夢のような生活

sakanaria

文字の大きさ
2 / 4

第二話

しおりを挟む
この世界での彼の生活はそれは華やかなものだった。高校生である彼は多くの友達に恵まれ、サッカー部のキャプテンでありながら成績もトップクラスだったため男女問わず、また先生からも人気があった。顔自体はそこそこだが学校でも一番といわれる美人の彼女がいる。
 掃除をすませホームルームが終え教室で友達と談笑していると、廊下側の窓から声をかけられた。
 「おい、お前の彼女が呼んでるぜ」
「わかった、今行くよ」
今日は彼女と一緒に帰ることになっていたのをすっかり忘れていて慌てて支度をしてから彼女のもとへ向かう。
「絶対今日一緒に帰ること忘れてたでしょ」
「忘れるわけないじゃないか。毎日お前のことばかり考えながら過ごしてるってのに」
「うそばっかり」
 帰りにコンビニでお詫びのしるしにいくつかおごってあげながら彼女と別れ帰宅した。
 まさにもう一つの世界とは正反対であった。この世界の彼は都会にすんでおり、家も最近建てたばかりで毎年家族で海外旅行に行くほど家族仲もよく、夢のような生活を送っていた。
 「もちろん本当の夢なんだけど」
 彼はたびたび頭の中でこの言葉を口にしていた。夢だとわかっていながらも本当にこの世界のことを気に入っている。
家族と食卓を囲みながら、
「この唐揚げいつもよりおいしい」
「わかる?味付け変えてみたけど成功してよかったわ」
「今度の休みの旅行どこか行きたいとこあるか?」
「最近あったわしのゲートボール大会の―」
など他愛ない会話だがいつも通り楽しい食事のひと時を終えると、2階の自分の部屋へ上がり課題を済ませくつろいでいると彼女から電話がかかってきた。
「もしもし、今何してた?」
「べつにぼーっとしてただけだよ」
「昔読んでたっていう暗い小説読んでたんじゃないでしょうね」
「なんだよ暗い小説って。まぁ確かに明るい小説じゃなかったけど」
 幼いころ彼はよく本を読んでいた。それもどちらかというと暗めのどこか陰鬱とした空気の漂う小説を何冊も読んだ。現実世界とは違う雰囲気を味わえるということで好んでいたのだろう。
 「この世界がずっと続けばいいのに」
 そう思いながら眠気が限界に達した彼は彼女に別れを告げ眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

夫に愛想が尽きたので離婚します

しゃーりん
恋愛
次期侯爵のエステルは、3年前に結婚した夫マークとの離婚を決意した。 マークは優しいがお人好しで、度々エステルを困らせたが我慢の限界となった。 このままマークがそばに居れば侯爵家が馬鹿にされる。 夫を捨ててスッキリしたお話です。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

処理中です...