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兄が私を見る。無理した瞳で。
思えば長い付き合いだけど。不安になるのも仕方ない、よね。私たちは似ても似つかないから。
兄は長い睫毛に縁取られた切れ長のアーモンド型の瞳を持っている。細い筆で綺麗に色付けたような桃色の唇。小さな頃からその含み笑いには色香があった。
乳液なしでも陶器のようにすべすべな白い肌に、淡い茶色の髪。日の光がキラキラと髪の上を流れると、すれ違う人は皆、目を細める。
だからさっきの取り巻きが、似てもにつかねぇ!とちょっと罵声をとばしたのもわかる、んだ。出て行く時。睨まれたりさ。うん。
私はといえば、唯一のチャームポイントは丸い目と言いたいところだが。
クリクリの目はあるものの、クシャクシャと絡まる完全なるくせっ毛をコントロール出来ず、ほぼ前髪に隠れている。
ただ不幸中の幸いか、地毛が明るい茶色なので、周りには暗いのか明るいのかわからん見た目などとどっちつかずのことを言われてたり。
154㎝と若干小柄なのも悪いのか、完全に皆のペット扱い……春がきたら憧れの女子高校生デビューなのに!!
そうだ、脱線してた。
そうです。兄と私は似てないです。なぜなら我々は血が繋がっていないなら。はい。あたりまえのことでしたー。。。
兄は母の前の旦那さんとの子供で、兄が6歳の時、
前の旦那さんは交通事故で亡くなった。
そして同じく、奥さんを亡くして4歳になる私を連れた父と出会った、そして、めでたく結ばれた。
今のにーちゃんには忘れられてるけど。
でも、私たち二人の間には一緒に育ったからか、何のわだかまりもなく。父は大らかで母は優しく。恵まれておるよ。
兄の記憶喪失になった事故のことを知った時は、正直心臓が止まるかと思ったけど、生きててよかったよ。この世にたった一人の兄だもん。
じいっと兄を見つめていると、また知らない熱いモノが目から溢れてたようだ。
兄が綺麗な指で拭ってくれてようやく気づく。私は鈍いし頭もあんましよくないし可愛くないから。そんな指で優しくされるともったいないと思う。
いつもみたいに強く叩いたり、デコピンされるぐらいがちょーどいいんす。はい。さみしいよ、にーちゃん。
「そんなに泣くなよ。
まいったなー……こんな可愛い弟いたんだ、俺。弟だから犯罪じゃないよな。うん。お前、確かに俺の弟だな?」
顔を覗き込んできた兄に、必死でこくこくと頷く。
妹だよ!けど、そんなことも忘れられてるのが胸を抉えぐるように悲しくて、言葉にならなかった。
ふわっと優しく包まれる感触で、兄が私を腕の中にぎゅむっと抱きしめたのがわかった。
涙が黒い制服を濡らす。
「わかった、俺はお前を信じる。
お前とその涙、信じるから……だから、もう泣くな。……大丈夫だよ。記憶なくてもこんなだぜ?多分たいした男だったんだよ。俺は。だから何とかなるって。な?」
こく、と私はまた頷いた。ハナをすすりながら。
そんな私の髪をかき混ぜながら、兄はため息をついた。
「……参ったなぁ」
「にーちゃん、大丈夫、わた、俺もいるし。とーさん、かーさんもすぐ戻ってくるって。外国の山奥に行ったこと後悔してたくらいだもん」
必死で顔を見上げて言うと、兄は驚いたように私を見た。
「おー、そだな。大丈夫だな。お前もいるし」
ほっぺたをを両手で挟み込まれる。じっと見つめられると、大概の人が頬を染めるザ・イケメンだが、もちろん兄妹としてお互い貶おとしめながら仲良く育った私にそんなものはない。
「?にーちゃん」
「お、おー。お前、俺がこんなに至近距離で見てても顔変わんねーのな。そんだけで俺の弟って分かる気がするぜ」
髪は似てねぇけどな、とクシャクシャ髪を絡まらされて、ようやく私は落ち着いてきた気がした。
「やめてよにーちゃん。はぁ、心配したよ。さすがに」
桂さんに聞いて、最初は命も危なかったのかと心がきしむ。温かい身体に安心して抱きつく。
「……わるかったよ」
兄も抱きしめ返してくれるのにほっとする。こうした力が戻ってるんだ。兄はきっとすぐ思い出せる。大丈夫。身体がこんなに元気なんだもん。頭も心も後から付いてくる。
真顔になった冷たい顔に、上目遣いに微笑む。
「にーちゃんが忘れてる家族のこと、俺、話したげる」
記憶が戻ったら絶対殴られる。
弟になるっていたずら。
でもその時はじめて本当に兄が戻ってくるって、信じたくて、私はあえて嘘を続けた。
思えば長い付き合いだけど。不安になるのも仕方ない、よね。私たちは似ても似つかないから。
兄は長い睫毛に縁取られた切れ長のアーモンド型の瞳を持っている。細い筆で綺麗に色付けたような桃色の唇。小さな頃からその含み笑いには色香があった。
乳液なしでも陶器のようにすべすべな白い肌に、淡い茶色の髪。日の光がキラキラと髪の上を流れると、すれ違う人は皆、目を細める。
だからさっきの取り巻きが、似てもにつかねぇ!とちょっと罵声をとばしたのもわかる、んだ。出て行く時。睨まれたりさ。うん。
私はといえば、唯一のチャームポイントは丸い目と言いたいところだが。
クリクリの目はあるものの、クシャクシャと絡まる完全なるくせっ毛をコントロール出来ず、ほぼ前髪に隠れている。
ただ不幸中の幸いか、地毛が明るい茶色なので、周りには暗いのか明るいのかわからん見た目などとどっちつかずのことを言われてたり。
154㎝と若干小柄なのも悪いのか、完全に皆のペット扱い……春がきたら憧れの女子高校生デビューなのに!!
そうだ、脱線してた。
そうです。兄と私は似てないです。なぜなら我々は血が繋がっていないなら。はい。あたりまえのことでしたー。。。
兄は母の前の旦那さんとの子供で、兄が6歳の時、
前の旦那さんは交通事故で亡くなった。
そして同じく、奥さんを亡くして4歳になる私を連れた父と出会った、そして、めでたく結ばれた。
今のにーちゃんには忘れられてるけど。
でも、私たち二人の間には一緒に育ったからか、何のわだかまりもなく。父は大らかで母は優しく。恵まれておるよ。
兄の記憶喪失になった事故のことを知った時は、正直心臓が止まるかと思ったけど、生きててよかったよ。この世にたった一人の兄だもん。
じいっと兄を見つめていると、また知らない熱いモノが目から溢れてたようだ。
兄が綺麗な指で拭ってくれてようやく気づく。私は鈍いし頭もあんましよくないし可愛くないから。そんな指で優しくされるともったいないと思う。
いつもみたいに強く叩いたり、デコピンされるぐらいがちょーどいいんす。はい。さみしいよ、にーちゃん。
「そんなに泣くなよ。
まいったなー……こんな可愛い弟いたんだ、俺。弟だから犯罪じゃないよな。うん。お前、確かに俺の弟だな?」
顔を覗き込んできた兄に、必死でこくこくと頷く。
妹だよ!けど、そんなことも忘れられてるのが胸を抉えぐるように悲しくて、言葉にならなかった。
ふわっと優しく包まれる感触で、兄が私を腕の中にぎゅむっと抱きしめたのがわかった。
涙が黒い制服を濡らす。
「わかった、俺はお前を信じる。
お前とその涙、信じるから……だから、もう泣くな。……大丈夫だよ。記憶なくてもこんなだぜ?多分たいした男だったんだよ。俺は。だから何とかなるって。な?」
こく、と私はまた頷いた。ハナをすすりながら。
そんな私の髪をかき混ぜながら、兄はため息をついた。
「……参ったなぁ」
「にーちゃん、大丈夫、わた、俺もいるし。とーさん、かーさんもすぐ戻ってくるって。外国の山奥に行ったこと後悔してたくらいだもん」
必死で顔を見上げて言うと、兄は驚いたように私を見た。
「おー、そだな。大丈夫だな。お前もいるし」
ほっぺたをを両手で挟み込まれる。じっと見つめられると、大概の人が頬を染めるザ・イケメンだが、もちろん兄妹としてお互い貶おとしめながら仲良く育った私にそんなものはない。
「?にーちゃん」
「お、おー。お前、俺がこんなに至近距離で見てても顔変わんねーのな。そんだけで俺の弟って分かる気がするぜ」
髪は似てねぇけどな、とクシャクシャ髪を絡まらされて、ようやく私は落ち着いてきた気がした。
「やめてよにーちゃん。はぁ、心配したよ。さすがに」
桂さんに聞いて、最初は命も危なかったのかと心がきしむ。温かい身体に安心して抱きつく。
「……わるかったよ」
兄も抱きしめ返してくれるのにほっとする。こうした力が戻ってるんだ。兄はきっとすぐ思い出せる。大丈夫。身体がこんなに元気なんだもん。頭も心も後から付いてくる。
真顔になった冷たい顔に、上目遣いに微笑む。
「にーちゃんが忘れてる家族のこと、俺、話したげる」
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