BLUE MONDAY

俵屋

文字の大きさ
2 / 2

月曜日取締QOL向上委員会

しおりを挟む
出会いは突然である。
三か月前の出会いがまさにそうであった。
私の人生を大きく変えた出会いの後、仕事を辞めてから日が経っていないことを理由に、三か月の猶予をもらって誘いを受けた。
次の職が見つかっていなかったことも一つの理由であったと今では思う。
あれから三か月が経過した約束の日である今日、遅刻すること無く、時間通りに新たな職場へ到着した。
「入れないってある?」
鍵がかかっているのではなく、何かしらの開け方がある扉を前に、成すすべがない。
時間通りに到着したにも関わらず、また連絡をしたにも関わらず、誰もいない、返信もない状況に対して怒りが湧き上がる。
だから、怒りをぶつける様に、目の前の扉に蹴りを入れた。
「ぅえ?」
直後、ごおんと機械音が鳴り響き、目の前の扉が開いた。
「あれ?まだ居たんですか。なにか用でも?」
扉の向こうから、何だか言葉に棘のある長身の男前が現れた。


「ずっと扉の前に居たので、変な奴かと思ってました。すみません」
「いえ、こちら側からあんなの見たら誰しも疑うので、謝らないでください」
私の目の前に座っている彼の名前は、華蔵 木ノ葉かぐら このは、二十歳の大学二年生である。自己紹介と多少の会話から得られたことはそれだけであった。
スモークのかかった扉は、中側はガラス張りであるらしい。したがって、先ほどの、約十五分間繰り広げられていた私の寸劇は、彼に全て見られていた。不審な挙動を見れば、誰しも関わろうとはしないはずだ。彼に非はない。あるのはこの場にいない新たな上司である。
「この職って、何もない人がスカウトされる事ってあるんですね」
「え?あ、そー、うなんですか?」
「はい。…あ、内容だけ聞かされた感じですか?」
「そうですねぇ…。他にどういった人がいるとは一切…聞きもしませんでしたね」
「そうですか」
あの時はいっぱいいっぱいであった。空腹と動揺から、早々にその場から離れたかった思いと再就職先が決まった安堵が強く、疑問も抱かずに今日を迎えてた。彼に気付かされ、一度、冷静に考えてみる。現役の大学生がアルバイト同様に働く事が可能であり、実態のない化け物を退治する警察庁所属の職とは、いまいち理解ができない。なんだそれ。そんなのあってたまるか。さらに、先程彼が言っていた「何もない人」がどういった人を指しているのかも疑問である。
「あ、そのー、何もない人とはどういった…」
「あー。いわゆるグレーな人?ですね。犯罪にはならないというか、でも誰かを傷つけてはいる、んー、これが難しくて。僕自身も納得していないので」
「は、はぁ…。華蔵さんは、何をしてここへ?」
「僕自身は自覚はないですが…鵜藤さん曰く、お付き合いしている女性が複数人いる状態で、別の複数人と体の関係を持っていること、らしいです」
「あー、あ、ははっ。何となく理解しました」
「マジですか」
少し引きつった、乾いた笑いが出た。本来は、弁護士を立てたり、裁判沙汰にしたりするものでもない、民事不介入のような、喧嘩や揉め事で完結してしまうような、そして人を傷つけるグレーゾーンな人間に声が掛かる職らしい。思い返せば私もどこかで誰かを傷つけていたのかもしれない。しかし、疑問は残る。なぜそのような人間でなくてはならないのか。今日から就くことになる仕事について考えていると、扉が開く音がした。
「ただいま~」
「鵜藤さん、遅いです。小鳥さん待たせすぎです」
「ん?あぁ!」
「どうも、お久しぶりです。小鳥 鈴音おどり りおんです」
「お久しぶりです。遅れてしまい申し訳ございません、小鳥さん。ようこそ、月曜日取締QOL向上委員会へ」
扉の向こうから姿を現したのは、出会った時と変わらず、黒い半ズボンにサスペンダーを着けた少年であった。
    
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ある国立学院内の生徒指導室にて

よもぎ
ファンタジー
とある王国にある国立学院、その指導室に呼び出しを受けた生徒が数人。男女それぞれの指導担当が「指導」するお話。 生徒指導の担当目線で話が進みます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

異世界からの手紙

F.conoe
ファンタジー
異世界から手紙が届いた。 それは数日前に行方不明になった姉からの手紙であった。 しんみりと家族で手紙をやりとりする話。 でもラストは。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

処理中です...