はじめまして、妖精です。穴がなくなって迷子なので同居してもよろしいでしょうか?

タマモ

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彼女はできる女子でした 11話

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 なんだか今日は調子がいい。
 朝食を久しぶりにちゃんと食べたからなのか。それとも天気がいいからなのか。
 どちらにしろ仕事は捗る一方でこんなに嬉しいことはない。

「どうした憲司。めっちゃ上機嫌じゃん」
「まぁな」
「じいちゃん死んだのに不謹慎だな」
「そう言うこと言うお前が不謹慎だろ」
「え、なになに?彼女でもできた?」
「できてねーよ」
「つまんねぇ」

 昼休み。大学からの友人であり同じ職場の同僚でもあるこの男、佐々木隆之介ささきりゅうのすけと昼飯を食べているとそんなことを言われた。

 ちなみに彼のあだ名はドラゴン。
 呼んだこっちもたまに恥ずかしくなるその名前は、大学時代につけられたあだ名であり由来は皆でボーリングに行った時に画面に出る名前を「隆之介」ではなく「龍之介」と俺が書き間違えたからというなんともクソエピソードな由来である。
 そしてもうひとつ、ドラゴンボールのTシャツをよくこいつが着ていたから。だからドラゴン。
 何の面白みもない由来である。

「憲司ってまじで彼女作らないな」
「だってめんどくせぇし」
「そこそこモテるくせに。むかつくな」
「お前モテないもんな」
「うわ、まじでむかつくわ」
「なんか今日いい日だな」
「どこがだよ!!」

 いつもの店で日替わり定食を食べなら、何百回もしているであろう会話を挨拶のように交わしていく俺たち。

 しかし今日の日替わりは俺の好きなトンカツ定食。
 そんないつもの適当の会話もなんだかそれだけで少し楽しく感じてしまう。

 あぁ、まじでいい日だわ。

 それから午後も絶好調で早く仕事を終わらせれば、残りの勤務時間はゆっくりと過ごした。
 明日やろうとしていた仕事もやり始めたりなんかして。
 途中でドラゴンに「怪しい、なんかあったな」なんてしつこく聞かれたりもしたが気分が良いので華麗にスルー。
 こうして時間は過ぎて行きいつの間にか帰宅時間になっていた。



「ただいまー」

 家に着きガチャリとドアを開ければ、そこからはいい匂いが漂ってきた。
 あ、カレーだ。そう言えば今日カレー食べたいって言ったんだっけ。
 靴を脱いで玄関に上がれば「お帰りなさい」とレイナの声がした。
 そんな聞き慣れない声になんだか驚いたが、それよりも自然と「ただいま」なんて言葉を発していた自分自身に一番驚くのだった。
 いやいや、俺もレイナも馴染むの早すぎだろ。

「うわ、帰ってきて夕飯あるとか最高かよ」
「お風呂入りますか?カレーはもうできてますけど」
「あーそこはやっぱアレ言ってほしかったなぁ」
「アレ?」
「お風呂にする?ご飯にする?…て、知らないかまぁいいや」
「あぁ、それ」
「知ってんのかよ」

 俺の言った言葉を理解したのか、なんだか面倒な表情をする彼女。
 ていうかお前なんでそんなセリフも知ってんだよ、なんて思いながらも「そんな顔すんなよ」と言って定位置ソファーへ腰を下ろせば呆れた表情のレイナがいた。
 確かにこういう感じ、年上っぽい反応だわ。

「ビール飲むんでしたっけ?とりあえず、お湯沸かしておきますね」
「お前本当出来る女だな」
「ありがとうございます」
「ビール頂戴。風呂は後で入る」
「はい」

 レイナの並外れた出来の良さに感動しながら、俺は渡されたビールをプシュッと開けた。

「……ん?」

 そして、それを一口飲み干せば今の一連の会話を思い返す。
 ……今の俺って、完全にただの亭主関白ジジイでは?
 いや違う、俺が亭主関白ジジイではなくレイナが俺を亭主関白ジジイにさせているのだ。きっとそうだ。

 そんなことを思いながらも「ビール取ってー」なんて言葉を自然と彼女に伝えるのだった。


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