やり直しから始まる人生を。

ハヤセ

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第四章 それから暫く経ち

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 時は流れる。暦はイシュタル歴500年になっていた。


季節は巡って周りを取り巻く環境も騒々しくも目まぐるしく変わり行くもので、相変わらず独り身でクエストをこなしている今日この頃である。


明「……ふぅ。これで10匹目だけど終わりが見えないな~」

その視線の先にはギャアキャア!と飛び交う飛竜たちの姿。
そう。気分転換に素材集めをしてるのだ。新しい防具や剣なんかを錬金する為だ

すると、

?「おい。アキラ、何をボーっとしてるんだ。」

ガキーンッ!!

                                                ザシュッ!

飛び交う剣技と返り血達と少し離れた場所で炎竜を相手にする男。

明「あー、ゴメン。ちょっと考え事。」

その手からは炎竜に向けられる複数の矢
目にも止まらぬ速さでそれは貫通し落ちてくる竜たち


?「………毎度思うが良く討伐しながら考え事をするものだ。」

若干呆れ目と怒ってる様な顔をされる。

明「まぁ、私だから大丈夫って事で。てか、毎回付き合わなくても平気なんだけど。………ノクシタン。」


?「ノクシタンって呼ぶなと何度言わせるんだ。俺の事はリューイと呼べ。」

いつの間にか終わったのか竜の死体達を異空間へ放り込むノクシタン事、

リューイ・ブルーウェル・ノクシタンである。
珍しく冒険者の中で貴族の出だがその素性を隠して活動していた。しかもランクはSランクだ。

見た目も整っておりどこぞのモデルと言っても良いくらいだ。髪色は肩につくくらいで色は白銀に近いシルバー。瞳は宝石を思わせるイエローダイヤモンドの色だ。


明「はいはい。リューイ。ひとまず片付いたから戻って錬金するから。」

リュ「それなら今度は3日後に魔獣の森に行かないか?」

こちらに近付き目の前に立つリューイである。
気の所為かその瞳は爛々としており

明「えぇ、………いいけどさ、リューイはパーティー入れば必要ないだろう。何時も誘われてるだろうに」

リ「俺は何処にも入るつもりは無いぞ。それにパーティーは面倒臭い。オレはアキラとがいいんだ。」

その手は明の頭に置かれそのまま流れる様に伸びた髪を遊ぶ。
色気ムンムンの優男なのだ。

明「…………確信犯だからタチ悪いよね。リューイは。」

それをスルーしてふいっとそれとなく目を逸らす。
こういうむず痒い雰囲気は苦手なのだ。
元々そういう男女間の関係も避けて通ってきたから尚更である。

リ「……ククッ…、なら決まりだな。それと今日も明の家でご飯食べてもいいか?。久々にリーファと話したいんだが。」

多分コレも口実だ。何時も何かにつけて我が家へ来る事が増えた。それに決まって泊まってまで行くのだ。

明「はいはい。リーファ達も喜ぶだろうよ。確か今日のご飯は和食だよ。好きでしょ、日本食。」

リ「!おぉ、ニホンショクはいちばんの好物だ。」

ガシッと肩を組まれ帰路に着く二人




………………………

明「ただいま~」

リュ「お邪魔する。」

「お帰りなさいませ、アキラ様、リューイ様」

そう言って出迎えてくれる使用人達元い家族達だ。

すっかりちびっこ達も少し大きくなり今では双子たちは5歳になるのだ。
日々成長して賑やかな我が家である。家族も増え、
ロロイも結婚して子供を三つ子設けたのだ。
獣人族はその身に魔力を多く持つ故繁殖能力は低い。ただ、人との間には出来やすく、それは男女共に人族もそういう傾向がある。

なのでロロイは敢えて人族の鍛治職人のアルフと結婚し、アルフは平民の出でありながら王宮付きの職人である。
そして縁があり結婚して三つ子に恵まれた。
その子達もすくすく成長してる。


明「済まないが、今日もリューイは泊まるから支度を頼む。」

ヨ「かしこまりました。ゆっくり寛げるよう準備は出来ております」

さすが年々執事としてオールマイティになってるリーファだが、彼は未だ独身なのだ。

この世界の獣人は番を見分ける事が出来ると知られている。どうやら一生に一度の出会いでもし見つけたら、どんな手を使っても手篭めにして番らしい。

ただ、その運命の相手に全力で拒否され見向きもされ無ければ獣人は狂ってしまうとか。


リュ「毎回済まないな、リーファ。世話になる。」

人当たりのいい笑みを向けるリューイ。

リ「いえ、これも我が屋敷の執事として当然ですので。」

一礼して食堂の方へ消えるヨーゼフ




……in食堂


それから食堂でご飯に舌鼓を打つ家族達である。
この屋敷では雇用関係関係なくご飯は皆で囲うと決めている。何より一人ではご飯は味気ない。
どうせなら皆で食べ話していた方が良いという私の考えだ。



明「うん。今日も美味しいよ。」


?「それは良かった。中々アキラ様の作るものに近付けるのは苦労しました」

この人はルロイの旦那さんであり人族でコックをする、名前はコーラルさんだ。


リュ「充分宮廷に並んでても分からないな」

それぞれ口々に褒め称えるのもここ最近の常だ。

明「そうだよ。もっと自信を持ってくれ、
コーラルさんはその才能を買われてるし、そもそも私の我儘を聞いて作ってくれてるんだからさ。
この世界で一番私の国の料理を作れる人だと自負していいと思うよ」


いつの間にか皿は空になっており、パチンッと手を合わせてご馳走様でしたと言う明とリューイである。


コ「いやいや、勿体無い位嬉しいよ。これからも頑張って新しい料理を振る舞いますよ」

にこやかにはにかむコーラルである





それからそれぞれ湯浴みを終え就寝の時間を迎えたが、一人リビングの暖炉の前でソファに座り酒を煽る明の姿があった。



明「……………ふぅ。」

グラスのお酒を煽りつつその手元には魔術書。
新しい術式を思案中なのだ。幾らか新しい魔法を創ったがまだまだこの世界には足りないものは存在する。


ペラペラとページを巡る
ふと、背後に気配を感じて振り返るとそこにはヨーゼフが立っていた。


明「どうした?。何時もなら就寝してる時間だろうに。」

ヨ「いえ、少し気になることがありまして。」

音もなく近くまで近付き傍らに寄る

明「?気になることって?」

コテンと首を傾げる

ヨ「………アキラ様に質問があるのです。リューイ殿について。」

明「何故にリューイ?、もしかして何か気になってるの、私とリューイの関係性とか。」

まぁ、気になるのはわかる気がする。ここ最近の交流関係やギルドへの貢献や他にももろもろある。

ヨ「はい。リューイ殿は公爵家であるニルス家の次男になりますが、その公爵家はこの国ならず他国にも影響力を持ってるのは存じ上げておりますよね?」

明「…知ってるよ。一応言うけどリューイは次期当主の座を継ぐ気はないと宣言してもいる。まぁ、それでも公爵家との繋がりがない訳では無い。それだけじゃないんでしょ?聞きたいのは。」

ヨ「はい。率直に申し上げますが、リューイ様との婚姻話も上がってるのは存じてますよね。アキラ様との」


そうなのだ。私自身爵位は公爵家より上になっている。勿論それを良しとしない貴族も少なくは無い。
だからと言って態々手を出してくる馬鹿も居ないわけで。
今の私の影響力や血筋を取り込む方が得策だと思い、リューイの実家も乗り出してきたのはここ最近の話だ。
だがリューイからは一言もその話題は出されていない。
と言うのも彼には恋人がいる。それも平民にあたるがそれはそれは綺麗な美人さんだ。
なので元々興味が無いため助かる。なんならその恋人の後ろ盾になる事も考えている。大きなお世話かもしれないが。


明「その話は断りを入れてるよ。言ったろう?。私はこの世界で二度も婚姻やら子供を設けるつもりは無いのだと。違えるつもりは無いよ。」


ヨ「…………アキラ様は幸せになるべきだと以前申しましたね。それは変わりません。それにもし仮に、
俺がアキラ様の事をお慕いしてると言ったらどうしますか??」

見遣ればその眼は真っ直ぐ明を映す。色濃くなる様な目をしていた。


明「!…………それは困る。それにヨーゼフにはもっと良い人が見つかるさ。」

その目に耐えかね視線を手元の本へ戻すが、少し心臓が鳴り止まないのは気の所為だと思いたい。

ヨ「俺達獣人はしつこいんです。一度見つけた運命の番は何がなんでも手に入れる。知ってますよね。それも。」

更に近づき明の長い髪をすくい口付けるヨーゼフ。


リ「……それと、関係ありませんが。リューイ殿は恋人は居りませんよ。」

ピクっと小さく肩が跳ねる明。心無しかその耳はほんのり紅く

明「………………垂らしめ。お前もアイツも。」

リ「事実を述べた迄ですが。…まぁ、今夜はこの位で。……余り夜更かしし過ぎないようにしてくださいね。」

名残惜しそうに髪から手を離しお休みなさいませと一礼し去っていく、ヨーゼフであった。



居なくなった後………。
一人顔を覆い溜息を着く明が居るのであった。






………………………………………………


それからも3日置きにリューイに誘われるがままクエストへ赴く事や採取という名の狩りをしているのである



明「なぁ、リューイよ。」

一通り採取し終え獲物を空間へ放り込む明は、すぐ側に経つリューイを観やった


リュ「ん?、何だアキラ。」

首を傾げにこやかに笑顔を向けるが、心無しか楽しそうである。

明「いや、こうも毎回飽きはしないのか?。私と組むのは詰まらんだろうに。大して会話をするのも多くないし。それに前衛ばかり任せて後方支援でサポートしてるだけだし。」

リュ「………そんなに詰まらないとは言ってないぞ?。それにアキラの魔法は万能だ。サポートしながら回復やパブ、付与魔法をかけるほどの魔力量もある。正直楽すぎて怖いくらいだ。」

ポンポンと何故か頭を撫でられる始末……。解せぬ


明「…………オホンッ。で、それと実家はいいのか?。最近呼び出されてるのだろう?」

リュ「あぁ。アキラの心配する事はない。俺個人の問題だからな。それに早々嫌気が刺してるくらいだ。」

少し渋い顔になるがそんな顔もイケメンだから腹が立つ

明「フーン。大方私との婚姻どうこうだろ。」

自分より背の高いリューイを見上げ目を細めて見やる


因みに身長はこの世界では割と皆高めだ。170を超えるのは当たり前らしい。だから特段自分が高いと言う訳ではい。精々私は170位だ。それを超える180弱だろう。


リュ「………そうだな。それもあるが。正直俺としては実家関係なくアキラと仲良くしたいし、あまつさえ婚姻関係を結びたいのも本音だが。何せ一度振られてるからな。」

その顔には若干の憂いとそれでも獲物を観るギラついた様な瞳。
何かデジャブ感が否めない………。


明「……………だって、私からしたらリューイも、勿体無い。それに恐れ多いよ。」


そう。確かに会って間もない頃に一度振ったのだ。
理由は単純だ。誰かと幸せになるのは怖い。それに、結婚するという事はそういう関係を持つのもあるという事だ。
正直色んな意味で自信を損失してる私にはかなり精神力の要る事なのだ。


リュ「それを言ったら、俺からすればアキラはこの上なく魅力的で誰もが欲しがる存在だ。だから少し焦る。その全てを閉じ込めて監禁したいくらいに。」


あ、これはマジトークだ……。何時もより色気半端無くて、噎せ返りそうになる。
それに、何時もより近いんだよな。今日は特に。

くっつきそうな距離の二人。
その隙間はほぼ無く、見下ろすリューイと視線を迷わせ一生懸命ポーカーフェイスに務める明。
だがリューイの手は明の耳をすり抜け頬へ触れている

…………ヤバい。コレって危機的状況じゃないのか?、
と言うか近いちかい!、、
………………………何でドキドキしてるんだ、自分!、


既に耳を紅くして目を逸らして下がろうとするが、
ガシッともう片方で腰に手を回されるのだ。

明「!…………真面目に洒落にならないから、離してくれませんかね、……リューイさんよ。」

グイグイッと胸を推すがいかせんビクともせず。
そうしてる内に顎を捕まれ上に向けられる。


リュ「………逃げようとするな。…まぁ、逃がす気もないが。なぁ、アキラ。」

そこには悪魔かよ。とツッコミたくなるくらい不敵な笑みを浮かべ明の下唇を親指で撫ぜるリューイさんが居た。


明「ッ………………いい加減にしないと、」

リュ「しないと?…………どうするんだ?」

その顔は唇が触れそうな位の距離で吐かれた。

………………ちゅっ

それは触れるだけの口付け。

そして再びまるで確かめる様なキスを落とされる。


明「!…………んっ、………ちょっ、、……」


次第に深く角度を変え味わう様に、少し開いた口に侵入してくる下は口内を犯し、嬲る。






………………………

それから数分か数十分か分からないが口付けをされた。

そして開放された頃にはくたりとした明がその腕の中には居た。



リュ「やはりお前は可愛い。」

そんな明を引き寄せ抱き抱えたリューイはその明の口に触れるだけのキスを落として、満足気な顔をしていた。


明「……………マジで容赦ない男…………。これじゃぁ、ヨーゼフが気付くぞ…」


リュ「ふん、ライバルは多い程燃える。それにリーファには渡す気は無い……と言いたいが、この国は一夫多妻制度は無い。伴侶は女性の方は何人か持つ事も許されている。だからその時はその時だ。それより俺は逃がす気は無いぞ。」

グイッと更に密着するリューイ。そして、

スルリと頬を撫でる。
だがその顔は、瞳の色が濃く見える。そして膝に当たる感触も………。

明「ッ………ムッツリめ。そう易々とヤレるとは思うなよ」

ぷいっとそっぽを向く明だが当たるものが有るからか、羞恥心も少しあり落ち着かなく。

リュ「ふっ…………。今日は我慢するが、今度改めて挨拶させてもらう。その時はこれでは済まないから覚悟しておけ。」

と、明の後頭部に手を添え引き寄せ、ちゅっ………

再び口を塞ぐのであった…………

…………明は半分諦めて受け入れるのであった
気付けばそこで記憶は終わっている。





        …………………………………


気がついた頃には屋敷の自室のベットで目を覚ました

はたと。気を失ったとか何処のヒロインですか……
1人頭を抱える明である。あの出来事の後明はリューイに抱えられ此処へ運ばれ寝かされたのであろう。

ヨーゼフ達は鋭いから気付いてるだろう。
特にヨーゼフに対してどう話そうかと考える。良からぬ誤解が生まれているだろう…………。

リューイとの関係をどうするか考えるのは勿論、ヨーゼフの事も今回きちんとせねばならない。


明「…………はぁ。こういうの苦手なんだよな、」


…………取り敢えず湯浴みしてから考えよ。

と部屋には備え付けの浴室を作ったのだ。浴場は侍女達が使えるようにして、気を使わせない為に自分用をこさえた。
何より一人でも出来ると言っても洗われるのはむず痒い。



……………それからゆっくり浴槽のお湯に浸かり疲れを癒し。

着替えをして、執務室へ向かったのだ。


………………コンコンッ
執務室のドアをノックすると、はい。と返事が返ってくる。

キイッ………

中へ入るとそこには書類が積まれる机、その椅子へ腰掛けるヨーゼフの姿がある。

元はこの執務室を使っていたが、殆ど自室の机で済ます為勿体無いからヨーゼフに明け渡したのだ。

明「お邪魔するよ。」

ヨ「何かございましたか?」

その顔色は少しの疲労と若干の不機嫌な気もする顔

明「…………何故休まないんだ。ヨーゼフ。ここ最近休暇を取ってないと聞いたぞ。」

ヨ「それは否定しませんが、何せ領地の財政を管理してますから。新たな資源の事で申請やら商人やらが来てまして。」


………忘れていた。領地を持つにあたり財政関係をヨーゼフが一任してるのだ。
勿論自ら名乗り出てやってくれたが、正直一人では大

変だから人を増やしてる所なのだ。
だが、増えたは良いがそれでも重要箇所は私やヨーゼフが立ち回らればならない。

それは変わらない。だからこそ爵位等は疎ましい。
こんな苦労させる為に貰ったものでも無い。

明「…………はぁ。ひとまず命令だ。ヨーゼフは一週間休暇を取れ。これは決定事項だ。」

机へ近づき書類の山を空間へ放り込む。

ヨ「!ですが、私が仕事を休めばここへ来る者たちの対応はどうする気なのですか?」

明「それはどうとでもなる。人は居るんだ、何も全部背負う必要は無い。そんな為にヨーゼフを家族にしたんじゃないよ。忘れたのか?」

今でもヨーゼフ達を、ヨーゼフを家族へ迎えるにあたって、約束したのだ。
何があっても一人で抱え込まない事。相談する事。

他にも沢山。それに貴族たちのしがらみに巻き込む気も無かったのだから。

ヨ「……………アキラ様、俺は救われた命を今度はアキラ様と共に過ごす為に使うとあの時誓いました。
違える気は無いのです。それに、少しは頼れる獣人に成りたいです。あの頃みたく弱くないのです。
護られてばかりでは無いんです。それこそアキラ様こそもっと頼って下さいませ。俺を。」

いつの間にか立ち上がり目の前に立つヨーゼフ。
その瞳は少し色が陰り、だが力ず良くもあり

明「………そうだね。確かに強くなった。皆も、ヨーゼフ自身も。」

ヨ「アキラ様はこの世界に来られて、功績を称えられ、爵位を得て責任ある立場に立たれて、沢山の国とその長や貴族達に会って、時には心無い言葉を向けられてきたのも何となく分かるんです。そ
けど、それでも、全然弱音を吐かなかった。何時も笑って誤魔化しますね。それにそれよりもずっと違うことを気にされて、」

少し悲しそうなないてる様な顔をしている。

ヨ「その目が心無い言葉を言われた事に心痛めてる訳じゃなくて、それとは関係ない事で枕を濡らしてるのを気づかないフリするのはどうしても我慢できないんです。………俺にとっては主人である前に
『運命の番』である貴方に対しては。」

大切な人が人知れず悲しんでるのも、もう会えない者を思って涙を流すのもこの世界の為に自ら自己犠牲に走るのも耐え難い。

だからその全部を引っ括めて俺が貴方をいっその事攫って閉じ込めてしまいたいと、出会ってから何度思ったことか。

………と、その口をついて出るのは今まで言えなかったヨーゼフの明への想い。


明「…………うん。………流石と言うか、
獣人の愛が凄まじいのは聞き及んでたけど想像以上に重いよ、ヨーゼフ。…………けど、聞けてよかった。」


……………改めてこうしてヨーゼフ自身から聞かされるのは予想していたのだ。
けど、ちゃんと聞いて番だと言われた。
最初はずっと家族として執事として接するつもりでいた。
だが、ヨーゼフの気持ちに気付いてからはそうも出来なかった。
いや、知らないフリをするのは良くないと考えるよになっていたのかもしれない。

それだけ掛け替えの無い存在になっていたのだ。
この見た目はもうすっかり成人した獣人を。
出会った頃はまだ少年から成人への変換期の前だった


明「………ヨーゼフには話したけど、元の世界に子供を一人残して来たんだ。………残すと言う言い方も可笑しいが、離縁した旦那の両親達がまだ若くて、色々あって、
その人達が引き取ったんだ。養育は私達がするから縁を切ってくれて。それ以来合わせて貰ってなくて。
多分もう学校に行ける歳になってる。
……その子と離れても忘れる事は出来ないんだ。
親として大して出来な方っとしても、唯一の肉親で初めて出来た家族だったから。」


少し過去の話をしようか。……………………………


情けない話だ。私は年若く子供を設けた。良く有る話でお互い若く上手く行かず、旦那は女に逃げた。
そして、丁度同居の流れになっており、その時旦那の両親達はそれを黙認し甘つさえ孫さえ手に入ればいいとした。

そしてある日離縁を言い渡され、家を追い出され、子供を取り上げられた。

それから元の一人の生活を建て直しながら暮らしていた。やっと追いついた頃に、私を此処に来るきっかけを作る元凶である女が、私を殺した。

その出来事が無ければ、多分何方にせよ私は死んでいたのだろうと今は思う。
それくらいその時の状況は辛いものでしか無かった。

生きる価値も意味も見いだせず、自分一人でどうにかしなきゃ行けなかったのだ。

けど、この世界に来ることを赦した女神の計らいで私は転生という形で再度人生を送る事になった。

結果はどうであれ感謝してる。胸にぽっかりかり空いた空洞は少しづつ、ヨーゼフ達と過ごすことで埋まってるのも事実だから。




明「だからね、感謝しか無いんだ。ヨーゼフにも、
リューイにも。それにこの屋敷の皆にも、ギルマス達にも。他にも沢山いるけど。………1番はヨーゼフだよ。」


少し照れ臭そうに笑う明は心底曇りのない笑顔であった


ヨ「!………それはどう言う意味か教えてくれますか」


明「………うん。『運命の番』って言ったろう?。
私にもその感覚が何となく分かるんだ。…どうも、
私の種族も見分ける力があるらしい。けどね、ヨーゼフもその番みたいなんだけど、えっと、…………リューイともそうみたいなんだ。………二人も現れるのは、
エンシェントエルフ特有だって最近知ったんだ。」


何とも居た堪れないが、事実なのだ。なんで2人も番がいるのかは私にも分からないが、変えられる運命でも無いらしい。

何せヨーゼフ達2人の称号に『運命の番を永遠に愛する者』と『離れがたき番を守護するもの』

と、とんでもないモノが付いていたのだ。
それも明が自覚してから暫くして現れた称号だった。

ヨ「………それは何となく知っています。勿論番の願いは叶えるのも務めです。それにリューイ殿なら仕方ありません。」

グイッと明の腰に手を回すヨーゼフである。
その眼は獲物を目の前にした獣、いや、狼そのものだ


明「!…………やはりヨーゼフは私に甘いな。…だが、そんな所も…………」


真っ直ぐヨーゼフの瞳と目を合わせ、
『好きになったのかもしれないな』とぽつりと告げる

どちらともなく唇を重ねる二人。

……………………ちゅっ

          ………………………………くちゅっ


確かめる様に角度を変え、徐々に深くなる


明「……………っはぁ…………」

離れるとその顔は少し紅く目は潤んでいる

ヨ「…………………っ、煽ってますか?」

グッと強く腕に力が入る。そんなヨーゼフの目元は紅く、いつも以上に色気がだだ漏れである


明「……誰のせいだ………。このむっつりめが。」

コテンとその胸に寄りかかる明は全力で思うのだ。

……ヨーゼフとリューイの二人の相手をするのはかなり体力居るんだろうな、と。

ヨ「今すぐ抱きたいですが。抱き潰しそうなので、今夜はこの位にしておきます。」

と言いつつ明を抱き上げ、いそいそと寝室へ運ぶヨーゼフである。




…………………………


そのままベットへ運ばれ丁寧に毛布をかけると

ヨ「………アキラ様。」

明「何………?」

ヨ「……もし、仮に俺と婚姻を結ぶとして。俺には爵位も地位もありません。」

明「…………そんなの気にしてるのか。……それに関してはどうとでもなるし、その気になれば私は2人と一緒になる覚悟はもう出来てるから、爵位も領地も返還して気ままにやるよ。」

少しうつらうつらしながら見遣り

ヨ「アキラ様はお優しいですね。本当にどこまで行っても………」

そのまま明の額にちゅっと口付けを落とし、微笑むヨーゼフ。

明「……当たり前だろう。気負う必要は無いんだ。何も。」

限界が来て瞼が降りる…………


ヨ「そんな貴方だから俺は何処までもついて行くし、手放す気は無いのですよ。」


そんなヨーゼフの話し声が聞こえたが、その辺で意識が沈んで行った。



……………それから暫く時間は過ぎ、宣言通りリューイは明に婚姻の申し込みをしてきた。

更にヨーゼフからも求婚の証である生まれ育った街に伝わる伝統を重んじた婚姻の証である魔石と装飾されたペンダントを渡されたのだ。




……………………イシュタル歴502年の冬

そこは神殿内の教会だ。そしてそこに居るのは明達


少し緊張からか、手が強ばるのを握りしめる。


明「………これは本格的に腹を括らないといけないな」

その胸元にはヨーゼフからのペンダントがある。
そしてリューイからはこの世界にも婚姻する相手に贈る風習があると、リューイと同じ瞳の色の魔封石があしらわれた銀製の指輪。

リューイの方は私と同じ瞳の色の魔封石が着いた指輪をしている。

ヨーゼフも片割れの様に作られたペンダントを付けている。


ヨ「怖いですか??。アキラ様」

明の傍らに立っているヨーゼフの服装は私の世界で良く見る礼服に色は白に近いシルバー色の服に手を加えて派手過ぎない程度のエルフ族が刺繍してくれた物を身にまとっている。


リュ「俺たちは逃がすつもりは無いぞ。」

更に反対側にはリューイの姿がある。対して深い藍色の礼服に同じような刺繍と少し異なる刺繍がされている。


明「ヨーゼフ、怖くは無いよ。それにリューイ、
逃げる気もない。ただ、こうして神の前で違うのは初めてなんだ。」


元の世界では結婚式をあげる暇もなかったが、この世界でもまさか結婚するとは想いもしなかった。

だからそう言う意味では少し怖いのと少しの期待と喜びに近い暖かいものが胸を占めてる。

そして、この伴侶たちに出逢えたことに心から感謝する。
短くも長くもある間で私を変えてくれた。変えられたのだ。

もう一度私に幸せになるチャンスをくれた女神様にも感謝している。この世界に生まれ変わらせてくれて有難うと、その手を組み額に当て心の中で祈る。


その傍らに二人の伴侶が寄り添う。

明「…………こんなに幸福では、バチが当たりそうで怖いな。」

目を開けてそれぞれの顔を見上げて笑う明。

そして2人の伴侶はそれに釣られて綺麗な笑みを浮かべ、ヨーゼフとリューイは明の額に口付けを落とすのだ。


ヨ「バチは当たりませんよ。何せ女神様の祝福が有りますから。」

リュ「そうだな。仮にバチが当たるようなら、俺たちがアキラを守っていくさ。」

明「ふっ、……………それは頼もしいな。」

フワリと舞う頭に飾られたベールが揺れる。
そしてその身を包むのは淡いグリーンに近い色の伝統的な衣装をアレンジしたものだ。


そして、


ク「さぁ、神の前で誓いの儀を執り行いますよ」


そこには神殿長であるクロムエルの姿がある。


そして教会内の参列者の姿。中には過去に関わり友好を交わした、それぞれの国の国王達やその王妃様、
更にはお世話になるギルマス夫婦や、宿屋の女将さん夫婦と、沢山の知人や戦友たちがいる。



明「はい。」


三人は祭壇の前に。それから



ク「汝、アキラ・クドウ・ローゼンバルトは生涯病める時も健やかなる時も喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、伴侶であるリューイ・ニルス・サーウェルトとヨーゼフ・クルーベルトを敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすこと、女神イシュタル神の前で愛する事を誓いますか?」



明「はい。私アキラ・クドウ・ローゼンバルトはこの世界の神である、イシュタル神の名にかけて誓います。」


ク「では、ヨーゼフ・クルーベルト。リューイ・ニルス・サーウェルト。同じくイシュタル神に誓って、誓いますか」



ヨ「私、ヨーゼフ・クルーベルトは誓います。」

リュ「リューイ・ニルス・サーウェルトは誓います」



ク「宜しい。では此処イシュタル神殿において誓約は交わされました。これから困難もあるでしょう。
ですが、死が分かつまで三人の魂は離れる事はありません。
そして、この世界の転生者である貴方が幸せになる事を女神様は望んでおられます。
それに恥じぬよう、どうか幸せにお成りなさい。」


そこには慈愛に満ちた目で微笑むクロムエルがいた。



明「!…………はい。永久に。」 







…………………………………



それからは目まぐるしかった。
何せ色んな種族が集まり、尚且つ各国の来賓を持て成したり挨拶したりと王宮の一角を貸してくれた皇帝に感謝したが、
何分人が多い。それに警護や護衛をしてくれた人達にも感謝だ。



時間は夜中を周り、やっとの事で屋敷に戻ってきたが、今日は皆本邸で休んでる為、最近増設した別邸を私達三人の新居兼仕事以外を過ごすのに使う事にしたのだ。




明「………流石に疲れた。それにお酒を飲み過ぎたから少し眠い………」

普段は屋敷の人間なら、ヨーゼフが近くに居ると眠れる。
そしてリューイが来るようになってからは、近くに居ると寝付きが良くなることが分かった。

元々不眠症に近く、一人で眠れなくなったのは幼い頃。
元の世界ではそんなのはザラで、睡眠導入剤を服用していた。
だがこの世界の薬剤は身体に害するものが少なくは無く、幾らか長命種で有っても駄目だと薬師から言われたのだ。


ヨ「今日は疲れたろうから、眠っては??」

寝室のベットはキングサイズで、この世界の人達は皆丈が大きいからサイズも何でも大きく出来ている。

…………なので余裕で三人で寝れるのだ。


リュ「そうだぞ。また倒れられたら困る。」

少し信用が無いが、何度か仕事の無理が祟り寝込むことが有ったのは記憶に新しい。

明「……大丈夫だよ。それに今日から三人で寝るのはいいけど、本当にいいのか?。私は2人が居れば眠れるけど。」

初めは分ける事も切り出したが、却下されたのだ。
別に気にしないと言われた。この2人は存外気が合うのか、よく話す姿も観ていた。


ヨ「構いませんよ。最初から解消して決めたのは俺達です。」

リュ「そうだな。俺たちはアキラと寝れれば問題ない。」

明「良いならいいが。…………それでさ。君たち2人は結婚して私と伴侶になった訳だが。今日は婚姻して初めての夜なんだが。」


と、少し言い淀むあきらさん。………そう。今日は世の中で言う初夜なのだ。
婚姻する前は二人とは身体の関係は無かった。と言うより、大事にしたいと言われたのだ。

勿論二人とも触れ合いをしたが、寸でで自制してたのも想像つく。


明「………今日は、と言うか今日から私に何しても怒られないんだぞ…?」

自分で言っておいて何だが、いかせん照れる。
キャラじゃない。


そして目の前の伴侶たちの目は既に獲物を目の前にしたオオカミになっている。
それにズボン越しにわかるソレも。


…………あぁ、自分で言っててこれは明日起きれないな、と思う明はその伸ばされた伴侶達の腕に捕まり、気付けばそこで記憶は途切れているのだった。
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