最強魔導士と禁忌の書(アルトネバン) 〜黒き流星と呼ばれた男、落ちこぼれ転生者を引き取り、最強のパートナーになる〜

かずロー

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旅立ちのとき

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 次の日ーー

 俺達は特務室で天音を交えて今後についての話し合いを行っていた。

 俺達は魔導師団の正装を着ているが、天音はピンク色のワンピースを身につけている。

 天音はこの世界に転生させられた時の服装のままで他の服など持っていない。そこでモモが「私のワンピースあげる!」と言って天音に着させたのだ。

「お前、桃色の服しか持っていないのか?」

 ナインが尋ねる。

「はい!だって可愛いじゃないですかー!」

 ここまで断言されてしまってはもう何も言えまい。モモの私服は、常に桃を基調としている。他の色の服を着てはどうかと言われたそうだが、「イヤ!」と頑なに言ったそうだ。
 名前がモモだからと理由だろうか。何か思い入れがあるのかもしれないな。

「天音ちゃん!とっても似合っているよ!」

 天音は俺の後ろに隠れていた。 
 とりあえず、俺のローブからは卒業出来て、顔を見せるようにはなったのだが、相変わらず目を合わせようとはしない。

「あ……ありがとうございます。大切に着させてもらいます」

「うん!」

 お礼を言う天音を見て、モモは目を輝かせていた。

「さて……早速だが本題に入ろう。天音君。単刀直入に聞くが、君はこれからどうしたい?」

 ナインが天音に視線を移す。

「ジンは、このまま君を引き取ると言っている。対して我々は、君を保護という形で育てていくという考えなのだ。無論、君の意見が第一優先だ。君が決めた事に我々が文句を言う筋合いはないからな」

 ナインが優しく言う。

「そうね。無理やりとは言え、この世界に来たんだもの。少しはここも良いところだって思ってもらいたいしね」

 ヒルデも眠そうな表情を浮かべながら言う。 

「天音」

 俺は背中に隠れている少女の名を呼ぶ。

「天音はどうしたい?」
  
 しばらくすると、少女は俺の背中から離れ俺の横へと並ぶ。
 泣き腫らしていた眼は既に元通りだが、顔は俯いていた。

「わ……私は……」

 緊張からか声が震えている。
 それでも少女は続けて言う。

「私は……。ジンさんの行くところについて行きます。前世でも……そしてこの世界でも、私がいる意味なんてない。そう思っていた私をジンさんは救ってくれました。そんなジンさんのお役に少しでも立ちたい。立たなきゃいけないんです。それに、いつまでも怖いからって現実から目を逸らすのは辞めようって決めたんです」

 少女は顔をあげる。
 決意の言葉と共に。
 その黒い瞳は、俺達を見ていた。
 
「……そうか、分かった。ジン」

 今度は俺の名を呼ぶ。

「彼女を守れ。これがお前への最後の任務だ」

「あぁ」

 気がつくと、モモががわなわなと震えていた。

「どうしたの?」

 アレスが尋ねる。

「可愛いすぎるよ。天音ちゃん……」

 そう言って、天音に歩み寄る。

「ジンさん……!」

 天音がささっと俺の背中に隠れた。

「モモ。天音が怖がっているだろう」

「ジンくん。天音ちゃんが可愛すぎるのがいけないんだよ」

 獲物を見つけた獣のような目で天音を見つめていた。

「確かに。天音は女性から見ても可愛いな。艶々なその黒髪に肌もきめ細かくて羨ましい」

「全く持って同感です。一体どんな手入れをしているんでしょうか?」

 ヒルデとカンナもうんうんと頷いていた。

「そうだ。お前にあれを返しておかないといけないな」

 ナインは引き出しからあるものを俺に渡した。それはただの黒曜石である。

「これは……?」

 アレスが首を傾げる。
 他の皆も分かっていないようだ。
 俺はその石を掴み、魔力を注ぎ込む。

 特務室が黒い輝きに包まれる。俺の魔力に反応したのだ。次第にそれは形を変えていき、一丁の銃へと変貌した。

「こいつを見るのも久々だな」

 黒き輝きを放つ銃にひと言。

 黒皇魔銃インペルタル。
 
 魔族と天界、人間との争いが絶えない神話の時代に作られた物だ。並の人間では、魔王の放つ魔力の前に消滅し、木々や水は枯れ果て原石は粉々に砕かれてしまう。しかし、ある一つの原石は魔王の魔力を吸収し、魔王の力を秘めた黒曜石へと変化したのだ。

 それを数々の名匠達が鍛え上げたのだが、条件がある。

 銃が己にふさわしい主を決めるのだ。
 生半可な魔力では扱うことが出来ず、むしろその魔力に飲み込まれてしまい廃人となってしまうからだ。

 己の持つ魔力を完璧に使いこなす人間を主として認めるのだ。

 その黒曜石は危険すぎるため、地下に厳重に保管されていたのだが、野暮用でそこに訪れた俺の魔力に反応して、俺を主として認めたということだ。

「最近は使ってなかったよな。なんで隊長に預けていたんだ?」

 アレスが隣で呟く。

 理由は単純、使う機会がなかったからだ。
 これはあくまで切り札として使用する物だ。使わずとも任務はこなせるのだから問題はない。普段はただの石なので持っているのも気怠いと感じ、ナインに預けていたのだ。

「ジンはこの後はどこに行く予定なんだ?天音ちゃんのことも考えればインベリッテに留まるっていう選択肢はないだろう」

 ヒルデが尋ねる。

「そうだな」

「だったらインベリッテから少し離れたところに小さな村落がある。あそこなら静かに暮らせるはずだよ。自然も多いし、そこに私が小さいからお世話になってるご老人がが建てた家があるんだ。あ、ベージュの屋根が目印だよ。私の方から話はつけておくよ」

 村落か。王国のような周囲が建物だらけのところではなく、自然に囲まれるのも悪くはないな。

「ひとまずはそこで過ごすとしよう。天音はどうだ?」

「私もそこがいいです」

 天音からの了承も得たことだし、その村落に向かうとしよう。

 俺達は特務室を出て、外に出ていた。

「それなら今から向かうとするか」

「その村落ってどれぐらいで着くんですか?」

「徒歩で一時間ちょっとってとこだな」

「むっ……」

 天音が渋そうな表情を浮かべる。

「歩くのは嫌か?」

「嫌って訳じゃないですけど、遠いなって。でもそんなこと言ってたって始まらないですよね!」

 張り切っている天音を見て、フッと微笑む。

「じゃあな。ジン」
 
「暇な時があったら顔出してよねー!天音ちゃんも!」

 皆が別れを惜しむかのように言葉を交わす。
 天音も少しではあるが、≪零≫の皆とは話せるようになったからな。もし戻ってくる機会があれば、今度は食卓を囲むのもいいのかもしれないな。

「あぁ、お前らも元気でな」

「はい、皆さん。本当に短い期間ではありましたが、ありがとうございました」

 天音が頭を下げる。

「それじゃ行くか」

「はい」

 俺達は≪零≫の本部を別れを告げ、村落に向けて歩き出す。

 途中で何処からか声が聞こえた。

 ーーちゃんと守ってあげるんだよ。

 聞き覚えのある声。
 その声に俺はこう答えた。

 ーー分かってる。お前の分までちゃんと天音を守ってみせる。
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