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26.急襲(1)
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リオンとミーアが植えたイトの苗は順調に育ち、どの木にも青々とした新芽が顔を出していた。
ミーアがこの城に来て半年、月の障りがある日以外はリオンと夜を共にしているが、ミーアは子を孕むことなく変わらぬ日々を過ごしている。
そして今日も、ミーアはリオンとともにイトの木の世話をしに畑へとやってきた。執務で忙しいはずのリオンだが、隙を見てはこうしてイトの木を様子を見に来ているらしい。
「だいぶ大きくなったな。立派なものだ」
「はい。そろそろ新芽を摘んでもいいかもしれませんね。今日、試しに収穫してみましょうか?」
成長した芽を確認したミーアが提案すると、リオンはぱあっと目を輝かせた。
「もう収穫してもいいのか! それは嬉しいな。摘んだらすぐに新茶が飲めるだろうか」
「そうですね。一度蒸して、乾燥させたらお茶が淹れられます。蒸し器が必要ですから、厨房の方に頼まないと……」
「分かった、私から頼んでおこう。では、摘み方を教えてくれ」
リオンは張り切った様子で剪定鋏を手に取り、日除けにつばの広い帽子を被ったミーアの方を見た。子どものようにわくわくしている彼に苦笑しながら、その手からひょいっと剪定鋏を取り上げる。
「若葉は繊細なので、一つずつ手で摘んでいきます。リオン殿下は先ほど土を弄っていらっしゃいましたから、一度手を洗ってきてください」
「そ……そうなのか。すぐに洗おう」
ミーアがぴしゃりと言うと、リオンは頷いて近くに用意してあった桶で素直に手を洗った。そして手を拭いてから、ミーアの隣に立って腰ほどの高さまで育ったイトの木にそっと触れる。
「親指と人差し指で、新芽をそっと挟んで摘み取ります。爪を立てないようにしながら、葉の下で折りとってください」
「分かった。……む、難しいな」
「あ、千切れてしまいましたね。もう少し優しく挟んでください。それから、折るようにして……」
たどたどしい手つきのリオンを見かねて、ミーアがさっと彼の手に自分のそれを重ねて教える。文字通り、手取り足取り指導したおかげか、次は千切れることなく新芽を摘み取ることができた。
「おお……! なんだか可愛らしいな」
「まだ柔らかいので、そっと器に入れていってください。もっとたくさん摘まないと、お茶にはなりませんよ」
「そうか。ふふ、自分で育てたものを収穫するのは感慨深いな」
「そうですね。でも、これは一番摘みですから、まだまだお世話が必要です」
自分で摘み取った新芽をまじまじと見つめてリオンが微笑む。
苗を植えてからというもの、毎日とまではいかなくともリオンは足繁く畑に通い、ミーアが教えた通りに水遣りや枝の剪定をしていた。すぐに飽きるだろうと思っていたが、ミーアが思っていたよりもずっと熱心に彼はイトの木を育てていたから、収穫の日を迎えて本当に喜んでいるのだろう。
息苦しいこの城の中で、ミーアにとってもこの木を育てることは数少ない楽しみとなっていたから、嬉しそうに若葉を摘んでいくリオンの横でこっそり笑みをこぼした。
ミーアがこの城に来て半年、月の障りがある日以外はリオンと夜を共にしているが、ミーアは子を孕むことなく変わらぬ日々を過ごしている。
そして今日も、ミーアはリオンとともにイトの木の世話をしに畑へとやってきた。執務で忙しいはずのリオンだが、隙を見てはこうしてイトの木を様子を見に来ているらしい。
「だいぶ大きくなったな。立派なものだ」
「はい。そろそろ新芽を摘んでもいいかもしれませんね。今日、試しに収穫してみましょうか?」
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「そ……そうなのか。すぐに洗おう」
ミーアがぴしゃりと言うと、リオンは頷いて近くに用意してあった桶で素直に手を洗った。そして手を拭いてから、ミーアの隣に立って腰ほどの高さまで育ったイトの木にそっと触れる。
「親指と人差し指で、新芽をそっと挟んで摘み取ります。爪を立てないようにしながら、葉の下で折りとってください」
「分かった。……む、難しいな」
「あ、千切れてしまいましたね。もう少し優しく挟んでください。それから、折るようにして……」
たどたどしい手つきのリオンを見かねて、ミーアがさっと彼の手に自分のそれを重ねて教える。文字通り、手取り足取り指導したおかげか、次は千切れることなく新芽を摘み取ることができた。
「おお……! なんだか可愛らしいな」
「まだ柔らかいので、そっと器に入れていってください。もっとたくさん摘まないと、お茶にはなりませんよ」
「そうか。ふふ、自分で育てたものを収穫するのは感慨深いな」
「そうですね。でも、これは一番摘みですから、まだまだお世話が必要です」
自分で摘み取った新芽をまじまじと見つめてリオンが微笑む。
苗を植えてからというもの、毎日とまではいかなくともリオンは足繁く畑に通い、ミーアが教えた通りに水遣りや枝の剪定をしていた。すぐに飽きるだろうと思っていたが、ミーアが思っていたよりもずっと熱心に彼はイトの木を育てていたから、収穫の日を迎えて本当に喜んでいるのだろう。
息苦しいこの城の中で、ミーアにとってもこの木を育てることは数少ない楽しみとなっていたから、嬉しそうに若葉を摘んでいくリオンの横でこっそり笑みをこぼした。
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