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月曜日取締QOL向上委員会
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出会いは突然である。
三か月前の出会いがまさにそうであった。
私の人生を大きく変えた出会いの後、仕事を辞めてから日が経っていないことを理由に、三か月の猶予をもらって誘いを受けた。
次の職が見つかっていなかったことも一つの理由であったと今では思う。
あれから三か月が経過した約束の日である今日、遅刻すること無く、時間通りに新たな職場へ到着した。
「入れないってある?」
鍵がかかっているのではなく、何かしらの開け方がある扉を前に、成すすべがない。
時間通りに到着したにも関わらず、また連絡をしたにも関わらず、誰もいない、返信もない状況に対して怒りが湧き上がる。
だから、怒りをぶつける様に、目の前の扉に蹴りを入れた。
「ぅえ?」
直後、ごおんと機械音が鳴り響き、目の前の扉が開いた。
「あれ?まだ居たんですか。なにか用でも?」
扉の向こうから、何だか言葉に棘のある長身の男前が現れた。
「ずっと扉の前に居たので、変な奴かと思ってました。すみません」
「いえ、こちら側からあんなの見たら誰しも疑うので、謝らないでください」
私の目の前に座っている彼の名前は、華蔵 木ノ葉、二十歳の大学二年生である。自己紹介と多少の会話から得られたことはそれだけであった。
スモークのかかった扉は、中側はガラス張りであるらしい。したがって、先ほどの、約十五分間繰り広げられていた私の寸劇は、彼に全て見られていた。不審な挙動を見れば、誰しも関わろうとはしないはずだ。彼に非はない。あるのはこの場にいない新たな上司である。
「この職って、何もない人がスカウトされる事ってあるんですね」
「え?あ、そー、うなんですか?」
「はい。…あ、内容だけ聞かされた感じですか?」
「そうですねぇ…。他にどういった人がいるとは一切…聞きもしませんでしたね」
「そうですか」
あの時はいっぱいいっぱいであった。空腹と動揺から、早々にその場から離れたかった思いと再就職先が決まった安堵が強く、疑問も抱かずに今日を迎えてた。彼に気付かされ、一度、冷静に考えてみる。現役の大学生がアルバイト同様に働く事が可能であり、実態のない化け物を退治する警察庁所属の職とは、いまいち理解ができない。なんだそれ。そんなのあってたまるか。さらに、先程彼が言っていた「何もない人」がどういった人を指しているのかも疑問である。
「あ、そのー、何もない人とはどういった…」
「あー。いわゆるグレーな人?ですね。犯罪にはならないというか、でも誰かを傷つけてはいる、んー、これが難しくて。僕自身も納得していないので」
「は、はぁ…。華蔵さんは、何をしてここへ?」
「僕自身は自覚はないですが…鵜藤さん曰く、お付き合いしている女性が複数人いる状態で、別の複数人と体の関係を持っていること、らしいです」
「あー、あ、ははっ。何となく理解しました」
「マジですか」
少し引きつった、乾いた笑いが出た。本来は、弁護士を立てたり、裁判沙汰にしたりするものでもない、民事不介入のような、喧嘩や揉め事で完結してしまうような、そして人を傷つけるグレーゾーンな人間に声が掛かる職らしい。思い返せば私もどこかで誰かを傷つけていたのかもしれない。しかし、疑問は残る。なぜそのような人間でなくてはならないのか。今日から就くことになる仕事について考えていると、扉が開く音がした。
「ただいま~」
「鵜藤さん、遅いです。小鳥さん待たせすぎです」
「ん?あぁ!」
「どうも、お久しぶりです。小鳥 鈴音です」
「お久しぶりです。遅れてしまい申し訳ございません、小鳥さん。ようこそ、月曜日取締QOL向上委員会へ」
扉の向こうから姿を現したのは、出会った時と変わらず、黒い半ズボンにサスペンダーを着けた少年であった。
三か月前の出会いがまさにそうであった。
私の人生を大きく変えた出会いの後、仕事を辞めてから日が経っていないことを理由に、三か月の猶予をもらって誘いを受けた。
次の職が見つかっていなかったことも一つの理由であったと今では思う。
あれから三か月が経過した約束の日である今日、遅刻すること無く、時間通りに新たな職場へ到着した。
「入れないってある?」
鍵がかかっているのではなく、何かしらの開け方がある扉を前に、成すすべがない。
時間通りに到着したにも関わらず、また連絡をしたにも関わらず、誰もいない、返信もない状況に対して怒りが湧き上がる。
だから、怒りをぶつける様に、目の前の扉に蹴りを入れた。
「ぅえ?」
直後、ごおんと機械音が鳴り響き、目の前の扉が開いた。
「あれ?まだ居たんですか。なにか用でも?」
扉の向こうから、何だか言葉に棘のある長身の男前が現れた。
「ずっと扉の前に居たので、変な奴かと思ってました。すみません」
「いえ、こちら側からあんなの見たら誰しも疑うので、謝らないでください」
私の目の前に座っている彼の名前は、華蔵 木ノ葉、二十歳の大学二年生である。自己紹介と多少の会話から得られたことはそれだけであった。
スモークのかかった扉は、中側はガラス張りであるらしい。したがって、先ほどの、約十五分間繰り広げられていた私の寸劇は、彼に全て見られていた。不審な挙動を見れば、誰しも関わろうとはしないはずだ。彼に非はない。あるのはこの場にいない新たな上司である。
「この職って、何もない人がスカウトされる事ってあるんですね」
「え?あ、そー、うなんですか?」
「はい。…あ、内容だけ聞かされた感じですか?」
「そうですねぇ…。他にどういった人がいるとは一切…聞きもしませんでしたね」
「そうですか」
あの時はいっぱいいっぱいであった。空腹と動揺から、早々にその場から離れたかった思いと再就職先が決まった安堵が強く、疑問も抱かずに今日を迎えてた。彼に気付かされ、一度、冷静に考えてみる。現役の大学生がアルバイト同様に働く事が可能であり、実態のない化け物を退治する警察庁所属の職とは、いまいち理解ができない。なんだそれ。そんなのあってたまるか。さらに、先程彼が言っていた「何もない人」がどういった人を指しているのかも疑問である。
「あ、そのー、何もない人とはどういった…」
「あー。いわゆるグレーな人?ですね。犯罪にはならないというか、でも誰かを傷つけてはいる、んー、これが難しくて。僕自身も納得していないので」
「は、はぁ…。華蔵さんは、何をしてここへ?」
「僕自身は自覚はないですが…鵜藤さん曰く、お付き合いしている女性が複数人いる状態で、別の複数人と体の関係を持っていること、らしいです」
「あー、あ、ははっ。何となく理解しました」
「マジですか」
少し引きつった、乾いた笑いが出た。本来は、弁護士を立てたり、裁判沙汰にしたりするものでもない、民事不介入のような、喧嘩や揉め事で完結してしまうような、そして人を傷つけるグレーゾーンな人間に声が掛かる職らしい。思い返せば私もどこかで誰かを傷つけていたのかもしれない。しかし、疑問は残る。なぜそのような人間でなくてはならないのか。今日から就くことになる仕事について考えていると、扉が開く音がした。
「ただいま~」
「鵜藤さん、遅いです。小鳥さん待たせすぎです」
「ん?あぁ!」
「どうも、お久しぶりです。小鳥 鈴音です」
「お久しぶりです。遅れてしまい申し訳ございません、小鳥さん。ようこそ、月曜日取締QOL向上委員会へ」
扉の向こうから姿を現したのは、出会った時と変わらず、黒い半ズボンにサスペンダーを着けた少年であった。
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