私とエッチしませんか?

徒花

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僕の進路と彼女の写真

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 夏休みが終わり、一ヶ月が経過していた。
 あれから彼女とは会っていない。二学期が始まりお互いに忙しくなったため、どうしてもスケジュールが合わなかったのだ。
 本格的に受験勉強に追い込みを掛けなくてはいけない彼女のことを邪魔してはいけない。
 僕自身も学生の本業である学業に専念するため、暫し牧本瑠璃葉という女性のことを頭から追い払っていた。
 ……という訳でもなく、ラインと通話で連絡自体は取っていたのだが。
 彼女はいつも元気そうだった。
「勉強で分からないことがありますか?」と時々あちらから訊いてきて、僕が理解しきれていない箇所のことを訊ねると、的確な回答を返してくれた。
 彼女より学力で劣る僕ができることと言ったら、彼女の受験勉強を応援することくらいだけど、励ましの言葉を送ると本当に嬉しそうに感謝してくれる。
 大したことは言っていないのだが、彼女にとってはそんな言葉も励みになるらしかった。
 彼女に会いたいなとは思う。
 けど、本来ならばお互い何の接点も無かったはずの人間なのだ。
 別々の道を歩むのが正解なのだろうし。そうしたほうがお互いのためなのだろう。
 ……はずなのだ、が。

「……」

 僕は今、先日行った模試の結果を自室で見ている。
 個人成績表。全統マーク模試。平均偏差値やら、僕本人の成績がびっしりと印字されていて、何となく緊張する紙面。
 その第一志望の欄を、僕は見ていた。
 そこには、こう書いてある。
『杜國院大学』判定D

「……このままじゃ駄目だよな……」

 そこは、牧本瑠璃葉さんの志望している大学だった。
 僕の今の実力じゃ、到底合格できない。難関大学。
 記念受験をしようとしているのではない。僕は本気で行こうと考えていた。
 牧本瑠璃葉さんなら。彼女の学力ならば、きっと合格出来るだろう。そして東京にあるその学び舎に通うため、きっと東京で一人暮らしを始める。
 そうしたら、それなりの交通費を出さなければ彼女に会いに行くことはできない。高校生の小遣いもたかがしれている。
 でも。最低一年遅れとはいえ彼女と同じ大学に通うことが可能なら。予定が合う限り、彼女とはそれなりに自由に接することが出来る。
 東京で暮らすなら何も彼女と同じ大学でなくとも、多少レベルが落ちても同じ都内の大学でも構わないだろうとは思うだろう。
 けれど。
 僕は彼女と肩を並べたかった。彼女と同じ学問を修め、彼女に並ぶ学力を身に付けたかった。
 こう言ってよいのなら、それは憧れだった。
 博識な彼女に憧れていた。自分の時間を削ってでも僕のことを見てくれる、懐の広い彼女に憧れていた。生真面目で、いつも堂々とものを言える彼女に憧れていた。
 牧本瑠璃葉という女性への憧憬が、僕の進路を変える導だった。
 彼女に相応しい男になりたい。彼女に僕の側から勉強を教えてあげられるような男になりたい。それが、今の僕の原動力だった。
 このことは、まだ彼女には言っていない。遠まわしではあるが「好きだ」と伝えてしまうような気がして、恥ずかしいからだ。
 もっと恥ずかしいことなど、何度もしてしまったのに。
 彼女は僕のことを、どう思っているのだろう。
「お友達」程度にしか考えていないのか。可愛い後輩程度にしか考えていないのか。

「ああ、もう……」

 僕は頭を軽く振る。淡い恋路に気をとられている場合ではないのに。
 今は確固たる現実である、この学力に向き合わなければならない。
 僕は参考書と教科書、ノートを机の上に広げ、勉強を始めることにした。

***

「頭が痛い……」
 額に手を当て、苦悶の表情を浮かべる。
 頭をフル回転させ、あまり身の丈にあっていない内容を学習したため、疲労がどっと出ていた。
 知識が身についたような、身に付いていないような、よく分からない感覚。
 机に齧りついてから、既に五時間が経過していた。時刻は夜の十一時。
 夕飯は勉強の途中で母が自室に持ってきてくれたので、それを食べていた。腹は膨れている。
 しかし食事を摂ると、血液が胃に行ってしまったような感覚がして、どうにも集中力が働かない。
 食べたのは失敗だったかなと思ったが、栄養を摂らなかったら摂らなかったで頭が働くとは思えない。

「……少し休憩するかな」

 ペンをしおり代わりに参考書に挟んでから、僕は背筋を伸ばす。ううんと思わず声がでて、僕は思わず苦笑する。
 彼女が見たら「お爺さんみたいですね」と笑いそうだ。……案外彼女もつい声が出てしまうタイプなのかもしれないけど。
 牧本さんは起きているかなと思いつつ、スマホを開いてラインを起動する。
 勉強の途中かもしれない。邪魔してはいけないかなとは思ったが、少し勉強のことで訊いておきたいこともあった。
「今お時間取れますか?」と入力して送信。十秒程度で既読が付き、返事が返って来た。
 さっきまで勉強していたけど、休憩中だから平気だそうだ。
 僕は早速、数学のことに関しての質問をした。
 素因数分解のとある応用について、分からないことがあったのだ。
 既読が付く。十分程度の間を置いて、いくつかに分けてメッセージが送られてきた。
 かなり噛み砕いて説明してくれている。丁寧に説明されたそれは、僕の頭の中の疑問を解きほぐしてくれるかのようだった。
 ネットで見つけてきたのだろう。参考になりそうなページのURLも一緒に送ってくれた。

「ありがとうございます。助かりました」
「いえいえ、大したことないですよ。少し視点を変えるだけで簡単に理解できる式ですから、きっと荻野さんになら身に付けられます」
「ありがとうございます。お時間を取ってしまって申し訳ありません。牧本さんも、無理しない程度に頑張ってください!!」

 そんな会話を交わし、僕は勉強に戻った。
 先ほど送ってもらった理解の仕方の文章を見ながらその公式と応用を眺めていると、不思議にもすらすらと頭に入ってくる。
 彼女は教師の才能がありそうだった。性に関して少々奔放なところがあるのは教育者に向いてない気もするが、学力と、教示の面では非の打ち所がないように思える。
 明るくて、真面目で、優しくて。彼女のような女性なら、生徒にも好かれるだろうな。
 そんなことを考えていると、勉強に利用していた自分のスマホが通知を知らせる。
 ラインのメッセージ。牧本瑠璃葉。
 何のようだろうと思いつつ、その内容を見る。
 そこにはこう書いてあった。

「荻野さん、疲れてませんか? ちょっといいもの、見せてあげます」

 続いて画像が二枚、送られてきた。読み込み中の表示が消えるのを待つ。

「うっ……」

 僕の中の心臓の潮流が、一瞬乱れた気がした。思わず周囲に誰もいないことを確認してしまう。自室で一人で勉強をしている最中だから僕以外にいるはずがないのだが、唐突に送られてきたその画像が、反射的に僕をそうさせた。
 一枚目。上半身が写っていた。写真で見える範囲では、胸元を大きく開いたシャツが見える。制服だろうか。下着は付けていない。
 牧本さんはその潤いのある大きな黒い目をうっとりとした様子で細めながら、白い服に縁取られた乳房の中央の淫靡な蕾のある部分を片腕で隠している。
 ある程度日焼けが消えて、その色白く瑞々しい肌の色を取り戻しつつある腕。胸を隠していない側の手は画面の方に伸びている。恐らくその先には自撮りに使った彼女のスマホがあるのだろう。
 二枚目。下半身が写っていた。両の腿の狭間に見える彼女の水色のパンツ。その縁からは薄らと艶やかな黒い陰毛が見え隠れしていた。それは端の方でやや灰色味がかっていて、それが妙な色気を放っている。
 性器を覆い隠している部分はぷっくりと膨らんでいて、その向こう側の柔らかい肉の存在が窺える。よくみると、そこはいやらしい食い込みを見せていた。
 彼女の細い指が、その性器の手前に見えた。中指と人差し指で逆のVサインを作って、挑発するかのようなジェスチャーを取っている。
 僕の頬が紅潮するのが分かる。
 どちらの写真も、直接的に陰部は見せていない。それが却って想像力を掻き立てて、劣情を煽ってくる。なんだか彼女、妙な知識をつけているようだ。

「どうです? ちょっと溜まってたんじゃないですか?」

 男の性でその画像を交互にじっくりと見てしまっていた僕の元に、彼女からメッセージが届く。
 率直に答えるのは何となく気恥ずかしいので、素っ気無い返答を返してしまった。

「まあ、少しは」

 正直なところ、結構溜まっていた。
 そろそろ彼女の肉感が恋しい。受験勉強のストレスを発散する目的でも、牧本さんの身体に流れ込みたい。
 こんな写真を送ってくれたということは、彼女もそうなのだろうか。

「今度の金曜日の放課後、都合がよければ二時間程度二人で会いませんか? 勿論、ゴム持参で」

 金曜日の放課後か。特に用事があるわけでもない。二時間程度なら、僕は問題ないだろう。
 今日は水曜日。後二日後か。

「いいですよ。どこで待ち合わせしますか?」
「『ビショップ』って言う喫茶店にしましょう。図書館が休館の時は私、そこで勉強してるんです。場所の地図、送ります」

 送られてきたマップを確認すると、僕の通う高校から自転車で五分も掛ければいけそうだった。
 授業が終わったら、そのまま直行してもいいだろう。

「行けそうです。でもまさか、その喫茶店のトイレかどこかでアレを始めるわけじゃないですよね」
「流石にそれは無いですよ。ちょっと私の居場所に、荻野さんを案内してみたいだけ。たまにはラインや通話だけじゃなくて、顔を合わせて話したいんです」
「ありがとうございます。では、金曜日に会いましょう。お勉強、頑張ってくださいね」
「荻野さんこそ、ファイト」

 会話が終わった。
 今日はこれ以上彼女の邪魔をしてはいけないだろう。
 送られてきたあの猥褻な写真は、後で使わせてもらうことにした。
 正直あんなものを送られたら、勉強に集中できない気もするが。

「……金曜日が楽しみだ」

 久しぶりに彼女に会える。
 そう思うと、心の中が活気付くように思えた。
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