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第二章
12.私も彼も
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「倫、落ち着いた?」
「は、はい……少しは」
「ふふっ、可愛い」
どこが可愛いのかさっぱり分からないけれど、平原さんはそう言ってまた深いキスをした。
それに応えるように舌を突き出すと、平原さんが期待通りに優しく吸ってくれるから嬉しくなる。
「んっ……倫、そろそろ中、慣らしてもいい?」
「ふはっ、えっ?」
口付けながら、平原さんの手がもう一度私の下腹部に向かう。
慣らしてもいいって、まさか。
「あっ……ん、んんっ……!」
「うわぁ……すごい、倫の中こんなに熱いんだ」
「い、いやっ……!」
「でもこれ、入るかな……痛くないように、よく慣らすね」
「え……あっ、ああ……っ!」
平原さんの長くて細い指が、誰も触れたことのない私の体内に侵入する。
細いけれど少しごつごつした指は、まだ一本しか入っていないのに異物感がものすごい。
「う、うぅっ……はぁっ、はっ」
「倫、痛くない?」
「は、いっ……でも、そのっ、なんかへん、でっ……!」
「ごめんね、まだ気持ちよくないよね。ゆっくりするから、気持ちよくなってきたら教えて?」
優しい口調でそう言われて、無言で頷く。
先ほど突起を擦られた時ほどの強い快感はないけれど、平原さんが私を労ってくれているのがこれでもかというほど伝わってくる。それが嬉しくて、私はキスをねだるように彼の頬にそっと手を添えた。
「っ……もう、あんまり可愛いことすると、優しくできないかもしれないよ」
「え……んんっ、んぅっ」
平原さんは私の中に指を出し入れしながら、希望通りキスをくれた。
今更だけど、彼とキスするとものすごく幸せな気持ちになれる。呼吸が乱れるほどのキスも本当は好きだ。そんな私に気付いているのか、彼はじっくりと丁寧に私の口内を舐ってくれる。
キスに気を取られていると、体内に入る指が二本に増やされた。さっきよりも圧迫感が増して、私は思わずくぐもった声を出す。
「ん、んん――っ!」
「はぁっ……倫、可愛い……早く入れたい」
「えっ……あっ、ひ、ら、ふあっ、ああんっ!」
平原さんの二本の指が、ぐちゃぐちゃと私の中をかき回す。たぶんだけど、人差し指と中指だ。ちゃんと目で見て確認する余裕すら無くて、私は自然と出てしまう声を何とか抑えようと口元に手をやった。
そして彼の目を見つめると、熱のこもった瞳と目が合う。何かに耐えているような、我慢を強いられているような、そんな瞳だ。
なぜだろう、とおぼつかない頭で考えて、ふとついさっき彼が呟いた一言を思い出す。
――早く入れたい。
何を、だなんて聞かなければ分からないほど初心ではない。
思えば、さっきから私ばっかり平原さんに気持ちよくしてもらっている。初心者の私は彼の言う通りにするしかなかったのだが、やっぱり私だって彼に気持ちよくなってもらいたい。
それにこんなゆっくりとしたペースで進んでいたら、最後まで行くのに何時間かかるか分からない。きっとその前に、私の体力が尽きるような気がした。
「ひっ、ひら、は、さんっ……も、もうっ、もういいです、からっ……」
「ん? どうしたの、まさかこれでイきそう?」
「ち、ちがっ……ん、あっ! あのっ、もう、その……し、して、くださいっ……もう、平原さんのでっ……!」
それだけ言うと、平原さんが眉間に皺を寄せた。そしてすぐに困った顔をして笑って、彼の指に翻弄されながら喘ぐ私の唇を塞いだ。
「んっ、ふっ……んぁ、あっ」
「……倫の気持ちは嬉しいけど、もう少し慣らそうね? 今入れても痛いだけだと思うから」
「はぁんっ……で、も……わたし、ばっかり……んっ」
「いいんだよ。倫が感じてるの見るだけで興奮するから」
「なっ……! あっ、あうぅっ……!」
平原さんが指を引き抜いたかと思うと、次は三本に増やして挿入される。さすがに内壁が引き攣るようなきつさを感じて顔を歪めると、彼が慰めるように優しくキスしてくれる。
「……ごめん、痛い?」
「あっ、んんっ、だ、大丈夫、ですっ……うっ、く」
「嘘つき。……でもごめんね、これで駄目だったら俺の入んないと思うから、もう少し我慢して」
「は、はいっ……はぁっ、は、んんっ」
我慢して、と言われて素直に頷く。
ついさっきまで「今日はまだ駄目」なんて思っていたくせに、今はもう平原さんと早く繋がりたくて焦れているのだ。額に汗を滲ませながら、それでも私のために気を遣ってくれる彼が愛おしくて仕方ない。
初めてのときはものすごく痛いとか、そこまで痛くないとか、いろんな話を聞いてきたけれど、今となってはどうでもよかった。痛かろうが痛くなかろうが、早く平原さんと一つになりたい。早く彼にも気持ちよくなってほしい。
でも平原さんが一生懸命私が痛がらないように優しくしてくれるから、私はそんな彼に甘えることにした。こうやってべたべたに甘やかされるのも久しぶりで、それが嬉しくて、それだけで涙が出てきそうになる。
「ん……倫、ここ押したら気持ちいい?」
「えっ? え、あ、あああっ!」
「ふふふっ、気持ち良さそうだね? 中だけでイけるかな」
「やっ、まって、それだめっ……! あ、んああっ!」
ふと、平原さんの指が私のお腹側のある部分を刺激した。ただ出し入れされるのとは違う快感が襲ってきて、思わず平原さんの腕を掴んで止めようとする。しかし、力の入らない手で彼の動きを止められるはずもなく、まるで実験しているみたいにぐりぐりと責められる。
「あああっ! やっ、やだぁっ、ひ、ひらはらさっ、それしないでぇっ……!」
「うん、もうちょっと触ったら終わりにするね? 中びくびくしてるから、もしかしたらイけるかもしれない」
「えっ、うそっ……ぅあ、あ、あ、だっ、だめっ……!」
「あ、すごい締まる……倫、イきそうでしょう? いいよ、何も考えないでイってみせて」
「いやっ、あ、こわいぃっ……! あ、ああっ、あ、ひっ……ん―――っ!!」
優しい口調とは正反対の激しい責めに、私はまた簡単に達してしまった。中がきゅうきゅうと平原さんの指を締め付けているのが自分でも分かって、恥ずかしいのに気持ちよくて仕方ない。
マラソンをし終えたあとみたいに息の荒い私に、平原さんがまた口付けてくれる。息が苦しいけれど、もっとキスしてほしくて一生懸命それに応えた。
「ふふっ、倫はキス大好きだね?」
「はぁっ、い……すき、です……平原さんと、キスするの……」
「……ああもう、たまんない。もう無理そう。倫、準備するから目つぶってて」
いつもにこにこして余裕たっぷりに笑っている平原さんが、切羽詰まったように私の瞼にキスをして目をつぶるように言った。すでに二回も果てたせいで体力が尽きかけている私は、大人しくそれに従って目をつぶる。
でもすぐに両足を開かされて、その中心に熱いものが当たったのに気付いて慌てて目を開けた。
「えっ……ひ、平原さんっ」
「あ、目つぶっててって言ったのに。たぶん見ない方がいいよ」
彼の言葉の意味を理解する前に、私は体の中心に当たる熱いものをこの目ではっきり見てしまった。
そして、思わず体が固まる。
「なっ……そ、れっ……!」
「ん? ああ、ちゃんとゴムつけたから大丈夫だよ」
「そっ、そうじゃなくて! それ、まさか、い、入れっ……!?」
「うん、入れるよ。倫、恥ずかしいからそんなに見ないでほしいな」
「だ、だって! そんなの無理です! ち、千尋のと全然違うっ……!」
私が思わずそう口にすると、平原さんは何だか複雑な顔をした。だって、本当にそう思ってしまったのだから仕方ない。
今ではもうさすがになくなったけど、小学校三、四年生ぐらいまで千尋はよく全裸で家中を走り回っていた。服着なさい、と言いながら私はそれを追いかけるのが日課のようになっていて、実際に男の子の「それ」を見たのはその時が最後だ。
ちょっとエッチな少女漫画なんかでも、はっきりと「それ」が描かれているはずもなく、私にとっては小学生の時の千尋の「それ」が基準になっていたのだ。
「……倫、それあんまり外で言わない方がいいよ。千尋くんが可哀想だし、何か分かんないけど俺も悲しい」
「えっ、だ、だって、それしか見たことなくてっ……とっ、とにかく、それは無理です! 絶対に無理っ!」
「そんなこと言わないでよ。大丈夫、いっぱい慣らしたから。ね?」
「あっ……あのっ、つかぬことをお聞きしますが、ほ、ほかの人は、入りました……?」
下品な話だが、ねじ穴に野球のバットを入れようとしているくらい無謀だと思った。入るわけがない。
自分でも想像すると悲しくなるから、平原さんの昔の彼女の話は聞かないようにしてきたけれど、こればっかりは確認したかった。私がおかしいのか、彼がおかしいのか。
でも、私のその質問に平原さんはむっとした顔をして覆い被さってきた。
「なに、他の人って。どういう意味?」
「あっ、えっと、ですから、前付き合ってた、彼女さんは……」
「知らない。こういうことしたいと思ったの、倫が初めてだから」
「…………え?」
知らない?
初めて?
平原さんの言葉の意味を必死に噛み砕いて理解する。
まさか、平原さんも私と同じ、初体験?
「ええええええっ!?」
「そんなに驚く? ……あっそうだ、屋代さんにあんまり言わない方がいいって言われてたの、忘れてた」
「え、ええっ!? は、はじめて……? 平原さん、も……?」
「うん。女の人は良くても、男で二十歳過ぎてもしたことないのは引かれるぞって言われてたんだけど、つい言っちゃった。やっぱり言わない方がよかった?」
「いやっ、そういう問題ではなくて! えっ!? だ、だって、さっきまであんな……!」
「ごめん、つい興奮して好きなようにしちゃった。でも、気持ちよかったでしょう?」
天才か。いや、何の天才だ。
混乱しすぎてよく分からなくなってきた。今何を考えればいいんだっけ。
「ねえ倫、いい加減俺も萎えそう。俺とのことに集中してよ」
「ご、ごめんなさいっ! でも、あの、やっぱり、それは入らないと思います……」
「もう、倫の意地悪。ここまで我慢させといて、それは無いんじゃない?」
萎えそう、なんて言っておきながらちっとも萎えていない「それ」を、平原さんがもう一度私の中心に擦りつける。それだけでびくびくと体が跳ねて、心はともかく体は確実に彼を欲しがっているのが分かる。きっと、平原さんにも分かっているのだろう。
「ああ、はぁっ……」
「ね、倫。ゆっくりするから。ほら、ちゃんと息吐いて」
「は、あっ……あっ、んっ……!」
「くっ……! あ、入りそう……倫、こっち見て。俺のことだけ見ていて」
「はいっ……あ、平原さんっ、ひら、はらさんっ……!」
ぐぐ、と熱い塊が押し入ってくるのが分かる。
ここまで来てしまえば、あとはもう抵抗する気なんか起きなかった。今はただ奥の奥までその熱い塊で穿ってほしくて、平原さんと繋がりたくて、ひたすらに優しい琥珀色の瞳を見つめていた。
「きれ、い……平原さん、好き……好きなんです、大好き……っ」
「くっ……倫っ……!」
「あっ、あああああっ!」
平原さんが私の名前を呼んだその瞬間、鈍い音を立てて彼のものが私の中に入るのを感じた。
指なんかとは比べものにならないくらい熱くて、みちみちと内壁が押し広げられているのが分かる。痛くないと言ったら嘘になるけれど、それよりもようやく平原さんと一つになれたことを実感して、嬉しくて涙が溢れ出た。
「ん……倫、泣いてるの? やっぱり痛い?」
「んん、ちが……うれしい、です……やっと、平原さん、私のっ……」
「うん、そうだね。俺も嬉しい。これで、倫の全部、俺のものになったね?」
そう言いながら、溢れ出た涙を掬うように平原さんが頬に舌を這わせた。
平原さんは私の全部が彼のものになったと言ったけれど、むしろ私は平原さんの全部をもらえたような気がしていた。彼の心も、感情も、愛情も全部私のものになってほしいと、ずっと願っていたのだ。
「倫、大好き……愛してる」
「わ、私も、です……愛してます、平原さん」
鈍い痛みに耐えながらそう言うと、平原さんが今までで一番甘いキスを落としてくれる。
繋がったところから全部、彼の思いが流れてくるような気がした。
そんな幸せを感じながら、二人で目を合わせて小さく笑った。
「は、はい……少しは」
「ふふっ、可愛い」
どこが可愛いのかさっぱり分からないけれど、平原さんはそう言ってまた深いキスをした。
それに応えるように舌を突き出すと、平原さんが期待通りに優しく吸ってくれるから嬉しくなる。
「んっ……倫、そろそろ中、慣らしてもいい?」
「ふはっ、えっ?」
口付けながら、平原さんの手がもう一度私の下腹部に向かう。
慣らしてもいいって、まさか。
「あっ……ん、んんっ……!」
「うわぁ……すごい、倫の中こんなに熱いんだ」
「い、いやっ……!」
「でもこれ、入るかな……痛くないように、よく慣らすね」
「え……あっ、ああ……っ!」
平原さんの長くて細い指が、誰も触れたことのない私の体内に侵入する。
細いけれど少しごつごつした指は、まだ一本しか入っていないのに異物感がものすごい。
「う、うぅっ……はぁっ、はっ」
「倫、痛くない?」
「は、いっ……でも、そのっ、なんかへん、でっ……!」
「ごめんね、まだ気持ちよくないよね。ゆっくりするから、気持ちよくなってきたら教えて?」
優しい口調でそう言われて、無言で頷く。
先ほど突起を擦られた時ほどの強い快感はないけれど、平原さんが私を労ってくれているのがこれでもかというほど伝わってくる。それが嬉しくて、私はキスをねだるように彼の頬にそっと手を添えた。
「っ……もう、あんまり可愛いことすると、優しくできないかもしれないよ」
「え……んんっ、んぅっ」
平原さんは私の中に指を出し入れしながら、希望通りキスをくれた。
今更だけど、彼とキスするとものすごく幸せな気持ちになれる。呼吸が乱れるほどのキスも本当は好きだ。そんな私に気付いているのか、彼はじっくりと丁寧に私の口内を舐ってくれる。
キスに気を取られていると、体内に入る指が二本に増やされた。さっきよりも圧迫感が増して、私は思わずくぐもった声を出す。
「ん、んん――っ!」
「はぁっ……倫、可愛い……早く入れたい」
「えっ……あっ、ひ、ら、ふあっ、ああんっ!」
平原さんの二本の指が、ぐちゃぐちゃと私の中をかき回す。たぶんだけど、人差し指と中指だ。ちゃんと目で見て確認する余裕すら無くて、私は自然と出てしまう声を何とか抑えようと口元に手をやった。
そして彼の目を見つめると、熱のこもった瞳と目が合う。何かに耐えているような、我慢を強いられているような、そんな瞳だ。
なぜだろう、とおぼつかない頭で考えて、ふとついさっき彼が呟いた一言を思い出す。
――早く入れたい。
何を、だなんて聞かなければ分からないほど初心ではない。
思えば、さっきから私ばっかり平原さんに気持ちよくしてもらっている。初心者の私は彼の言う通りにするしかなかったのだが、やっぱり私だって彼に気持ちよくなってもらいたい。
それにこんなゆっくりとしたペースで進んでいたら、最後まで行くのに何時間かかるか分からない。きっとその前に、私の体力が尽きるような気がした。
「ひっ、ひら、は、さんっ……も、もうっ、もういいです、からっ……」
「ん? どうしたの、まさかこれでイきそう?」
「ち、ちがっ……ん、あっ! あのっ、もう、その……し、して、くださいっ……もう、平原さんのでっ……!」
それだけ言うと、平原さんが眉間に皺を寄せた。そしてすぐに困った顔をして笑って、彼の指に翻弄されながら喘ぐ私の唇を塞いだ。
「んっ、ふっ……んぁ、あっ」
「……倫の気持ちは嬉しいけど、もう少し慣らそうね? 今入れても痛いだけだと思うから」
「はぁんっ……で、も……わたし、ばっかり……んっ」
「いいんだよ。倫が感じてるの見るだけで興奮するから」
「なっ……! あっ、あうぅっ……!」
平原さんが指を引き抜いたかと思うと、次は三本に増やして挿入される。さすがに内壁が引き攣るようなきつさを感じて顔を歪めると、彼が慰めるように優しくキスしてくれる。
「……ごめん、痛い?」
「あっ、んんっ、だ、大丈夫、ですっ……うっ、く」
「嘘つき。……でもごめんね、これで駄目だったら俺の入んないと思うから、もう少し我慢して」
「は、はいっ……はぁっ、は、んんっ」
我慢して、と言われて素直に頷く。
ついさっきまで「今日はまだ駄目」なんて思っていたくせに、今はもう平原さんと早く繋がりたくて焦れているのだ。額に汗を滲ませながら、それでも私のために気を遣ってくれる彼が愛おしくて仕方ない。
初めてのときはものすごく痛いとか、そこまで痛くないとか、いろんな話を聞いてきたけれど、今となってはどうでもよかった。痛かろうが痛くなかろうが、早く平原さんと一つになりたい。早く彼にも気持ちよくなってほしい。
でも平原さんが一生懸命私が痛がらないように優しくしてくれるから、私はそんな彼に甘えることにした。こうやってべたべたに甘やかされるのも久しぶりで、それが嬉しくて、それだけで涙が出てきそうになる。
「ん……倫、ここ押したら気持ちいい?」
「えっ? え、あ、あああっ!」
「ふふふっ、気持ち良さそうだね? 中だけでイけるかな」
「やっ、まって、それだめっ……! あ、んああっ!」
ふと、平原さんの指が私のお腹側のある部分を刺激した。ただ出し入れされるのとは違う快感が襲ってきて、思わず平原さんの腕を掴んで止めようとする。しかし、力の入らない手で彼の動きを止められるはずもなく、まるで実験しているみたいにぐりぐりと責められる。
「あああっ! やっ、やだぁっ、ひ、ひらはらさっ、それしないでぇっ……!」
「うん、もうちょっと触ったら終わりにするね? 中びくびくしてるから、もしかしたらイけるかもしれない」
「えっ、うそっ……ぅあ、あ、あ、だっ、だめっ……!」
「あ、すごい締まる……倫、イきそうでしょう? いいよ、何も考えないでイってみせて」
「いやっ、あ、こわいぃっ……! あ、ああっ、あ、ひっ……ん―――っ!!」
優しい口調とは正反対の激しい責めに、私はまた簡単に達してしまった。中がきゅうきゅうと平原さんの指を締め付けているのが自分でも分かって、恥ずかしいのに気持ちよくて仕方ない。
マラソンをし終えたあとみたいに息の荒い私に、平原さんがまた口付けてくれる。息が苦しいけれど、もっとキスしてほしくて一生懸命それに応えた。
「ふふっ、倫はキス大好きだね?」
「はぁっ、い……すき、です……平原さんと、キスするの……」
「……ああもう、たまんない。もう無理そう。倫、準備するから目つぶってて」
いつもにこにこして余裕たっぷりに笑っている平原さんが、切羽詰まったように私の瞼にキスをして目をつぶるように言った。すでに二回も果てたせいで体力が尽きかけている私は、大人しくそれに従って目をつぶる。
でもすぐに両足を開かされて、その中心に熱いものが当たったのに気付いて慌てて目を開けた。
「えっ……ひ、平原さんっ」
「あ、目つぶっててって言ったのに。たぶん見ない方がいいよ」
彼の言葉の意味を理解する前に、私は体の中心に当たる熱いものをこの目ではっきり見てしまった。
そして、思わず体が固まる。
「なっ……そ、れっ……!」
「ん? ああ、ちゃんとゴムつけたから大丈夫だよ」
「そっ、そうじゃなくて! それ、まさか、い、入れっ……!?」
「うん、入れるよ。倫、恥ずかしいからそんなに見ないでほしいな」
「だ、だって! そんなの無理です! ち、千尋のと全然違うっ……!」
私が思わずそう口にすると、平原さんは何だか複雑な顔をした。だって、本当にそう思ってしまったのだから仕方ない。
今ではもうさすがになくなったけど、小学校三、四年生ぐらいまで千尋はよく全裸で家中を走り回っていた。服着なさい、と言いながら私はそれを追いかけるのが日課のようになっていて、実際に男の子の「それ」を見たのはその時が最後だ。
ちょっとエッチな少女漫画なんかでも、はっきりと「それ」が描かれているはずもなく、私にとっては小学生の時の千尋の「それ」が基準になっていたのだ。
「……倫、それあんまり外で言わない方がいいよ。千尋くんが可哀想だし、何か分かんないけど俺も悲しい」
「えっ、だ、だって、それしか見たことなくてっ……とっ、とにかく、それは無理です! 絶対に無理っ!」
「そんなこと言わないでよ。大丈夫、いっぱい慣らしたから。ね?」
「あっ……あのっ、つかぬことをお聞きしますが、ほ、ほかの人は、入りました……?」
下品な話だが、ねじ穴に野球のバットを入れようとしているくらい無謀だと思った。入るわけがない。
自分でも想像すると悲しくなるから、平原さんの昔の彼女の話は聞かないようにしてきたけれど、こればっかりは確認したかった。私がおかしいのか、彼がおかしいのか。
でも、私のその質問に平原さんはむっとした顔をして覆い被さってきた。
「なに、他の人って。どういう意味?」
「あっ、えっと、ですから、前付き合ってた、彼女さんは……」
「知らない。こういうことしたいと思ったの、倫が初めてだから」
「…………え?」
知らない?
初めて?
平原さんの言葉の意味を必死に噛み砕いて理解する。
まさか、平原さんも私と同じ、初体験?
「ええええええっ!?」
「そんなに驚く? ……あっそうだ、屋代さんにあんまり言わない方がいいって言われてたの、忘れてた」
「え、ええっ!? は、はじめて……? 平原さん、も……?」
「うん。女の人は良くても、男で二十歳過ぎてもしたことないのは引かれるぞって言われてたんだけど、つい言っちゃった。やっぱり言わない方がよかった?」
「いやっ、そういう問題ではなくて! えっ!? だ、だって、さっきまであんな……!」
「ごめん、つい興奮して好きなようにしちゃった。でも、気持ちよかったでしょう?」
天才か。いや、何の天才だ。
混乱しすぎてよく分からなくなってきた。今何を考えればいいんだっけ。
「ねえ倫、いい加減俺も萎えそう。俺とのことに集中してよ」
「ご、ごめんなさいっ! でも、あの、やっぱり、それは入らないと思います……」
「もう、倫の意地悪。ここまで我慢させといて、それは無いんじゃない?」
萎えそう、なんて言っておきながらちっとも萎えていない「それ」を、平原さんがもう一度私の中心に擦りつける。それだけでびくびくと体が跳ねて、心はともかく体は確実に彼を欲しがっているのが分かる。きっと、平原さんにも分かっているのだろう。
「ああ、はぁっ……」
「ね、倫。ゆっくりするから。ほら、ちゃんと息吐いて」
「は、あっ……あっ、んっ……!」
「くっ……! あ、入りそう……倫、こっち見て。俺のことだけ見ていて」
「はいっ……あ、平原さんっ、ひら、はらさんっ……!」
ぐぐ、と熱い塊が押し入ってくるのが分かる。
ここまで来てしまえば、あとはもう抵抗する気なんか起きなかった。今はただ奥の奥までその熱い塊で穿ってほしくて、平原さんと繋がりたくて、ひたすらに優しい琥珀色の瞳を見つめていた。
「きれ、い……平原さん、好き……好きなんです、大好き……っ」
「くっ……倫っ……!」
「あっ、あああああっ!」
平原さんが私の名前を呼んだその瞬間、鈍い音を立てて彼のものが私の中に入るのを感じた。
指なんかとは比べものにならないくらい熱くて、みちみちと内壁が押し広げられているのが分かる。痛くないと言ったら嘘になるけれど、それよりもようやく平原さんと一つになれたことを実感して、嬉しくて涙が溢れ出た。
「ん……倫、泣いてるの? やっぱり痛い?」
「んん、ちが……うれしい、です……やっと、平原さん、私のっ……」
「うん、そうだね。俺も嬉しい。これで、倫の全部、俺のものになったね?」
そう言いながら、溢れ出た涙を掬うように平原さんが頬に舌を這わせた。
平原さんは私の全部が彼のものになったと言ったけれど、むしろ私は平原さんの全部をもらえたような気がしていた。彼の心も、感情も、愛情も全部私のものになってほしいと、ずっと願っていたのだ。
「倫、大好き……愛してる」
「わ、私も、です……愛してます、平原さん」
鈍い痛みに耐えながらそう言うと、平原さんが今までで一番甘いキスを落としてくれる。
繋がったところから全部、彼の思いが流れてくるような気がした。
そんな幸せを感じながら、二人で目を合わせて小さく笑った。
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