最強魔導士と禁忌の書(アルトネバン) 〜黒き流星と呼ばれた男、落ちこぼれ転生者を引き取り、最強のパートナーになる〜

かずロー

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サンドイッチ

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 その夜ーー

 天音は起きる様子がなかったので、このまま≪零≫の本部の医務室で寝かせるということになった。

 また、今後の事については翌朝、天音を交えて会議するという結論に至った。これは、俺達だけで判断していい問題ではない。天音の意思を尊重をしなければいけないのでは、と言うので話がまとまったのだ。

 天音を一人、医務室で寝かせるというわけにもいかないということで、俺が本部に残るという事になったのだ。

 俺と≪零≫のメンバーは玄関前で話をしていた。俺は魔導師団の服を身に纏っていたが、他の皆は私服姿だ。

「ジン。俺達は帰るぞ。何かあったら≪伝達(ロア)≫ですぐに連絡よこせよ」

「あぁ」

 ≪伝達(ロア)≫は、話しかけたい人物に自身の魔力を飛ばす事で話すことが出来る魔法だ。この魔法が開発されるまでは魔道具でやりとりしていたらしい。今では魔法一つで話せるのだから楽なものだ。

「ねぇー。やっぱり私も残ってきたーい」

 モモが駄々をこねた。
 白のブラウスに桃色のフレアスカートを身につけている。

「お前が残っていたって意味がないだろう」

「そうだけどー」

「明日までとっておけ」

「はーい」

 モモは渋々納得する。

「それじゃあ、お疲れさん」

「おう、お疲れ」

 ナイン達を見送った後、俺は医務室へと向かった。

 俺は医務室にあった椅子に腰掛ける。
 ベットでは天音が規則正しい寝息を立てている。

 あんな事があって、寝られなくなるのではないのかと思ったが、泣いたおかげだろうか起きる様子はなさそうだ。

 ……腹が減ったな。
 そういえば忙しくて、夜飯は食えていなかっあたな。食堂の余り物で何か簡単なものでも作ろうか。

 俺は食堂へと足を運んで、冷蔵庫の中を漁った。

 食パン、ハム、レタス、チーズ、卵、ミニトマト。
 調味料に胡椒とマヨネーズ。

 これはサンドイッチ一択だな。
 これで腹が満たされるかどうかは分からんが、一晩は持つだろう。

 俺はエプロンを付けて、早速調理へと取り掛かる。

 卵をボウルに胡椒を入れてときほぐし、フライパンで半熟状になるまで火をかける。

 パンにハム、レタス、チーズ、マヨネーズ、半熟状になった卵を挟んだ。

 盛り付けた後に申し訳程度のミニトマトを添える。

 我ながらよく出来たサンドイッチだな。

 俺はサンドイッチを口に運ぶ。

「美味い」

 半熟卵のポロポロ感がちょうど良いのだ。
 今度はパンを焼いてみてみるのも悪くはないな。

 などと考えていると、

「……何か作ってるんですか?」

 天音が食堂に来ていた。

「そうだ。……腹でも減ったのか?」

「えぇ、何やらいい匂いがしたので。お腹も空きましたし……」

「そうか。飯も食ってなかったからな。良かったら食べるといい。口に合うかは分からないがな」

 俺はサンドイッチを差し出す。

「いただきます……」

 天音は小さな口でサンドイッチを齧る。

「美味しい……」

「なら、良かった」

 俺は優しく微笑む。

 ぱくぱく。

「普段から料理されているんですか?」

 ぱくぱく。

「あぁ、一人暮らしだからな」

 ぱくぱく

「へぇー」

 ぱくぱく。

「……結構食べるんだな」

 結構多めに用意したサンドイッチが、気づけばほとんどなくなっていた。

「すみません……。お腹が空いてたので……」

「足りるか?」

「はい、全然……」

 ぐぅーっと腹の鳴る音がする。
 俺の腹の音ではない。

 天音の方に視線を移すと、顔を赤色に染めていた。

「……作ろうか?」

「いえ!そんなお手を煩わせるような事は……!」

 天音は手を横に振る。

「いや、それより食べれる時に食べておいたほうがいい」

 食材はまだ残っているからな。
 それに食欲がないよりはよほどいい。

「サンドイッチはさっきと同じやつでいいか?食材が他になくてな」

「はい、お願いします」

 俺は追加のサンドイッチを作る。
 天音はその様子を近くで見ていた。

「手際がいいんですね」

「慣れてるからな」

「誰かから教わっていたんですか?」

「……あぁ、昔の知り合いにな」

 俺は作り終えたサンドイッチを皿に盛り付ける。

「いただきます」

 天音はそう言って再びサンドイッチを口にする。
 
 ぱくぱく。

 しかし、よく食べるな。
 俺も食べる方ではあるが、天音には敵わないのかもしれないな。

「とっても美味しいです」

 最初は小さく齧るように食べていたが、今はサンドイッチを大きく口を広げて頬張った。

「マヨネーズ付いてるぞ」

 俺の正確な指摘が飛ぶ。

「……」

 天音は口元のマヨネーズを拭き取った。恥ずかしさからなのか俯いていたが、顔が赤くなっているのを隠せてはいない。

「機会があればまた作ってやる」

「本当ですか!」
 
 嬉しそうに天音が言った。

 俺はその姿を見て、フッと微笑む。

 天音はこの世界で初めて笑顔を見せたのだから。
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