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第1章
7.アンハッピー・ウェディング
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「ユキ様、きつくないですか? もう少し緩めましょうか」
「ううん、大丈夫」
窓から暖かい日差しが差し込む。
今日は朝からサウス城内は慌ただしく準備に追われている。リサにドレスの着付けをしてもらいながら、わたしは思っていたよりも自分が冷静でいることに驚いていた。
今日は、サウス国王・ソウと元ノース国王──わたしの結婚式が開かれる。
着付けが終わると、リサが細部の確認をしながら、遠慮がちに尋ねてくる。
「ユキ様、本当によろしいのですか? このままだと、あのわがまま陛下の妃になってしまいます」
リサの言い方に、思わず笑ってしまう。ドレスの裾を直しながら、わたしは無理やり明るい声を出した。
「もう、いいんだ。なんかわたし、小さい頃にあの人と結婚するって約束しちゃったみたいだし」
おどけるように言ってみたが、リサの表情は厳しいままだ。わたしが無理やり笑っていることに、きっと気付いているのだろう。
「……ユキ様。失礼かもしれないんですが、お聞きしてもいいですか」
「なに?」
「ユキ様はその……陛下のこと、好きですか?」
予想外の質問に、わたしは驚いて鏡越しにリサの顔を見つめた。
ソウのことが好きなのか。
少し逡巡してから、わたしは正直な気持ちを口にした。
「……好き、だった。わたしを守ってくれるあの人が」
「…………」
「でも、今は違う。ノースを……わたしの日常を壊したあの人を、憎んでる」
「ユキ様……」
「でもね? 全く知らない誰かと結婚するくらいなら、一瞬でも好きだった人と結婚した方が幸せなのかも、って思ってるの。あの人はきっと、国を大きくできるなら誰でもいいんだろうけど」
「……あの、ユキ様。陛下は……!」
リサが何か言いかけたその時、ドアをノックする音がした。
そして少し間をおいて入ってきたのは、純白のタキシードに真っ赤なマントを羽織ったソウだった。手には飾りのついた王冠を抱えている。
そして同じく純白のドレスに身を包んだわたしを見ると、満足そうに笑みを深めた。
「天使がお迎えに来たんかと思たわ。いや、女神かな?」
「……よく、そんな台詞思いつきますね」
相変わらず軽口をたたくソウに、そっけなく返す。その様子を、リサが複雑そうな顔で見つめている。
「あ、ユキちゃん、あっちの部屋でタカミが呼んどったで。式の前に一応診察するって」
「分かりました。では失礼します」
事務的な返事をしてから、ドレスの裾を持ち上げてわたしは部屋を後にした。
***
「ずいぶん仲良うなったみたいやねえ、ユキちゃんと。羨ましいわぁ」
「……おかげさまで」
「でも、ユキちゃんに余計なこと教えんといてや? キミ、おせっかいなとこあるから」
へらへらと笑うソウとは対照的に、リサは厳しい表情を崩さず返した。
「では、おせっかいついでに一つ教えて差し上げます。ユキ様、陛下と交わした約束を覚えていらっしゃるそうです。それと、陛下は国を拡大するためにユキ様と結婚するのだと思っていらっしゃいます」
「……まぁ、そやろなぁ。それよりリサちゃん、一つ頼みがあるんやけど」
「……なんですか。内容を聞いてから判断します」
苛立ちを隠さないリサに苦笑する。
なんとなく、ユキと似ている。だからこそ二人は仲良くなれたのだろうけれど。
「今夜、ゴウマが閨の儀を行え言うてる」
「ね、閨の儀って……そんな、まさか! いくらなんでも……!」
「もちろん反対したで。ゴウマも一旦は引き下がったけど、何や企んでるみたいや。あいつ、早よユキちゃんに子ども産ませて、その子を王にして傀儡政権を作りたいみたいやわ。ま、もうバレてるんやけど」
「……あきれました。そこまでバカだったとは……」
「ほんまやで……そやから、式が終わってからもユキちゃんのこと護衛してほしい」
「……分かりました」
ゴウマは分かりやすく馬鹿な男だが、父の代から大臣を務めているだけあって妙な人脈だけは広い。さっさとお払い箱にした方が国のためになるのだが、大きな理由がなければそれも難しい。
家柄だけで大臣になったゴウマは、昔から邪魔な存在で、どうやってあの男を城から追い出そうかとずっと考えていた。そのせいで、ユキを傷つけることになってしまったのは不本意以外の何物でもない。
しかし、決闘でノースに勝ち、ユキを妃に迎えることが決まった今、あの男は油断している。その隙を突いて、長い間邪魔だったあの男を失脚させる。
そして、「この国」の体制が整ったら。
──ユキを幸せにできる、自信がついたら。
そのとき、ユキになんと言おうか。
***
式が始まる。荘厳な雰囲気の教会に、大勢の人々が集まっている。
わたしはできるだけ感情を殺して、その場に立っていた。何か深く考えようとすれば、きっと泣いてしまうから。
「ユキちゃん、大丈夫?」
「え……」
顔を上げると、王冠を被ったソウの顔があった。
──悔しいが、よく似合っている。いつもはへらへらと威厳がないくせに、こういうときだけしゃんと背筋を伸ばして立っているのだ。
神父の言葉も、あまり聞かないようにした。言われた通り、儀式的に行うだけ。そこに感情を持ち込めば、きっとこの場にはいられなくなる。
教会内での儀式は終わり、サウス城のバルコニーに移動する。
扉を開けると、太陽の光と、城下に集まった人々の姿が見えた。
「今日はノース国民も入れるようにしてある。まぁ、ほんまに来てるのは少ないやろけど」
ソウの言葉が、耳を通り抜けていく。曖昧に頷きながら、わたしはずっと考えていた。
ノースを吸収することで、なにがどう変わるのか。ソウは一切わたしに教えてはくれなかった。もう国王ではないわたしは、知ったところで何もできないのだろうけど。
「ソウ・トコエ・サウスカトライアと、ユキ・マリー・ノースカトライアの婚姻をここに証明する。では、誓いの口づけを」
その声に促され、ソウの顔が近づいてくる。まだ顔に残る火傷の跡をなぞるように、ソウの指が遠慮がちにわたしに触れた。わたしは無表情のまま、ただ黙って目を閉じる。
「……ごめんな、ユキちゃん」
また、だ。
あの決闘の日も、ソウはこうして謝った。自分勝手にわたしを連れてきたのなら、いっそひどい人のままでいてほしいのに。
そっと唇が触れ合う。それは一瞬のことだった。
ぎこちない拍手が辺りを包む。
目を開けると、悲しそうに笑うソウがいた。
なぜか、胸が痛んだ。気が付くと、知らぬ間に涙が頬をつたっていた。その涙をソウの冷たい手がぬぐう。
そして、城下に集まった人々を見下ろして、ソウが高らかに宣言した。
「今この時をもって、サウスカトライア王国と、ノースカトライア王国を合併し、カトライア王国とする!」
ソウの言葉に、国民が大きくざわめく。控えている城の者たちも、驚いたようにソウを見つめている。
それは、隣に立っているわたしも例外ではなかった。
「……詳細は追って通達する。以上や」
それだけ言うと、ソウは颯爽とその場を後にした。その後を宰相や侍女たちが慌てて追いかける。
わたしはただ、その場に立ち尽くしてその姿を目で追うことしかできなかった。
「ううん、大丈夫」
窓から暖かい日差しが差し込む。
今日は朝からサウス城内は慌ただしく準備に追われている。リサにドレスの着付けをしてもらいながら、わたしは思っていたよりも自分が冷静でいることに驚いていた。
今日は、サウス国王・ソウと元ノース国王──わたしの結婚式が開かれる。
着付けが終わると、リサが細部の確認をしながら、遠慮がちに尋ねてくる。
「ユキ様、本当によろしいのですか? このままだと、あのわがまま陛下の妃になってしまいます」
リサの言い方に、思わず笑ってしまう。ドレスの裾を直しながら、わたしは無理やり明るい声を出した。
「もう、いいんだ。なんかわたし、小さい頃にあの人と結婚するって約束しちゃったみたいだし」
おどけるように言ってみたが、リサの表情は厳しいままだ。わたしが無理やり笑っていることに、きっと気付いているのだろう。
「……ユキ様。失礼かもしれないんですが、お聞きしてもいいですか」
「なに?」
「ユキ様はその……陛下のこと、好きですか?」
予想外の質問に、わたしは驚いて鏡越しにリサの顔を見つめた。
ソウのことが好きなのか。
少し逡巡してから、わたしは正直な気持ちを口にした。
「……好き、だった。わたしを守ってくれるあの人が」
「…………」
「でも、今は違う。ノースを……わたしの日常を壊したあの人を、憎んでる」
「ユキ様……」
「でもね? 全く知らない誰かと結婚するくらいなら、一瞬でも好きだった人と結婚した方が幸せなのかも、って思ってるの。あの人はきっと、国を大きくできるなら誰でもいいんだろうけど」
「……あの、ユキ様。陛下は……!」
リサが何か言いかけたその時、ドアをノックする音がした。
そして少し間をおいて入ってきたのは、純白のタキシードに真っ赤なマントを羽織ったソウだった。手には飾りのついた王冠を抱えている。
そして同じく純白のドレスに身を包んだわたしを見ると、満足そうに笑みを深めた。
「天使がお迎えに来たんかと思たわ。いや、女神かな?」
「……よく、そんな台詞思いつきますね」
相変わらず軽口をたたくソウに、そっけなく返す。その様子を、リサが複雑そうな顔で見つめている。
「あ、ユキちゃん、あっちの部屋でタカミが呼んどったで。式の前に一応診察するって」
「分かりました。では失礼します」
事務的な返事をしてから、ドレスの裾を持ち上げてわたしは部屋を後にした。
***
「ずいぶん仲良うなったみたいやねえ、ユキちゃんと。羨ましいわぁ」
「……おかげさまで」
「でも、ユキちゃんに余計なこと教えんといてや? キミ、おせっかいなとこあるから」
へらへらと笑うソウとは対照的に、リサは厳しい表情を崩さず返した。
「では、おせっかいついでに一つ教えて差し上げます。ユキ様、陛下と交わした約束を覚えていらっしゃるそうです。それと、陛下は国を拡大するためにユキ様と結婚するのだと思っていらっしゃいます」
「……まぁ、そやろなぁ。それよりリサちゃん、一つ頼みがあるんやけど」
「……なんですか。内容を聞いてから判断します」
苛立ちを隠さないリサに苦笑する。
なんとなく、ユキと似ている。だからこそ二人は仲良くなれたのだろうけれど。
「今夜、ゴウマが閨の儀を行え言うてる」
「ね、閨の儀って……そんな、まさか! いくらなんでも……!」
「もちろん反対したで。ゴウマも一旦は引き下がったけど、何や企んでるみたいや。あいつ、早よユキちゃんに子ども産ませて、その子を王にして傀儡政権を作りたいみたいやわ。ま、もうバレてるんやけど」
「……あきれました。そこまでバカだったとは……」
「ほんまやで……そやから、式が終わってからもユキちゃんのこと護衛してほしい」
「……分かりました」
ゴウマは分かりやすく馬鹿な男だが、父の代から大臣を務めているだけあって妙な人脈だけは広い。さっさとお払い箱にした方が国のためになるのだが、大きな理由がなければそれも難しい。
家柄だけで大臣になったゴウマは、昔から邪魔な存在で、どうやってあの男を城から追い出そうかとずっと考えていた。そのせいで、ユキを傷つけることになってしまったのは不本意以外の何物でもない。
しかし、決闘でノースに勝ち、ユキを妃に迎えることが決まった今、あの男は油断している。その隙を突いて、長い間邪魔だったあの男を失脚させる。
そして、「この国」の体制が整ったら。
──ユキを幸せにできる、自信がついたら。
そのとき、ユキになんと言おうか。
***
式が始まる。荘厳な雰囲気の教会に、大勢の人々が集まっている。
わたしはできるだけ感情を殺して、その場に立っていた。何か深く考えようとすれば、きっと泣いてしまうから。
「ユキちゃん、大丈夫?」
「え……」
顔を上げると、王冠を被ったソウの顔があった。
──悔しいが、よく似合っている。いつもはへらへらと威厳がないくせに、こういうときだけしゃんと背筋を伸ばして立っているのだ。
神父の言葉も、あまり聞かないようにした。言われた通り、儀式的に行うだけ。そこに感情を持ち込めば、きっとこの場にはいられなくなる。
教会内での儀式は終わり、サウス城のバルコニーに移動する。
扉を開けると、太陽の光と、城下に集まった人々の姿が見えた。
「今日はノース国民も入れるようにしてある。まぁ、ほんまに来てるのは少ないやろけど」
ソウの言葉が、耳を通り抜けていく。曖昧に頷きながら、わたしはずっと考えていた。
ノースを吸収することで、なにがどう変わるのか。ソウは一切わたしに教えてはくれなかった。もう国王ではないわたしは、知ったところで何もできないのだろうけど。
「ソウ・トコエ・サウスカトライアと、ユキ・マリー・ノースカトライアの婚姻をここに証明する。では、誓いの口づけを」
その声に促され、ソウの顔が近づいてくる。まだ顔に残る火傷の跡をなぞるように、ソウの指が遠慮がちにわたしに触れた。わたしは無表情のまま、ただ黙って目を閉じる。
「……ごめんな、ユキちゃん」
また、だ。
あの決闘の日も、ソウはこうして謝った。自分勝手にわたしを連れてきたのなら、いっそひどい人のままでいてほしいのに。
そっと唇が触れ合う。それは一瞬のことだった。
ぎこちない拍手が辺りを包む。
目を開けると、悲しそうに笑うソウがいた。
なぜか、胸が痛んだ。気が付くと、知らぬ間に涙が頬をつたっていた。その涙をソウの冷たい手がぬぐう。
そして、城下に集まった人々を見下ろして、ソウが高らかに宣言した。
「今この時をもって、サウスカトライア王国と、ノースカトライア王国を合併し、カトライア王国とする!」
ソウの言葉に、国民が大きくざわめく。控えている城の者たちも、驚いたようにソウを見つめている。
それは、隣に立っているわたしも例外ではなかった。
「……詳細は追って通達する。以上や」
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