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第二章 異世界編
第18話 ─ 可愛いフリしてあの娘、割とやるモンだね、と ─その2…ある男の独白
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「当時オレ達は現場に居なかったが、アレが邪竜を倒せる力を持ってるとどうして思えるかねぇ? 何も予備知識が無いとあの“力”で信じてしまうということか。
……ちなみに今さっきのは皆どう思った?」
ギルドに今の話を報告に行ったラディッシュさんが戻ってくると、開口一番リッシュさんはそう皆に聞いた。
「想像以上にヤバいなぁ、アレは。本人は大した事ないのになぁ」
「事前に知ってなけりゃ、アッサリやられるのが良く分かるわね。本人が謙虚に努力を続けてれば大化けしたでしょうに、勿体無いわ」
「しかしあれほど本人の実力と、与えてくる雰囲気や印象との差があるのも珍しいよ。興味深い」
「……だがラディッシュの推測通り……知っていれば、飲み込まれずに済む……」
「ムカつきますね。大嫌いです。旦那を選んで正解でした」
弟、リッシュさん達にかかったら滅多斬りのボロカスだな!
あとフェットさんはブレないのは良いけど、多分それただの惚気です。言ワセナイデ、恥ズカシイ。
「嫁の言葉が最終回答だな」
リッシュさんがそう締めると、全員ウンウンと頷く追い撃ちコンボ。
やめて。ボク恥ずかしくて、顔を両手で覆ってイヤンイヤンしたくなっちゃうから。
*****
ヒラヒラと舞い踊る布。ドスッドスッと響き渡る重い音。彼女の額から弾け飛ぶ汗の雫が眩しい。
彼女は一心不乱に、道場の叩き台──要はサンドバッグだ──を殴ったり蹴ったりしていた。
はい皆さん。俺は最近、魔法師って何をするんだったっけとフェットチーネさんを見ながら思い悩んでいます。
彼女、ベッコフさんにクロスカウンターを決めて以来、本格的に格闘術に興味を持ってしまっていたようです。
嘘のような本当の話。
いや、別におかしくないんだよ?
俺だって剣も斥候も情報収集もそれなりに出来るしね。
剣なんか、リッシュ・ベッコフコンビで鍛えてくれたから、かなり凄いよ?
リッシュさん達だって自分の役割以外の技能の一つや二つ持ってるし、むしろ上位パーティーの冒険者は複数の事が出来て当たり前って聞くからね?
ラディッシュさんだって斥候索敵の知識や技術を持ってるぐらいだし。
いざという時に前衛を張れる、とまではいかなくても、自分の身を守る術は多いに越したことはない。……のだけれど。
「随分と上達したね、フェット。当たった時の『音』が全然違う。……あとは、さ」
と、周囲を見渡しながら俺は言った。
「その服……着ないとダメ?」
周囲の大量の熱っぽい視線が、一斉に“余計な事を言うな”に変化して俺に突き刺さる。
視線の九割がたは男だが、女も混じっているのはどうなんだ。
男以上に視線が熱かった気がするぞ。ほらお前ら道場生だろ、フェットを見てる暇があるなら練習しろ練習。
「貴方が見てるから着ないとダメ」
うおっ!
男からの視線が更に痛くなった!
いや、気持ちは良~く分かるよ?
こんな背中がザックリ空いてて、肩から脇から丸見えのノースリーブな青いパーティードレスみたいな服着てる知的美人連れてるヤツなんて男の敵だよね、ごめんなさい。
しかもスカートの横に大きくスリットが入ってて、覗く太ももが眩しい。
激しい動きの邪魔にならない為のものなのかもしれないけど、だったら道着のズボン履けば良いんじゃ……というのはヤボなんですよね、周囲の皆さんごめんなさい。
「じゃあ次は組手をお願いね」
「服に引っ掛けて破ってしまったらどうしよう」
「服に引っ掛けられて破られてしまってのお持ち帰り希望」
「……ゴメンその言葉で俺、戦闘不能になりそう」
そう言いながら、俺は木刀を右手で構える。普段使っている片手突剣と似た重さ、長さのヤツだ。
まずは剣先を彼女に向けて、リーチの差で抑え込む方向で戦略を取る。
護身術の極意は危険からの逃走が至上命題だ。だが、だからこそ、こういった無手と武器持ちという不利な状況の組手も意味があるのだとここの師範は言うんだそうだ。
ならばと俺は、馬鹿の一つ覚えのように、最初は必ず彼女にこれをする。彼女も、違う状況を想定した稽古を希望するときは、事前に言ってくる。
だから特に何も注文を言われない以上は、俺が取る戦法はこれ一択だ。
彼女と俺は、お互い半身になって腰を落とす。
向こうは軽く握った左腕を前に牽制する、いつもの構え。
実際、無手の者が剣を持つ相手に対等に戦うには、無手側に三倍以上の技量や鍛錬が必要とされるらしい。
俺もこの組手では大体は順当に勝つが、最近は七:三の勝率になってきて油断できなくなってきた。
と、思っていた矢先に、彼女は一足飛びに間合いを詰める。そんな遠くからでは懐に入れない、という距離から、予想よりも手前で急停止。
あっと思った瞬間、左手で剣尖を軽く横に弾かれ一気に懐へ。
剣の持ち手を右手で掴まえて、彼女はそのまま体を回転、左の裏拳を俺の顔に叩きつけてきた。
「あらぁ~もう逝ったの? ウソでしょ、ボクぅ?」
俺の顔面スレスレで拳を寸止めしたフェットが、ニヤリと笑いながら話す。
何か変なスイッチ入りましたか?
別の場所で聞かされたら、立ち直れないぐらいの精神的ダメージを喰らいそうなセリフだ。
それを、Sっ気たっぷりの笑顔で、舌舐めずりしそうな雰囲気で言わないで下さいフェットさん。お願いシマス。
「今日は私がお持ち帰りしようかしらね」
弟よ! 彼女を引き受けている俺に無限の感謝をするがいい!!
……ちなみに今さっきのは皆どう思った?」
ギルドに今の話を報告に行ったラディッシュさんが戻ってくると、開口一番リッシュさんはそう皆に聞いた。
「想像以上にヤバいなぁ、アレは。本人は大した事ないのになぁ」
「事前に知ってなけりゃ、アッサリやられるのが良く分かるわね。本人が謙虚に努力を続けてれば大化けしたでしょうに、勿体無いわ」
「しかしあれほど本人の実力と、与えてくる雰囲気や印象との差があるのも珍しいよ。興味深い」
「……だがラディッシュの推測通り……知っていれば、飲み込まれずに済む……」
「ムカつきますね。大嫌いです。旦那を選んで正解でした」
弟、リッシュさん達にかかったら滅多斬りのボロカスだな!
あとフェットさんはブレないのは良いけど、多分それただの惚気です。言ワセナイデ、恥ズカシイ。
「嫁の言葉が最終回答だな」
リッシュさんがそう締めると、全員ウンウンと頷く追い撃ちコンボ。
やめて。ボク恥ずかしくて、顔を両手で覆ってイヤンイヤンしたくなっちゃうから。
*****
ヒラヒラと舞い踊る布。ドスッドスッと響き渡る重い音。彼女の額から弾け飛ぶ汗の雫が眩しい。
彼女は一心不乱に、道場の叩き台──要はサンドバッグだ──を殴ったり蹴ったりしていた。
はい皆さん。俺は最近、魔法師って何をするんだったっけとフェットチーネさんを見ながら思い悩んでいます。
彼女、ベッコフさんにクロスカウンターを決めて以来、本格的に格闘術に興味を持ってしまっていたようです。
嘘のような本当の話。
いや、別におかしくないんだよ?
俺だって剣も斥候も情報収集もそれなりに出来るしね。
剣なんか、リッシュ・ベッコフコンビで鍛えてくれたから、かなり凄いよ?
リッシュさん達だって自分の役割以外の技能の一つや二つ持ってるし、むしろ上位パーティーの冒険者は複数の事が出来て当たり前って聞くからね?
ラディッシュさんだって斥候索敵の知識や技術を持ってるぐらいだし。
いざという時に前衛を張れる、とまではいかなくても、自分の身を守る術は多いに越したことはない。……のだけれど。
「随分と上達したね、フェット。当たった時の『音』が全然違う。……あとは、さ」
と、周囲を見渡しながら俺は言った。
「その服……着ないとダメ?」
周囲の大量の熱っぽい視線が、一斉に“余計な事を言うな”に変化して俺に突き刺さる。
視線の九割がたは男だが、女も混じっているのはどうなんだ。
男以上に視線が熱かった気がするぞ。ほらお前ら道場生だろ、フェットを見てる暇があるなら練習しろ練習。
「貴方が見てるから着ないとダメ」
うおっ!
男からの視線が更に痛くなった!
いや、気持ちは良~く分かるよ?
こんな背中がザックリ空いてて、肩から脇から丸見えのノースリーブな青いパーティードレスみたいな服着てる知的美人連れてるヤツなんて男の敵だよね、ごめんなさい。
しかもスカートの横に大きくスリットが入ってて、覗く太ももが眩しい。
激しい動きの邪魔にならない為のものなのかもしれないけど、だったら道着のズボン履けば良いんじゃ……というのはヤボなんですよね、周囲の皆さんごめんなさい。
「じゃあ次は組手をお願いね」
「服に引っ掛けて破ってしまったらどうしよう」
「服に引っ掛けられて破られてしまってのお持ち帰り希望」
「……ゴメンその言葉で俺、戦闘不能になりそう」
そう言いながら、俺は木刀を右手で構える。普段使っている片手突剣と似た重さ、長さのヤツだ。
まずは剣先を彼女に向けて、リーチの差で抑え込む方向で戦略を取る。
護身術の極意は危険からの逃走が至上命題だ。だが、だからこそ、こういった無手と武器持ちという不利な状況の組手も意味があるのだとここの師範は言うんだそうだ。
ならばと俺は、馬鹿の一つ覚えのように、最初は必ず彼女にこれをする。彼女も、違う状況を想定した稽古を希望するときは、事前に言ってくる。
だから特に何も注文を言われない以上は、俺が取る戦法はこれ一択だ。
彼女と俺は、お互い半身になって腰を落とす。
向こうは軽く握った左腕を前に牽制する、いつもの構え。
実際、無手の者が剣を持つ相手に対等に戦うには、無手側に三倍以上の技量や鍛錬が必要とされるらしい。
俺もこの組手では大体は順当に勝つが、最近は七:三の勝率になってきて油断できなくなってきた。
と、思っていた矢先に、彼女は一足飛びに間合いを詰める。そんな遠くからでは懐に入れない、という距離から、予想よりも手前で急停止。
あっと思った瞬間、左手で剣尖を軽く横に弾かれ一気に懐へ。
剣の持ち手を右手で掴まえて、彼女はそのまま体を回転、左の裏拳を俺の顔に叩きつけてきた。
「あらぁ~もう逝ったの? ウソでしょ、ボクぅ?」
俺の顔面スレスレで拳を寸止めしたフェットが、ニヤリと笑いながら話す。
何か変なスイッチ入りましたか?
別の場所で聞かされたら、立ち直れないぐらいの精神的ダメージを喰らいそうなセリフだ。
それを、Sっ気たっぷりの笑顔で、舌舐めずりしそうな雰囲気で言わないで下さいフェットさん。お願いシマス。
「今日は私がお持ち帰りしようかしらね」
弟よ! 彼女を引き受けている俺に無限の感謝をするがいい!!
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