14 / 23
うまく言葉にできなくて
Ⅸ
しおりを挟む
ーー「はじめまして。先日文芸マーケットにて3冊購入した者です。どの作品もドキドキしながら一気に読んでしまいました。すごく面白かったです! それから、同い年ということもあり親近感がわいてしまいました(笑)。これからも応援しています」
先日、私が送ったこのメッセージをきっかけに、ひかりさんと仲良くなった。
同じ東京都に住んでいて、高校は女子高。零の作品を読んでから、自分も小説家になりたいと思ったことを知った。めちゃくちゃファンじゃん。紹介したい。
「凛ちゃんも、小説家希望なの?」
「はい! まだ本当に、書き始めたばかりですが……」
「書き始めは不安だよね。何かわからないことあったら、いつでも聞いてね」
みんなの文芸部に登録するにあたって、ニックネームが必要だった。特に何も考えずに、本名を文字って凛にしたけれど、もう少しひねれば良かったかな。
ひかりさんは、優しかった。今宮は、必要以上に仲良くするなって言ってたけど、ひかりさんが新人賞を受賞したら心から喜べる自信がある。
いつのまにか、風が冷たくなっていた。季節は冬に差し掛かる。
「今宮はさー、やっぱり大学行くの?」
「うん、まあ」
「当たり前か」
毎週水曜日、いつもの放課後。空調がきき過ぎて、暑いくらいの図書室。この時期になると、3年生が一気に増える。みんなが一心不乱にシャーペンを動かしページをめくる。
お互いに返却された本のチェックを行いながら、同じく静かに口を動かしていく。
「千里さんは?」
「うーん。迷い中」
本当は、高校を卒業したら働くつもりだった。和泉君に、たくさん会うために。でも今は、本気で小説家になりたいと思っている自分がいた。
だから、大学に行きたいなんて考えてる。この私が。珍しいにもほどがある。
「クラス替え。来年アンタと同じになるかな」
「え?」
「私、3年生になってもアンタと図書委員やりたい」
今宮が黙る。不思議に思って横目で伺うと、耳を真っ赤にしていた。
「ちょ、変な意味じゃないからね!? まだ教わるためだからね⁉︎」
「う、うん。知ってる」
飛んだ勘違いだ。私は再び手を動かす。
「じゃあ、別々になってもお互い図書委員にだけはなろう」
「うん、そうね。どうせ人気ないだろうし」
「……ちょっと活動日数多すぎるよね」
「あ、やっぱ? 今宮でもそう思うんだ」
「そうだ。新作、読む? 今の時間だけだけど。ついこの間終わったんだ」
「良いの?」
絶対秘密ね。今宮はそう付け加えて、何十枚もの原稿用紙の束を私に手渡した。
校正やら手直しが入った完成型。こんなものを、私が先に読んで良いのか? 少し緊張する。私はスカートで手のひらをはらい、ページをめくる。
まだ誰も知らない、零の新作。時間が許す限り目を通す。そして読み進めていくうちに疑問を抱く。
何でこんなに書けるんだろう?
今宮の小説は大半が長編だ。でも飽きない。次から次へと展開が変わる。なのにごちゃごちゃしてなくて、読みやすい。
次はどうなるんだろう、どんな伏線回収がくるんだろう。
面白いのに、数百ページある作品をもちろん一時間なんかで読み切れるはずがなく。下校を知らせる予冷のチャイムが鳴り響く。はっと顔を上げると、たくさんいたはずの3年生はもういない。
「来週までに、プロット作ろう」
「プロット?」
「話の流れとか、登場人物とか。千里さんが書きたいものを、とりあえずまとめてみて」
読むの早くなったね。
今宮はそう付け加えると、新作の原稿を整えリュックにしまう。
心の奥で、湧き上がってきた気持ち。私の書きたいもの。私が書きたいもの。恋愛小説。
ジャンルは違う。むしろ正反対、だけれど。
「私、アンタみたいな文章が書きたい」
今宮みたいに、なりたい。
「アンタを、目標にする」
今宮が書く世界が、好きだ。
「……ありがとう」
照れくさそうに頬をかく。私は零の、ファンになっていた。
先日、私が送ったこのメッセージをきっかけに、ひかりさんと仲良くなった。
同じ東京都に住んでいて、高校は女子高。零の作品を読んでから、自分も小説家になりたいと思ったことを知った。めちゃくちゃファンじゃん。紹介したい。
「凛ちゃんも、小説家希望なの?」
「はい! まだ本当に、書き始めたばかりですが……」
「書き始めは不安だよね。何かわからないことあったら、いつでも聞いてね」
みんなの文芸部に登録するにあたって、ニックネームが必要だった。特に何も考えずに、本名を文字って凛にしたけれど、もう少しひねれば良かったかな。
ひかりさんは、優しかった。今宮は、必要以上に仲良くするなって言ってたけど、ひかりさんが新人賞を受賞したら心から喜べる自信がある。
いつのまにか、風が冷たくなっていた。季節は冬に差し掛かる。
「今宮はさー、やっぱり大学行くの?」
「うん、まあ」
「当たり前か」
毎週水曜日、いつもの放課後。空調がきき過ぎて、暑いくらいの図書室。この時期になると、3年生が一気に増える。みんなが一心不乱にシャーペンを動かしページをめくる。
お互いに返却された本のチェックを行いながら、同じく静かに口を動かしていく。
「千里さんは?」
「うーん。迷い中」
本当は、高校を卒業したら働くつもりだった。和泉君に、たくさん会うために。でも今は、本気で小説家になりたいと思っている自分がいた。
だから、大学に行きたいなんて考えてる。この私が。珍しいにもほどがある。
「クラス替え。来年アンタと同じになるかな」
「え?」
「私、3年生になってもアンタと図書委員やりたい」
今宮が黙る。不思議に思って横目で伺うと、耳を真っ赤にしていた。
「ちょ、変な意味じゃないからね!? まだ教わるためだからね⁉︎」
「う、うん。知ってる」
飛んだ勘違いだ。私は再び手を動かす。
「じゃあ、別々になってもお互い図書委員にだけはなろう」
「うん、そうね。どうせ人気ないだろうし」
「……ちょっと活動日数多すぎるよね」
「あ、やっぱ? 今宮でもそう思うんだ」
「そうだ。新作、読む? 今の時間だけだけど。ついこの間終わったんだ」
「良いの?」
絶対秘密ね。今宮はそう付け加えて、何十枚もの原稿用紙の束を私に手渡した。
校正やら手直しが入った完成型。こんなものを、私が先に読んで良いのか? 少し緊張する。私はスカートで手のひらをはらい、ページをめくる。
まだ誰も知らない、零の新作。時間が許す限り目を通す。そして読み進めていくうちに疑問を抱く。
何でこんなに書けるんだろう?
今宮の小説は大半が長編だ。でも飽きない。次から次へと展開が変わる。なのにごちゃごちゃしてなくて、読みやすい。
次はどうなるんだろう、どんな伏線回収がくるんだろう。
面白いのに、数百ページある作品をもちろん一時間なんかで読み切れるはずがなく。下校を知らせる予冷のチャイムが鳴り響く。はっと顔を上げると、たくさんいたはずの3年生はもういない。
「来週までに、プロット作ろう」
「プロット?」
「話の流れとか、登場人物とか。千里さんが書きたいものを、とりあえずまとめてみて」
読むの早くなったね。
今宮はそう付け加えると、新作の原稿を整えリュックにしまう。
心の奥で、湧き上がってきた気持ち。私の書きたいもの。私が書きたいもの。恋愛小説。
ジャンルは違う。むしろ正反対、だけれど。
「私、アンタみたいな文章が書きたい」
今宮みたいに、なりたい。
「アンタを、目標にする」
今宮が書く世界が、好きだ。
「……ありがとう」
照れくさそうに頬をかく。私は零の、ファンになっていた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる