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シークエンス 001
しおりを挟む「あら、あら。盗み撮りは犯罪ですわよ」
「へ?」
「へ?じゃないですわ。
あなた、自分で何をしているのか分かっておりますの?」
「・・・え・・・」
「本人の許可なく撮影するのは犯罪ですわよ。
それとも、そこに写っている方の許可を得ているのですか?」
「・・・い、いえ・・・」
「学校内での犯罪は見逃せませんわ。
学生証と携帯電話の提示を求めますわ」
「え?」
「早く出して頂けます?」
「え、あ・・・はぃ・・・」
「さ、それでは私と一緒に来てもらいますわよ」
「え・・・?」
俺の大学生活が終了する瞬間である。
----- 数分前 -----
俺は大学の2年生。
これといって変わった事のない学校生活。
一つだけ大きな変化と言えば、これから一人暮らしを始めると決めた事だ。
まずはバイトをして金を貯める。
時間はかかるが絶対に引っ越すつもりだ。
俺は、いつもの様に携帯電話を操作し写真を撮る。
ここは大学の中でも一番広い中庭。
屋根のあるベンチが並べられ、多目的スペースとして学生たちが活用している。
俺がその子と出会ったのは1年前。
出会ったというか、初めて見たというのが正しい。
昼休みによく見かける子だ。
いつも同じ場所に座り、本を読んだり、携帯電話を見てほほ笑んだりしている。
1人の時や、数人の友達と一緒の時もある。
いつの間にか俺は学校に、その子を探し求める様になっていた。
当然、会話などしたことはない。
だから名前どころか、どのクラスか、何年生かも分からない。
ただ、遠くから見ているだけだ。
いや、見ているだけというか、ある時から写真を撮るようになった。
俺の小さな楽しみだ。
そして今日も俺は、あの子の写真を撮る。
俺は、向かいの離れたベンチから、さりげなく携帯電話を向けシャッターボタンを押す。
「あら、あら。盗み撮りは犯罪ですわよ」
突然、真後ろから声がする。
俺がゆっくり首を回して後ろを見ると、黒いロングヘアーでスーツ姿の女性が腕組みで立ってる。
「へ?」
「へ?じゃないですわ。
あなた、自分で何をしているのか分かっておりますの?」
スーツの女性は冷たい視線で俺を上から見つめる。
「・・・え・・・」
「本人の許可なく撮影するのは犯罪ですわよ。
それとも、そこに写っている方の許可を得ているのですか?」
「・・・い、いえ・・・」
「学校内での犯罪は見逃せませんわ。
学生証と携帯電話の提示を求めますわ」
「え?」
この女性は・・・学校の関係者?
教授?准教授?
職員の人?
「早く出して頂けます?」
「え、あ・・・はぃ・・・」
俺は言われるがままに携帯電話と学生証を取り出す。
手渡すとスーツの女性は肩からかけているバッグの中に入れる。
「さ、それでは私と一緒に来てもらいますわよ」
「え・・・?
ど、どこへ?」
「ジムの方に決まってるでしょ?」
「事務?」
そうか・・・
やっぱりこの女性は大学の事務職員だ。
「いろいろと手続きがございます」
「て・・手続き・・・」
って、これ警察沙汰?
俺、盗撮犯?
捕まるってこと?
てことは・・・停学?
いや!違う!
警察に掴まるってことは・・・
退学・・・。
おわった・・・
俺・・・終わった・・・
これといって変わった事のない学校生活。
これといって変わった事のない・・・
変わった事のない・・・
・・・・・。
そう、
これは、俺の変わった事のない人生が大きく変わる瞬間。
しかも、どん底へと落ちる瞬間だ。
地獄とかそんな生易しいもんじゃない。
社会からの追放。
人生の終わりを意味する。
俺はそんな事を考えながら事務職員の女性について行く。
そして大学の校門を出る。
ん?
校門を、出る?
「あ、あの、どこへ?」
「ココですわよ。このジムの上ですわ」
スーツの女性が大学の目の前にある建物を指差す。
そこは高層マンション。
1階部分には、コンビニエンスストア。
そして2階部分には、最近CМなどでよく見るスポーツジムが入っている。
「スポーツ、ジム・・・」
「そうですわ。
さ、行きますわよ」
は?
な、何?
何を言ってんの?この人?
「え、いや・・・」
俺は困惑する。
「どうしたんですの?」
「ど、どうしたって・・・」
いやいや。
状況が、よく分からん・・・
ジムって、何?
どういう事よ?
「それとも、あなた、
警察に行きますか?」
な!!
で、出た!
こ、こ、これは・・・と!取り引き!?交渉!?
この人は、俺をどうしようとしているのか?
「ど、ど、どいういう事ですか?」
俺には全くわけがわからない。
「とにかく上で説明をいたしますわ。
あなたに選択肢はございませんのよ」
「・・・・・」
どうする?
逃げるか?
いや、逃げることは出来ない。
なぜなら学生証と携帯電話をこの女性に取られているからだ。
俺は訳が分からない状態のまま、スーツの女性について行く。
女性は、スポーツジムの入り口を横目にマンションのエントランスへと向かう。
エントランスの入り口で暗証番号を入力し中に入ると、エレベーターのボタンを押す。
何だ?
ジムじゃないのか?
そうか、ジムの上って言ってたな・・・
エレベーターってことは、どっかの部屋に連れて行かれるのか?
嫌な予感がプンプンする。
というか嫌な予感しかしない。
エレベーターが来て、スーツの女性と乗り込む。
スーツの女性は、エレベーターのカードリーダーにカードを当てロックを解除すると、3階のボタンを押す。
何だ?
このエレベーターって、カギが必要なんだ。
えらくセキュリティーが高いマンションだな。
というか俺はこれからどこに連れて行かれるんだ?
もしかして、コレ、
警察に行った方が良かったのか?
俺は一体どうなるんだ?
チーン。
エレベーターが開く。
「こちらですわ」
スーツの女性は、3階の一番奥の部屋のカギを開け中に入る。
「さ、お上がりになって」
スーツの女性が、俺の前にスリッパをそろえる。
そこはマンションの一室。
見た目は、いわゆる普通の家。
友達の家に遊びに来た感覚だ。
何だかよくわからない状況だが、ここまで来ればもう後戻りはできない。
俺は覚悟を決める。
「お、おじゃまします」
俺は靴を脱いでスリッパを履く。
スーツの女性が廊下のすぐ左の部屋のドアを開ける。
その部屋は薄暗く広さは8畳ほど。
机とテーブルとベッドが置いてある。
机の上のパソコンのモニターがギラギラと光る。
パソコンの前に座る1人の少女がチラッとこちらを見る。
「それ、誰?」
「ついに見つけたのですわ」
「ふ~ん。それで?」
「盗み撮りしてましたのよ」
「盗み撮り・・・?
フッ、そう、ヘンタイって事ね。
だったら、あんたは今日からヘンタよ。
分かった!?返事しなさい!ヘンタ!」
はぁ?
黙って聞いてりゃ、
なに言ってんだこいつら。
ついに見つけた?
ヘンタ?
どういう事だ?
てか、ココ何?
「おい、ヘンタ!
返事しろ!」
パソコンの前の少女が俺をにらみつける。
「あ、いや、ちょっと待って下さい。
一体、何がどうなってるんですか?
俺、帰ってもいいですか?」
「あら!帰ることなんて出来ませんわよ。
あなたは犯罪を犯したのですから」
スーツの女性が腕組みする。
「いや、あの、ここは何ですか?
あなた達の目的は何ですか?」
「そうでしたわね。説明しますわ。
ここは大学の映研の活動拠点ですわ」
えいけん?
映研って、映画研究部?
好きな映画の話とかをする部活のこと?
「映研・・・ですか?」
「そうですわ。大学のサークル活動ですわ。
私が代表のマリ。4年生ですわ」
4年?
え?あんた学生?
2つ上?
大人っぽ過ぎるやろ?
しかもスーツやし。
「そして彼女が、副代表のレナ。3年生ですわ」
パソコンを操作するレナが俺をチラッと見る。
俺は反射的に小さくうなずく。
この子が俺より1つ上?
マジか・・・
なんか少女っぽく見えるし・・・
いや、違う違う!
自己紹介なんかしてる場合じゃない!
「それで、何で俺を連れて来たんですか?」
「あなたには、映研に入部してもらいますわ」
は・・・?
「入部?
あ、でも、俺、映画とか、あんま興味ないし・・・」
「そんな事はどうでもいいですわ」
どうでもいい?
これ、あれか?
部活の人数が足りないとかそんなのか?
あと何人か入れないと部活が潰れるとか、部費が出ないとかってヤツか?
「人数合わせですか?」
「違いますわ」
「違う?」
「そう、あなたには助監督をやってもらいますわ」
助監督?
はぁ?
何?
「いや、だから俺、映画のこととか全然わかんないし・・・」
「そんな事はどうでもいいですわ」
はぁ?
どうでもいい?
さっきからこの人、何言ってんの?
「あの俺、なんか、ちょっと、わかんないんでお断りします」
「何を言ってんのよヘンタ!」
パソコン前のレナが俺をにらむ。
「え?」
「ヘンタ、お前、盗撮したんだろ?」
「・・・・・」
さっきから何だよ・・・
ヘンタ、ヘンタって。
俺の名前はヘンタじゃない!
「お前!盗撮したヘンタイなんだろ!?」
「・・・・・」
「返事しろ!ヘンタ!」
「・・・は、はい」
「おい、ヘンタ。お前、分かってんの?
警察行ったら終わりよ?」
「・・・・・」
俺は奥歯を噛む。
くやしいが、その通りだ。
こいつらの言ってる事はハチャメチャだが、盗撮については本当の事だ。
警察に携帯電話を見られると俺は終わる。
「いい?お前には、どちらか1つしかないの!
警察に行くか、映研に入るか。
ヘンタ!お前が決めなさい!」
「・・・・・」
どうする?
どうすればいい・・・
警察には絶対に行けない。
行けば退学。
となると、映研に入るしかない。
ん?でも、助監督って?
映研って映画を撮るのか?
「あの・・・助監督って、何をするんですか?」
「ヘンタ!そんな事は後でいい。
今は、警察か映研、どちらかを選べ!」
「は、はい・・・」
クッソー!
これは、映研に入るしかない。
それしか道はない。
適当にあしらって隙を見て携帯電話と学生証を取り戻せばいい。
そして携帯電話の写真を全部消す!
今までかなり大量に、あの子の写真を撮ってるからな!
消せば全ては白紙になる!
証拠を消す!簡単な事だ!
よし!俺は覚悟を決める。
「わかりました・・・
でも、条件があります」
一か八かだ。
俺は駆け引きをする。
「何かしら?」
「携帯電話と学生証を返して下さい」
たぶん無理だろう。
相手にとって、この2つは切り札だ。
手放すはずがない。
「映研に入会して頂ければ、よろしいですわよ」
代表のマリが、ゆっくりと前髪をかき上げる。
よし!やった!
勝ちだ!
俺は心の中でニヤリとする。
「映研に、入ります」
俺が返事をすると、パソコン前のレナが紙とペンをテーブルに置く。
「ほら、入会申込書よ。
承諾に丸印をつけて名前を書け」
俺は、テーブルで入会申込書に名前を記入する。
名前を書き終えるのを待って、代表のマリがグッと胸を張る。
「さ!それじゃ早速はじめますわよ!」
始める?
何を?
「まずは、ゼメキス・フィルムですわよ!」
「ゼメキス・・・フィルム?」
何それ?
「いいですこと!ゼメキスと言えば、バック・トゥ・ザ・フューチャー!
アレをするのですわよ!」
はぁ?
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