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12 戦闘って何でしょうか?
しおりを挟む「ところでタツキチ・・・」
ヤッカイさんが僕を見ます。
「はい」
「その変わった格好は何だ?」
ヤッカイさんが僕の足元から、ゆっくりと見上げます。
「あ、これ・・・スーツです。
リクルートスーツです」
そう言えば、なんかこう色々とありすぎて気にしてなかったなぁ。
やっぱり、こっちの世界でリクルートスーツはおかしいですよね。
「リクルート?」
「はい」
「それを着ると、どういう効果が得られるのだ?」
効果?
ん~効果ねぇ。
まぁ、あえて言えば・・・
「ポリエステルの割合が高いから、シワになりにくい。とかですかね」
「ポリエ・・・?」
「はい、ポリエステルという繊維です。シワに強いんです。
一日に何度も面接を受けますからシワになると困るんですよ」
「面接?」
「はい、面接です。
僕は就活の戦士ですから」
「就活?」
「はい、就活というのは」
「出たわよ!!」
不意にキャサリンさんが叫びます。
「魔物よ!!」
キャサリンさんが指差す先に、バスケットボールぐらいの大きさの青いブヨブヨの球体が、ゆっくりと動いています。
ヤッカイさんが身構えます。
「スライムだ!
こいつは厄介だぜ!!
よし!ここはオレに任せて、お前たちは後ろに下がってろ!」
「はい」
僕たちは後ろの岩陰に隠れます。
ヤッカイさんが中腰で右手を突き出します。
「ワンダフル・ファイヤーストーーム!!」
ヤッカイさんの右手から、ゆっくりと火の玉が出ます。
火の玉は、ふわふわと漂ってスライムに触れてスッと消えます。
一瞬、スライムがピクッとなりましたが、ブルブルっと震えるとヤッカイさんに向かって高速の液体をピュ!と発射します。
僕は目を疑います。
なぜなら、中腰で右手を伸ばし「は!」と叫んだヤッカイさんが液体を避けて1メートルぐらい真横に瞬間移動したからです。
スライムが液体を立て続けにピュ!ピュ!ピュ!と発射します。
ヤッカイさんは中腰で右手を伸ばし、歌舞伎の、いよぉーっ!という体制で、
「は!は!は!」と叫びながら左右に瞬間移動します。
全部避けます。
スライムの攻撃は全然当たりません。
「ワンダフル・ファイヤーストーーム!!」
再びヤッカイさんが火の玉を発射します。
火の玉がスライムにそっと触れるとスッと消えます。
ブルブルっと震えるスライムが、
ピュ!ピュ!ピュ!と液体を発射します。
「は!は!は!」とヤッカイさんが中腰で右手を伸ばし、左右に避けます。
ヤッカイさんは避けながら少しずつ後ろにジグザグに下がっています。
「は!は!は!」と叫びながら、スライムからドンドン遠ざかります。
そして僕たちの隠れている岩陰までヤッカイさんがたどり着くと、スライムは攻撃を諦めてどこかへ行ってしまいました。
「よし!敵は逃げたぞ!
これで、ひとまず安心だ!」
ヤッカイさんがハンサムに笑いながら僕たちを見ます。
この人、もしかして・・・
「あの~、ヤッカイさんの戦い方って・・・」
僕が聞きます。
「ああ、そうだ。
オレは高速で反復横跳びができる。
だから敵の攻撃を全て避けることができる」
「はぁ・・・」
「敵は、オレが攻撃を全部避けるから、みんな逃げて行くんだ!」
逃げて行くって。
あんたが後ろに下がって逃げてるんですよね。
「オレは今まで魔物から一度も攻撃を受けたことはない!
そう!オレの戦法は避けだ!!」
「そうなんですね・・・」
この人、攻撃力は全く無いけど、避ける名人ですね。
たぶんこの人、魔物に出会っても全部逃げてますね。
恐らく魔物に一度も勝ったことありませんよ。
だから階級がM級なんですね。
「よし!先を急ごう!
行くぞ!」
ヤッカイさんが進みます。
「あの~キャサリンさん」
僕が後ろのキャサリンさんに尋ねます。
「何?」
「さっきの、スライムが吐き出していた液体は何ですか?」
「あー、あれ・・・」
「触れると皮膚が溶けたり、毒だったりするんですか?」
「水よ」
「え?」
「蒸留水よ」
「蒸留水って・・・飲めるんですか?」
「そうね、飲めるわね」
「え?
飲める水なら何のダメージにもなりませんよね?
それって攻撃になりませんよね?」
「なるわよ。
ビチョビチョに」
「え?」
「ビチョビチョに濡れるわよ」
「濡れるって・・・」
「イヤでしょ?
不本意に濡れるのって」
「そりゃまぁ、突然水をかけられたら、イヤですね」
「でしょ?
人を不快にさせるのよ。アイツらは」
「はぁ、そうなんですね」
一般的に、スライムって一番弱いイメージですよね。
ヤッカイさんは、その一番弱い魔物から逃げるって・・・
じゃあ、さっきの巨人はどうするつもりだったんでしょうかね?
巨大すぎて高速の反復横跳びは無意味ですよね?
1メートル幅で左右に避けても、でっかい壁が迫って来てたんですから。
「出たわよ!!」
不意にキャサリンさんが叫びます。
「また魔物よ!!」
うわぁあ。
どうしましょう・・・
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