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第二章
20.私とお仕置きの時間
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無駄だとは思いつつできるだけ体を隠しながら、私は平原さんが服を脱ぐ様子を眺めていた。
彼は確かに怒っているみたいだけど、なんだか少し楽しんでいるような気がするのは気のせいだろうか。
「さて、倫。脚開いて、大和さんので倫にお仕置きしてください、って言って」
「……え?」
「聞こえなかった? それとも、もっと下品な言葉がいいの? 大和さんのおち……」
「いやいやいや!! ま、まってください、平原さんの口からそんなの聞きたくないですっ!!」
「そう? じゃあ言って。言わないともっとひどいことするよ」
こんな風に平原さんに脅されるのはいつぶりだろう。
しかも、前よりひどくなってる気がする。離れている間にサディストに磨きがかかってしまったのか、それともこれが彼の本性なのだろうか。どちらにしたって、彼から逃れられそうにはないのだが。
でも、そんな恥ずかしいことを簡単に言えるほど恥知らずではないし、そもそもお仕置きなんかされたくない。ていうか、いつの間にか私ばっかり悪いことをしたみたいな雰囲気になってるけど、元はと言えば平原さんが悪いのだ。まあ確かに、当て付けで合コンに行った私だって悪いけど。
「倫? 早く言って。それとも、もっとひどいことされたくて黙ってるの?」
「ち、ちがいますっ! あ、あの、なんて言うんでしたっけ……?」
「だから、自分で脚開いて『大和さんので倫の恥ずかしいところお仕置きしてください』って」
「な、何か増えてませんか!?」
「もっと増やそうか?」
「ひっ……! い、いえっ、結構です……」
やばい。「言わないともっとひどいことをする」というのは、きっと脅しでも何でもなく本気だ。
平原さんを怒らせるととんでもない目に遭うということを実感しながら、私はもう彼に逆らうのはやめた。大人しく従った方が、被害が少なくて済みそうだ。
「え、えっと……ひ、平原さんの」
「違う。大和」
「ひっ! は、はいっ、あの……や、やまと、さんので、わたし、のっ……」
「やり直し。大和さんので、倫の」
「なっ……! も、もうやだぁっ!」
泣きべそをかきながら音を上げる私を見て、「じゃあいいよ」なんて許してくれるほど平原さんは甘くなかった。続きを促すように、ただじっと全裸の私を見つめるだけで手も差し伸べてくれない。
きっともう、お仕置きは始まっているのだ。絶望を感じながら、私はぐっと唇を噛んで彼の言う通りにした。
「や……やまと、さん、ので、り、りんのっ……は、はずかしいところ、おしおき……して、くださいっ……!」
顔が真っ赤なのは、お酒のせいなんかじゃない。酔いはもうほとんど冷めている。
学科内でも部活でも「クールで動じない大屋さん」で通しているのに、平原さんの前では見る影もない。とにかく彼が好きで、彼のためなら何でもしてしまうただの子どもなのだ。
座ったまま足を開いて、恥ずかしい台詞を言わされて、そのうえ羞恥心に耐えきれず泣いている私を見て、平原さんはやっと満足そうに笑ってくれた。
「良くできました。いっぱいお仕置きしてあげるね?」
「はっ……あ、ぅああああっ!!」
足を開いたままころんと寝転がされたと思うと、間髪入れずに平原さんの熱い滾りがずぶずぶと侵入してきた。いきなりすぎて、色っぽさの欠片もない叫び声を上げてしまう。
「うあっ、や、いたいっ……やま、と、さ、はぁっ、いたいよぉっ……!」
「っは、うん、ごめんね? やっぱり指で解してあげないときついね。でも倫、これはお仕置きだから」
「え……あ、や、んんんんっ!」
平原さんと肌を重ねたのはまだ数えるほどだし、彼を受け入れることに体が慣れていない。
しかも、いつもはしつこいほど中を指でいじめてから挿入するのに、今日はお仕置きだからと言っていきなり彼のものを突っ込まれた。そりゃ痛いに決まってる、と妙に冷静な頭のどこかで考えた。
「はぁ、う、くっ……そんな、うごかないで、ゆっくりしてぇっ」
「ふふっ、やっぱり指で慣らしてほしかったでしょう? 倫はあれ嫌がるけど、そうしないと今みたいに痛いんだから。分かった?」
「あ、ふっ、んんっ、わ、わかった、わかったから、おねがいっ、い、いっかい、ぬいてぇっ……!」
「だーめ。大丈夫だよ、ちゃんと濡れてきたから。それに倫の恥ずかしいところ、いっぱいお仕置きしてあげないとね?」
「えっ……、やっ、ひゃうぅっ!」
体内を抉られる痛みに耐えていると、彼と繋がった場所の少し上にある突起を指で擦られる。
その瞬間、頭まで痺れるような衝撃が走って、がくがくと体を震わせた。
「はぁんっ、や、だっ、あああっ!」
「は、くっ……、ふふっ、すごいよ倫。俺のこんなに締め付けて、そんなに気持ちいいの?」
「やぁ、ちが、あ、ああっ……、あ、ああんっ!」
「あ、倫のここ、大きくなってきた。俺に、もっと触ってほしいみたいだね?」
「ちがうっ、ちがうの、もうやだぁっ……! あ、んっ、んーっ!!」
中を平原さんの剛直で貫かれて、そのうえ敏感な場所まで責められてしまったら、もう泣きながら喘ぐことしかできない。お酒臭いとか汗臭いだとか、そんなことにはちっとも気を配れなくなって、ただただ平原さんに助けを求めるようにしがみついた。
そのまま熱に浮かされたような彼の瞳を見つめると、激しく私を責めたてる下半身とは裏腹に、溶けそうなほど優しいキスを落としてくれる。それだけで心も満たされて、彼に口を塞がれたまま私は静かに達した。
「は、はぁ、ん、ああっ……」
「んっ……? 倫、もしかして今イった?」
「ん、は、いぃっ……ごめ、なさっ……」
「なんだ、イくときもおねだりしてもらおうと思ったのに。まあいいか、とっても気持ちよさそうだしね?」
「あ、ああっ、うん、きもち、いっ……やまとさん、もっと、キス、してっ……」
「っ……いいよ、もっとしてあげる。はぁっ、俺の方が余裕ないなっ……」
そう言って優しく口付ける平原さんからもお酒の匂いがして、もう冷めたはずなのにまた頭がふわふわしたように靄がかかる。
あんなに抵抗したくせに、こんなに気持ちよくなってしまうのが恥ずかしい。でも、こんなにも乱れてしまうのはお酒のせいなのだと思ったら、いつもより素直に彼に与えられる快感を受け入れることができた。
声が出てしまうのも、彼の太ももを濡らしてしまうくらい蜜を溢れさせてしまうのも、こんなに気持ちよくなってしまうのも、お酒と平原さんのせいだ。私は悪くない。
そう思うことにして、もうすぐにでも達しそうな平原さんを精一杯受け止めた。
「ああっ、やまとさんっ、あっ……! きもちいよぉっ、も、だめぇっ……!」
「はぁっ、うっ……いいよ、駄目になってっ……、倫、あっ、俺もいくっ……!」
「んんぅーっ! やぁ、あ、ひっ……あああっ!!」
汗だくになった私をぎゅっと抱きしめて、平原さんも中で果てたようだった。
どく、どくと何かが吐き出されているのがゴム越しにでも分かる。そういえば平原さん、いつの間にゴム付けてたんだろう。手際が良すぎて恐ろしいくらいだ。
「ん、はぁっ……やまと、さん……ごめんなさい……」
「ふふっ、やっと謝る気になった? でも、もういいよ。俺も悪かったし」
「……やっぱりそうですよね」
「ん? 何か言った?」
「いいえ、なんでも」
ここまでされたら嫌でも謝る気になる。平原さんって、意外と腹黒い人なのかもしれない。自覚は無さそうだけど。
「倫、お風呂入ろうか。立てる?」
「あ……も、もうちょっと待ってください」
「ああ、無理しなくていいよ。抱っこしてあげるから」
「はっ!? い、いや、いいです! 立てますからっ……!」
立てると言ったのに、平原さんは楽しそうに私を軽々と抱き上げた。こんな風に抱っこされるのは、思えばあの遊園地に行った時以来かもしれない。
恥ずかしいという気持ちはあったけれど、そう考えたら妙に感慨深くなってしまって、抵抗するのはやめて平原さんの肩に頭を預けた。
「ん? 倫、どうしたの」
「あ……えっと、その……やっぱり好きだなぁ、と思って。平原さんのこと」
理不尽に怒られても、ひどいことをされても、やっぱり私はどうしようもないくらい平原さんが好きだと思った。それは彼が私を愛してくれているという自信があるから、そう思えるのだ。
改めてそれを実感したら、胸がはち切れそうなほどの幸福感に包まれる。
「……もう。そんなこと言われたら、大人気なく嫉妬した俺が馬鹿みたいだ」
「え?」
「倫のこと子どもだって言ったけど、倫よりも俺の方が子どもかもしれない。倫が男と腕組んでるの見ただけで腹立って、倫にひどいことした。ごめん」
「え……そんな、私だって、黙って合コンなんか行ってすみませんでした。お酒もあんまり飲まないようにって言われたのに、なんだかんだで飲んじゃって……」
「まあ、それに関してはまだ怒ってるよ。でも、あの滋野くんって子には悪いことしたな」
「滋野くん……ですか?」
「うん。あの子、絶対倫のこと好きだよ。俺と同じ目で倫のこと見てたし。でも、それが気に入らなかったから見せつけるようなことしちゃった。本当に大人気ないよなぁ、俺」
なぜか平原さんは、私よりも滋野くんに対して申し訳ないと思っているみたいだ。やっと平原さんも謝ってくれて、それで仲直りしようと思っていた私は少しむっとしてしまう。
「……まあ、確かに滋野くんの方が大人かもしれないですね? 平原さんみたいにドSじゃないし、告白するときだって『子ども作ろう!』なんてぶっ飛んだこと言いませんから」
ひねくれた発言だということは、私だって重々承知している。でも、変なところで反省している平原さんに何か言ってやりたくて、つい口にしてしまったのだ。
「……倫? それ、どういう意味?」
抱っこされたまま脱衣所に着いて、そこで降ろしてもらおうと思ったのに、頭上から聞こえてきたのは平原さんの低い声だった。
彼の腕の中で頭を上げると、また怖い顔をした平原さんがいた。
「まさか、あの子に抱かれたの?」
「はっ!? ち、違います! そんなわけないじゃないですか!」
「うん、それは信じるとして。告白する時、って言ったよね。どういうこと?」
「え、あ……いえ、それは……い、言いませんでしたっけ? 結構前ですけど、滋野くんに告白されたって……」
「聞いてないよ。倫、あの子が倫のこと好きだって知ってて、あんなべろべろの姿で腕組んでたの? それってもう浮気じゃない?」
「ええっ!? い、いや違います! あれは、酔っててどうしようもなくって……! それに、滋野くんが合コンに来るなんて知らなくてっ」
「……もう、いい。今度はお風呂入りながらお仕置きしようか? 大丈夫、うちのお風呂より広いからいろいろできるよ」
平原さんが傍にいてくれるだけで、隣で笑ってくれるだけで幸せになれる。
そう思っていたのに、いや今でもそう思ってはいるけれど、こんな恐ろしい笑顔を見せられたらちょっとだけ心配になる。今日はまだ許してくれたから良かったものの、もし本当に浮気なんてしたら殺されるんじゃないだろうか。そんな予定はさらさらないから、大丈夫だと思いたいけど。
それにしても、平原さんがこんな嫉妬深いなんて知らなかった。ついでに、こんな怖い顔で笑う人だということも。まだまだ私の知らない彼がいることを思い知って、嬉しいような悲しいような複雑な気分だ。
顔面蒼白になった私を無理矢理浴室に連れ込もうとする平原さんに恐怖を覚えて、これからは絶対に彼を怒らせないようにしようと心に決めたのだった。
彼は確かに怒っているみたいだけど、なんだか少し楽しんでいるような気がするのは気のせいだろうか。
「さて、倫。脚開いて、大和さんので倫にお仕置きしてください、って言って」
「……え?」
「聞こえなかった? それとも、もっと下品な言葉がいいの? 大和さんのおち……」
「いやいやいや!! ま、まってください、平原さんの口からそんなの聞きたくないですっ!!」
「そう? じゃあ言って。言わないともっとひどいことするよ」
こんな風に平原さんに脅されるのはいつぶりだろう。
しかも、前よりひどくなってる気がする。離れている間にサディストに磨きがかかってしまったのか、それともこれが彼の本性なのだろうか。どちらにしたって、彼から逃れられそうにはないのだが。
でも、そんな恥ずかしいことを簡単に言えるほど恥知らずではないし、そもそもお仕置きなんかされたくない。ていうか、いつの間にか私ばっかり悪いことをしたみたいな雰囲気になってるけど、元はと言えば平原さんが悪いのだ。まあ確かに、当て付けで合コンに行った私だって悪いけど。
「倫? 早く言って。それとも、もっとひどいことされたくて黙ってるの?」
「ち、ちがいますっ! あ、あの、なんて言うんでしたっけ……?」
「だから、自分で脚開いて『大和さんので倫の恥ずかしいところお仕置きしてください』って」
「な、何か増えてませんか!?」
「もっと増やそうか?」
「ひっ……! い、いえっ、結構です……」
やばい。「言わないともっとひどいことをする」というのは、きっと脅しでも何でもなく本気だ。
平原さんを怒らせるととんでもない目に遭うということを実感しながら、私はもう彼に逆らうのはやめた。大人しく従った方が、被害が少なくて済みそうだ。
「え、えっと……ひ、平原さんの」
「違う。大和」
「ひっ! は、はいっ、あの……や、やまと、さんので、わたし、のっ……」
「やり直し。大和さんので、倫の」
「なっ……! も、もうやだぁっ!」
泣きべそをかきながら音を上げる私を見て、「じゃあいいよ」なんて許してくれるほど平原さんは甘くなかった。続きを促すように、ただじっと全裸の私を見つめるだけで手も差し伸べてくれない。
きっともう、お仕置きは始まっているのだ。絶望を感じながら、私はぐっと唇を噛んで彼の言う通りにした。
「や……やまと、さん、ので、り、りんのっ……は、はずかしいところ、おしおき……して、くださいっ……!」
顔が真っ赤なのは、お酒のせいなんかじゃない。酔いはもうほとんど冷めている。
学科内でも部活でも「クールで動じない大屋さん」で通しているのに、平原さんの前では見る影もない。とにかく彼が好きで、彼のためなら何でもしてしまうただの子どもなのだ。
座ったまま足を開いて、恥ずかしい台詞を言わされて、そのうえ羞恥心に耐えきれず泣いている私を見て、平原さんはやっと満足そうに笑ってくれた。
「良くできました。いっぱいお仕置きしてあげるね?」
「はっ……あ、ぅああああっ!!」
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「うあっ、や、いたいっ……やま、と、さ、はぁっ、いたいよぉっ……!」
「っは、うん、ごめんね? やっぱり指で解してあげないときついね。でも倫、これはお仕置きだから」
「え……あ、や、んんんんっ!」
平原さんと肌を重ねたのはまだ数えるほどだし、彼を受け入れることに体が慣れていない。
しかも、いつもはしつこいほど中を指でいじめてから挿入するのに、今日はお仕置きだからと言っていきなり彼のものを突っ込まれた。そりゃ痛いに決まってる、と妙に冷静な頭のどこかで考えた。
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「だーめ。大丈夫だよ、ちゃんと濡れてきたから。それに倫の恥ずかしいところ、いっぱいお仕置きしてあげないとね?」
「えっ……、やっ、ひゃうぅっ!」
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その瞬間、頭まで痺れるような衝撃が走って、がくがくと体を震わせた。
「はぁんっ、や、だっ、あああっ!」
「は、くっ……、ふふっ、すごいよ倫。俺のこんなに締め付けて、そんなに気持ちいいの?」
「やぁ、ちが、あ、ああっ……、あ、ああんっ!」
「あ、倫のここ、大きくなってきた。俺に、もっと触ってほしいみたいだね?」
「ちがうっ、ちがうの、もうやだぁっ……! あ、んっ、んーっ!!」
中を平原さんの剛直で貫かれて、そのうえ敏感な場所まで責められてしまったら、もう泣きながら喘ぐことしかできない。お酒臭いとか汗臭いだとか、そんなことにはちっとも気を配れなくなって、ただただ平原さんに助けを求めるようにしがみついた。
そのまま熱に浮かされたような彼の瞳を見つめると、激しく私を責めたてる下半身とは裏腹に、溶けそうなほど優しいキスを落としてくれる。それだけで心も満たされて、彼に口を塞がれたまま私は静かに達した。
「は、はぁ、ん、ああっ……」
「んっ……? 倫、もしかして今イった?」
「ん、は、いぃっ……ごめ、なさっ……」
「なんだ、イくときもおねだりしてもらおうと思ったのに。まあいいか、とっても気持ちよさそうだしね?」
「あ、ああっ、うん、きもち、いっ……やまとさん、もっと、キス、してっ……」
「っ……いいよ、もっとしてあげる。はぁっ、俺の方が余裕ないなっ……」
そう言って優しく口付ける平原さんからもお酒の匂いがして、もう冷めたはずなのにまた頭がふわふわしたように靄がかかる。
あんなに抵抗したくせに、こんなに気持ちよくなってしまうのが恥ずかしい。でも、こんなにも乱れてしまうのはお酒のせいなのだと思ったら、いつもより素直に彼に与えられる快感を受け入れることができた。
声が出てしまうのも、彼の太ももを濡らしてしまうくらい蜜を溢れさせてしまうのも、こんなに気持ちよくなってしまうのも、お酒と平原さんのせいだ。私は悪くない。
そう思うことにして、もうすぐにでも達しそうな平原さんを精一杯受け止めた。
「ああっ、やまとさんっ、あっ……! きもちいよぉっ、も、だめぇっ……!」
「はぁっ、うっ……いいよ、駄目になってっ……、倫、あっ、俺もいくっ……!」
「んんぅーっ! やぁ、あ、ひっ……あああっ!!」
汗だくになった私をぎゅっと抱きしめて、平原さんも中で果てたようだった。
どく、どくと何かが吐き出されているのがゴム越しにでも分かる。そういえば平原さん、いつの間にゴム付けてたんだろう。手際が良すぎて恐ろしいくらいだ。
「ん、はぁっ……やまと、さん……ごめんなさい……」
「ふふっ、やっと謝る気になった? でも、もういいよ。俺も悪かったし」
「……やっぱりそうですよね」
「ん? 何か言った?」
「いいえ、なんでも」
ここまでされたら嫌でも謝る気になる。平原さんって、意外と腹黒い人なのかもしれない。自覚は無さそうだけど。
「倫、お風呂入ろうか。立てる?」
「あ……も、もうちょっと待ってください」
「ああ、無理しなくていいよ。抱っこしてあげるから」
「はっ!? い、いや、いいです! 立てますからっ……!」
立てると言ったのに、平原さんは楽しそうに私を軽々と抱き上げた。こんな風に抱っこされるのは、思えばあの遊園地に行った時以来かもしれない。
恥ずかしいという気持ちはあったけれど、そう考えたら妙に感慨深くなってしまって、抵抗するのはやめて平原さんの肩に頭を預けた。
「ん? 倫、どうしたの」
「あ……えっと、その……やっぱり好きだなぁ、と思って。平原さんのこと」
理不尽に怒られても、ひどいことをされても、やっぱり私はどうしようもないくらい平原さんが好きだと思った。それは彼が私を愛してくれているという自信があるから、そう思えるのだ。
改めてそれを実感したら、胸がはち切れそうなほどの幸福感に包まれる。
「……もう。そんなこと言われたら、大人気なく嫉妬した俺が馬鹿みたいだ」
「え?」
「倫のこと子どもだって言ったけど、倫よりも俺の方が子どもかもしれない。倫が男と腕組んでるの見ただけで腹立って、倫にひどいことした。ごめん」
「え……そんな、私だって、黙って合コンなんか行ってすみませんでした。お酒もあんまり飲まないようにって言われたのに、なんだかんだで飲んじゃって……」
「まあ、それに関してはまだ怒ってるよ。でも、あの滋野くんって子には悪いことしたな」
「滋野くん……ですか?」
「うん。あの子、絶対倫のこと好きだよ。俺と同じ目で倫のこと見てたし。でも、それが気に入らなかったから見せつけるようなことしちゃった。本当に大人気ないよなぁ、俺」
なぜか平原さんは、私よりも滋野くんに対して申し訳ないと思っているみたいだ。やっと平原さんも謝ってくれて、それで仲直りしようと思っていた私は少しむっとしてしまう。
「……まあ、確かに滋野くんの方が大人かもしれないですね? 平原さんみたいにドSじゃないし、告白するときだって『子ども作ろう!』なんてぶっ飛んだこと言いませんから」
ひねくれた発言だということは、私だって重々承知している。でも、変なところで反省している平原さんに何か言ってやりたくて、つい口にしてしまったのだ。
「……倫? それ、どういう意味?」
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彼の腕の中で頭を上げると、また怖い顔をした平原さんがいた。
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「はっ!? ち、違います! そんなわけないじゃないですか!」
「うん、それは信じるとして。告白する時、って言ったよね。どういうこと?」
「え、あ……いえ、それは……い、言いませんでしたっけ? 結構前ですけど、滋野くんに告白されたって……」
「聞いてないよ。倫、あの子が倫のこと好きだって知ってて、あんなべろべろの姿で腕組んでたの? それってもう浮気じゃない?」
「ええっ!? い、いや違います! あれは、酔っててどうしようもなくって……! それに、滋野くんが合コンに来るなんて知らなくてっ」
「……もう、いい。今度はお風呂入りながらお仕置きしようか? 大丈夫、うちのお風呂より広いからいろいろできるよ」
平原さんが傍にいてくれるだけで、隣で笑ってくれるだけで幸せになれる。
そう思っていたのに、いや今でもそう思ってはいるけれど、こんな恐ろしい笑顔を見せられたらちょっとだけ心配になる。今日はまだ許してくれたから良かったものの、もし本当に浮気なんてしたら殺されるんじゃないだろうか。そんな予定はさらさらないから、大丈夫だと思いたいけど。
それにしても、平原さんがこんな嫉妬深いなんて知らなかった。ついでに、こんな怖い顔で笑う人だということも。まだまだ私の知らない彼がいることを思い知って、嬉しいような悲しいような複雑な気分だ。
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