病弱少女は今日も遺書を書く

帝亜有花

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さよなら変態!

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 それから暫くが経った。
 相変わらず健は毎日お見舞いを続けていた。
 だがある日、健が病院への道を歩いていると電話が鳴った。
 ディスプレイの文字を見るとそれは花梨の母親だった。
 もしもの時は教えてくれるという約束で番号を交換していたのだった。
 健はそのもしもでない事を祈りながらその電話に出た。

「も、もしもし・・・・・・」

『ああ、佐田島君?! すぐに来てくれる? うっ、ううっ、花梨の容態がっ』

 母親の声は涙ぐみ、嗚咽混じりだった。

「えっ、そ、そんな」

 もっと詳しく状況を聞こうとしたが電話はそこで途切れた。
 良く見るとスマホの充電が切れてしまっていた。

「なんでこんな時に!」

 健は病院への道を一気に駆けた。



「鈴村さん!!」

 いつもの病室を開くといつも居るはずの花梨の姿は既になく、ベッドは綺麗に整えられ、私物や見舞いの品々もすべて片付けられていた。
 もう、この病室は花梨が使わない事を示すかの様に・・・・・・。

「嘘だろ・・・・・・」

 健はふとベッドの上のテーブルに一冊の本が置いてある事に気が付いた。
 健はそれをそっと手に取った。

「これは、日記?」

 その日記帳は『Diary』の文字がマジックペンで消され、『遺書』と書いてある物だった。
 健はそれをパラパラと捲った。
 それは毎日色んなバリエーションで綴られたまさに遺書と言える物だった。
 そして書き連ねられた病気に対する痛み、苦しみ、死への恐怖、健はそれを読んでいるだけで心が苦しくなった。
 だが、ある日を堺に、その遺書はただの遺書ではなくなっていた。

『今日佐田島 健という男に死のうと思っていた所に邪魔をされた』

『今日もあの変態が現れた。正直うざい!』

『お見舞いの品とかいって大量の納豆を持ってこられたわ。納豆嫌い。あちウンチクがやたらと長い』

『今日もあいつ、来るのかな。今日は何持ってくるのかな。持ってきても食べられないけれど・・・・・・って、私、何楽しみにしちゃってるんだろう』

『あの変態! 変な事を言うから調子が狂う・・・・・・』

『最近、毎日あいつに会えると思うと、ちょっとだけ、辛い治療も頑張れる気がする』

 それはどれも健の事ばかり書かれていた。
 色の無かった世界に彩りが加えられたかの様だった。

「鈴村さん・・・・・・彼女の中で僕はちゃんと息づいていたんだな」

 そして一番最後のページにはこう書かれていた。

『お父様、お母様、これを読む頃には私はすでにいないでしょう。
 今までありがとう。
 そして、佐田島君、私がここまで生きてこられたのはあなたのお陰です。
 あたなが居なければ、私の命はあの日に消えていた。
 ううん、それだけじゃない。
 つまらない入院生活もあなたのお陰で楽しかった。
 辛い事も我慢できた。
 いつも素直になれないけれど、いつの間にか私の中であなたの存在はこんなにも大きくなっていた。
 もっと生きたい。あなたと学校に通ったり、勉強したり、ちょっと位なら遊びにとか行ってもいいって思った。
 もっとあなたと未来を見てみたかった・・・・・・。
 悔しいけれど、もしも私が死んだ時はこの遺書を佐田島君に捧げます』

「鈴村さん・・・・・・」

 健は花梨の思いに涙が溢れ、日記帳を抱きしめその場に崩折れた。

「僕だって、君と生きたかった。花梨!!」

 そう叫んだ時、病室の扉が勢い良く開かれた。

「うるさいわね! 人の名前を叫ばないでよね!!」

「・・・・・・す、鈴村さん?」

「部屋に忘れ物をして・・・・・・日記帳を見なかった?」

 健はまるで幽霊でも見るかのように花梨を見た。
 いつもの患者服ではなく、白いワンピースの私服姿だった。

「あああ、ちょっとそれ! ままままま、まさかっ、よ、読んだの?!」

 花梨は健が遺書という名の日記帳を持っているのを見て赤面した。
 だが、健はその質問に答えることなく、ゆっくりと立ち上がると花梨に駆け寄った。

「幽霊じゃない・・・・・・、本物?」

「し、死んでないわよ! 数値がちょっとだけ良くなって、一時退院が決まって、それでもうここには来ないからあなたに会えなくなるだろうって、お母さんがあなたに電話したみたいだけど、途中で切れたって。お母さん退院できるからって妙に嬉し泣きしちゃて・・・・・・」

 そう途中まで言って花梨は健に強く抱き締められた。

「良かった! 本当に良かった!」

「い、痛いわよ。こんなの別に珍しくないんだから。入退院を繰り返すとかいつもの事だし! 学校は、まだ無理だけれど、もう少し頑張れば通学も出来るかもって」

「本当か!」

「だから、それまでは佐田島君に会えなくなるけれど・・・・・・」

 もう毎日会うこともなくなるかと思うと花梨は寂しくなった。

「ん? それなら問題ないぞ。住所を教えてくれれば毎日通うぞ」

「はぁ? あなた、家にまで来るつもりなの?」

「ああ、そのつもりだが。教えてくれなくても学校の先生に聞けばなんとかいけるか・・・・・・」

「~~~~~~こんの変態! ストーカーーーー!!!」


 花梨が健と学校に行けるようになるのは、まだ少しだけ先のお話。
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