証言には矛盾したところが多かったし、行方不明になってからシェリーに保険金をかけたり、変なところが多かったんで疑ってたんですよ。でもまあ、シェリーもようやく静かに眠ることができるんですかね。あの子も生まれつき声帯に障害を抱えていて、言葉を覚えるためにバーバラが懸命に対応してたんですが、それが元でおかしくなっちゃったのかな。』

『え?今なんて言いました?シェリーは虐待が原因で失語症になったんじゃなかったんですか?』マリアは保安官に詰め寄った。

『あー。あれもね、バーバラが公表内容にいちゃもんをつけてきたんですよ。地元では有名な農場の経営者というプライドがあったのか、先天性の障害があるなんて自分が責められるのが嫌だとか言って。もう、シェリーの事を愛していたのか憎んでいたのか。シェリーの魂が浮かばれてくれればいいんだけどね。じゃあ、我々はこの辺で。』

ポールから失語症と聞いていたのですっかり虐待が原因で喋らなくなったと思っていたマリアは衝撃を受けた。それと共に、あの夜聞こえた低い声は、夢に見たシェリーが喋っていたのはシェリーの声ではないということになる。じゃあ、一体誰の声だったのだろうか。

マリアが仕事を探す間、しばらく警察に身を寄せるためパトカーに乗ろうとした時、誰もいなくなったはずのマックイン家から、あの地響きのような音が聞こえた気がした。
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