とがびとびより、ロニーの物語

ヒトヤスミ

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光道真術学院【マラナカン】編

三十七

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 突如閉まる扉、振り向く三人、一番扉の近くに居たイルシオニスタが開錠の確認を行う。
「駄目です、開きません!」
「開かないってどういうことだ」
 灯りを付け終わり振り向くロニーの問い。
「……」
「(……凄い、徹底してるわね)聞いていいかしら?」
 強情すぎる彼女の性格に変に感心してしまうマクシミリアン。
「……単純に扉が閉まり施錠されたという事ではないかと」
「と、言うと?」
 難しい顔を浮べるイルシオニスタが下す判断。
「嵌められた、と言うのが一番近い表現でしょうか……」
「嵌められた?誰にだよ?」
「……」
「あなたはもう、喋らないでいいから。黙ってなさい」
「……はい」
 しょんぼりとしたロニーの横顔はとても寂しげに映える。
「いいかしら、答えを聞いても」
 マクシミリアンの問いに応えるイルシオニスタ、言葉ではなく行動で。
 腕を挙げ、前方の扉を指差した。
「先に進めば分かるという事……分かったわ行きましょう」
 三人は前方にある扉までたどり着く、ロニーが代表して扉を開ける。その先に拡がる保管庫の内部は、暗く良く見えない。
「ここの灯りは……」
 呟きに呼応する様に前方から声。
「大丈夫ですよ、今付けますから」
「すいません。ありがとうございま……誰だ!」
 ノリツッコミと共に灯りが燈る。
「……クラウディオ」
 姿を現したのは――不敵に笑う、クラウディオ・シェフィールド。
「どういうことだ?」
「どういうことだと思いますか?」
「質問を質問で返すのはやめなさい、それに学生の下らないお遊びに付き合う暇はありません!」
 イルシオニスタの毅然とした対応。
「くだらないかどうか……これもまた未来の為ですから」
「何を訳の分からないことを言ってるのよ、どういうことなの説明しなさい。それとも力ずくで喋らせて欲しいのかしら?」
 マクシミリアンは威圧的な態度でクラウディオを責める。
「流石に神経戦で【夕闇の魔女・ユウヤミノマジョ】を相手にしようとは思いませんよ」
「ならば早く言いなさい、時間がもったいないわ」
 痺れを切らしたイルシオニスタが一歩前に出る、面倒臭いやり取りを続けるクラウディオに業を煮やし、本来の意味での力づくに持ち込もうと足をだす。
「まぁ、そう焦らないで下さいよ……まずはこれを見て貰えますか?」
 クラウディオが「パチン」指を鳴らす、隣に現れる檻。中には後ろ手に縛られ猿ぐつわをかけられた、身動きの取れない四人の学生。ミスティ・アリス・ブランコ・タナシーが。
「お前ら……そんな趣味が」
 捕縛されながらも彼女らの罵詈雑言(が聞こえるかのような)暴れっぷり……あと、なぜかミスティの頬は朱い。
「え?……マジで?」
 馬鹿げた発言にマクシミリアンは腕を振りかぶる――が、それより早くイルシオニスタの正拳がロニーの鳩尾を強襲し、もんぞりかえり転げまわる。
「冗談はさておき、説明位はしてくれるんだろ、シェフィールドのお坊ちゃんよ」
 やっとのことで立ち上がり、真面目な表情を繕いロニーが問う。
 鳩尾をさすりながらカッコつけた言葉を吐いた彼に対しクラウディオを含めた場の全員が少しだけシラケた。
「……まぁ、いいでしょう。その前に、私をどうこうしようとは思わない方がいいですよ、マクシミリアン先生と副隊長さん」
「何故よ?」
「この檻の仕掛け、正直言いますと、結構厄介な代物みたいなんですよ」
 クラウディオは暗に仄めかす、自身に何かあれば彼女達に何かが起こるであろうことを。イルシオニスタとマクシミリアン、それぞれ気づかれないように発動しようとした光道真術はクラウディオの発言で制された。
「どうでもいいから早く言えよ」
 もともと檻の仕掛けに気づいているロニーにとってはどうでもいい事である。やれやれ肩を竦めるクラウディオ。
「シェフィールド家の役割、ご存じですか?」
 マクシミリアンとイルシオニスタ、そして学生達は彼が何を言い出したのか、のみ込めない。ロニーすらも問いの意味が何を指すのかは思案せざるを得ない。
「私たちシェフィールド家は、この国の未来を担っているんですよ。起こりえるS級救済害、いや……特S級救済害、シェフィールド家は王国建国以降それに対抗する、その為だけに全てを割いてきました」
「そんな事、シェフィールド家だけの問題ではないでしょ」
 女性陣はマクシミリアンの疑問に頷く。
「……ふ、ふははは」
 クラウディオの不気味な笑い声が響く。
「な、何よ……」
 たじろぐマクシミリアン。
「物事には役割があるんですよ、快適・平和・安全、言い方は何でもいいですけど、それを享受する為には誰かが汚れた仕事をしなければならない……。まぁ、そんなことはどうでもいいです、それよりも教えてあげてくださいよロニーさん。光道真術の罪を」
「罪?」
 口を結び只クラウディオを睨みつけるロニー。
「なんだっていうのよ……イルシオニスタさん、貴方は何か知っているの?」
「い、いえ……」
 初めての情報、副隊長である自分さえ知らない事実。
「……罪か。違うだろ、お前達の問題を全体にすり替えんじゃねーよ」
「問題?何を甘い事を」
 クラウディオの不敵な笑みは崩れない。
「言うなら……お前らの方法に問題を感じない、それが罪だろうが!」
「どういう事よ?」
 マクシミリアンを含め置いて行かれている、その他大勢は不満顔。
「方法?面白い事を言いますね。それで、どれだけの人々が救われましたか?知らないとは言わせませんよ」
「確かに救った人もいるかもしれない……だけどな、どれだけ殺した!」
 ロニーは自身の記憶に残る怒りにはちきれんばかりの感情をのせる。
「なによ、あんた。何か知っているなら、早く言いなさいよ」
 はやる気持ち、続きの言葉を待つ一同。
「……何年か前、王都で行方不明が頻発した時期があっただろう」
「貧困層を中心とした大規模蒸発?」
「そう。当時俺は【一桁騎士団・ナンバーズ】として原因を解明するために指示されていた。でもな、たどり着いた事実……心底、胸糞が悪くなるモノだったよ」
「……何が、あったっていうの」
「……人体実験――奴隷とでもいうべきなのかもな、奴らが独自に集めた人々を手あたり次第、強制的に新たな術式を使わせる。勿論、一般人に光道真術は使えない、その結果は……」
「「なっ!」」
 声ならぬマクシミリアンとイルシオニスタ、そして囚われる四人も驚愕する。あの事件は公式には救済害によるものだと発表されている。
「成果は出なかったようですけどねぇ。私自身は関わってはいなかったのですが、あれは中々興味深いでデータではありましたよ。しかも貴方を中心としたメンバーに、あの研究所は破壊され、王国からは研究の中止を迫られる始末、当時の責任者は天国、いや地獄ですかね、叶えられなかった研究を今も歯ぎしりしているでしょうね」
「殺したのか?」
 何一つ感情の変化を出さぬクラウディオに薄ら寒さすら感じる迫力。
「さぁ?ですが……貴方なんですよロニーさん。貴方が見せた可能性、あれはとても興味深い……いや、あれこそが未来。そう、光道真術の未来なんですよ」
「なんの事だ?」
「とぼけるのは無しにしましょうよ、【顕現】そして【顕現・裏面化】更に、その上に位置する未知の力、あなたが三年前のクオリティジャッジで魅せた可能性、強大な力、私達シェフィールド家はあの力を手にしたいんですよ、分かりませんか?」
「……分からねえよ。あとな、無理だ。お前達……違うな、俺達だれしもな……」
「何があったのよ。あんた、一体何をしたの?」
 マクシミリアンの問いにロニーは答えない。
「クラウディオ・シェフィールド、一つだけ聞きたい。何故三年間の間をあける必要があったのですか?」
 イルシオニスタが放つ根源的な疑問。
「別に深い意味なんてありませんよ、シェフィールド家も一つだけを研究しているわけじゃありませんから、色々と重なった結果ですね。やっともう一つの研究が形になったので、それの試験的な意味もありますよ」
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