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最終章
7.ハッピー・ウェディング
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バルコニーへと出る扉を開けると、外からは何やらざわざわと声が聞こえる。
まだ何か準備をしてくれているのだろうか、と思ってリサを振り返って尋ねた。
「リサちゃん、外でも何かやってるの?」
「いえ、私たちが準備したのは城内だけですが……」
リサにも心当たりがないらしい。
不思議に思いながら、バルコニーの中央、カトライア城の表庭を見渡せる場所に立ってわたしは目を見開いた。
「えっ……どうして……!?」
そこには、数えきれないほどの人々が集まり、わたしたちに向かって声を送ってくれていたのだ。
「ご結婚一周年、おめでとうございます!!」
「姫様、おめでとうございまーす! お綺麗ですよー!」
「おめでとー!!」
思わずバルコニーの縁まで駆け寄って、庭に集まってくれた人々を見渡した。
おそらく、サウスだけでなくノースの方からわざわざ来てくれている人もいるのだろう。小さな旗を振っている人もいるし、花束を手にしている人もいる。今日という日を祝福するために、こうして集まってくれたのだ。
「驚きましたね。まさかこれほどの国民が集まるとは」
「タカミさん……! タカミさんが呼んでくださったんですか?」
「いえ、私は知り合いに少し声をかけただけなのですが……」
「え……じゃ、じゃあ、アンナさん?」
「私もお店のお客さんを呼んだけど、さすがにこんな人数は呼べないわ! ノースの方からも来てるみたいだし」
「そ、それじゃあ……」
驚きながら、わたしはトーヤの方を見た。
するとトーヤは照れくさそうにまた頭をがりがりと掻いて、ぼそぼそと説明してくれる。
「いや、俺もこんなことになるとは思ってなかったんだけど……元ノース兵の奴らに、駄目元で声かけてみたんだ。ユキとソウの結婚記念日を祝うから、できるだけたくさん来てほしい、って」
「トーヤ……」
「たぶん、そいつらが色んなとこでまた声かけてくれたんだろうな。俺も驚いた」
きっとそんな調子で、城の皆が国民を呼んでくれたのだろう。そしてその国民が輪を広げ、こうして庭に入りきらないほどの人々が集まってくれたのだ。他でもない、わたしとソウのために。
そう思ったら涙を我慢できるはずもなくて、わたしはぼろぼろと涙を流した。また「メイクが崩れる!」とアンナに怒られるかな、と思ったけど、アンナは優しく微笑みながら頷いてくれた。気にせずに好きなだけ泣け、ということだろう。
「あ、ありっ……ありがとう、ございますっ……!」
「……あーあ、またトーヤくんにええとこ持っていかれた気ぃするわ」
「なによっ……ソウだって、嬉しいくせに……!」
「それはまあ……そやな」
ソウもまた、集まってくれた国民を見渡して笑みを零した。
サウスの人はともかく、ノースの人々にとってソウは諸悪の根源と言っても良かった。自分の真意を明かさずに行動してきたソウは、誰かに恨まれることを厭わない。それどころか、その心理を利用してわたしを守ってくれたのだ。
でも、国民はそんなソウの真意を理解しようとしてくれたのだ。その結果が今こうして表れているのだと思うと、胸がいっぱいになる思いがした。
「それでは、ここで誓いのキスをお願いしましょうか」
「うん。ユキちゃん、こっちおいで」
タカミの言葉を受けて、ソウがバルコニーの縁にいたわたしの手を引いて抱き寄せる。慌てて涙を拭こうとしたが、真っ白なグローブをつけていることに気付いて、これを汚すわけにはいかないと思い留まった。
「ああ、それやと拭かれへんな。ほら、ボクが拭いたる」
「う、むぶっ」
優しく拭いてくれればいいのに、ソウは内ポケットからハンカチを出すと、それでわたしの顔をぐいぐいと拭った。これでは食べこぼした子どもを拭いてやるみたいだ。
「うん、これでええな。ユキちゃん、ほんまに綺麗やで」
「あ……ありがとう」
素直にそう言われると、やっぱり照れてしまう。そう言うソウだって、いつにも増してかっこいいのだから余計にだ。
わたしとソウが真っ直ぐ向き合うと、ざわついていた周囲がしんと静まり返った。
皆の視線を集めていると思うと緊張してしまうが、ソウはそんな素振りも見せずに、わたしの肩にそっと手を置く。そして、わたしの大好きな、その優しい声でささやいた。
「……ユキ、愛してる」
すでにソウに奪われたと思っていた心を、もう一度鷲掴みにされたような気がした。
そして、返事をすることも、頷くこともできないほど胸を打たれたわたしの唇に、ソウがそっとキスをした。
その瞬間、周囲からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。
一年前では考えられなかったことが、数えきれないほどわたしの目の前で起こっている。でもそれは確かに現実で、この場にいる全員のおかげで手に入れた未来だった。
ソウに口付けられながら、また涙が溢れてくる。せっかく拭いてもらったのに、今日は泣いてばかりだ。
優しいキスに幸せを感じながら、でもそろそろ離してほしいな、と思ってソウの服の裾を引っ張る。ところが何を勘違いしたのか、ソウはあろうことか僅かに開いたわたしの口の隙間から舌を差し込んできた。
「んんっ!? ん、ちが、んんぅ……!」
普段からこんなねちっこいキスをしてくるのは嫌というほど知っているが、時と場所を考えてほしい。すぐ近くにはリサたちがいるし、何より城の表庭に集まってくれた国民の視線がある。ただ触れるだけのキスならば良かったのに、こんな息が乱れるほどのキスなんて人様に見せるものではない。
必死で暴れると、どこか不満そうにしながらもソウはやっと口を離してくれた。
「はぁ……もう、暴れんといてや。一応儀式の最中やで?」
「そ、それはこっちの台詞でしょ!? ちょ、ちょっと触れるだけでいいのに、あんなっ……!」
「いつもしてることやん。それに、ボクとユキちゃんがどんだけ愛し合ってるか、皆に見せておかなあかん思て」
「なっ……も、もういい! ソウのばかっ!」
結局こうやって幼稚な喧嘩をしてしまうのは、どうしたって直らないみたいだ。
周りでわたしとソウを囲んでいたリサたちが、苦笑しながら話しかけてくる。
「お二人とも、いちゃつくのも結構ですが国民が見ていますよ。誓約式はここで終わりの予定でしたが、予想以上に国民が集まってくれましたから、庭にお出でになってはいかがでしょう」
「それでしたらユキ様、少しだけお化粧直しいたしましょう! こちらにいらしてください」
「あ、う、うん」
「ほなボクは先に庭に行ってるわ。ユキちゃんは後からおいで」
そう言ってソウは、タカミと一緒にさっさとバルコニーを後にした。人を怒らせておいて、逃げ足だけは早いから嫌になる。
まだ恥ずかしさとソウへの腹立たしさは消えなかったが、リサにもう一度メイクを施してもらっているうちに、それもどうでもよくなってしまった。
まだ何か準備をしてくれているのだろうか、と思ってリサを振り返って尋ねた。
「リサちゃん、外でも何かやってるの?」
「いえ、私たちが準備したのは城内だけですが……」
リサにも心当たりがないらしい。
不思議に思いながら、バルコニーの中央、カトライア城の表庭を見渡せる場所に立ってわたしは目を見開いた。
「えっ……どうして……!?」
そこには、数えきれないほどの人々が集まり、わたしたちに向かって声を送ってくれていたのだ。
「ご結婚一周年、おめでとうございます!!」
「姫様、おめでとうございまーす! お綺麗ですよー!」
「おめでとー!!」
思わずバルコニーの縁まで駆け寄って、庭に集まってくれた人々を見渡した。
おそらく、サウスだけでなくノースの方からわざわざ来てくれている人もいるのだろう。小さな旗を振っている人もいるし、花束を手にしている人もいる。今日という日を祝福するために、こうして集まってくれたのだ。
「驚きましたね。まさかこれほどの国民が集まるとは」
「タカミさん……! タカミさんが呼んでくださったんですか?」
「いえ、私は知り合いに少し声をかけただけなのですが……」
「え……じゃ、じゃあ、アンナさん?」
「私もお店のお客さんを呼んだけど、さすがにこんな人数は呼べないわ! ノースの方からも来てるみたいだし」
「そ、それじゃあ……」
驚きながら、わたしはトーヤの方を見た。
するとトーヤは照れくさそうにまた頭をがりがりと掻いて、ぼそぼそと説明してくれる。
「いや、俺もこんなことになるとは思ってなかったんだけど……元ノース兵の奴らに、駄目元で声かけてみたんだ。ユキとソウの結婚記念日を祝うから、できるだけたくさん来てほしい、って」
「トーヤ……」
「たぶん、そいつらが色んなとこでまた声かけてくれたんだろうな。俺も驚いた」
きっとそんな調子で、城の皆が国民を呼んでくれたのだろう。そしてその国民が輪を広げ、こうして庭に入りきらないほどの人々が集まってくれたのだ。他でもない、わたしとソウのために。
そう思ったら涙を我慢できるはずもなくて、わたしはぼろぼろと涙を流した。また「メイクが崩れる!」とアンナに怒られるかな、と思ったけど、アンナは優しく微笑みながら頷いてくれた。気にせずに好きなだけ泣け、ということだろう。
「あ、ありっ……ありがとう、ございますっ……!」
「……あーあ、またトーヤくんにええとこ持っていかれた気ぃするわ」
「なによっ……ソウだって、嬉しいくせに……!」
「それはまあ……そやな」
ソウもまた、集まってくれた国民を見渡して笑みを零した。
サウスの人はともかく、ノースの人々にとってソウは諸悪の根源と言っても良かった。自分の真意を明かさずに行動してきたソウは、誰かに恨まれることを厭わない。それどころか、その心理を利用してわたしを守ってくれたのだ。
でも、国民はそんなソウの真意を理解しようとしてくれたのだ。その結果が今こうして表れているのだと思うと、胸がいっぱいになる思いがした。
「それでは、ここで誓いのキスをお願いしましょうか」
「うん。ユキちゃん、こっちおいで」
タカミの言葉を受けて、ソウがバルコニーの縁にいたわたしの手を引いて抱き寄せる。慌てて涙を拭こうとしたが、真っ白なグローブをつけていることに気付いて、これを汚すわけにはいかないと思い留まった。
「ああ、それやと拭かれへんな。ほら、ボクが拭いたる」
「う、むぶっ」
優しく拭いてくれればいいのに、ソウは内ポケットからハンカチを出すと、それでわたしの顔をぐいぐいと拭った。これでは食べこぼした子どもを拭いてやるみたいだ。
「うん、これでええな。ユキちゃん、ほんまに綺麗やで」
「あ……ありがとう」
素直にそう言われると、やっぱり照れてしまう。そう言うソウだって、いつにも増してかっこいいのだから余計にだ。
わたしとソウが真っ直ぐ向き合うと、ざわついていた周囲がしんと静まり返った。
皆の視線を集めていると思うと緊張してしまうが、ソウはそんな素振りも見せずに、わたしの肩にそっと手を置く。そして、わたしの大好きな、その優しい声でささやいた。
「……ユキ、愛してる」
すでにソウに奪われたと思っていた心を、もう一度鷲掴みにされたような気がした。
そして、返事をすることも、頷くこともできないほど胸を打たれたわたしの唇に、ソウがそっとキスをした。
その瞬間、周囲からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。
一年前では考えられなかったことが、数えきれないほどわたしの目の前で起こっている。でもそれは確かに現実で、この場にいる全員のおかげで手に入れた未来だった。
ソウに口付けられながら、また涙が溢れてくる。せっかく拭いてもらったのに、今日は泣いてばかりだ。
優しいキスに幸せを感じながら、でもそろそろ離してほしいな、と思ってソウの服の裾を引っ張る。ところが何を勘違いしたのか、ソウはあろうことか僅かに開いたわたしの口の隙間から舌を差し込んできた。
「んんっ!? ん、ちが、んんぅ……!」
普段からこんなねちっこいキスをしてくるのは嫌というほど知っているが、時と場所を考えてほしい。すぐ近くにはリサたちがいるし、何より城の表庭に集まってくれた国民の視線がある。ただ触れるだけのキスならば良かったのに、こんな息が乱れるほどのキスなんて人様に見せるものではない。
必死で暴れると、どこか不満そうにしながらもソウはやっと口を離してくれた。
「はぁ……もう、暴れんといてや。一応儀式の最中やで?」
「そ、それはこっちの台詞でしょ!? ちょ、ちょっと触れるだけでいいのに、あんなっ……!」
「いつもしてることやん。それに、ボクとユキちゃんがどんだけ愛し合ってるか、皆に見せておかなあかん思て」
「なっ……も、もういい! ソウのばかっ!」
結局こうやって幼稚な喧嘩をしてしまうのは、どうしたって直らないみたいだ。
周りでわたしとソウを囲んでいたリサたちが、苦笑しながら話しかけてくる。
「お二人とも、いちゃつくのも結構ですが国民が見ていますよ。誓約式はここで終わりの予定でしたが、予想以上に国民が集まってくれましたから、庭にお出でになってはいかがでしょう」
「それでしたらユキ様、少しだけお化粧直しいたしましょう! こちらにいらしてください」
「あ、う、うん」
「ほなボクは先に庭に行ってるわ。ユキちゃんは後からおいで」
そう言ってソウは、タカミと一緒にさっさとバルコニーを後にした。人を怒らせておいて、逃げ足だけは早いから嫌になる。
まだ恥ずかしさとソウへの腹立たしさは消えなかったが、リサにもう一度メイクを施してもらっているうちに、それもどうでもよくなってしまった。
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