13 / 23
うまく言葉にできなくて
Ⅷ
しおりを挟む
「花凛、最近真面目に図書委員やってるよね。てか今宮と仲良くない!? どうしたのよ!」
「いや、話してみたらいい奴で」
「マジか!」
実は、小説家を目指していることも、今宮と仲良くなったことも、全部サナには言っていない。
小さい頃からバカやってる私を見てきたサナだ。多分信じてもらえないだろうし、打ち明けるのが恥ずかしかった。「小説! 読みたい!」ってなるに決まってるし。とてもとても見せられない。
人のことを笑うような人ではないというのはわかっているけど。あまりにも現実味がないというか。噓をつくのは心苦しいが、話しにくい。
サナは紙パックの野菜ジュースをベコべコにへこむまで吸い上げる。
「ねー、もし進展あったら教えてね」
「絶対ないから」
ーー「一週間で、この本を写してほしい」
「……え?」
放課後、委員会の時間。今日はやることが少ない上に利用者が少ない。暇になったら何か本でも読もうと思ったところ、今宮が一冊の本を差し出してきた。
「写す?」
「そう、写す。千里さんは文章が書けないから、まずは書き方を覚える。これは今年の短編ファンタジー文学賞金賞の作品。
写していくうちに書き方はもちろん表現の仕方も身に着くと思うんだ」
何だかとんでもなく失礼なことを言われた気がしたが、否めない。100ページほどの中編だ。文字も大きめで見やすい。
「やってみる」
今宮からの宿題、バイト、読書。なかなか忙しくなってきたぞ。
文学マーケットの後家から帰ると、早速ひかりさんの作品を読んだ。
三冊とも全て恋愛小説。面白くて、ページ数もそんなになかったからすぐに読めてしまった。そしてそれと同時、こんなに書けても、一次さえ通らないことにひどく絶望した。
何で? 面白いのに。
「いや、まあ正直ほかの2冊は3ページでちょっと」
「3ページ!?」
「設定は良いと思うんだけど、なんというか、文章が単調というか」
マジか。
今宮も言いにくいのかはっきりしない。あの文章で3ページなら、私は3行だ。
「無理な気がしてきた。てか、私バカじゃん。こんなバカに小説なんて難しいもの書けるわけないよ。
もうやだ、和泉君に会いたい」
和泉君に会いたい。最後ライブ行ったのいつだっけ。今の私には、圧倒的にときめきが足りない。和泉君からでしか、得られない栄養素がある。干からびそう。嗚呼、和泉君。
「大丈夫だよ、小説にバカも何も関係ないから。これから色々学んでいくんだから、上達するよ」
そーですか。天才秀才の今宮様には、バカの気持ちなんてわかりませんよ。
「そうだ」
今宮が、思い出したように言う。
「そういえば、和泉君と会った」
「は?」
「やっぱり作者だからさ。マネージャーの人も交えて、事務所呼ばれたんだ。あと、サインももらった」
「噓でしょ?」
「あー。小説家になったらいつでも会えるなぁ」
瞬時に辿る記憶。勉強のことは三歩歩けば忘れるのに、和泉君のこととなると全てが脳にインプットされてる。
「本日、『初恋上級者』の作者の零さんが来てくれました! ささやかですが、本にサインを入れさせていただきました。零さんの名に恥じぬよう、精一杯頑張ります! よろしくお願いします! ゆーと」
思い出した、公式の呟き。
あれって、今宮だったんだ。
「いや、マジ死ぬ気でやるわ。先輩、よろしくオナシャス」
「よし、頑張ろう」
私って、本当単純だ。
「いや、話してみたらいい奴で」
「マジか!」
実は、小説家を目指していることも、今宮と仲良くなったことも、全部サナには言っていない。
小さい頃からバカやってる私を見てきたサナだ。多分信じてもらえないだろうし、打ち明けるのが恥ずかしかった。「小説! 読みたい!」ってなるに決まってるし。とてもとても見せられない。
人のことを笑うような人ではないというのはわかっているけど。あまりにも現実味がないというか。噓をつくのは心苦しいが、話しにくい。
サナは紙パックの野菜ジュースをベコべコにへこむまで吸い上げる。
「ねー、もし進展あったら教えてね」
「絶対ないから」
ーー「一週間で、この本を写してほしい」
「……え?」
放課後、委員会の時間。今日はやることが少ない上に利用者が少ない。暇になったら何か本でも読もうと思ったところ、今宮が一冊の本を差し出してきた。
「写す?」
「そう、写す。千里さんは文章が書けないから、まずは書き方を覚える。これは今年の短編ファンタジー文学賞金賞の作品。
写していくうちに書き方はもちろん表現の仕方も身に着くと思うんだ」
何だかとんでもなく失礼なことを言われた気がしたが、否めない。100ページほどの中編だ。文字も大きめで見やすい。
「やってみる」
今宮からの宿題、バイト、読書。なかなか忙しくなってきたぞ。
文学マーケットの後家から帰ると、早速ひかりさんの作品を読んだ。
三冊とも全て恋愛小説。面白くて、ページ数もそんなになかったからすぐに読めてしまった。そしてそれと同時、こんなに書けても、一次さえ通らないことにひどく絶望した。
何で? 面白いのに。
「いや、まあ正直ほかの2冊は3ページでちょっと」
「3ページ!?」
「設定は良いと思うんだけど、なんというか、文章が単調というか」
マジか。
今宮も言いにくいのかはっきりしない。あの文章で3ページなら、私は3行だ。
「無理な気がしてきた。てか、私バカじゃん。こんなバカに小説なんて難しいもの書けるわけないよ。
もうやだ、和泉君に会いたい」
和泉君に会いたい。最後ライブ行ったのいつだっけ。今の私には、圧倒的にときめきが足りない。和泉君からでしか、得られない栄養素がある。干からびそう。嗚呼、和泉君。
「大丈夫だよ、小説にバカも何も関係ないから。これから色々学んでいくんだから、上達するよ」
そーですか。天才秀才の今宮様には、バカの気持ちなんてわかりませんよ。
「そうだ」
今宮が、思い出したように言う。
「そういえば、和泉君と会った」
「は?」
「やっぱり作者だからさ。マネージャーの人も交えて、事務所呼ばれたんだ。あと、サインももらった」
「噓でしょ?」
「あー。小説家になったらいつでも会えるなぁ」
瞬時に辿る記憶。勉強のことは三歩歩けば忘れるのに、和泉君のこととなると全てが脳にインプットされてる。
「本日、『初恋上級者』の作者の零さんが来てくれました! ささやかですが、本にサインを入れさせていただきました。零さんの名に恥じぬよう、精一杯頑張ります! よろしくお願いします! ゆーと」
思い出した、公式の呟き。
あれって、今宮だったんだ。
「いや、マジ死ぬ気でやるわ。先輩、よろしくオナシャス」
「よし、頑張ろう」
私って、本当単純だ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる