ネジレコネクション ~ キャンパスは7色にねじれる ~

刺片多 健

文字の大きさ
2 / 2

シークエンス 002

しおりを挟む


「ど、ど、どういうことですか?」
俺は動揺を隠せない。
全く意味がわからないからだ。

「何だお前。
 バック・トゥ・ザ・フューチャー、知らないのか?」
副代表のレナがイスを回転させ俺の方を向く。

「いや、知ってますけど・・・」

何なんだ一体?
バック・トゥ・ザ・フューチャーって過去とか未来に行く映画のことだよな?
ま、俺、2までしか見てないけど・・・

「じゃ、わかんだろ?
 アレをやるんだよ」

だからヤルって、何すんだよ!
わけわかんねぇこと言ってんじゃねーぞ!このチビ!

「一体どういう事ですか?
 ちゃんと説明してください!」

「まあまあ、ヘンタさん」
代表のマリが割って入る。
「説明するより実際にした方が話が早いですわ!
 今夜12時、ココに集合ですわよ!」

ここに?
12時?夜中やん!

「え、それって俺、家に帰ってまたココに戻って来るってことですか?」

「いいえ、違いますわ。
 ヘンタさんはココで待っていればよいのですわよ。はい、これどうぞ」
代表のマリが一枚のカードをテーブルに置く。

「何ですか?これ?」

「この家のカードキーですわよ。
 エントランスの暗証番号は裏に書いてありますわ」

「え?」

カードを裏返すとマジックで数字が書いてある。

いやいや・・・
エントランスの暗証番号を裏に書いたらダメやろ!
このカード落としたら意味ないやろ!
このマンション、あんだけセキュリティが厳重なのに、意味ないやろ!

「ヘンタ!よく聞け!
 お前は今日からココに住むんだ」
副代表のレナが部屋を指差す。

「は?」

「今日からこの部屋はお前のものだ」

「は?」

いや、だから、意味がわからないんですけど!
どういうことよ!

「お前は承諾して署名したんだよ、これに」
副代表のレナが入会申込書を俺の目の前に出す。

「ええ、署名しましたけど・・・」

レナが入会申込書を裏返す。

な!?

そこには細かい文字で契約条項が書き込まれている。

「何ですか!それ!」

「ほら、よく見ろ。
 ココに書いてる」
レナが入会申込書を指差す。


・助監督は住み込みで働くものとする。


はあ?
住み込みで働く?
ちょ、ちょっと待て!

「それってどういう事ですか?」

「ヘンタお前、ココにタダで住めるんだぞ」

「え?」

「2LDKだぞ」

に!2LDK?

た、確かに俺は一人暮らしをする計画を練っているところだ!
この大学周辺の部屋は、そのほとんどがワンルーム。
2LDKは、学生にとって夢のような物件だ!
しかもタダ!
かなり魅力的だ!

・・・いや!違う違う!
条件は、住み込みで働くとなってた。

「あの~働くって、どこで・・・」

「下だ」

「下?」

「ヘンタ、お前には、コンビニとジムの補助要員として働いてもらう」

「補助要員?」

「そう、コンビニとジムは24時間営業だ。
 簡単にいうとバイトが急に休んだ時の穴埋めだ」

「バイトの穴埋め・・・」

「このマンションは3階が、コンビニとジムの社宅になってる。
 ヘンタ!お前は今から301号室の住人となる。わかったな!」

「・・・ひ、」

「ん?・・・何だ!?聞こえないぞ!」

「ひ、卑怯ですよ!」

「なんだと!」

「だって、署名した裏に書いてるなんて!」

「勉強になりましたわね。ヘンタさん」

「え?」

「何でもかんでも簡単にサインなんかしちゃいけないのですわよ」

はぁ?
お前らが署名しろっつったんだろうが!

「ヘンタ、諦めろ。
 お前の確認不足だ」

「ちょ!ちょっと!その入会申込書を見せて下さい!
 何か他にもいっぱい書いてありましたよね!」
俺がレナから入会申込書を奪おうとする。

「やめろ!」
レナが入会申込書を後ろに隠す。
「お前、ビリビリに破くつもりだろ!
 そうはさせるか!」

チッ!
このくそチビめ!

あ、でも、待てよ!

「コンビニとジムでバイトって、勝手に決める事は出来ないですよね?
 それに、バイトを募集してるかどうかもわかんないし。
 面接もまだ受けてないし」

「今、面接した」

「は?」

「ヘンタさん。レナさんはコンビニとジムのオーナーですのよ」

「は?」

「レナさんは、このマンションのオーナーでもあるのですわよ」

マ、マジ?

いや!ウソだ!
そんな事があるわけない!
絶対ウソだ!

「ま、正確には2年後のオーナーだ」
レナがゆっくりとつぶやく。

「え?」

「レナさんのお父様のグループ会社ですのよ。
 レナさんが卒業したら不動産業務の一部を引き継ぐのですわよ」

「はぁ?」

マジか!
いやいや落ち着け!

「ヘンタ、お前は人手が足りない時に手伝え。
 それ以外は自由にしていい。家賃と光熱費は会社が出す。
 家具や冷蔵庫、テレビ、エアコンも使い放題。
 もちろん給料も払う」

「・・・・・」

家賃と光熱費がタダ?
それに給料も出る?
しかも、2LDK!

こ、こ、好条件だ!
しかもすぐに住める!!

「どうだ?ヘンタ。
 理解したか?」

「・・・・・」

どうしよう。
映研が何をするのかは知らないが、この条件は最高だ。
このマンションはまだ真新しく、セキュリティもしっかりしている。
しかも何と言っても大学の目の前!
道路を挟んだ目の前が学校なのだ!

「わ、わかりました」

俺は屈する。
まんまとエサに釣られたのだ。
だが、考え方を変えればそれも悪くはない。
大海原の荒波に揉まれるよりも、生け簀だ。
そう、生け簀の方が安全安心でぬくぬくと育つ。
栄養豊富なエサも貰える。
俺は、ぬくぬくと生きていくのだ!

あ!
そんな事より!

「あの~、映研に入会したんで、携帯電話と学生証を返してもらえますか?」
俺が代表のマリに聞く。

「ゼメキス・フィルムが終了したら返しますわよ」

だから何だよ?
ゼメキス・フィルムって・・・

まあいい。
とにかく今は、携帯電話と学生証だ。
これを取り返すのが先決だ
これさえ手に入れれば、いつでもオサラバできる。

いくら好条件とはいえ、これまでの2人の会話からすると、映研に入会しても誰も続かないということだ。
そのため俺に、あんな詐欺まがいのサインをさせたのだ。
だから最低限の私物だけを持ってココに引っ越す。
ホテルに泊まる感覚だ。
いつでも出て行ける状態にしておけばいいだけの話だ。

「あ、そうそう、ヘンタ。
 代表のことは、これから監督と呼べ!マリ監督だ!
 いいか!わかったな!」

「マリ、監督・・・」

「そうだ。私は、レナでいい」

「レナ、先輩・・・」

「先輩などつけなくていい。同い年だ」

「え?」

「ヘンタ、お前と同い年だ。呼び捨てでいい」

「え?でも1つ上の、3年生ですよね・・・」

「レナさんは、飛び入学ですのよ」

「飛び入学?」

「高校2年で入学したのですわよ」

「高2で・・・?」

驚く俺をレナが無言で見る。

こ、このチビ・・・優等生・・・なのか?

「す、すげぇ・・・」
俺がつぶやく。

「凄くなんかないわよ。何言ってんのよ!」
レナが顔を赤らめる。

「なに赤くなってんだよ」
あ!思わず声に出た!

「赤くなんかなってないわよ!」
レナがそっぽを向く。

「とにかく今夜12時、ココに集合ですわよ!」
マリ監督が腰に手を当てる。




--- 夜の12時 マンション前 ---



「さ!プロジェクト・ゼメキスの始まりですわよ!」

何だよソレ?
さっきまで、ゼメキス・フィルムっていってたじゃねぇか。
どっちだよ?

「それじゃ、レナさん。頼みましたわよ」

「了解、監督。
 ヘンタ!お前はこの自転車を押せ!」

「え?」

「え?じゃない!
 ほら!行くぞ!」
副代表のレナがスタスタと暗い坂道を登って行く。
俺は、レナの後を自転車を押してついていく。

マリ監督は、ニコニコでマンションの前で手を振っている。
ここでマリ監督とは別々になるのか・・・

大通りだが、夜中ということもあり、人どころか車もほとんど通っていない。
所々に街灯がついている。
止まった街。
まるで写真の中の坂道を2人が登っているようだ。

てか、この自転車なに?
競技用だよな?コレ?
ドロップハンドルでサドルがめちゃくちゃ高けーぞ。

「なぁ、レナ」

「何?」

「この自転車どうすんだよ?」

「ヘンタが乗るのよ」

「いやいや、これ、ブレーキついてないし」

「当たり前だ」

「は?」

「止まる必要が無いんだから」

「何で?」

「はぁ~」
レナが大きくため息をつく。
「あんたバカなの?」

「は?」

「止まってどうすんのよ?」

はぁ?
こ、こいつ!
何言ってんだ!?

「いや、止まれないと危ないだろ?」

「ん~、もう、これだからシロウトは・・・
 いいから、黙ってついて来い」

レナが、坂道をズンズン登って行く。
俺も自転車を押しながらついて行く。

「この辺でいい」
丘の頂上で、レナが止まる。
「よしヘンタ、乗れ」

俺は言われるがまま、電柱を支えに自転車に乗る。
サドルが必要以上に高いのでフラフラする。

「ほら、コレかぶれ」
レナがヘルメットを俺の頭にのせる。
俺はヘルメットを装着する。

「じゃあ、ヘンタ、次は足をペダルに押し込め」

「え?」

ペダルを見ると、つま先を固定させるベルトがついている。
競技用なので簡単に外れないようになっているのだ。
レナがかがんで、つま先のベルトをグイグイ固定する。

「おい!ちょっと強くないか?」

「当然だ。足が外れちゃ困る」

レナがリュックからオイル缶を取り出す。

「オイルなんかどうすんだよ?」

「いいから見てろ」

レナがオイルを後輪にたっぷりかける。
ロングノズルのライターを取り出す。
いわゆるチャッカマンだ。

カチッ!カチッ!

「あれ?点かないわね」

え!?

えぇぇぇえーー!!!!

「な!な!何してんだよッ!!」
俺が大暴れで叫ぶ。

「何してるって、タイヤに火を点けてんのよ」

「はぁあ!!?
 バ、バカじゃねぇの!お前ッ!!!
 なッ!何考えてんだよッ!!」

「だから、バック・トゥ・ザ・フューチャーをやるって言ってんだろ」

えぇぇぇえーー!!!!?


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...