ネジレコネクション ~ キャンパスは7色にねじれる ~

刺片多 健

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シークエンス 003

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カチッ!カチッ!

「バ!バカ!ヤメロッ!!」
俺は競技用自転車の上で取り乱す。
レナがタイヤにかけていたのはライターのオイルだ。

カチッ!カチッ!

「ヤメローーッ!!」

ボッ!!

「点いた!走れヘンタ!!」
レナが叫んで逃げる。

一瞬で後輪が引火し爆発的に燃え上がる。

あ!熱い!!
し、死ぬ!

自転車から降りようにも足がペダルに固定されている。
立ち昇る炎の熱が背中を襲う。
俺はペダルを踏む。
風だ!
風圧で火を消すしかない!

俺はペダルをこぐ。

重い!

競技用だからかペダルが重い!
だが、下り坂と火事場の馬鹿力で徐々に自転車の速度が上がる。

ブボボボボボ

風の音なのか、炎の音なのか不気味な音が聞こえる。

ブボボボボボ

命の危険を感じる恐怖のサウンド。

うしろなんか確認している暇はない。
俺が今できるのは、ただひたすら足を高速で回転させることだ。
とにかくスピードだ!
俺はスピードを上げるため、前傾姿勢でアゴを突き出し競技用自転車と一体になる。
まさにツールドフランス。
俺と競技用自転車は炎をまき散らし、真夜中の坂道を駆け下りる。
風圧で炎を避けれているのか、今は思ったほど熱さは感じない。

一瞬、マンション前に立つ、マリ監督とすれ違う。

マリ監督はカメラを俺に向けていた。
動画を撮っているのだ。
これがいわゆる、ゼメキス・フィルムとかいうヤツなのか?
映画のワンシーンを再現するということなのか?
というか本来は車だろ!
何とかっていうカッコイイ車だ!
なんで自転車なんだよ!
それにタイヤが燃えるんじゃなくて、車が通った跡に火が点いてなかったか?
全然ちがうじゃねーか!

フフ、ま、これが、

映研というヤツなのか?

・・・・・。

あ・・・・

俺は視界の先に飛び込んで来たモノを理解した時、現実へと引き戻された。

コーバン。

そう、交番である。
しかも、お巡りさんが出て来た瞬間である。
俺と視線が交差したお巡りさんは全身をビクッとさせて身構える。

ヤバい!見られた!

目を見開いたお巡りさんが大口を開けて何かを叫んでいる。
そりゃそうだろう。
目の前の坂道を火だるまの自転車が爆走してきたのだ。
驚かないはずがない。

「君!待ちなさい!止まれーッ!!」

俺は前傾姿勢を保ちながら炎と共に交番の前を通過する。
そう、俺も必死なのだ。
なぜなら、止まらないからだ。
このタイプの競技用自転車は徐々にスピードを落として止まるしか方法が無いのだ。

「止まれーッ!!」
お巡りさんの怒鳴り声が背後から聞こえる。
止まりたいのは俺も同じだ。
だが止まれないのだ!
止まると焼け死ぬのだ!

バラバラバラララ!ラ!ラ!!!

突然、後輪の音が激しく変化する。

バララララ!!!!

恐らくタイヤがドロドロに溶けて、チューブが車輪にこすれていると思われる。

と、思った瞬間、

ガコン!!!

という衝撃が両足から全身に伝わる。
車輪にチューブが絡まって停止したのだ。

前に進もうとする推進力で、俺は宙に舞う。

競技用自転車と共に・・・。

なんだか心が軽い。

人は限界を超えると境地に達することがあるという。
今、まさに俺は、悟り、そして無我の境地に到達したという事なのか。
これが恐怖の向こう側。
俺は火だるまの競技用自転車で限界を超えたということなのか・・・。

目の前には用水路が見える。
俺は両足を自転車に固定されたまま、ゆっくりと宙を回転する。
わりと広い用水路だ。
ここに上手く着水出来れば助かるかもしれない。
炎も消えて一件落着だ。へへへ・・・

・・・・・。

そんなことを思いながら、俺は宙を回転しながら用水路へと吸い込まれていく。

バシャバシャ!!!

水に飛び込む特有のあの衝撃を全身に受ける。
着水・・・

助かった!
なんか全身めちゃくちゃ痛いけど!
俺は助かったのだ!

と思った瞬間、
両足がグググッ!と斜め下へ吸い込まれる。

用水路は思ったより深い!
そして意外にも水の流れが速い!

俺は両足を競技用自転車に固定された状態で用水路に沈んでいく。

あ、これ、
死ぬヤツや。

『さ!バック・トゥ・ザ・フューチャーをやるのですわよ!』

こんな時に監督の声が脳裏にこだまする。
監督はこれがやりたかったのだろうか・・・
というか、こんなシーンがあったのだろうか・・・
俺、2までしか見ていないけど覚えてないだけなのか・・・
やっぱり3まで見ておけば良かったなぁ・・・

一瞬そんなことを思いながらも、我に返った俺はもがく。
必死でもがく。
生きるために、俺は全身でもがく・・・

外れた!!

右足がペダルから外れた!!
後は左足だ!!
左足が外れれば・・・

左足さえ、外れれば・・・

外れれば・・・

・・・。

俺は意識が遠のいていくのを感じた。



--- 10時間前 ---



マリ監督とレナが映研の活動拠点である部屋から・・・いや、俺の家から出て行った。
そう、今からココ、マンションの301号室は俺の家!
俺の城なのである!
自由にしていいのである!

城の主である俺は部屋を探索する!

2LDK。

俺はLDK、いわゆるリビング・ダイニング・キッチンに足を踏み入れる。
おお。
俺は小さく声をあげる。
オープンキッチンで、なかなかの広さだ。
大き目のソファーの前に大型のテレビがある。
しかも複数のゲーム機もある。
何よココ。遊びたい放題やん!

俺はもう一つの部屋へと足を踏み入れる。

そこは最初に入った部屋と同じくらいの広さの部屋で、けっこうな数の段ボールが積みあがっている。
いわゆる、物置と思われる。
ま、ここは映研の物置なのだろう。
俺がそう思って部屋を出ようとした時、視界の隅にソレは入った。

金庫。

そう、電子レンジサイズの金庫である。
金庫はテンキー式だ。
電卓の様な数字が並び、上部には赤いランプがついている。
俺は金庫に近づき、少し考える。

どうする?
開けてみるか?

いやいや、さすがに閉まってるやろ。
けど一応やってみるか・・・

俺はレバーハンドルを掴んで力を入れるがびくともしない。

ダメだ。
閉まってる。

俺は一か八か、思い当たる数字をピピピピっと入れて、決定ボタンを押す。

カチャン。

小さな機械音がしてランプが緑色に変わる。

え?
開いた!!

俺は辺りを見回す。
見回しても誰もいないのは分かっている。
だが、見回さずにはいられなかった。

だって、金庫が開いたんですから!

俺はレバーハンドルを握り力を入れる。

ガチャ!!

開いた!
金庫の扉が開いた!

どうする?
まだ、完全には扉を開けてはいない!
ハンドルを回しただけだ!
中は見ていない!
まだ、セーフだ!
これを開けると引き返せないかもしれない!
とんでもない事になるかもしれない!
いくら今日から俺の家といっても、これは犯罪かもしれない!
やめるなら今だ!
俺は決断をする。

開けちゃえ!

ゆっくりと扉を開く。
中には黒い表紙のファイルが置いてある。

どうする?
このファイルを見ると、本当に引き返せないかもしれない。
今ならまだ間に合う。
慎重な判断を迫られる。
そして俺は決断する。

見ちゃえ!

俺は迷うことなくファイルを開く。


・・・え?

これ・・・

俺・・?

俺の・・・写真?

え?

なんで?

何で俺の写真が、あるの・・・?



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